2021/02/25 のログ
ご案内:「常世大ホール」に照月奏詩さんが現れました。
■照月奏詩 >
周りでは研究者やらいかにも頭いいですといった風貌の学生が多く集まっている。その中で頭を抱えている学生が1人いた。
どうしてこうなった。まさにその言葉が頭の中をグルグルと回る。
何度考えても訳が分からない。たしかに自分は昔から異能に対する実戦と研究はしていた。
そう、していた。だから知識はそれなりに合った。
だからこそ研究テーマに自身の能力でもある防御系能力による応用発展、攻撃に転ずるに必要なプロセスなんて自身の専門分野内容にして……あえて手を抜いた。この場に呼ばれない為に。
異能学会の学術大会。その場の発表者の1人に選ばれてしまっていた。理由は言わずもがな……前の戦争やら諸々である。
それらにより被害を減らすという観点から防御系異能に注目が集まり、それに関して書いているのはそこまで多くなかった。更にそれが重要な攻撃にも転ずるとなれば応用性も高い。その結果本来の発表者とは別に数名の特別枠として防御系異能の候補者が選ばれることとなり……そこに自身がノミネートという構図だ。
たしかに攻撃系に比べてば地味感は否めない為に書く人が少ないのはうなずけるが。時期が重なりすぎである。
「どうしてこうなった……!!」
2級学生。次に盤上に立つ。大ピンチである。場合によってはバレかねない。
はたから見れば緊張しているだけに見えなくもないだろうが本人それどころではなかった。
■照月奏詩 >
そしていよいよ呼び出される。溜息を吐き出す。
別にいい。ぶっちゃけ奏詩としては経歴に傷はない。最悪は嘘の違反組織を適当にぶちあげてそいつらに無理やりどうのこうのと言って通常学生になってしまえばいい。
立ち上がると壇上へと上がる。
「えー、このよう場に呼んでくださりありがとうございます。異能術の学科で論文を書かせていただきました照月奏詩と申します。研究タイトルはこちらです」
と画面上に映し出されるのは”防御系異能の応用術―防御術と攻撃への転用―”というタイトル。
見るだけでも数名の興味特に学生の興味がなくなるのが見て取れる。そうだろう、自分だってただバリア貼るより巨大な炎とか出す方がよっぽど派手だし見た目だけなら有用なのは理解している。
「まず今回のスタイルですが。少し変わった討論スタイルを採用しております。これから私は数分間話し続けます。ですがそれに関して反論、意見などありましたらいつでも手を上げて意見をしてください。それに応じて対応いたします」
とそれらしいことをいうが……ぶっちゃけ準備不足。そんなに長大な発表文章は用意できなかっただけである
「さて、つい今このタイトルを見て数名興味を失いましたが……たしかに昨今、どの組織においても、特に風紀委員に関してもそうですが凶悪犯罪などに対抗するという目的もあり攻撃系の研究というのは活発であり、有名な人物として名前が挙がるのは攻撃能力に優れた人物達であると思われます」
と画面がタイトルから組織の図へと変わる。
風紀委員。特別攻撃課や広報課といった有名どころ。そしてそれを抑える役目としての公安などのマークもしるされている。
「たしかに攻撃系というのは派手であり、また効果も目に見えてわかります。ですが私を含め防御系の異能と言う物にも多くの利点があるのです。まずその1として安全性。やはり防御系異能というのは攻撃系異能に比べはるかに安全性が高いです。例えばですが……今日攻撃系異能で発表した人物達。それらは全て確かに素晴らしい発表でしたがもし常識外の環境。それこそ風紀委員の方などが常におかれているような戦場のような場に置かれた時。おそらく長く戦闘し貢献できるのは防御系異能者だと私は考えています」
といきなり喧嘩腰。学会がザワザワする。
当たり前だ、こんなスタイルどう考えても学会としては間違っているし殺伐としすぎである。
「そしてその2。想像は出来ないかもしれませんが、防御系異能は扱い方次第で攻撃系異能と同等クラスの攻撃性能を得る事が可能です。それに関しては後ほど紹介いたします」
と一旦待機。周りを見る。喧嘩を売った形となるが意見をしてくる人物はいるだろうか。
■照月奏詩 >
意見がないとみると先へと進む。
そこは動画。大岩の前で一人の学生が立っている。
「まずこちらをご覧ください。こちらは同じ1年で撮影に協力してくださった著名の学生です。彼の能力は風を操るという物です。撮影場所に関しては演習場にて本来の大岩と同じ設定にて撮影いたしました」
というと動画を再生する。すさまじい轟音と同時に竜巻。その大岩は一瞬の内に粉々に砕け散る。
「と、このようになります……防御系の異能でこれは出来ない。そう思われるかもしれませんが。こちらをご覧ください。次は私本人が実証しております」
と二つ目の動画。ぞこには自分が写っている。
同じように大岩の前。そしてそれを怒涛の勢いで殴りつけている。映像としてはすさまじく地味。しかし。
1分岩にヒビが生まれる。
2分それが大きくなり。
3分立てば岩は真っ二つに割れていた。
「と、このように攻撃系の異能と同じ程度の攻撃能力は有しているのです。私の場合ただ自身の体にバリアを張るという防御系の異能の中でも低いレベルに位置する能力です。ですがこれがもっと強力な……それこそ反射する。遠距離にもバリアを張るといった能力であった場合もっと様々な応用が可能でしょう。それに関しては私の論文で実際の書籍などを用いて紹介してありますのでご参照ください」
というと画面を消す。
そしてまっすぐに前を見据える。
「さて、私の発表を見て”野蛮”だとか”この場を穢すな”だとか思われる方はいらっしゃるでしょう……ですが。そうだとしても私はこう言いたいのです。今の研究は本当に正しいのかと」
最初に自身のタイトルに興味をなくした1団を見据える。
それは研究者の中でも過激と言われている集団だった。
「たしかに一瞬で大きな効果を出せる攻撃系の異能というのは有用かもしれない。ですが戦うのも、そして相手もまた人間なのです。過剰なまでの火力で周りへの被害を考えずに焼き払えばたしかに楽かもしれない。ですがそれでは永久に戦いは終わらない……それどころかより大きな火力を持って返されるの繰り返しです。事実近年風紀委員の被害や犯罪率などが上昇しているのは事実です」
一部が目を反らす。痛い所だからだ。
だからこそ容赦なく続ける。
「相手が人である以上それ以上の火力は必要ない。そして相手がどれだけ大きな火力を持ってきたとしてもそれを全て飲み込み跳ね返す。それこそが本当の武力であり力であると私は思います。そしてそれを考える事で……今以上に被害を減らせる。そう私は考えています。だからこそ異能学会の方には今回を機に防御系の異能に対しても目を向けていただきたいのです。行き過ぎた火力だけで終わらせられない戦いを終わらせる事になるかもしれないもう一つの武力について」
というとことで発表は終わる。
会場は相変わらずザワザワとしている。
数分の質問時間が用意されるが。中々手は上がらないだろうか。
■照月奏詩 >
質問しようにも中々しにくい環境だろう。というのも実際はかなり手を抜いた論文、情勢に押されたが故にこの場にいるだけで実際はここにいられるような内容ではない。
つまり防御系を学んでいる人物からすれば常識も良いところであり、逆に攻撃系からすればどこからどう質問していいかもわからない。
終わりと判断し頭を下げると壇上から降りる。
向かう先は席……ではなくそのまま外へと向かっていった。
流石に回りほぼ全部が敵みたいな状態になってしまった場所にいるのは中々にまずい物があった。
少しやりすぎたかなぁなんて思いながら終わる時間まで外で待機しているのであった。
ご案内:「常世大ホール」から照月奏詩さんが去りました。