2022/02/07 のログ
ご案内:「演習施設・試験会場」に雪城 氷架さんが現れました。
雪城 氷架 >  
「すー…はー、…すー」

会場の隅で壁に深呼吸する少女の姿がひとつ
試験に緊張しているわけではない
いやある意味してるのかも

今日は異能制御の実試験
此処のところ妙に異能の制御というか出力が安定しなかったり、暴発したり…
結局改善が見られないまま、試験の当日を迎えてしまった

雪城 氷架 >  
事前に保健室に相談…はしているので、もしかしたら結果を大目に見てもらえるかもしれないけど…
正直そんなことよりも、前に商店街であったみたいなことをやらかした時が怖い
もちろん試験会場なので結界なんかも含めて万全な準備はしているのだろうけど…

それすらふっとばすようなことになったらどうしよう…という懸念
今はもう懐かしい炎の巨人事件の時とか研究区の一角が大変なことになったらしいし
…まぁ自分はずっと寝てた(気絶してた)から知らないんだけどね…聞いた話

そしてそもそもそんな懸念だけでなく実は単位がギリギリだ
実はも何も、座学の時に大体サボるか寝てるとかしてるせいで当たり前だ
今日移行の筆記試験なんかではスーパー一夜漬けが発動する予定…

「………」

す、とポケットからビニールに入った錠剤を取り出す
異能制御薬『メビウス』……父が研究している薬の試薬である
前までは、これを服用することでとんでもない出力まで異能を制御できていたんだけど…

……ワンチャン、二錠飲んだらいけないだろうか

雪城 氷架 >  
異能の暴走の件を父に相談したところ、とりあえずこの薬で様子を見る…ということだったけど
正直暴走させるのが怖すぎて、あれ以降意識的に異能の力を一切使わないようにしていた
だからこの薬でちゃんと制御できるのかどうかも、わからない

「…でも2つ飲んだら効果は倍だよな…多分」

氷架はあまり頭がよろしくなかった

ご案内:「演習施設・試験会場」に清水千里さんが現れました。
清水千里 >  
何やら錠剤を取り出して真剣そうな顔でじっと眺めている彼女の背後から、声をかける少女がひとり。

「……なにやってるんですか?」

二つ効果が飲んだら効果が倍だよな、などと現代薬学に喧嘩を売る発言をする、
華奢で儚げな、いかにも魔術師か異能者然とした彼女を怪訝に見ながら。

「ドーピング……?」

雪城 氷架 >  
「うわっ!?」

突然背後から声をかけられた氷架は驚いて、掌の上に乗せていた小さなビニールの袋を落としてしまう
中身は、いくつかの白い錠剤である

慌てて屈み、それを拾ってそちらへと視線を向ける
年の頃は自分よりもそこそこ上か、そんあ女性の怪訝な視線を受けて

「ど、ドーピングじゃないよ。
 これ、あれ…異能の負担減らすヤツ」

あー、びっくりした。と呼吸を落ち着ける
心臓がどきどきしてた

清水千里 >  
「ああ、安全装置みたいなものですか」

強力な異能を持つ異能者の中には自身の能力の暴走を防ぐため、
外部の手段を使って力を抑制する者もいる。

力の制御に薬を頼るのは教育上いかがなモノかとは思うが、
人間の生命を守る以上致し方ない問題だ。

「受験者の方ですか?
 異能、ということは……」

清水もまた、実戦魔術の試験のためにここを訪れた人間の一人だ。
彼女の使う魔術は”一風変わっている”と評価され、アルファの評定を与えられた。

「……大丈夫ですか?」

うしろから声を掛けた自分が悪いとはいえ、少し緊張しすぎではないだろうか。
暴走事故でも起こさないか心配だ。

雪城 氷架 >  
「そ。私の場合異能の負荷が大きくてさ」

直近に起こっている異能の異常な暴発はまた違う理由なのだけど
どちらにしろ不安を払拭するためのセーフティであることには違いない
そして、父の研究成果であるこの薬が現状未認可であることも手伝って、隠すようにしてポケットに仕舞い込む
何かあって、父の研究に迷惑をかけるわけにもいかない

「そうだよ。試験。
 単位ギリギリだし、なんとか通らないと」

壁を背にしてふぅ…と大きくため息を吐く

「大丈夫…かなぁ?わかんない。
 …少なくともこの試験通らないと単位は大丈夫じゃないな…」

そう言って長い睫毛から覗く蒼い瞳をバツが悪そうに背けるのでした

清水千里 >  
「……不躾なお願いをして申し訳ありませんが、その《異能》、少し見せていただくわけにはいきませんか?」

ここで会ったのも何かの縁。驚かせてしまったのも悪いし、落単してしまっては後味が悪い。
何か力になれることがあるかもしれない、と彼女を説得する。

「自慢じゃありませんが、こういう方面の知識には多少自信があるんです。
 何かヒントを一緒に考えられるかもしれません」

と、自分から顔をそむける少女の目を真っ直ぐに見つめながら。
冗談を言っているわけではなさそうだとわかる

雪城 氷架 >  
「え?いや、それは──」

見せる、つまり異能の力を解放し発動させること
以前暴走させてから、まったく発動させていなかった不安こそあるが…
幸いここは演習施設…対応のできる設備の中ではある
何より試験でぶっつけ本番、よりはいいのかもしれないと

「じゃあ、いいけど…危ないかもしれないから少し離れてくれよ…?」

妙に自信ありげな女性を少し心配しつつ、じゃあ、と少しだけ距離をとって

──ちゃんと、一からお浚いだ。まずは力を解放するイメージ、手を開いて掌を上に向ける
そして位置の確認、視線を掌の上へと注ぐ、三次元的に位置をしっかり確認するのに注視は有効だ
その後は集中、力を込めるのと同じ要領…後は起動の合図、自分が分かりやすく、トリガーにしやすい言葉を口にすることで
"自身が異能の力を発動させる"と脳にしっかり認識させて──

「…Zündung」

小さくそう呟くと、少女の掌の上に人頭大の炎が発現する
急激な温度の変化が少女を中心に風を起こし、制服の裾と少女の長い髮を吹き流す
煌々と周囲を照らすその炎は白色に近く、近寄らずともその高温を物語っていた

清水千里 >  
「……これは、なんというか」

能力に対する称賛というより、どこか引きぎみの否定的反応を持ったその響きが雪城の耳に届くだろう。

「……あなた、ひょっとしてこれを使い続けると、脳か心臓に異常が出るのじゃありませんか?」

清水は使用された魔術論理を”視て”解析する。

「思うに――これは、風呂を沸かすのに産業用タービンを動かしているようなものですよ。
 あまりに負担が大きすぎる」

形の崩れない高温の白い炎球は、その異能が制御されていることを示す。
――いや、『制御されすぎている』ように見えた。

雪城 氷架 >  
───ちゃんと出来た。が

こんなに高温の炎を生み出すつもりはなかった
このままにしておくとヤバい、直感的に感じ、念じると炎は掻き消え…とりあえず安堵
消えなかったらどうしようかと内心不安だった

「…ん、まぁ……昔は鼻血が出たりもしたけど…」

今は、父の薬のおかげでそこまででもない
少女の華奢で弱い身体には負担の大きすぎる異能の力
女性が口にする言葉は、とても的を経ていた

「実は昔にちょっと色々あって、
 それ以来こんな感じになっちゃってるんだ」

昔はこんなに高温の炎は簡単には生み出せなかった
普通に考えるなら異能の段階(ステージ)が先に進んだと考えるのが妥当なのだろう、が
薬のおかげでそれを制御できている今、首を傾げている少女にはその事実が理解できていないのだった

清水千里 >  
「――昔に比べて、意図せずに能力が変化」

変わったもの、変わらぬもの。
あるいは。

「ここ最近で、異能物理学についての知識を学ばれませんでしたか?」

変化したものがあるとしたら、それは彼女自身の頭の中だ。
ある知識が到達した瞬間に、自然というものは激しい全く異なった物理的運動をはじめ、元の状態に戻らなくなる。

「あなたの異能制御は完璧だ――いえ、”完璧すぎる”んです。
 貴方の異能は空間の全粒子運動をコントロールしようとしている。まるで、《マクスウェルの悪魔》のように。
 そんな能力を常時発動していては、人間の精神では限界が来るのも当然です」

普通の異能者であれば、いかに魔力が多くとも、それを実体化させるための”導管の太さ”に限界があるから、このような完璧な火球を作ることは難しい。
しかし思うに、目の前の少女はその導管の太さが、そして魔力量そのものが、常人をはるかに上回っているのである。
もし彼女がその導管に『目いっぱい圧力を加える』感覚を、昔と同じように行っていたとしたら。
おそらく異能物理学の知識は、彼女に精密なイメージを与えるだろう。
人間の魔力の限界に到達するまで、その力を無尽蔵に吐き出し続けるのではないか。

雪城 氷架 >  
「異能物理学は、なんか制御の知識に必要だってんで一年の頃からずっと必修にされてるよ」

苦手なんだけどさ、と頬を掻く
座学は少女の苦手とするところ。苦手なりにギリギリ単位を取り続けてきた
そして彼女の推察を大人しく聞いているかと思えば、半分くらい理解できていない

「完璧だったら、暴発しないんじゃ…? ん…?」

首を右に傾げ、左に傾げ、よくわかっていなさおうな顔
氷架は頭があまりよくなかった

けれど、とりあえず負荷が凄いのだという理由というか、それ自体は伝わった
そういう理由で鼻血が出たり動悸が起こったりしてたのかと思うと、なるほどと納得する

「…負担に身体を慣らそうと思って最近までずっと常時発動してたんだけど、
 もしかして異能がおかしくなったのそれのせい…?」

清水千里 >  
清水は溜息をついた。

「あるいは、そのせいかもしれません」

と、清水は自身の持つ魔術に関する知識を丁寧に話し始めた。

「――魔術というものには、大きく二つの側面があります。
 理論を理解してしまえば誰でも使えるという技術としての側面と、
 人間の能力を超えた超常的存在としての側面です」

「知識を追求し続ければ、それだけ魔術としての完成度は高くなります。それは魔法が技術だからです。
 一方でそれが高度なものになればなるほど、人間が扱うのは難しくなっていく。人間は生き物ですから、理論上できるからといって実際にそれができるわけではありません」

「魔術としての完璧さを追求すればするほど、必要な精神力も、身体への負担も大きくなっていくんです。
 にもかかわらずあなたが今までこんな高度な魔術が行使できたのは、貴女に魔術的才能があるからでしょう。
 貴方が”努力”を続ければ続けるほど、貴女はより出力を高めた行使ができるようになる――F1カーのエンジンが積まれたようなものです。
 しかし何事にも限界がある。エンジンの強化に燃料タンクが追い付いていない。だから異常なほどに体力と精神力を消耗してしまう……」

雪城 氷架 >  
「……魔術?」

大きく首を傾げていた

「あんまりソッチ方面は詳しくないんだけど、
 異能の力と魔術って似てるのか?なんか話聞いてるだけだとそんな気もしてくるけど…」

一種の超能力のようなものだと認識していた、が
言い換えれば出力される結果を見れば同じもの
ちゃんとした知識を持っていればそういう見方もできるのだろうか…

「高度って言っても、出ろ~、みたく念じるだけだぞ。アレ」

まったくそんなイメージも何もなかったのでそれはそれで意外である
魔術的な素養があるなんて言われたこともなかったし、完全に縁のないものだと思っていた

清水千里 >  
――ああ、しまった、という顔をしながら。
魔術と異能を人類文明は分けて考えているということを、すっかり失念していた。

「異能と魔術は……本質的には……同じものなのですよ、ともかく」

コホン、と息をついて。

「ちょっと試していただきたいのですがね――」

と、清水は少しの”コツ”について話す。
それは簡単に言えば、異能を使おうとして使おうとするのではなく、
火球の維持に最低限必要な環境的条件のみに限定して粒子の移動を行わせようとする方法だ。

「もしかしたら、これで少し負担が軽減できるかもしれません。
 一度坂から転げたおむすびには、もう力を加えなくともひとりでに落ちていくでしょう。
 自然の法則に自分の力を委ねてみるんです」

あえて『自分の手からその制御を手放すことで異能を制御する』という逆説的な提案に、雪城が応じるかどうかは彼女次第だ。

雪城 氷架 >  
「へぇー、そんなの、初めて聞いたよ」

でも面白いな、と小さく笑う
そういう見方は今まで聞いてこともなかったから

「試す?いいけど…」

まだ試験までは時間があるし
もしかしたらいい感じに試験の役に立つかもしれない
それじゃまた少し離れといて、と前置きして先程と同じ様に──今度は少しだけ力を抑えるつもりで
再び、少女の掌の上で揺らめく白炎が灯った
ゆらゆらと揺れ、発火源がないにも関わらずその形を崩さない炎を見つめながら

「えー…と…制御をやめればいいのか…な?」

火を消そう、異能の力を停止させようとするのではなく
灯った焔はそのままに…制御を手放す、つまり自分の意識から外す?
最低限ってどれくらい?あれこれ考えながらやってみると

「熱っつ!!」

ぼわっ、という音と共に炎は掻き消えてしまった
燃焼するものが核にないため炎は霧散、そして自身の周囲の気温を一定に保つ力が消えて掌が凄く熱かった

「………」

「最低限って難しくね?」

手をぷらぷらしながら涙目になっていた

清水千里 >  
「まあ……」と、苦笑いする。

「燃焼に必要な粒子を核に集め続けることが、おそらくその異能の肝なのではないでしょうか。
 こればかりは練習し続けるしかないと思います。
 ――試験まで時間はまだありますよね? 制御訓練、手伝いますよ!」

反作用の法則を知らなくとも、空を跳ぶために人は地を蹴る。
ナビエ=ストークス方程式が理解できなくとも、鳥は成長すれば空を飛ぶ。

「結局のところ、最後は慣れの部分も大きいんです」

世界の法則そのものを理解できなくとも、
人間はアイデアを着想し、話し合い、文字に残し伝播する。
そうしてできる行動は増える。それが知的生命に与えられた特権だ。
思考は示され、回され、燃やされる。暗黒の世界にさえ一筋の光が差し込めるのだ。

雪城 氷架 >  
小さな氷を中空に生み出して、掌でキャッチ、ひんやり
氷は異能の制御を解除しても溶け始めるだけで消えはしない、当たり前だけど

「いや、折角だけどほどほどにしとくよ。
 あんまり異能の力使うと、やっぱりしんどくてさ」

ふぅ、と一息
以前程ではないにしろ、少しだけ心拍数が上がっているように思える

「でも何かつかめた感じはする。ありがとな。えー、っと…」

名前を呼ぼうとして言葉に詰まる
そういえば名前もまだ聞いていなかった

「私雪城氷架。あんたは?」

年上だよな、多分
なんて思いつつもタメ口

清水千里 >  
「そうですか……私は、清水千里。一応、図書委員をやってます」

と、彼女に握手を求める。

「お役にあまり立てなかったかもしれませんね、ごめんなさい。
 試験の合格、お祈りしておきます」

と、彼女に底なしの明るい微笑を浮かべながら。

雪城 氷架 >  
「ん。千里な」

握手握手
氷持ってないほうの手でぎゅっとね

「そんなことないよ。
 名前も知らない見ず知らずの他人に真剣に色々言ってくれるんだから。
 千里はいいヤツなんだろうな」

そんな素直な感想を述べて、手を離す
実際、自分だったらわざわざ知らないヤツに絡みにいったりしない
結果が芳しくなくたってそうやって話しかけられるだけで嬉しいヤツもいるはずだ
だから、そこを自然に踏み越えられる彼女は、優しい人間なんだろう

「おう、頑張る。どーしてもダメそうだったらレポートでどうにかする」

そう言ってほんの少し悪戯な笑みを返す

さてさて、そんな真熊がありつつも試験は無事に行われ
氷架の成績といえば…前半やや危なっかしいところはありつつ、事前に色々講じていたおかげで後半は安定
ギリギリのギリで単位取得と相成ったのでした──

ご案内:「演習施設・試験会場」から雪城 氷架さんが去りました。
清水千里 >  
「ありがとう、雪城さん。また会いましょうね」

他人への善意と傲慢は紙一重だ。
だが清水はどんな時でも傲慢を畏れて善意を棄てるなどということはしない。
自分の”善意”を常に疑いながら、それでも勇気をもって踏み込まなければならない。
そう、彼女は信じているからだ。

ご案内:「演習施設・試験会場」から清水千里さんが去りました。