2020/06/24 のログ
■生活委員会 >
山本の問いに、答えあぐねる。
彼は見た目とは反して繊細な男だ。
どう答えたらいいものか。
「保護をする。彼の意思を確認して、この先どうするかを選んでもらう」
そう答えるのが精一杯だ。
世界は狭すぎる。
そこに余所者が場所を取るとなると、少し難しい。
■山本 英治 >
選んでもらう。この先を。
その言葉が非現実的かつ、空虚に響いた。
「選んでもらうって……」
子供は保護をしようとする手を振り切ろうと暴れている。
精一杯。今はもうどこにもない───自分自身の小さな世界を守るために。
彼は……必死に夜が来る、星がある、怖いと叫んでいる。
彼の世界では、星は忌避するものなのかもしれない。
子供だから、夜に出歩かないようにそう言い聞かされているのかもしれない。
それがただ、悲しい。
■山本 英治 >
必死に周囲の手から逃れようとする異界の子供に。
居ても立ってもいられなくなる。
「すいません、翻訳機を一つ貸してください!!」
そう叫んで生活委員会に許可を求めた。
■生活委員会 >
山本の言葉に、全員が顔を見合わせる。
彼は少年に何を言うつもりなのか。
どちらにしても、もう風紀の出る幕ではない。
「生活委員会の備品だ。それはできない」
「始末書じゃ済まんぞ、山本」
誰もが辛い。
誰もが苦しい。
悲しみに暮れている暇なんてない。
そして自己憐憫を自分で処理できない男に、貸すものはペン一本たりともない。
■山本 英治 >
今もあらん限りの声で両親に助けを求める少年に。
できることなんて本当はないのだろう。
それでも。
「始末書でもクビでも好きにしろ!!」
そう叫んで手を出した。
ただ……翻訳機を、貸してほしい。
彼に、告げる言葉がある。
■生活委員会 >
山本は何をする気なのだろう。
とにかく、彼の目は本気だ。
肩を竦めて、トランシーバーにも似た翻訳機を彼に放った。
「おっと、翻訳機を落とした」
そう言って小さく舌を出した。
周囲の同僚は見て見ぬ振りだ。
■山本 英治 >
突然、放られた翻訳機を受け取って。
破顔一笑。
「拾ったッ!!」
そう叫んで、彼の元に歩いていく。
「聞こえるかい? 何がそんなに怖いんだ?」
できるだけ怖がらせないように。
落第街の少女、ニーナにそうしたように。
声を抑えて語りかけた。
■異界の少年 >
「星は悪魔なんだよ!? 知らないのか!!」
「見上げてみてよ、あんなにたくさん僕を見てる!!」
「助けて、パパ!! ママ!!」
これは夢だ。
夢から覚めたら、パパとママに朝の挨拶をするんだ。
だから早く起こしてママ……この悪夢から…
■山本 英治 >
そうか。星は怖いもの、という文化圏から来たのか。
だったら、俺がやるべきことは一つ。
星を壊す。
「見てろよ、お前! 俺は星なんかちっとも怖くねーぞ!!」
そう言うと空に向けて構えを取り。
「お前が怖いっていうならな、兄ちゃんが星なんか落としてやる!!」
呼吸を整え、そこに悪でもいるかのように表情を強張らせ。
空に向けて拳を突き出した。
すると。空に流星が一条。
ケンタウリ流星群の時間だ。
「そぉら、落ちてきた!! お前が怖くなくなるまで、俺が星を落としまくってやる!!」
空に向かって、拳を。蹴りを。突き上げ続けた。
泣きながら、ずっと。星を攻撃していた。
■異界の少年 >
星が……落ちてる。
永遠に不朽の存在である星が。
夜空に爛々と輝く憎たらしい星が。
あのお兄ちゃんの拳で、落とされてる。
くしゃくしゃに表情を歪めて。
僕はずっとその幻想的な光景を見ていた。
■山本 英治 >
息が切れても、まだ。まだ。
ずっと、ずっと。
空に向けて拳を突き上げていた。
天体ショーが終わる頃。
「悪い、星があんまりにも多すぎて、手が足りねぇや」
「兄ちゃんが弱いからだな……」
そう言って涙を拭うと、安心させるように笑って。
「強くならなきゃな!! お前もだ……強く、強くなろうぜ…なぁ」
胸元に手を当てて、必死に次の涙を堪えた。
「俺たちは生きてるんだから」
■異界の少年 >
お兄ちゃんは泣いてた。
泣きながら笑ってた。
それが、きっと大人の姿なんだ。
僕は力強く頷いた。
今は何もこの手にないけど。
いつかモジャモジャのお兄ちゃんみたいに。強く。
■山本 英治 >
笑顔で彼の頭を撫でて。
「ああ、約束だ!」
そう言って少年に背中を見せた。
見守っていてくれた生活委員会の、翻訳機を貸してくれた男の元に。
「落ちてた」
と言って翻訳機を手渡した。
これは、問題になるかも知れない。
それでも、彼の……いや、俺の自己満足のために。
やっておかなければならなかった。
空を見上げた。
そこには、希望の余地を許さないどこまでも冷徹な星空が広がっていた。
ご案内:「転移荒野」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」にケンプキン・G・ノノノフさんが現れました。
■ケンプキン・G・ノノノフ > ケンプキン・G・ノノノフは天才である。
少なくとも一部の面だけ見れば確実に天才である。
「偉大なる天才であるこの私が目を覚ますとそこは荒野であった。」
自分の衣服は昨日ベットに入ったのと全く同じ状況。
「天才であるこの私の頭脳から導きだされる答えは2つ…
ベットごと転移の魔術によりどこかに飛ばされてしまったか…
或いは…」
顎に手を当て思案する。いや、思案するまでもない。
ノノノフの天才的頭脳は既に答えを導き出していた。
「夢だな…うん!」
じりじりと照り付ける日差しの中再び布団をかぶり目を閉じる。
ノノノフのこの肉体は幸い暑さを感じない
■ケンプキン・G・ノノノフ > ノノノフは眠ることに関しても天才であるが故に寝たいときにスッと寝れるしいつでもすっきり起きることができる。
やはり天才は凄い。持つべきものは天からあたえられた才能である。
だが、いくらノノノフが眠りの天才であるとはいえ看過できないほどの事態!
けたたましいサイレンの音が荒野に鳴り響く!
「何だこの音は!天才であるこの私の天才的な眠りを妨げるとは!!
なんだ魔獣か!?魔獣の襲撃か??」
今度こそベットから飛び起きパジャマのままで臨戦態勢。
右の手には枕が握られている。
この枕をぶつければ恐らく知性の低い魔獣であれば一撃でノックアウト。
天才との差を思い知り逃げ去るに違いない。
■ケンプキン・G・ノノノフ > だが待てども待てども声の主は現れず。
必殺の枕が振るわれることはない。
「さては天才である私の持つ強者特有の気配に恐れおののいたのでは?」
そんな言葉を知ってから知らずか男の背後で空間がぐにゃりと歪む気配がする。
異世界と常世の島がつながる。
この荒野でこのサイレンが示す事それは『門』の出現である。
■ケンプキン・G・ノノノフ > 生じた門から現れたのは異形、異形。
爬虫類のような魚のような二つが混ざったようなそんな異形の怪物たち。
ズラリとそろって白昼の荒野に並んでいればそれこそ悪い夢のようにしか見えない光景。
だが偉大なる天才であるノノノフはこれが夢ではないことに既に気が付いていた。
「なんだ貴様ら。私に何か用でもあるのか?
サインか??サインが欲しいのか?あいにくだがペンがないので出直してくるといい。」
普段はいつでもサインにこたえることができるようにペンを持ち歩いているのだがタイミングが良くない。
異形はその言葉に腹を立てたのか。サインがもらえない悲しみ故かノノノフに向けて拳…おそらく拳っぽい部位を振り上げる!
■ケンプキン・G・ノノノフ > だが!「この偉大なる天才にそう簡単に触れられるとは思わないほうがいい!!」
天才特有の軽やかなステップでひらりとその拳を躱すとベットの前に降り立った!!
「さあ!躍動せよ天才たる私の子供たち!!No.107安眠の守護者!ベットゴーレム!!」
その声と共にベットに触れればガシャンガシャンとベットが変形!!!
主に安らぎを!外敵に永遠の眠りを!ベットは二足歩行の人型になり主の敵へと拳をふるう!!!
『ベットーーー!!!』
■ケンプキン・G・ノノノフ > そこから先は一方的だった。
叫びながら相手を殴打するベットゴーレム。
激高し向かってくる異形達。
殴打される異形達。
残されたのは血に濡れたベットゴーレムとその主のみ。
残った異形達は散り散りに逃げて行ってしまった。
「さて…これからどうしようか。
否、すでにどうするかは決めているようなもの…」
いろいろこびりついてしまった自らのベットを見ながらそうつぶやいた。
汚れを洗える場所を探さねば…。
ご案内:「転移荒野」からケンプキン・G・ノノノフさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」に羽月 柊さんが現れました。
■羽月 柊 >
「もう門も消えかけ、か……。定着層がどれぐらいか、なっと……」
異世界の遺物だろう倒れた石柱の一つを男が飛び越えた。
飛び越えたそれをコツコツと手で軽く叩き、響く音を確かめる。
学会やらの発表では、本日未明にも門の顕現は終わるのではないか、との予報だ。
異世界の混じるここでは、時間間隔も適正なのかは判断しづらい。
遠く空に茜色が見えるが、それは本物の空と陽なのだろうか?
何もかもが入り混じるここでは、そんな当たり前のことさえ曖昧に感じられた。
■羽月 柊 >
小さな鳴声と共に、男の近くに寄る小さな白い龍が2匹。
「ああ、おかえりセイル、フェリア。
…空巣や幼生単体の転移は見つけたか?」
それらを肩に留まらせ、そう語り掛ける。
小龍達はキュィキュウと鳴いているようにしか見えないが、
男はそんな彼らと会話をしているようだ。
そんな男の目的は、異世界から来た竜の調査であるが……。