2022/10/26 のログ
レイチェル >  
 
『――変身』

それは、かつての映像記録から呼び起こした男の幻影。

レイチェルを覆うように光の粒子が集まっていく。

伸ばした右腕に、男の右腕が。

地を蹴った脚に、男の脚が。

やがてはその影全体を覆うように、ぬうと巨躯が現れた。


<クォンタムバースト!スラッシュブレイク!!>

ブレードが振るわれる。
そして、同時に。幻影を纏うレイチェルの背後から現れた無数の影。
それは、彼の手によって命を奪われた或る風紀委員の、異能の残滓。
十分に、利用されることが考えられるその力は。

「でもって……!」

――異能による、数多の重火器の錬成。これは、データから作り上げたその再現だ。

殺意の銃口が、川添春香へと向けられていた。

川添 春香 >  
「っつ!」

両手にゴム弾を撃ち込まれる。
でも靭性重視で変異させた手はそれほどダメージを受けない!!

直後、光が収束する。
その輝きの中で何かが変質していく。

いや、違う。
これは変質じゃない。
これは────変身。

「パラドックス!?」

混乱する頭。
スラッシュブレイク、だけど!!
余裕を持って回避すれば間に合う!!

後方に跳ぶ。
その私に。

重火器の銃口が向けられていた。
逃れ得ぬ死のイメージ。

レイチェル >  
――春香の奴、この年齢で自分の能力を十全に使いこなしてやがる。

もしかしたら、父親の孝一が手ほどきをしたのかも知れない。
だとすれば、本当に良い父親だと思う。

お前の娘は、強く育ってる。

後は、この時代のオレ達に任せな。
 

「……ってな具合だ。
 闇雲にやるよりずっと、訓練になりそうだろ」 

重火器の一つひとつが砕けていく。
そして同時に、再現し纏ったパラドックスの姿。
そして、彼の有するクォンタムドライバー。

パラドックス――否。
彼の幻影を纏ったレイチェルが己の片目に手をやれば、
それらが砕け散る。

そうして、春香の方へと歩み寄り。

レイチェル >  

「お前の……お前達の覚悟は、オレが助ける――」

眼前の少女に、己が気持ちを伝える。

川添春香だけではない。
パラドックスに挑む、挑もうとしている多くの者達が居る。

訓練による手助けだけではない。
他にも、サポートできることはある筈だ。


「――だから、オレ達の同僚の魂を取り返すのを、手伝ってくれ」

そう口にして、改めて握手を求めた。
今日一番に寂しげで、それでも前向きな笑顔で。

川添 春香 >  
幻影……光の技術でここまでリアルにパラドックスを再現できるなんて。
鼓動が破れそうなほど騒いでいる。

「こんな………」

パラドックスシミュレーション。
風紀委員の秘匿技術ではないのだろうか。
でも……

「はい……!」

差し出された手を取り、握手して。

「私、パラドックスと戦います」
「そのために……色々、お借りします」

そう、借りるのはパラドックスの幻影を投影する技術だけじゃない。
心も……そして、想いも。

その日は訓練に費やした。
私にできることを少しずつ増やしていく。

その先に、必ず未来はあるはずだ。

ご案内:「訓練施設」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から川添 春香さんが去りました。