2022/03/18 のログ
ご案内:「訓練施設」に八坂 良彦さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にシャルトリーズ・ユニヴェルさんが現れました。
八坂 良彦 > 訓練施設の一角、青いジャージ姿で少し離れた場所にある、いきなり飛び出す的に対し風の塊を打ち出している小柄な少年が一人。
風の塊は目に見えないが、的の外側に当たり、そして少し揺らす程度の威力しか出ていない様子。
的が飛び出すタイミングは一定ではなく、それを待つ間は、自分の近くに立っているターゲットに浮かぶ数字に合わせて、その順番にターゲットに攻撃を打ち込んでいく。

遠距離にいる対象を含む囲まれた状況に対応する訓練と思わしきそれを一通り終わらせ、一息つく。
近くに置いていたバックからタオルを取り出して軽く汗をぬぐい、タオルを首へかけると、端末を取り出す。
端末には今の訓練に対する点数が出ているのだが、近接対応に関しては及第点、遠距離対応はかなり点数が低い。

「あぁ、やっぱちゃんと当たって無いのと、威力も微妙なのか」

普段から近づいて殴るがほとんどで、対遠距離に使う異能のイメージがきちんとできていないからなのか、遠距離攻撃が苦手である。
先日のテストでもそれは如実に表れていて、異能による遠距離攻撃の結果は低めであった。
制御や出力はそれなりにいい成績だった分、余計に低さが目立つ感じである。

なので、それに関して相談を受けてくれそうな先生に声を掛けて。
先に待ち合わせ場所である此処に来て、最新の結果を見て貰おうと一通りのプログラムを終えた所。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「さてさて、授業以外で訓練施設なんて
 久しぶりに来ましたねぇ~」

きょろきょろと辺りを見回しながら、
訓練施設の一角へと入ってきたのは、
桃色ツインテールの教師、シャルトリーズである。

手には普段通りに煙管を持っているが、
そこから煙は立っていなかった。

今日は地に足をつけて、とてとてと。
狭い一歩を緩やかに繰り返しながら
この訓練施設を訪れているらしい。

「さて~?」

くいっと右手を目の上に翳すシャル。
その視線の向こう側に、自らを呼び出した男子生徒――
八坂 良彦の姿を確認。

約束の時間にはもう少しありそうなところだが、
どうやら先に待ち合わせ場所に来ているらしい。

――真面目ですねぇ~……。

ふむー、と緩い顔を浮かべて頷きながら
シャルは近づいていって声をかける。

「どうもどうも~。
 今日も真面目に頑張っていて、偉いですねぇ~?」

八坂 良彦 > 「あ、シャルトリューズ先生。
今日はお願い聞いてもらって、ありがとうございます」

声を掛けられて携帯端末から顔をあげ、たたっと近づくと、一礼する。
いま体を動かしたばかりだからか、少し汗をかいてはいるが体力は有り余っている方なので、疲れた様子は無く。

「それで、お願いしたいのは異能での遠距離攻撃についての相談でして。
時間があれば身体強化の方も細かく聞きたいですけど」

そういいながら、今の訓練結果が出ている端末を先生へ差し出す。
遠距離含む、対包囲戦のシチュエーションで、近接距離への対応点は高く。
半面遠距離対応はかなり低く点数が出ている。

「風と空気を操作できる異能だから、もっと遠距離も行ける筈っていわれてるんですけど。
見ての通り、遠距離はどうにも苦手で」

首にかけたタオルを手に頬をかきながら、そう言って苦笑する。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「あ~、大丈夫ですよ~。今日は予定がなかったもので~。
 
 と、そうだ。
 前々からお伝えしようと思ってはいたんですけど~……
 私はシャルト『リー』ズですよ~。
 呼び辛かったら、『シャル』先生でも大丈夫なので~」

穏やかな表情のまま、そう口にする。
ゆるゆるしたその顔に、特に気分を害している様子はない。
誤った数式の間違った点をさっと教えるような口調だった。

「異能の遠距離攻撃、ですかぁ~」

ふうむ~、と携帯端末を覗き込めば、
空いた手を腰にやって思案顔。

「分かっていたことではありますが、
 やはり近距離への対応力は眼を見張るものがありますね。
 そして遠距離は……まだまだ伸びしろがありそうです~」

笑顔でそう伝えた後、顎に手をやるシャル。

「しかし、そうですね……まず初めにお聞きしましょう。
 何故、遠距離攻撃への対応を行おうと思ったのですか~?

 見る限り、今の八坂さんは
 近距離の対応力に特化しているかと思います~。
 このまま長所も活かすのもアリかと思いますけどね~?」

ぴん、と指を立てるシャル。
この質問への回答次第で、
この後に伝える内容も随分と変わってくる。

八坂 良彦 > 「そうなんですか、それでも助かります。
うわ、すいません…それじゃ、今度からシャル先生って、呼ばせて貰います」

予定が都の言葉には安堵したような表情で一息ついて。
名前に関して言われると、思い切りやら貸したという顔で、謝りながら深く頭を下げる。
顔を上げると、頭をかきながら、呼び方を改めると宣言し。

「近距離に関しては、小さいころから自分の家に伝わる武術の修行してたお陰もあると思います」

打、投、極が含まれる、合気系武術を修めているので、その練度は高めで。

「あぁ、そうですね…まず、俺は風紀委員なわけでして、何か事件やもめ事があった場合は鎮圧行動に入る事もあります。
その際基本は近接で良いと思うんですが、近づけない相手や状況があった時に、それに対応できる人員がいてくれれば、その相手に任せれば良いと思ってます。
ただ一人の時にそういった状況に出会った場合に、何もできないのは問題かな、と」

応援を呼んで誰か来てくれるまで時間を稼げる程度には、手札を持っていた方がいいのかな、と色々あって考えて、と。

「それで、折角色々できる可能性がある異能なんだし、と思い立ったんです」

汎用性は高いから、使用者の経験や想像力次第でかなり変わるという指摘も、テストの後受けたんですよね、と苦笑。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「気にしないで大丈夫ですよ~」

うむうむー、と腕を組みながらゆるっとした顔のシャル。
このドワーフ、身長のことに触れられなければ
寛容である。

「それこそ、八坂さんが一生懸命頑張ってきた分野!
 ということですね~。それは誇るべきことですよ~」

そんな話を聞きながら、ふーむと返す。
武術というのは、なかなかに懐かしい響き。
昔、冒険者だった頃に武術家と共闘をしたこともあったな、
なんてさっと回想をしつつ。
すぐに目の前に意識を戻す。

「一人で状況を打破する為の幅広い対応力が
 欲しいということですね。
 
 そうですね~、緊急事態の際の為に
 手札を増やそうとするのは良いことですが……まず!
 
 念の為に伝えておきますが~……
 一人で何でもできる人間は居ないのですから、
 頼れる時は遠慮なく周りに頼ってくださいね~」

風紀委員には頑張り屋が多い。本当に、多い。
一人で頑張ろうとして苦しむ生徒達を
沢山見てきたからこそ。
シャルはまず、教師としてその忠告をするのだった。
心構えなしに下手に対応力を身につければ、仇となることもある。
余計なお世話かもしれないが、彼らの怪我の面倒を見ることも多い
シャルとしては、本題に入る前に釘を差しておきたい内容だったのだ。

「さて、それでは本題に入りましょう~。
 まぁ~、私の専門は基礎魔術ですから、異能に関しては
 門外漢であることはお含みおきいただきたいのですが~。

 先のトレーニング、苦手分野の克服をする為に行って
 いるのだとすれば、メニューの調整が必要かもですね。
 
 まずは、静止した的に当てる所から始めて、
 少しずつ的を動かして……
 最終的には、
 不規則なパターンで動く的を狙っていく……
 といったように、段階を踏んでやると良いですよ~。
 何にしたって、焦りは禁物です~」

小さな人差し指をくいくい、と左右に振って
煙管を口元に近づけるシャル。

「トレーニング選びはとっても重要なんですよ。
 せっかくですから、
 今から基礎トレやってみましょうかね~?」

八坂 良彦 > 「はい、シャル先生。
そう言われると照れる所もあるんですが、家に伝わってた武術ですし、性に合ってたのもあると思うんですよね」

大丈夫と言われれば、素直に頷き。
褒められると、すこし照れたのか頬をかく。
実際に、流派を伝えている直系が自分しかいないのもあって、そちらは多めに修行もしており。

「そうなりますね、何かの時に自分以外を守る為にも。
自分だけなら、逃げるなりの手はあるので。

はい、何でもは出来ないのは重々承知のうえで。
威張れることでも無いですけど、知識系なんかは本気で出来る人に投げっぱなしですし。
ただ、遠距離対応は最低限レベルなら、異能の相性的にも自分でもできる部分かなと」

知識系は少なくとも今の段階でちょっとやそっと勉強してもどうにかなるレベルではない。
これにかんしては補習を頼んでいる先生も知っている筈と思いながら、苦笑しつつ。
風や空気という現象を扱うからこそ、汎用性は高く、対応力は使い手次第。
最低限牽制できるレベルまでは身に着けたいのが本音。

「あぁ…普段は遠距離無しでの対応だったんで、其処に遠距離加えたんですけど。
たしかに、ちゃんとできないうちから応用は難しい、と。

んー、焦ってたのはあるかもしれませんね、事件は色々ありますし。
対応するための人員もそう多くない訳ですから」

言われてみれば当たり前で、最初から難しい事をしても結果は付いてこない。
慣れている訓練に少し手を加えても、今度は本来の持ち味を崩す可能性もあった訳で。

「そうですね、基礎からやってみます。
おねがいできますか、シャル先生」

相談して正解だったと思いつつ、改めて先生へ指導を願い出る。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「コツコツ努力は、
 武術家の八坂さんの得意分野でしょうしね~」

返答を聞いてにこにこしつつ、煙管を口に咥える。
紫煙を吐けば、一言。

「《クリエイト・オヴ・デコイ》」

瞬間。
八坂から見て10m程先に、シャルトリーズの幻影が現れる。
その幻影は、シャルトリーズ本体と同じ動きをしている。

本体のシャルが掌を前に出せば、そこから赤い光が
周囲に放たれる。

「ひとまず――こんな所からでしょうか~。
 私は動きませんので~、狙いやすいかと思います~」

そんなことを口にしつつ、的の光を出す為に開いた手は
そのままに、空いた手で煙管を振っている。

「まずは確実に一撃を放つことです~。
 落ち着いて、意識を一点に集中させてください~。
 それはきっと、射撃も魔術も異能も変わらないかと
 思いますし~」

光を放つ手をにぎにぎ、と動かしながら
笑顔のシャル。

八坂 良彦 > 「コツコツという意味では、確かにずっと続けてますね。
トレーニングも武術の修行も、一日さぼると取り戻すのに三日かかるとか言われますし」

以前は授業中もトレーニングなどしてたが、現在はそこは改善されてきており。

「的はシャル先生ですか…。
これって、多分ですけど本来は囮作る魔法、ですか?」

幻影を見て、その完成度と動きを見て。
ある程度以上の知能がない相手なら簡単に騙せそうだな、と感じつつ。

隣の先生が手を挙げ、それに追随するように幻影の先生が手を上げるのを見て。
同じ動きするのを確認し、感心したように、何度か二人の先生を見直して。

「それじゃ、行きますね」

隣から聞こえる先生の声に、軽く頷くと。
手を前に差し出して、集中していく。

「すぅ…はぁ…。
意識を一点に………『風弾』。
これを…んっ」

掌に風が集まり塊りになっていく、視覚的には見えないが風の流れで判る程度には集まったそれを。
すこし貯めてから、風に乗せて放つ。
早さ威力より精度を重視したのか、人が駆けるより少し早い程度の速度で飛んだ風の塊は、幻影の先生の手にある光へ向かって飛び。
当たるとぶわっと風が吹き、パシンという音を立てて弾ける。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「別の方向性の努力かもしれませんが~、
 そういった経験も必ずこの異能のトレーニングにも
 役立つ筈ですよ~」

ぐっ、と煙管を持った拳を握る仕草を見せるシャル。
そうして続く彼の言葉には感心した様子で。

「そうそう、本来は囮用の技ですね~。
 冒険者だった頃によ~く使っていたものです~」

さて、先までにこにことしていたシャルであったが、
青年が発した合図の一言を受けて、真剣な表情となる。

放たれる異能の風。
正確に放たれたそれは、シャルの掌へとに向かう。

駆ける風、一閃。
威力を抑えた分、安定性を備えたその一撃はしっかりと
光の中心へと届き――
硝子の割れたような音がしたかと思えば、的は砕け散る。

「お見事です~!
 いや~、まさか一撃で的に当ててしまうとは。
 これは素敵な才能ですね」

ぱちぱち、と拍手をするシャル。
同時にデコイも拍手。多めに祝福を受けている気分になる
かもしれない。

「落ち着いて撃てば、この通りきちんと狙うことができる。
 なら、少しずつ段階を踏んでいけばきっと、
 先のような高度なトレーニングでも成果を出すことが
 できる筈ですよ~」

八坂 良彦 > 「なるほど、色々してても無駄にはならないって事ですね」

これまでの事も役立つと言われれば、嬉しそうに微笑む。

「そういえば、シャル先生は冒険者してたって前言ってましたね。
よく使ってたという事は、実戦経験もかなり多そうですね」

そうして、放った風の塊がはじけるのを見届け、先生の方を見やる。
そして、送られるお褒めの言葉と、幻影と合わせての拍手に、頭をかきながら照れたように。

「先生の言うとおり、落ち着いて、一点に集中したら、出来た感じです。
普段なら、もっとうまく風を集められなかったりするんですけど」

ぐ、ぱっと手を握ったり開いたりしながら、隣にいる先生に微笑みかける。

「そうですね、実際にできると少し安心します。
訓練で少しずつレベル上げてって、最終的には先生来る前にやってたので及第点とれれば。
実戦である程度使える、そんな感じですかね」

実戦で発揮できる実力と訓練で発揮できる実力を考えると、実戦では訓練時の数割と聞いたし、と苦笑。

「勉強と同じで、まずやっぱり基礎大事ですね」

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「そりゃもう、生きる為に必死に戦ってましたからね~。
 今はもう泥臭い生活からは足を洗ってますけど~、
 たま~に懐かしくなることもありますね~」

今の生活には概ね満足している。
落ち着いた生活というのも悪くはない。
シャルは常々そう思っていた。

「まぁ、先のトレーニングにも慣れたら、
 遠距離攻撃を軸にした模擬戦を行うのも
 ありかもしれませんね~。

 風紀委員内でも、
 そういった試みはやっているかとは思いますが~。
 私でも、呼ばれれば行きますよ~。
 時間があれば、ですけど~」

ほわほわとした笑みを浮かべつつ、口元から煙を
吹いている。

「……さて、今の距離での感覚を掴んだら、
 少しずつ距離を離していきましょ~」

今度はもう少し先の方に幻影が現れる。

そうして、トレーニングは続いていった――

八坂 良彦 > 「生きる為ですか、それはそれで大変な感じですね。
今の先生を見ていると、あまり想像つきませんけど」

冒険者の頃の先生と言われても中々想像できずに首を傾げる。

「そうですね、一番の目的は距離詰められない相手への対処だし。
遠距離主体の模擬戦はありですね。

そういえば、委員会の連絡にもあったような、今度顔出してみます。
シャル先生には勉強も見て貰って、お世話になりっぱなしですね」

すまなさそうな感じと、先生と一緒に居られるというのが嬉しいのか、色々な感情が混ざった表情で頷いて。

「はい、最初は落ち着いて、一点集中で、形と狙いに集中してみます。
改めてよろしくお願いします、シャル先生」

そうして、少しずつ距離を離しては、一息置いて『風弾』を放つという練習を繰り返す。
お互いの時間が許す限り、トレーニングを続ける………何時しか空には夜の帳が下りたのに、気づくまで…。

ご案内:「訓練施設」からシャルトリーズ・ユニヴェルさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から八坂 良彦さんが去りました。