2022/02/06 のログ
ご案内:「訓練施設」に風間 奈緒さんが現れました。
■風間 奈緒 > 「よーし、頑張るぞ!」
気合十分、訓練所を借りてトコトコと中へ。
セーラー服のその首元で目立つ、白いチョーカーから垂れた木の鎖がカラカラと音を立てる。
それを確かめるように頭を軽く振り、ポケットからメモ帳を取り出す。
「今日は魔術の練習とー、その前に私の異能の実験!イメージ通りならできるはず…」
端末を操作して、ターゲットとなる高さ2mほどの丈夫な円柱を立てる。
念の為ぐいぐいと押して、しっかり固定されてるか確認。
金具ヨーシ!と元気よく指差ししてから、十分離れた場所に立つ。
おっと、誰かが来ても良いように入り口チェック。離れてるし大丈夫そう。
深呼吸をして、首の後ろから垂れている鎖に触れ…意識を集中する。
「"夢現漂流"」
脳裏に浮かべる。
記憶に残る夢の光景。
自分の立つ場所。
鎖は自分を、どこかへ流れてしまわないよう繋いでくれる。
光景に鎖が絡むのを見て安心して夢に浸り、目を閉じる。
眠気。
目を閉じる。
すると後ろでからりと音がして、木の鎖が浮上する。
一緒に水中に居るかのように、奈緒の蒼銀の髪が浮かぶ。
それを認識して、奈緒は"目を覚ます"。
「…おぅ…でき、タ…?」
寝ぼけたように頭がふわふわして、視界が悪い。
あるはずの円柱のことを思い出して…すると、だんだんはっきり見えるようになる。
夢と現実の狭間で目覚めて周囲を認識する、その第一歩だ。
■風間 奈緒 > 「…つながってる…上手くできてる」
身体を動かすと、脳裏にからからと木の鎖が立てる音が聞こえる。
これなら制御がきっと出来る。夢も現実も私と接続されているはずだから。
「あっちみたいに、こう…うん、歩くのも…それっぽい」
夢の中で歩いたり、走ったりした時。いつも水中に居るかのように感じていた。
身体が重く引力が弱まったかのようなあの感覚が今、実際に身体を動かすと返ってくる。
外から見れば、このセーラー服の少女だけが月面に居るかのようにゆっくり動いて見えただろうか。
一歩踏み出すごとに身体が宙に浮き、滑るように前へ進んでいく。
彼女だけが正しく非現実の中に居るように動いている。
からからと鎖の音を聞きながら、この状態を保てていることを確認し…
次は、このまま学んでいる魔術に挑戦する。
円柱から離れた所に降り立ち、直感的に一つの魔術を選び出してつぶやく。
「火よ」
差し出した手のひらに"火種"が集まってゆく。
それは僅かな熱を伴い、徐々に塊となっていく。
コレに形を与えて、好きな方法で放つために言葉を紡ぐ。
「猛れ ファイアボルト」
火が大きく燃えだしたその時、くぐもった炸裂音と共に勢いよく撃ち出された。
火の元素魔術、その最も単純な形。
「……ん?」
…が、そのまま円柱に命中した。しかし、目立った効果が無い。
「これ…効果、薄れてる?なんかちがう…」
なんとなく、以前の感覚で使用することが合わない気がする。
訓練を続ける前に、今の状態を保ったまま少し考え出した…
■風間 奈緒 > 「むー…むーぅ……」
今は夢の影響を受けている。
色々出来るようになっている…と思う。
「でも上手く行かなかった…頭がぼーっとしてるから?」
あまり、そんな予感はしない。何かが合っていない。
「うーん、もっと…"夢っぽく"?」
夢で見た中に、魔法を使うシーンは無かっただろうか。
そう考え、ぼんやりと浮かんだ昔の夢を思い出してみる。
「…火よ、火よ、灯火よ」
両手を差し出し、火種…火の元素を再び集める。
いつもならもっと単純にやる。でも夢の要素も加えるのなら…
「火の精霊さまも、ちからをお貸しください…」
まるで儀式のような言葉も加える。
「この手に業火を…煌々と輝ける炎を」
"空想連結"も、夢の理屈で使うべきだ。
「猛る炎、弓矢となりて爆炎と化せ」
これは、奈緒が夢で使ったことのある魔術、その再現!
轟々と燃え上がりだした炎を左手で持ち、右の手を弓引くようにすると…炎が細く伸びてゆく。
まさしくそれは炎の矢となり、力強く引き絞られた矢で円柱を狙い定めた!
「…爆、裂!バーン・アロー!!」
ヒュ、と風を切る音の直後。円柱に触れた炎の矢は球体の炎と化し、即座に爆発!
円柱の表面に焦げた場所が残るほどの、激しい爆炎を発生させていた。
「……で、でき…出来ちゃった。ホント…ホントにアレみたく…ええ!?」
夢の中のぼうっとした頭で考えた、実のところ適当な詠唱で放った元素魔術がとんでもないことに。
呆然とした後、円柱に近寄って効果の名残を夢中で確かめていた。
■風間 奈緒 > 「えーと、うーんと…あれは、火の精霊と仲良くなって力を貸してもらった…みたいなやつで」
休憩用の椅子に座り、自分が何をしたのか分析していく。
本来"空想連結"は様々な空想理論を考えて、現実の法則に組み込んで歪んだ効果を生み出すもの。
自分の中で納得出来るような理論を思いついて、しっかり合わせないと効果を発揮しないはず…
「…でも、"夢現漂流"の影響下ではむしろ、本来の威力を出すのに向いてる?
夢の中で考えるような理論がむしろ欠けたピースを埋めるように働く…のかな」
異能を使っていない時のファイアボルトを全力で放ってもあんなことにはならない。
かといって、あのバーン・アローに使用した炎の勢いを真似しようとしても相当な溜めが要る。
火の元素を集めた上でさらに"増幅"できた理由が、それこそあの詠唱の内容以外に思いつかない。
「あれか、その…夢の中みたいに精霊の手助けを得たりできる、というのは
この異能の影響中はアテにしていいみたい、かな?」
「私はさっき、鎖で夢と繋がったまま現実にも居たんだから」
「…頭がこんがらがるよぉ…多分"夢寄りの理屈"で使ってる魔術じゃないとダメとかありそう」
自分で自分のことをつくづくヘンテコだと思いながら、一息付くことにした。
今は鎖は垂れ、あの音は脳裏に聞こえてこない。
再び冴えた頭で考えを張り巡らせ始めた…
ご案内:「訓練施設」から風間 奈緒さんが去りました。