2022/10/26 のログ
■レイチェル >
『――変身』
それは、かつての映像記録から呼び起こした男の幻影。
レイチェルを覆うように光の粒子が集まっていく。
伸ばした右腕に、男の右腕が。
地を蹴った脚に、男の脚が。
やがてはその影全体を覆うように、ぬうと巨躯が現れた。
<クォンタムバースト!スラッシュブレイク!!>
ブレードが振るわれる。
そして、同時に。幻影を纏うレイチェルの背後から現れた無数の影。
それは、彼の手によって命を奪われた或る風紀委員の、異能の残滓。
十分に、利用されることが考えられるその力は。
「でもって……!」
――異能による、数多の重火器の錬成。これは、データから作り上げたその再現だ。
殺意の銃口が、川添春香へと向けられていた。
■川添 春香 >
「っつ!」
両手にゴム弾を撃ち込まれる。
でも靭性重視で変異させた手はそれほどダメージを受けない!!
直後、光が収束する。
その輝きの中で何かが変質していく。
いや、違う。
これは変質じゃない。
これは────変身。
「パラドックス!?」
混乱する頭。
スラッシュブレイク、だけど!!
余裕を持って回避すれば間に合う!!
後方に跳ぶ。
その私に。
重火器の銃口が向けられていた。
逃れ得ぬ死のイメージ。
■レイチェル >
――春香の奴、この年齢で自分の能力を十全に使いこなしてやがる。
もしかしたら、父親の孝一が手ほどきをしたのかも知れない。
だとすれば、本当に良い父親だと思う。
お前の娘は、強く育ってる。
後は、この時代のオレ達に任せな。
「……ってな具合だ。
闇雲にやるよりずっと、訓練になりそうだろ」
重火器の一つひとつが砕けていく。
そして同時に、再現し纏ったパラドックスの姿。
そして、彼の有するクォンタムドライバー。
パラドックス――否。
彼の幻影を纏ったレイチェルが己の片目に手をやれば、
それらが砕け散る。
そうして、春香の方へと歩み寄り。
■レイチェル >
「お前の……お前達の覚悟は、オレが助ける――」
眼前の少女に、己が気持ちを伝える。
川添春香だけではない。
パラドックスに挑む、挑もうとしている多くの者達が居る。
訓練による手助けだけではない。
他にも、サポートできることはある筈だ。
「――だから、オレ達の同僚の魂を取り返すのを、手伝ってくれ」
そう口にして、改めて握手を求めた。
今日一番に寂しげで、それでも前向きな笑顔で。
■川添 春香 >
幻影……光の技術でここまでリアルにパラドックスを再現できるなんて。
鼓動が破れそうなほど騒いでいる。
「こんな………」
パラドックスシミュレーション。
風紀委員の秘匿技術ではないのだろうか。
でも……
「はい……!」
差し出された手を取り、握手して。
「私、パラドックスと戦います」
「そのために……色々、お借りします」
そう、借りるのはパラドックスの幻影を投影する技術だけじゃない。
心も……そして、想いも。
その日は訓練に費やした。
私にできることを少しずつ増やしていく。
その先に、必ず未来はあるはずだ。
ご案内:「訓練施設」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から川添 春香さんが去りました。