2021/12/04 のログ
ご案内:「演習場【近代魔術実習】」に羽月 柊さんが現れました。
■羽月 柊 >
演習場の一画で、生徒を前に誰かが話している。
「…では、事前に通達した班に分かれてくれ。
初心のA班は、まず魔力制御から点火の魔術。
練習のB班は、簡単な防衛魔術と生活系の複数術の併用。
応用のC班は、攻撃魔術の実運用。」
紫髪に桃眼の男は、低い掠れた声を、少々頑張って張り上げる。
服装はいつもの白衣ではなく、黒の軽装。
ポケットがいくつかついており、
本来転移荒野等でのフィールドワーク用の服だ。
まぁ、戦闘を想定している服であるから、
応用班の相手や不意の事態に備えて、ということで。
選択授業『近代魔術』。
この男、羽月柊は、近代魔術や異世界、竜語に置いて
選択授業で教鞭を取っている。
近代魔術。
それは《大変容》の起きた現代において、
秘匿されたものではない、法則に従った"理屈"で扱う魔術。
それは"技術"であり、
魔力無きものでさえ、扱うことを可能としたモノ。
今こうして生徒の前に立つ羽月柊という男も、
魔力を持っていない元来"無能力"であるが、
魔術を扱い、こうして魔術を教える立場にあった。
最近に異能に覚醒したが、魔力がないのは依然として変わらない。
■羽月 柊 >
三通りの班に生徒を分かれさせる。
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初心のA班。
本当の基礎も基礎、と言った所。
生来の魔力の有無から、それそのものの制御の方法をそれぞれ、
それが出来れば火を付ける初級の魔術に移行する。
単属性の中でも扱いにおいて成果の分かりやすい火を使う。
練習のB班
基礎的な魔力のみの防衛の魔術。
また、複数の属性を使って──、
例えば、植物の種を急成長させる等を行わせたり、
使役した魔術現象を防衛に使ったり等。
応用のC班
此処まで来ると通常の魔術授業となんら変わらない。
実用的な攻撃術の行使における使い方、応用。
演習場の疑似敵を使った相手など。
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一班大体片手人数と言った所。
羽月は基本的にはA班とB班を見回っている。
見れていない所は彼の相棒である小竜二匹が見守り、
何かあれば彼に通達してくれる。
どの班の所属であろうと、羽月は声をかければ応えるだろう。
また、C班であれば実習の相手をする可能性も視野ではある。
もしかすれば、他の教師も手伝いに来てくれているかもしれない。
ご案内:「演習場【近代魔術実習】」に崩志埜 朔月さんが現れました。
■崩志埜 朔月 >
「外はやはり少し冷えますね…
お疲れ様です、羽月先生」
一杯に水を汲んだバケツを両手で何とか運びながら、紫髪の教師に声をかける。
初心の生徒のいる講義では不測の事態はツキモノ。
万が一に備えて、物理的な解決手段は備えておくに限る。
とはいえ、教師二人でかかれば意図的に起こされた災害級の事故でもなければ解決できるとは思うが。
異能の才は微塵も無いが、系統立てられた魔術講義なら話は別。
己も此処の卒業生として、教員名簿に名を連ねる者として。
講義の行く末を見守りにはせ参じた次第だ。
■羽月 柊 >
実習の手伝いにと来た同僚は、あまり話したことの無い相手だった。
崩志埜朔月 カウンセラー
銀糸が揺れ、落ち着きがあるも、
どこか鋭さを感じる緑眼。
以前に学園の他のカウンセラーと"裏の渋谷"で逢ったことはあるが…。
あの時は随分といがみ合い、神経を逆撫でされた。
まぁ、カウンセラーが皆同じであるとは思ってはいないが。
「あぁ、崩志埜先生、貴方もお疲れ様…今回は、ありがとう。
一班3~5人とはいえ、我々以外の手があるのは助かる。」
近くに来た崩志埜にそう話し、バケツは足元にと誘導する。
羽月は対処は魔術でやるようで、
基本腕組みなどはせず、手に装着している
装飾品による魔術が発動できる状態で、生徒を見守る。
事前に手順とやり方を教えてからなので、
順調にいけば、問題なく実習は進むはず、ではある。
「もう冬だからな…。
異世界の生徒の一部は冬眠りを迎えているし、
里帰りやらで多少なり島もヒトが減るか…。」
そう話しながら、指をパチリと鳴らす。
崩志埜の冷えるというのを受け取り、
自分にもかかっている周りの空気を少し暖かくする程度の魔術をそちらへ。
「貴方は、魔術はどれぐらい使えるんだ?」
そうしながら問いかけた。
実力次第で、どこを手伝ってもらうか決まる訳で。
■崩志埜 朔月 > 「人手不足とはいえ、実習をおひとりで見られるのは大変ですしね。
セイル先生、フェリア先生もお疲れ様です」
バケツを置きながら、生徒を見守る二匹の小竜に小さく一礼。
生き物としての種別が違えど、教師である事に変わりはない。
残念ながら竜語を修めていない自分には彼らの語る言葉を解することはできないのだが、
声色と表情で、心は伝わろうというもの。
「ん、これは……ありがとうございます。
もう言っている間に年が変わりますし、
竜は冬越ししないのでしたか?」
ふと自分の周りを包んだ暖気に感謝を述べつつ、小竜に向けて少し目をやり。
生活魔術の類は自分も使えるが、知識と実践は別物。
教える事も使う事もできるが、もっぱら懐にカイロを仕込んでしまう自分にはありがたい気遣いだ。
「この学園で教わる程度の事であれば一通りは使えますよ?
といっても、教科書以上の事を知らないので、
広く浅くと言ったところですね」
言いつつ、気分が悪くなった様子のB班の生徒を見かけては駆け寄り背中をさする。
様子を見る限りは自分の使用可能な魔術量を誤った際に起こる酔いのような物。
無理はせず、と言って座らせて水筒の中のハーブティーを握らせる。
■羽月 柊 >
小竜たちは声を掛けられるとキュイと鳴いて、
交互に崩志埜の方へ飛び寄り、長い尾の先がするりと触れて行った。
留まる暇はない故に、それだけ。
竜語を分かっておらずとも、小動物然とした振舞いで。
「俺の所は選択授業だから、これでも数は少ない方だと聞くがな。」
点火が上手くいかない生徒に、補助具を渡す。
所謂火打石やマッチ棒のような触媒。
魔術行使をイメージをしやすくするためのもの。
自分はそれを言霊や指鳴らしの音で代用している。
教師が人手不足なのは、友人に言われた時も、今もそう変わってはいないのだろう。
なんでも最近、全学年合同授業を初授業でやらされた教師が居ただとか聞いた。
まぁ友人である美術教師のヨキも、
校外の生徒の所まで行っているのはいつもの事であるし、
芥芽あるのように、数多の授業を受け持っているのもいる。
蹲った生徒はどうやら調子に乗って木を育てようとした折、
魔力量を見誤った様子で、育ちかけの緑の葉が少しばかり歪になっていた。
「…うちの竜の中には眠るのも……
──『飛べ、飛べ、硝子の鳥、鎖となりて災禍を撃ち堕とせ!』」
崩志埜の対応を見ながら慣れた対応に内心感心しつつ、
話を続けようとしたのだが、小竜の一匹がキューイと鳴いた途端、
言霊を紡ぎ、彼女が持ってきたバケツから水が鳥の形状を伴って飛び出し、
C班の生徒の大きな火球に巻き付くように纏わりつき、蒸発させる。
そのまま該当生徒の所へ行ってちょっと説教、の後戻って来る。
若い年代はどうにも敷いたレール通りには走ってくれない。
「一通りか……使えると言い切れるのは凄いと思うがな。
俺は、自分用にカスタムせねば使えん。」
■崩志埜 朔月 > 鼻先を掠めるような距離、小さく鳴いた小竜に手を伸ばしかけ、
我に返る。
(――いけません、いけません。
講義中だというのに。でも人なれした猫のような距離感が愛くるしい……)
「数学などの必修科目と比べれば、そうですね。
近代魔術は素養の差こそあれど、誰もが触れる事のできる『技術』ですが、
それゆえに異能との相性で受けられない子達もいますし」
揺れる尾に惑わされた心を自らで窘め、生徒に視線を送る。
近代魔術は物理学と相性がいいと聞く。
重要なのは頭の中で思い浮かべたイメージを再現するために必要な物を知っているかどうか。
万物の代用品と成りえる魔力と言えど、形だけを繕って結果を得られるという物でも無い。
それゆえに、彼は身近な物で『現象』を見せるのだろう。
自分の学生時代に、あぁいった物を補助具として出してくれる教師はいなかった。
常々、教導という物は変わっていくのだろう。
集中が途切れてきた、そんな空気があった。
最初はA班の悩ましい声、それが徐々にB班に広がり、C班の生徒までもが暴走ともいえる失敗を起こす。
「みなさん、魔術の完成や強さというものを焦らないでください。
ですが、挑戦する事を恐れないでください。
失敗をした事をマイナスに捉える事の無いように。
此処は、正しい手段を知るための場所です。
羽月先生や私のいる今、間違えてください。
必要になった時に、間違えない為に」
両手を叩き乾いた音を響かせて注目を集めて、言い聞かせる。
失敗は尾を引く。成功の体験が無い事は焦りを招く。
それらは生徒の中で悪い種となって、未来にて害をなすだろう。
それを、断つのも教師の仕事だ。
「一通り、なんて言っても本当に教科書通りの事です。
学べばできる事ができるだけ。
カスタムできる事の方が凄い事なのですが、こればかりは相性でしょうかね」
ルール通りの事しか、自分にはできないと、落ち着きを取り戻した生徒を見て小さく笑う。
目の前で舞う二匹の教員も冬越しをするのだろうか。
■羽月 柊 >
C班の暴走を治めた後、バケツの水を指鳴らしで使った分補充する。
物理学、錬金術、旧科学。
等価交換やら、質量保存やら。
魔力というエネルギーである程度は無視してはいるが、
"魔法"と違って"魔術"は理屈が無いと実現出来ない。
全く何も無い所から工程を無視して物を生み出すのが魔法だ。
事象を理解し材料を揃え、工程を踏んで成就するのが魔術だ。
だから、事象を理解する欠片を与えれば、工程のいくつかは簡略化出来る。
火種を補助具として与えたのは、そうやって一度先を見せる為。
C班を諫めて戻ってくれば、崩志埜の良く通る声が聞こえた。
なるほど、これがカウンセラーかと感心する。
これまで自分は己の失敗を、己の歩んだ道を話しながら生徒と歩んできた。
成功ばかりではなかった曲がりくねり歪んだ道。
それでも『己の物語を誇れ』と歩んできた。
ある意味それは、誰でも失敗する、
失敗しても構わないという彼女の言葉と同義なのではないかと。
「あぁ、俺の声は通りにくいから助かる。
流石に貴方は、生徒の意識を向ける術を心得ているな。」
自分に注視させ、表情できちんと言葉を伝える大切さを分かっている。
「学んでも実践が難しいというモノも少なからず要る。
俺も学生当時はこの指鳴らしすら満足に出来んかったからな…。
そこに…そうか、異能か。……個人によっては厄介な代物だからな。
俺も異能は少々扱いが悩ましいが、
日常場面で出ないのはある意味救いなのかもしれんな。」
■崩志埜 朔月 > 失敗を知らない事は幸福かもしれない。
それでも、失敗から立ち直る経験がそれに劣るとは思わない。
悩みの無い人生も同様で、誰もがそう生きられるわけでは無いのだから。
「こちらが私の本業ですから。
貴方の話を、悩みを聞く用意が私たちにはありますよ、と
伝えるのが私のお仕事です」
そして此処から先の教導はあなたのお仕事と微笑みをたたえて言う。
失敗し説教を受けた生徒も再挑戦に心を燃やしているだろうか。
しかし、時計を見ればもうじき講義時間も終わりが見えてきた。
実習は座学と比べると体感での時間の経過が早いというのは、
教える側でも変わりないようで。
「私も、そうですよ。
知識として身に付けた物も、どう扱えばいいのかが分からない物が大半です。
それでも、無駄だったとは思いません。
――指、それどうやって鳴らすのですか」
見よう見まねで指を擦るが、すりすりと白い指がただ擦れるだけ。