2021/02/05 のログ
ご案内:「演習施設」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
利用する者の少ない、夜の演習場。
しかして、利用申請があれば、その門は夜間でも開かれている。
この日、宵闇と深夜の狭間の時間に――轟音と爆音が、演習場にて響く事となる。
「……想定より28秒遅い。やはり、単なる火力偏重の戦い方には限界があるか…」
数体の異形の群れを見据えながら、小さく溜息を吐き出す一人の風紀委員。破壊した無数のターゲットと、表示されたスコアは少年の満足のいく光景では無かったらしい。
空中で軽く手を振れば、ターゲットもスコアも消滅する。
後に残った異形の群れは、出来損ないのオブジェの様に佇んだ儘。
より火力を出す為には。
より敵に対し強大な一撃を叩きこむにはどうすれば良いのか。
少年の悩みは尽きない。
■神代理央 >
己の身を護る為にも。
部下達を守る為にも。
犯罪者に鉄槌を振るう為にも。
より力を得なければならない。
より『戦える様に』ならなければならない。
その為にも――
「……個人的には、もっと近接戦闘に長ける様になりたいものだがなあ…」
まあ、インファイトは得意な者に任せるべきなのだろうが。
華奢な身体付きである自分では、殴ったところで大したダメージにはならないだろうし――
「…自分で言ってて悲しくなってくるな」
溜息一つ。
ご案内:「演習施設」に松葉 雷覇さんが現れました。
■松葉 雷覇 >
学園の者であれば誰もが利用するであろう場所だ。
異能と向き合うための場所。多くの者が戦闘利用と言うが
異能の本懐は其処ではない。自由に扱える場所が必要だ。
他人に見られずに、向き合うという事置いて、この演習施設の広さは理に叶っている。
「────精が出ますね。随分と張り切っているようです」
そんな場所とはやや無縁の、穏やかな声音が背後から響いた。
それは何時から其処に居たのかはわからない。
白い背広姿の金髪の男。眼鏡のレンズの奥、穏やかな青い視線が少年を見据えている。
それ等は全て、"己の立場を弁えているからこその行動に過ぎない"。
「近い内に、まるで大ごとでも起こすようですね。『鉄火の支配者』さん」
男は、何気も無し、と言葉を続ける。
■神代理央 >
穏やかな声色。整った顔立ち。糊のきいた白いスーツ。
果たして、何時から其処に居たのか。何時から、己の事を見ていたのか。
一見、知的な雰囲気を纏わせる好青年の"様な"男にゆっくりと視線を向ける。何も知らぬ者が見れば、生徒の演習を見学しに来た教師。或いは研究者。その辺りの類かと認識しても、何の違和感もないだろう。それ程までに、男は自然体であり、穏やかであり――敵意を、感じられなかった。
けれど己は、此の男の事を、知っている。此の男が何をしたのかを、知っている。
「……良く。よく私の前に顔を出せたものだ。松葉博士。
いや、元博士、と御呼びするべきかな?」
歪な金属音。金属同士が擦れ合う様な、不愉快な高音が響いて。
召喚されていた全ての異形の砲身が、男に向けられる。
「……何の勝算も自信も無しに、私の前に現れたとは思わぬ。
しかし、伊都波先輩を襲撃した貴様を、私が暢気に見逃すとも思ってはいまい?」
「……何故、此処に現れた。伊都波先輩の様に、私も簡単に御し得ると思っているのかね」
■松葉 雷覇 >
男はゆるりと人差し指を立てた。
細長く、白い布手袋に包まれたそれは右へ、左へ、ゆらり、ゆらり。
「博士号が剥奪された訳ではありません。
神代君。私はまだ、博士で大丈夫ですよ。」
知の探究者としての称号。
数ある学問を修めた者の称号。
一握りの人間だが、自分以外の多くもそれを持っている。
男は今でも、そうであると自負している。
探究者であるがゆえに、その称号が消える事は無いだろう。
立てた人差し指を己の口元にもっていくと、僅かに首を傾けた。
金糸の髪が、細かく揺れる。
「何故?ふむ……貴方が私と接触したいようでしたので。
私の思い違いしたら、失礼しました。」
たった、それだけだ。
本当にそれ以外に一切の理由はない。
違反組織だから、出鼻を挫こう等と言う打算は一切ない。
ただ、風の噂で流れた噂を小耳に挟んだ。
そう、たったそれだけの"ちょっとした善意"だ。
「ああ、異能学会とのコンタクトをとる前でしたね?
それなら少し、申し訳ない事をしました。事が想定通りに動いていますので
私もあれ以上あそこにいては、他の皆様に迷惑がかかる。ですので、こうして直接に会いに来たのです。」
■神代理央 >
男の言葉を、警戒心を露わにしながら静かに受け止める。
『接触したいよう』だから、此処に現れた。
つまり、敵意がある訳ではない。少なくとも、不意をついて此方をどうこうしようとする意志は、恐らく無いのだろう。
「……犯罪を犯しても、学位には拘るのか?
博士、ドクトル。知識を追い求める者は、呼称などには拘らぬと思っていたが」
と、言葉を返しながらも――それは単なる時間稼ぎ。
男の目的。或いは、己が此処でするべき事。
それは一体何なのか。どうするべきなのか。何が最善なのか。
考える。思考する。思案する。
「……確かに、他の委員が接触はしているが私は未だコンタクトを取る前だった。しかし、それについて謝罪をする事は無い。
何せ、本人がこうして現れてくれたのだ。態々貴様が所属していた組織の腹をあれこれ探るより、本人に直接聞いた方が話が早い」
「元の職場に迷惑をかけたくないのだろう?
であれば、学問の先達として、私の些細な知的好奇心を満たしてくれても良いのではないかね?
無駄にお互い疲弊するよりも、対話と質問によって互いに得られるものもあると思うのだがな」
それは、余りに単純で愚直なもの。
こうして現れたのなら、此方の質問に、聞きたい事に答えろ…と。
男を見上げる様な視線の儘、静かに言葉を紡ぐのだろう。
本来であれば、今すぐに異形の砲弾を放つべきである。
或いは、男を逮捕なり捕縛する為に動くべきである。
しかし、男の態度には"余裕があり過ぎる"
こういう手合いは、大概戦闘になったとしても、何らかの有効な手を持っているもの。
特に、己は風紀委員としてその異能なり魔術なりを知られやすい立場にある。異能学会に所属していた彼なら、己の能力を一通り把握している筈。
だから、砲火を交え合うのではなく舌戦を。彼との対話を、試みるのだろうか。
■松葉 雷覇 >
「はい。私の科学は多くの人々の"希望"となりえます。
これより、"島規模"で行う実験はその一歩です。」
くるりと人差し指が、宙で円を作る。
「私は指導者に成ろうとは思いませんが……誰が何をしたか。
その称号は分かりやすい方が良いと思います。
……貴方が呼ぶ"犯罪"であろうと、わかりやすいに越した事は無い。」
勿論、それ自体にこだわりはない。
指標程度のものだ。博士号が無くても、己の生き方は変わる事は無いだろう。
知の探究者。多くの人々のより良き未来。
その道が如何なる物であろうと、男は躊躇なく前に進んできた。
犯罪者とたった今誹られようと、"些細な事"だ。
返り血に噎せ返るような道だろうと、皆の為と思えば安い事。
この血は礎、"より良き理解者"達他ならない。
男は、それを信じて疑わない。
融和な微笑みを崩す事無く、青い瞳が真っ直ぐ相手を見据える。
「それで、私に聞きたい事とは何でしょうか?
可能な範囲であれば、是非とも答えさせて頂きますよ。」
事実、敵意も悪意もそこにはない。
或いは"用意"さえそこにはない。
但し、"万全"ではある。いつも通りの"万全"だ。
本当に問答が望みであるのであれば、答える程に
男は一切の後ろめたさを感じさせなかった。