2021/11/26 のログ
ご案内:「Tokoyo Ultimate Battle Stage」に幣美奈穂さんが現れました。
幣美奈穂 >  
とても激しい戦いだったのです。
7Rにも及ぶ戦い。

「――今回は、勝ちを譲りましたけれど。
 次は負けませんわ・・」

悔し涙に目が潤んでいる美奈穂。
対戦相手とリングの中央で握手。

ぷにっ。

肉球が気もちいいのです。
そう、今日の対戦相手、チンチラのジョセフィーヌちゃん。
飼い主さんに抱っこされてます。

うなぁ~お

いつでも再戦してやると不敵なお顔で啼くにゃんこさん。

幣美奈穂 >  
最後は、コーナーポストからのジャンピングおなかふわ毛あたっく。
もふっとやられてしまった美奈穂です。
悔しい、風紀委員としてもっと強くあらねばと。
そう心に思うのです。

ちなみに、この試合。
試合と試合の間の休憩時間に行われています。
合間のショーイベント的な扱い。
美奈穂は存じ上げてないのですけれど。

幣美奈穂 >  
わんこさんとの闘いの後。
何度か申し込まれる戦い。
――全部、誰かのペット。
肉球タッチでタブレットを操作させて、
ペットが遊ぶ相手として選ばれていることを美奈穂は知りません・・!

現在の戦績、8戦1勝。
1勝の相手は大きなうさぎさんでした。
何をしても動じないのですが、ブラッシング固めで寝そべらせてフォール勝ちです。

次の時間が迫っているので、にゃんこさんと手を繋いで周囲にアピールをしまして。
そしてリングを降ります。
そう、今日は平日!
授業を受けなくてはいけませんので!

ご案内:「Tokoyo Ultimate Battle Stage」から幣美奈穂さんが去りました。
ご案内:「演習施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
演習場の一角、フロアに正座をして凛霞は佇んでいた

既に1時間半、2時間程
じっと眼を閉じて、呼吸音すら殺すほど静かに…
注意を払わなければそこに人がいることに気づかないかもしれないくらいの、無音の世界

耳に入る物音も遠く、隔絶された領域に精神を追いやるように…ただただ、静かだった

精神統一、心を無に
言うは易く行うは難し
雑念による乱れが、2時間の間に数度

「………は。…やめやめ…」

うっすらと目を開く
こうして己を律する行が久しぶりだったというのもあったけれど、それにしても

自分自身の集中力の欠けが自覚しやすいだけに、不満だった

伊都波 凛霞 >  
一連の事件の間に見えたこと
数日の時間といえど落第街での生活を自らの視点で見て過ごした
そして自覚しつつも、何度も言われた"甘い"という言葉
反省点は多く、得られた知見もまた多い

──心身ともに鍛え直し
自らの在り方と理念を変えず、道を違えないと意地を張るのなら
後はもう、ひたすらに強くなる以外にはない

「……ふぅ───」

片膝からゆっくり立ち上がり、まずは型稽古
自分の流派には決まった型は存在しない
なので、仮想敵を想定し、それに対応した動作を取る
時にはイレギュラーも混ぜ、即興でそれに対応する
故に同じリズムはなく、それでいて鋭さを感じさせる
演舞とはまた違った、独特の形稽古の動作となる

伊都波 凛霞 >  
その仮想敵は、あるいは人であり、または自身の知る範疇の怪異なども
しかし、それだけでは足りないことが既に証明されている
異能者相手に徒手空拳、あるいは武器術を使用したとしても、力を見抜けなければ遅れを取ることは必定──

…先日、後輩の一人とした会話の中で
素直に風紀委員の仕事…特に戦闘の領域で役立つ異能の持ち主に…少なからず嫉妬を覚えた
自分にあの時そんな力があったら、結果が同じにはならなかったかもしれない、なんて

そんな、ないものねだり
自分の異能は…捜査や追跡にこそ役立つもの
戦闘においては一切、何の役にも立たない力だから

「(……でも)」

自分の中で新しい何かの息吹を、感じ取っていた
多分それは、遡れば松葉博士との一件、その後から

外傷の他に、脳に強いストレスが残っていると病院では説明された
その影響なのかどうかはわからない、ただ──

「…っと!」

バランスを崩す
足のついていかない方向に身体を動かす、初歩的なミス

ダメだ、考え事がずっと残っていてまったく集中できてない

伊都波 凛霞 >  
「…なんか、ちぐはぐ」

座り込み、大きく溜息を漏らす

凄く集中できていると思ったら、別のことをふと考えてしまったり
頭の中の整理がついていないというか…不意にその時には余計なことが浮かんでくる
"蜥蜴"に囚われていた間も、ずっとそうだった

……思えばあの直前あたりから?

「(……私、前から"あんな風"に動けてたっけ)」

それは一番最初の、羅刹との接触
彼の部下に囲まれ、銃器を含む包囲攻撃を受けた
銃口の向きから計算して射線上で動きを止めない、というのは基本として
あの時は"いつ引き金を引くか"を予測した上で身を躱していた

「………」

立ち上がる
型稽古は終了、どのみち集中できやしない

伊都波 凛霞 >   
異能訓練用の色々があるらしいけれど、いまいち使い方がわからない
デコイ?なんかはホログラムで用意しているのを見たことがあるけど

「…かといってそのへんにいる人に銃で撃ってくださいとか言えないよね」

それはただの危険な女である

伊都波 凛霞 >  
銃器、魔術、遠距離から攻撃が可能な類の異能
その辺りで協力できる人を今度探しておこう、なんて思いつつ

「っはぁ……」

ころんと寝転ぶ
ちょうどこの一角は畳だし、自分以外誰もいないし、いいじゃない

「…でも、このままじゃイケない気がするなー……」

仰向けに寝てもなお山が高い
何がとは言わないが

──どうにも引き締まらない
わざわざ久しぶりに道着袴まで引っ張り出して気を引き締めようとしたのに、なんかダメである

あれこれとやらなきゃいけないことがあるのに
てんでバラバラでまとまらないし、しっかりしないといけないのにという妙な焦りばかりがあった

ご案内:「演習施設」に山本英治さんが現れました。
山本英治 >  
寝転がっている伊都波先輩を覗き込む。

「油断してる美人だーれだ」

ニカッと笑って一歩下がる。

「どうもどうも、伊都波先輩!」
「お久しぶりですご無沙汰してます時節の挨拶はご省略ぅ」

巨大なアフロと肩を揺らして笑う。

「スランプですか? 可愛くもない後輩が相談に乗りますが」

伊都波 凛霞 >  
スッと大きな影が天井のライトを遮る
逆光で顔は見えなかったけれど、その特徴的なシルエットと聞き覚えのある声で誰かはすぐにわかってしまう

いつもの調子の明るい声色と、小気味の良い冗談交じりの言葉

「たまには油断だってするんですぅー」

どうせ油断してるトコ見られちゃったなら別に慌てて整えるまでもない
少しだけ口を尖らせたような珍しいことを言いつつ、ゆっくりと上体を起こして笑顔を浮かべる
今までと変わらない、柔和な笑み

「お久しぶり、山本くん。入院中にお見舞いに来てくれた時以来?」

彼のこれまでは風に聞いていたけれど、その事情までは把握していなかった
まぁ、お互いに色々とあったのだ、きっと

「スランプ。…スランプなのかなー」

うーん?と小首を傾げて、姿勢を正す
畳なので正座のほうがなんだか落ち着くのである

「あはは、でもお話聞いてくれるなら嬉しいな」

不思議と彼と話をする時は肩や肘の力が抜けてしまう
その振る舞いや雰囲気、彼の持っている独特の空気感がそうさせてくれるのかもしれない
彼が今まで何をして、どこにいたのか…
それも聞いてみたかったけど、今は彼が相談に乗ると言ってくれているのだから、お言葉に甘えてしまう

「えっとね」

「今更何をーって感じなんだけど、自分の異能が戦闘向けじゃないことに少しだけね」

「なんか、劣等感」

座ったままに、じっと自分の手のひらに視線を落として

「それも含めて色々で風紀委員としてちゃんとやれてるのかわかんなくなっちゃって、色々身が入らない感じなの」

ついつい弱音みたいなことまで口から零れてしまう

山本英治 >  
ライトを見上げて顎の辺りを指で擦る。
たまには油断、か。
完璧超人だと思われがちな伊都波先輩が。
……これはファンも増えるよなぁ。

「そうですね、その後くらいにバチカンに飛び出していったので」
「俺もワールドワイドな男になっちまったなぁ…」

真顔で言ってすぐに笑顔を見せる。

「さすが先輩、道着袴もビシッと決まってらっしゃる」

そこから続く相談は、真剣に聞いて。
人が悩んでいるのに茶化すのは良くないし、
何より伊都波先輩には悩んだ後に成長してほしい。

その一助になりたい。彼女の力になりたいんだ。

「一つ一つ俺なりに答えていきましょう」
「先輩は俺の……α型身体強化異能、オーバータイラントの力が欲しかったらどうします?」

「一番簡単なのは俺を味方につけることです」

今は事情で異能に制限がかかっていますが、たとえ話ですよ?と付け加えて。

「俺は最高のバックアップが欲しかったらレイチェル・ラムレイ先輩を頼ります」
「ダイレクトガンサポートが欲しかったら、キッドについてきてもらう」
「単純な武力制圧という点で神代先輩の右に出るヒトはいないでしょう」

「俺の異能は遠距離戦には向いていませんが」
「遠距離で使える異能を持っている仲間の懐刀になれます」

唇だけで微笑む。

「伊都波先輩の考えるちゃんとした風紀委員って、一人でパトロールから戦闘まで何でもこなすヒトですか?」

伊都波 凛霞 >  
…バチカン?
一体どういう…後から根掘り葉掘り聞こう、絶対に

「たった今油断したトコ見られちゃってるんですけど」

ビシッと決まってる、なんてよくもよくも。ついつられるように笑ってしまう

さて、こちらの悩みをしっかりと聞いてくれた彼は…
本当に彼らしい、ストイックな答えと、問いかけを向けてくれる
概ね正しい、というか、並べられた例え話は当然、自分の納得のできる言葉、だけど

「そうじゃない、私だって、そうする──でも…誰かの力を借りられない状況もあるよ?」

「そこで他の誰かの命が懸かっていたら…自分一人でも、すぐに判断して切り抜けないといけない…」

言葉が先へ進むほど、声は少しずつ小さくなってゆく
協力し、穴を失くすことは大前提、それだけに留まらず個人でも状況を打開できなければ

「……私じゃなく山本くんだったら、異能を…"相手にとっての不可視の力"をどこかで切り札に出来たかも知れない」

彼は、戻ってきてから読んだだろうか
凛霞が落第街で一般生徒を盾に蜥蜴という組織に捕縛され、
更にそこで人質の開放と引き換えに──組織の要求通りに一時行動していた
そんな報告書の内容を

山本英治 >  
「俺は油断が心の乱れという風潮には必ずしも賛成しません」
「一瞬たりとも気を抜かないヒトは少なくとも俺は信頼したくないですしね」

そう、彼女は傷ついたんだ。
傷ついただけじゃないかも知れない。
そこに言葉だけでカバーやフォローなんて、烏滸がましいのかも知れない。
でも。

言葉が無力なんて、俺は一度だって思ったことはない。

「先輩、スローモーション組み手しませんか」
「簡単です、ゆーーーっくり動いて攻防の手足の動きを確認するだけです」

構えを取り、ゆっくりと右拳を振り下ろす。
劈拳だ。普段は骨すら砕く一撃だが、今は羽毛のように優しい。

「常に仲間が隣にいるとは限りませんよね……」
「悪は徒党を組みがちですし、悩ましい」

ゆったりとした動きの中で、自分の姿勢に注意が払える。
そういう特訓だ。

「もしも、ああしていたら、あれをできてたら」
「……基本的に、風紀委員には許されませんよね…」

だから、風紀委員は正義なんだ。
しかし一人の人間が背負い込むには重たすぎる。

「次はこうしたい、くらいが人には丁度いいのかも知れませんよ」
「過去は離れていって、未来は近づいてくるのなら」
「研鑽を重ねることは決して無意味じゃない」

理想論を並べている自覚はある。
だからこそ、本当にしたい。心からそう思う。

伊都波 凛霞 >  
「…え?」

思いがけない言葉だったのかもしれない
油断を咎めない言葉ではなく、その後の‥

「い、いいけど…やったことないなあ」

立ち上がって裾を払うと、対峙する
凛霞は女子にしては背が高い、言ってしまえば彼、山本英治ともそこまで大きな差はない
しかしそれでも彼が大きく見えるのは…多分髮のせいだけじゃないんだろうと思う

「──うん。
 研鑽を重ねることが無意味だとは、私も思わない」

ゆるりと迫る大きな右拳
こちらもスピードを合わせるようにして、その振り下ろされる拳の先、手首へと逆手で触れる
よく凛霞の使う、簡単な軌道操作
力の向くベクトルを、僅かな操作で曲げ、相手の姿勢を崩す技法
これがスローモーションだと思いの外、うまくいかない
当然といえば当然、相手に勢いがないのだから
それでも自身の体幹と姿勢が、正中線が根を下ろすバランスが取れていればしっかりとできるはず
なるほど、彼の言う通り動きの確認にも通ずる──

「でも、やっぱり」

「──怖いな、って…思った」

「……それが、一番の不安なのかも」

過去は過去、と割り切るには
少し結果が違っていたら、出来たばかりの友人に、消えない傷を残していたかもしれない
自分自身の過去の傷は、乗り越えられたとしても

「…自分のせいで、誰かが犠牲になったら。それを過去として割り切れるのかな」

「──…あっ」

構えが乱れた
対手の形になっていた手が、英治の手首から外れ、バランスを崩す
合気にも似た技法、繊細な一連の動作は、精神の迷いや揺らぎを雄弁に語る

山本英治 >  
いかん。
思った以上に背負い込んでいる。
構えの乱れからも見て取れる。

人が総意を体現したら独裁者だ。
ゆえに。
人が正しく、間違えず、なんて……できないと思うんだけど。
少なくとも俺はそれを口にする資格を持たない。

親友の命で贖った人生を生きている俺には。

「怖い」

その言葉は、重たい。
犠牲を恐れるのは、全風紀委員に共通する悩みでもある。

「形を変えてもう一度いきましょう」
「次はスネを蹴りにかかるので、対処してみてください」

ゆっくりとした動きで相手の脛へと爪先を向ける。

「……俺、ジャンキーに殺される形で親友を亡くしました」
「今も割り切れてません」

「それでも……怖がって未来に進まなかったら」
「俺は親友を無駄死ににしてしまう」

「……風紀に入った動機もそんなとこです。幻滅しました?」

刮地風。地面を削るように吹く風の名を持つ蹴り。
今は、南から吹く優しい風という感じだな。

伊都波 凛霞 >  
「っ、う、うん…」

もう一度、と言う言葉に姿勢を直す
その前に少しだけ強めに、ぱちんと自身頬を張った
心がどうにもシャンとしないなら、身体に教えるしかない
以外とスポ根な気質なのだった

ゆるやかにこちらに向けられる爪先
対処方法は、いくらか
この場合は、見えていれば次に繋げる選択肢がとれる
半歩半身で前に出て、重心は手前に
肘をしっかり伸ばす形で相手の膝を"抑える"
勢いと力の入った蹴りならば、これで力は分散し…
そのまま入身、同時に肘を相手の鳩尾に向ける、までが1セット
ゆっくりと姿勢を変えながら、形を作ってゆく

「…そんな話、はじめて聞いたよ」

苦笑。その告白は、決して軽いものではないと思う
今も割り切れていないと、堂々と彼は口にしていた

「幻滅どころか、尊敬するよ?」

「…そっか。風紀委員、諦めちゃったら」

「友達に怖い思いをさせちゃっただけ、になっちゃうんだ」

彼の、山本英治の抱えるものとは重さも、何もかも違う
でも…未来に必要な心構えは、きっと同じ形をしている

彼は…割り切れなくても、割り切ったフリをしてでも、強がってでも、前に進んでいるのだろう
言葉としてはほんの少しの応酬
それなのに彼の一言一言は、強く高らかにその生き方と前向きな力を見せつける

「…大きく見える筈だよ」

こんな後輩、世の中探してもそうそういない

「情けない先輩でごめんねぇ…」

生きている年数とか考えれば彼の方が人生の先輩なので、当然といえば当然なのだけど…

山本英治 >  
「はい、初めて話しました」

鳩尾に向けられる肘を左手で受ける。
力の方向性をずらす、ボクシングで言えばパリングの動きだ。

「今の調子で次いきましょう」

拳を真っ直ぐに突き出していく。

「それに、自分が万全を期して全力出してベストを尽くしたので」
「助けられなかったら後悔がないという話でもない……」

「良いことを良いと言ってやっていくしかないんです」

今は俺が元気づける番だから。
ニカッと笑って。

「とんでもない。伊都波先輩のことを情けないと思ったことはないですよ」
「自分の中の過激な正義と折り合いをつける方法を模索してる俺」
「妥協せずに正義を追い求めている先輩」

「どっちも……あっていいと思うんですよね………」

「みんなが同じ方向を向いてる治安維持組織なんて、ヘンですよ」
「それに、前に話したことと同じになってしまいますが」

「悩んでいる先輩も美しいッ」

ニヒヒと笑って拳を伸ばす。ゆっくりと相手の腹部へ。

伊都波 凛霞 >  
自分よりも重いものを背負っているから、だとか
比較してどうのこうの、なんて安っぽい言葉じゃなく
それを抱えたまま生きる道を、飽くまで"進む姿の一つ"として彼は見せてくれている
だからこそ、きっと辛く重い過去を…今、話してくれた
だってそんな話、聞かれでもしなければ自分から話したいなんて、思うわけないんだから

悩みを抱えて、弱さを見せる自分へ
彼は文字通り示してくれたのだ

「割り切れなくても、割り切った体でやるしかない」

「覚悟が沸かなくても、決まった素振りで堂々と──」

良いことを良いことと言って…
気持ちの良い笑顔を浮かべながら、彼は言葉を続けていた
こんな自分を、情けないと思ったことなどない、と

「ホントに?後輩に励まされてる先輩だよ?」

ホントに情けなくないー?なんて、少しだけいつもの調子が、戻ってきた

ゆっくりと伸びる拳を半身に躱し、右手は肘へ、左手は手首へ
勢いを加速させ、相手の体勢を崩す技法
スローモーションだと、力のかけかたがまた難しい
こんな組手も初めてで、やや新鮮だった

「…もう。そーゆーコトは、自分の好きな女の子に言ってあげてよ」

美しい、なんて言われて嬉しくない女の子がいるわけない
彼の無邪気な笑みがなかったら逆に気恥ずかしくなってしまうところだった

山本英治 >  
好きな女の子と言われると、動揺して本当に姿勢を崩してしまう。
ゲホゲホと咳き込んで、少し赤くなった顔で笑う。

「園刃に言ったら絶対笑われる……」

たはーっと苦笑して。
園刃、キザな台詞はあんまりお好みじゃないのかなぁ。
どうなんだろう。
その辺今度、伊都波先輩に相談しよう。

もちろん、その頃には伊都波先輩は元気になっているものとする。
 

それからしばらく組手を続けて。

「それではここまで」

左掌の右拳を当てて一礼。

「この研鑽を奇貨とし、今後一層励んで参ります」

そう言って器用に片目を瞑り。

「今度は俺の悩みを聞いてくださいよ、先輩」
「こう見えて恋の悩みだってあるんですからー」

と言って笑い、ウェイトトレーニング用の機材のある方へ歩いていった。

伊都波 凛霞 >  
「…そっちはそっちで重症のようで」

今度は反対にバランスを崩した山本英治
原因?言うまでもない

「(どっかな。かぎりんもあれはあれで意外と…とかあるかもしれないし…)」

そういえば心配かけたままだろうか、そのうちレイチェルさんも一緒にご飯にでも誘おう

「と、こちらこそ」

中国武術然とした一礼に、こちらは日本武道のような腰を折る一礼を返す
筋力よりもバネ、相手の勢いと理合で組み立てることの多い凛霞にとってはまったく新しい組手だった
これはこれで、確かに色々と気づくこともあるなあと素直に思ってしまう

「もちろん。私だけ悩み聞かれたんじゃ不公平だもんね。うん、いってらっしゃい!」

トレーニングに向かう彼の広い背中に向けて
それは最初に聞いた弱々しい声よりもずっとはっきりとした、凛としたいつもの声

「───よしっ」

また、型稽古から
気分は、随分と晴れた
不調の正体は、蟠り
答えの出ないことをずーっと考えてしまっていたから
やっぱりもつべきものは仲間で、友人で…最高の後輩なんだと
彼の去っていった方向へと視線を向け、小さくありがとうと零すのでした
 

ご案内:「演習施設」から山本英治さんが去りました。
ご案内:「演習施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。