2020/06/20 のログ
ご案内:「転移荒野」におこんさんが現れました。
おこん > (転移荒野の一角に、突然として真っ黒な…光も通さぬ円が生まれる。
 音もなく広がっていくそれは、気がつけば半径数メートル規模にまで成長していた。
 その真っ黒な界面から、”腕”が伸び、荒野の地面を掴む。
 いびつな形の、粘液にまみれた暗灰色のそれはゆっくりと増えていく。
 1本、2本と増えて、数本のそれが、まるで根を張ったかのようにしっかりと大地に食い込む。
 なにかが”穴”から這い出ようとしていた。) 

おこん > ”おお――――――”
(上半身まで出したところで、”なにか”が宙に浮き、穴から全身を引っ張り出される。
 数十メートルに渡る肉体が、いとも簡単に持ち上げられ……。何かに包まれる。
 ”なにか”を胸に抱いた、巨大な…巨大な女は、とてもうれしそうに笑っていた。)

”ややこ、ここにおったのかえ―――――おお、よいこじゃ――――”
”ほうれ、かかさまじゃ―――――おぬしのかかさまじゃぞ――――”
(うっすらと女の体が揺らいでいることから、おそらく完全な実体ではないのだろう。
 そんな胡乱な状態でありながらも、女は”なにか”を抱きしめ、あやすように体を揺らす。
 音に聞こえぬ、甘い声…それは、禍々しいほどの、慈母のような優しさと甘さに満ち溢れていた。
 もしこの声を聞くものがあったら、たとえ親がない器械であろうが、この巨大な女に『母』を見たであろう。)

”かわいいややこ―――――ちのみごよ―――――”
”いとしいややこ―――――かかさまがずっとだいてやろう―――――”

(必死に暴れる”なにか”ではあるが、相手とのサイズさはあまりに大きい。
 傍から見るものがいれば、赤子がだだをこねているかのように見えるだろう。
 嬉しそうな女に対して、抵抗の素振りを見せる”なにか”。
 女が嬉しそうに語りかけるたびに、その姿が少しずつ小さくなり、女の腕と胸の中に沈んでいく。
 小さく、小さく…。 しばらく時が過ぎたときには、”なにか”は女の腕から完全に姿を消していた。) 

おこん > ”ややこ――どこにいったのじゃ―――”
”わしのいとしい、ややこはどこじゃ―――――”
(”なにか”が腕の中から消失したことにきづいた女は悲しげに呟く。
 ふらふらと子供を探し回る様は『母』としての本能に駆られているかのようであった。
 うろうろと荒野をさまよう女の顔は、まるで…。
 卒業する生徒たちに愛情を注ぎすぎた結果、毎年卒業式で大暴れするおこんのようだった。
 そして、しばらくして――――巨大な女の幻影は、時間と共にうっすらと消えていった。)

ご案内:「転移荒野」からおこんさんが去りました。