2022/06/10 のログ
ご案内:「訓練施設」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」にフィーナさんが現れました。
黛 薫 >  
演習場の一角、魔術訓練スペースにて。
向かい合うのは車椅子の少女と盲目の少女。

「実戦、っつーほどガチなヤツじゃねーけぉ。
 あーしも脛に傷があるってか、落第街出るとき
 ごたごたしてたからさ。今の段階でどんくらぃ
 身ぃ守れるか知っときたぃワケなのよな」

机上の理論だけではなく、現実的な運用を行なって
初めて見える課題もある。今日はようやく一区切り
ついた研究の成果発表と初の実践運用を兼ねた試行。

対面相手をフィーナに頼んだのは魔術師にとって
考え得る限り最悪の相手、つまり格上の魔術師に
あたるから。魔術的な面での助言も求められるし
これ以上の適任はいないだろう。

「とりゃえず最初はバイアスを排除したぃから
 手の内ヒミツのまま立ち会って、終わったら
 種明かししつつアドバイスもらぃたぃ」

フィーナ > 「ふむふむ、成程」
考え込むような仕草を取る。
学園の制服ではなくドレス姿ではあるものの…その腕には『風紀』と書かれた腕章が取り付けられている。

「それなら、全力で来てください。負傷してもある程度はこちらで治療は可能ですから。」

杖を構えるでもなく、抱えるように持っている。

視覚的に異常に思えるのはその姿勢だ。
安楽椅子に座るように、宙に浮いている。

魔術的に異常に思えるのは、張り巡らされた魔力の『波』だ。
一定の間隔でフィーナから発せられる魔力が、波のように演習場を包んでいる。

「開始の合図は…まぁ、無しで良いでしょう。戦いは始まる前から始まっていますから」

黛 薫 >  
「ん、ありがと。つってもあーし側は時間稼ぎか
 防戦想定。相手がフィーナじゃなくても撃退は
 魔力的にも練度的にも自信ねーかんな」

車椅子は邪魔にならないところに移動させる。
松葉杖を使わなかったのは試験運用に夢中になって
魔力を使い切ると帰れなくなるかもしれないから。

(つっても、戦力に差があるなんてレベルじゃねーな)

演習場全域に渡る魔力の波。感知はもちろんのこと
攻撃や捕縛に転用されれば即座に詰みが確定する。
とはいえ、今回は演習なので。

「んじゃ、胸借りさせてもらぃますよ、っと」

フィーナの魔力が『波』なら黛薫のそれは『水面』。
まず自身の足元を中心に、円状の魔力領域を確保。 ▼

黛 薫 >  
黛薫は爪先だけ地面に付けて滑るように移動する。

挙動的には浮遊の魔術が近しいか。体重全て魔力で
支える必要がある分消費は増えるが、制御は優しい。
荒事を前に精密な身体操作は難しいとの判断だろう。

「で、まずはこう」

円を描くようにフィーナとの距離を保ちつつ
魔法陣を展開。アンカー状の魔力弾を打ち込む。

特筆すべきは展開の早さ。電子機器の機能を模倣、
拡張した術式は『記述』ではなく『呼び出し』の
工程を取り、予備動作が殆どない。

ただし『描く』という行為、小規模の儀式行動を
省略しているお陰で出力は通常の魔術に大きく劣る。
そのため魔力弾は用途を絞り、捕縛と魔術妨害に
特化しているようだ。

フィーナ > 「ほう」
魔力の発露から展開までが早い。普通の魔術師では対応に遅れを取り、魔術のみに依存する魔術師であれば被弾は免れ得ないだろう。

「奇襲策としては良い性能をしてますね」

そんなことを言いながら、難なくスクロールを用いた魔力防壁でアンカーを止める。

電子機器模倣魔術と違い、『呼び出し』という工程すら省いた古くからある簡易魔術だ。

「発現に関わる魔力消費量、そしてほんの僅かの隙を鑑みなければ何度でも使えるスクロールというわけですか」

フィーナは自身の持つ知識から相手がしていることを見抜く。
スクロールは1回限りの奥の手だが、薫がやっていることは術式の『複製』に近い。そのための魔力や複製の隙を考えなければスクロールの上位互換と言ってもいいだろう。

「では、次はこちらから」
カツン、と杖で地面を叩き、魔力を『発振』する。
演習場を魔力の波が流れ…その波紋が、当たればすぐ崩れ落ちる魔法の矢の魔法陣を作り上げる。

薫の、背後に。

黛 薫 >  
「そーそー、使い回しが効くのが利点なワケ。
 つっても魔法陣1つで完結しなぃ術式、つまり
 魔法書の数ページ使って記述するよーな魔術は
 使ぇねーけぉ」

特にフィーナほどの魔力量があれば消費の微増は
ほぼ誤差。逆に黛薫くらいだと繰り返しの使用は
じわじわ響いてくる。

また、特筆すべき点として今日の黛薫は電脳魔術の
『本体』となる魔法書を携帯していない。小型化に
成功したか、何らかの手段で本体を持ち運ばずに
使えるようになったか。

そして次はフィーナの1手。魔力の流れを読んで
背後に展開された魔法陣に気付く。此方の術式の
展開の早さを考えれば、振り返れば間に合うはず。
だが敵に背を向けるのは悪手。背後からの攻撃は
シンプルながら強力な手だ。

「んで、コレが今回の目玉になるヤツ」

魔法の矢の飛来に合わせ、足元に展開した円状の
魔力領域が『うねる』。伸び上がった魔力の流れが
魔法の矢を包み込み、吸収した。

フィーナ > 「おぉ、成程」
これは、フィーナにはない視点。

有り余る魔力を扱うフィーナと、限りある魔力を扱う薫。

素質的な意味では圧倒的にフィーナが上ではあるが…それが魔術師として優れているかといえばそうではない。
現に薫の魔術が、フィーナの魔術を無力化している。

相手の魔力をも利用するという発想。
これはフィーナには持ち得ない発想だった。

「上手い手です。これは初めてみました」

杖を抱えたまま、拍手する。それぐらいにフィーナは感心していた。

「では、次」

今度は懐から瓶―――といっても割れやすく作られた飴細工の瓶―――を取り出し、中空に放つ。
その周囲に魔法陣が描かれ…瓶が射出された。

今度は魔力ではなく、物理を用いた攻撃だ。

黛 薫 >  
「やっぱ物理的な対策も必要になってくるよな」

継続して足元の魔力領域は流動的に動き続ける。
今度は膨らみ、黛薫前方の空間を満たすように。

領域内に入った瓶は急激に速度が低下した。
水飴に包まれたようにゆっくりと落下する瓶を
手を伸ばしてキャッチする。

この流動する魔力は偽装が施されているが、
何らかの『実体』を持っているようだ。

「んひ、ケガねーよーに気ぃ使ってくれてる」

瓶が飴細工で出来ていると気付き、小さく笑う。

「魔力を用いて物理的に動きを止める、って
 手もあるワケよな。つまり、こう」

円を描いて移動していた爪先がスタート地点と
重なった。描かれた円は宙に浮かび上がると、
フィーナ目掛けて収束する。相変わらず攻撃力は
ゼロだが、命中すれば縛り付けられる。

フィーナ > 「っと、それは不味いですね」
相手の術式の特性…変形自由な『実体』相手では障壁は分が悪い。
全周覆えば凌げるだろうが、それでは意味がない。
空間転移もこの閉鎖空間では危険だろう。

なので別の手を使うとしよう。

ボフン、と煙幕…正確には水煙がフィーナを中心に広がる。

同時にスクロールで障壁を作り、『実体』を防御。その間に水煙の中を動き、位置をずらす。

魔力の流れが変わる。魔術が練られている。

そんな最中。
水煙の中から水で出来たデコイのフィーナが杖で殴りかかってくる。

勿論被弾したらずぶ濡れ。

黛 薫 >  
水煙による煙幕とデコイによる攻撃。

『演習』を前提とする場合、実体を用いた攻撃、
及び妨害は有効と判断して継続すべき。その上で
煙幕、デコイは双方時間稼ぎである可能性が高い。

展開の早さという利を用いてこれらを出来るだけ
素早く捌き、本命の魔術に備えるか阻止するのが
理想的な動き……だったのだが。

「あ、やばっ……」

水煙の向こうから焦った黛薫の声が聞こえた。

同時にフィーナを狙っていた実体を持つ魔力の
流れが急激に滞った。制御の失敗ではない。
明らかに無理やり中断した動きだった。

「あっっぶね……だから頭ん中だけで考ぇてたら
 ダメだってこったな……やらかすトコだった」

煙が晴れたとき、黛薫の身体は半分ほど濡れていた。
障壁で防御を試みた間に合わなかったのだろう。

フィーナ > 「………」
勿論、視界を使わず聴覚や魔力レーダーを用いて視界を補っているフィーナは状況をわかっている。薫が被弾したこともデコイの崩れ方からわかっている。

しかし、実践は被弾したからハイ終わり、ではないのだ。
むしろその後の行動を問われる。

霧が晴れ、視界が効いて、フィーナの姿が見えるようになる。
見せかけだけの大きな魔法陣。

そこから、薫に向けてハイドロポンプのように水が発射された。

黛 薫 >  
「っ、と!」

大きくペースを崩したものの、立て直しは素早い。
前方に角度を付けて障壁を張り、斜めに受け流す。
防ぐには強度不足だが逸らして離脱するには十分。
展開に時間を取られない利点が奏功した形になる。

「そりゃそっか、一発食らってそれでおしまい、
 なんて甘ぃ話ねーもんな……正直びびったけぉ」

地面を滑るように移動しながら距離を取る。

撤退戦、防戦想定との言葉通り防御と立て直しに
比重を置いている。魔力の流動も一旦落ち着いて
足元に留まった。

フィーナ > 「…はい、演習終了です。通常の魔術師であればそろそろ魔力が尽きる頃なので。」
演習終了の宣言を行い、一息吐く。

「中々の緊張感でした。魔術を扱えるようになってからまだ日も浅いのによく此処まで」

それまでの下積み、そして才に頼らぬ…否、劣っているからこその発想。
フィーナには持ち得ない『才能』だ。

「成熟すれば、魔術戦闘に関しても一歩先んじれそうな発想です。称賛に値します」

今までフィーナが実践的に行ってきた対魔術は、干渉、そしてそれに対するプロテクトだ。
魔術そのものを吸収する対策は採られていない。

もし薫が経験を積み、戦術を覚えていけば、あるいはフィーナを負かせられる可能性だってある。

かつてフィーナがスライムに負けた時のように。

黛 薫 >  
「ありがと。実践って思ったより神経使ぅのな……」

ふぅ、と息を吐いてその場に座り込む。

魔術の行使に集中が必要なことに加えて、緊張で
精神が擦り減るお陰で、魔術の精度を維持出来る
時間は限度がある。慣れるまでは魔力切れよりも
先に集中が切れかねない。理論だけでは計れない
実践から来る学び。

「んでも、フィーナに太鼓判押してもらえっと
 モチベ上がるな。方向性に自信持てるだけで
 頭の冴えかたも全然違ぅし」

しかし逆に実践故の失敗、頭の中で考えるから
見落としてしまう『間違い』もあるわけで。

「とりゃえずあーしが今日1番試してみたかった
 内容は、魔法書に頼らない電脳魔術の行使と
 さっきの魔術吸収、ってかそれを含む汎用的な
 あーしの隠し球? みたぃな」

「実はこーゆーの用意してたのよな」

実践の中核を成していた『流動する魔力』。
視覚偽装を解くと、そこに広がっていたのは
透き通った水──否、『粘体』だった。

フィーナ > 「慣れていない事をすると多くの集中力を割かれ、疲弊するのは当然のことです。この分ならチンピラ程度ならあしらえるでしょう。」

威力自体はそこまでではないが相手を妨害することに重きを置いた魔術は目を見張る物があった。特に『実体』を用いたものは空間転移すら頭に浮かべる程の代物。その特性を見せることは魔術師に対しては絶大な効果を生むだろう。

「何よりその…液体?ですかね。それが魔術に於ける世代を一つ先んじたものと私は考えます。扱い方を成熟すれば、通常の魔術師では歯がたたないほどのものと考えます」

魔力の発現、物理への干渉を第一世代、複数術式の混合による効果増強を第二世代、術式への干渉、その防御を第三世代とすれば、魔術の吸収、及び利用は第四世代に当たる代物だ。

技術を極めれば薫のように才に恵まれぬ第四世代魔術師でも、如何な高等な第三世代魔術師に勝てる。

それほどの発想であり…技術なのだ。

魔術戦闘というものではないが…フィーナは事実それに敗北しているのだから。

黛 薫 >  
「そー、実際コレ、対魔術師にはイィと思ってる。
 魔術の吸収はクリティカルに刺さるし、対物理も
 衝撃殺すには十分。さっきの移動も、実はコレを
 滑らせて移動させてその上に乗ってた」

ほぼ純水の透明度、元々透けているお陰で偽装も
かけやすく、魔法と物理両面に干渉できる流体。
応用の幅は非常に広い。

「で、実はコレが今回の魔術の『本体』でもある。
 培養したスライムに魔術を『食わせた』んだ。
 その上でナノマシンとか量子コンピュータとか、
 電子方面の技術の模倣と応用を詰め込んで……
 って、そっちの話は魔術から外れるか」

着想元はフィールの前身となる変異種スライム、
即ち『魔術を吸収するスライム』。フィールは
変異種スライムから生まれ、黛薫はフィールの
分体を胎に宿している。

その縁を辿って部分的に魔力の吸収能力を再現。
自身の体細胞を培養したものだから繋がりも深く、
杖や魔法書にも負けない優秀な魔術媒体と言える。

「……んでも、便利だからって考ぇ無しに使ぅの
 良くなかった。フィーナが水の煙幕張ったとき、
 コレで捕まぇるつもりだったけぉ。フィーナに
 それやんのは、ダメだろって」

バツの悪そうな表情。仔細を知りはしないものの、
フィーナがスライムに捕まり、フィールを含めた
子供を産まされ続けたことは把握している。

そんなフィーナをスライムで捕まえるのは
不味かろうとギリギリで思い立ったのだった。
演習中の被弾はそれが原因。

フィーナ > 「…私みたいに予め傷つけないように、と準備したものならいざ知らず。
とっさにその反応をしたのは減点ですね。濡れている場所、本番なら痛みで使い物にならなくなると考えてください」

今回は水のデコイだったから濡れるだけで済んだが…実戦なら有害物質である可能性は高いし、デコイではなく格闘戦を仕掛ける相手である可能性だってある。

相手を慮って手を抜けば、やられるのは自分なのだ。

「予め言いましたよ?『全力で来てください』と。もしかしたら、私が薫を追う立場になる可能性だってあるんですから」

そう。そういうシナリオも、有り得る。
一つ足を踏み間違えば…人間である薫は兎も角、怪異であるフィールは追われの身となる可能性が高い。

事実、未だにフィールは学生証をもらえていないのだから。

黛 薫 >  
「返す言葉もございません……」

事実フィーナは事前準備まで含めて織り込み済み。
魔法の矢は命中時点で崩れるようになっていたし、
物理攻撃に使用した瓶も脆い飴細工。水のデコイも
濡れるだけで怪我には繋がらないものだった。

思い至るのが遅かったのは勿論マイナス点だが、
使うべきではない相手、通用しない相手に向けた
二の矢を用意していなかったのはなお良くない。

ひとまず演習が終わって休憩フェイズに入ったので
透き通った粘体を宙に浮かべて、その上に座った。
クッション代わり、椅子代わり。日常生活でも便利。

「それも、あり得るっちゃあり得るんだよなぁ。
 フィールも色々動ぃてくれてるみたぃだけぉ」

知り合いの風紀に働きかけているという話は
聞いていたものの、学生証は貰えていないまま。
フィール側の起こした問題の大きさから一委員の
一存で決められる範囲を超えていたのだろうか。

自然と、フィールが追われる側になったとき
自分も一緒だと考えている。見捨てたり売ったり、
そんな選択が浮かばない程度に馴染んでしまった。

フィーナ > 「人に仇なす存在が人間社会に溶け込むというのは、それぐらい難しいことなんですよ。
貴方には好意を抱いてはいますが、他の人間に対しては?
フィールが誰かを傷つけた時の責任は?
フィールがもし人に仇なし、学園に多大な損害を与えてしまったら?

そう考えると…おいそれと権利など渡せませんよ。」

人は善意だけでは動けない。リスクに対し、それに見合う恩恵がなければ見向きすらされない。

ましてや危険性については既にフィーナや薫が証明済みだ。

「難しい問題なんですよ」

黛 薫 >  
「分かってる。分かってるから、実現出来たら
 その一歩は大きぃんだろなって思ぅ気持ちと、
 こればっかりはあーしじゃ何にも手伝ぇねー、
 フィール自身で解決しねーとって気持ちがな」

そう、これは他でもないフィールが乗り越えないと
意味がない問題。仮に善意や温情だけで学生として
生きられたとしても、重みを理解していなければ
あっという間に破綻する。

そして一度踏み外した後で信用を取り戻すのは
ゼロから信用を稼ぐより遥かに難しい。

「難しぃよなぁ」

成長を見守るというのは、楽しみでもある反面
もどかしくもある。特に手を貸せないときは。

フィーナ > 「それこそ彼を完全に無力化でもしなければ今すぐの申請は無理でしょうね」
それをフィールが受け入れるか、といえば…恐らく否だ。

それは俎板の上の鯉であることをフィールは知っているし、手足をもがれた者がどうなるかは落第街でよく知っている。

万が一に薫を守る為の力を奪われると知れば、間違いなく反発するだろう。

「そういえば薫は学生証、手に入れたんでしたっけ?おめでとうございます」

黛 薫 >  
「落第街上がりだと、万が一が起きなぃって楽観
 出来ねーかんな。フィーナは恨みがあっても
 理性で律してくれるけぉ、そーじゃなぃヤツも
 絶対いるだろーし……」

仮にフィールが力を手放せば受け入れてもらえると
言われたとして。黛薫もそれには反対するだろう。
遺恨のある落第街の住民もそうだが、駆除の手から
逃れたスライムがいるであろうことが気掛かり。

「あー、んー……手に入れたってか、失効したやつ
 ずっと持ってて、少しずつ色々許可されるよーに
 なってきてる、って感じかなぁ。最近だと授業を
 リモートで受けさせてもらぇたりとか」

定期的な監査報告、面談やカウンセリングによる
経過観察が必須な点を除けば学生としての権利は
既に正規学生とほぼ同等までに回復している。

ただ、その面談によって復学を望んでいながらも
今の精神状態だと本人が一番受け入れ難いだろうと
判断されている。建前上まだ『違反学生』として
扱うことで不安から目を逸らさせているのが現状。

フィーナ > 「何にせよ勉学できるというのは良いことです。私もこちらに来て初めて授業というものを受けましたから」

フィーナは元いた世界では学校というものには行けなかった。
魔術に特化した世界は個の差が激しく、学業にしても一部の者しか受けられなかった。

学生であることが当たり前でなかった世界であったが故に、その学園への羨望は大きかった。

今となっては過去の話だが。

「学びを得られるというのは良い事です。魔術もそうですが、化学などを知れば………」

カツン、と杖で床を叩く。
魔法陣が浮かび上がり、少量の水が浮かび上がる。

かと思えば電気が発生し、水が消え失せる。

瞬間、火が現れ…

ポンッ

と、小さな爆発が起こった。

「水の電気分解、及び水素爆発を用いた魔術です。魔力ではなく物理学を用いた魔術なので、総合的な魔力消費量は抑えられる代物になってます」

黛 薫 >  
「自力の学びって限度あるし、教ぇてもらぇっと
 効率全然違ぅかんな。世界が広がる感じする」

黛薫は育ちこそ義務教育の定着した島国だったが、
山奥の限界集落では手厚いとは言えない教育が限度。
常世学園に入学した当初は学びに特化した施設群に
感動すら覚えたものだ。

「あそっか。化学反応に必要なエネルギーと
 魔術の行使にかかる魔力は別物だから……
 化学反応を組み込めばエネルギーの差分に
 あたる魔力は節約出来んのか」

フィーナが行なったのはデモンストレーション、
簡易な手法だったが、それでも最終的に発生した
爆発の熱量は魔力だけで起こした爆発より大きい。

当然、魔術に科学技術、情報工学を取り込んで
扱っている黛薫の興味を惹かないはずがなく。
待ち切れないように粘体の水球から飛び降りた。

「試せそーなこと、なんか増ぇてきた気ぃする。
 また機会あったら見てもらぇると助かる」

そろそろ演習場の利用予約時間も終わる頃。
実践を終えて机の前に戻るのも丁度良さそうだ。

フィーナ > 「えぇ、その時はまたお願いします」

そう言って演習場の人間を呼ぶためにある一定の音を響かせる。

本来なら機械を用いてするのだが………フィーナは残念ながら機械を扱うことが出来ない。

「では、また。研究、楽しみにしてます。携帯端末の方も」

そう言って、演習場を後にする。

ご案内:「訓練施設」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から黛 薫さんが去りました。