2020/06/27 のログ
人見瞳 > 『とっくに呼んでるってば!』
『だが、救助されるのは僕じゃない。お前がくたばったら何の意味もないんだよ!!』
『あまり言いたくはないのだけれど、どうして一人で来たのかしら?』

高圧放水を浴びせて怪物の姿勢を崩しつつ、風紀の人を巻き込まないように苦慮して。

『今ならシェルター爆破できるし、あたしもそれを望んでるんだよ。わっかんないかなー?』

はやく。はやくここから出て行って。
犠牲者を出してはいけない。それは最悪の結末だ。痛みと絶望で視界が歪む。

「―――――――」

今にもバラバラになりそうな身体に鞭打って立ち上がる。
凄まじい打撃戦の音だけしか聞こえなくても、この人が命を賭けていることだけはわかる。
止めないと。荒れ狂うけだものの咆哮に塗り潰されないように、精一杯声を振り絞る。

人見瞳 > 「…………………もう、いい……いいから………!」
山本 英治 >  
「良い訳あるかッ!!」

全力で化け物に冲捶を撃ち込む。

「ごちゃごちゃうるせぇー!! 黙って助けられてろ!!」
「死んでいいからって、死んで良いワケないだろう!?」

正中線の急所に、常人なら即死の打撃を数度撃ち込む。
クソッ、堅ぇ!!

こうなれば、武術より暴力に頼るしかねぇのか!!

「お前らがお前を見捨てることを、俺は絶対に認めねぇ!!」

オーバータイラント・フルパワー。
こうなれば拳法もへったくれもない。
全力で右手を、大雑把に打ち下ろした。

人見瞳 > 『いいんだよ、僕らは!!』
『残機∞だもん』

骨格も筋肉の付き方も、まして内臓の機能さえ違う異邦人に武術が通じるとも思えない。
それはあくまで「こちら側」の常識に基づく戦闘技術であるゆえに。

「……………っ…………」

身体が冷たい。意識が遠のく。何度目かの波に抗えず、糸の切れた操り人形みたいに倒れ込む。
私がここで終わるのはいい。けれど、この人の無事を確かめるまでは―――。

暴力と暴力が噛み合い、正面衝突して無数の衝撃波を発する。
言葉の通じない者同士でも、相手の肉体を破壊せんとする殺意だけで通じ合っていた。

頭ひとつ抜きんでたのは、風紀の男だ。
世界の理を超越した暴力が振るわれ、鋼鉄にも劣らぬかと見えたマレビトの肉体は唐突に爆ぜた。
打ち下ろされた拳は異形の生命を文字通りに叩き潰し、致命の傷を穿ってみせた。

『………………んん……やったか…?』
『これは内臓グッチャグチャだねー………』

山本 英治 >  
オーバータイラントは、通じた。
至純の暴力が、相手の暴力を上回った。
それがただ、悲しい。

「残機があったら無限に死んでいいのか!?」
「死んで人の役に立ったら本望かぁ!!」

「そうじゃ……ないだろ…………」

目の前の生命を完膚なきまでに否定して、泣きそうな表情で振り返る。

「お前は生きてるんだ…………生きてるんだよ…」

そう言うと、アフロから滴る返り血を拭って。
彼女を抱き上げた。

投げられた時に拉げた長銃を拾い、首にかけて。

「絶対に死なせねぇ。無駄と笑いたきゃ笑え!」
「俺は俺のためにお前を助ける」

人見瞳 > Vault 3の前に大型二輪が滑り込み、ライダースーツの少女が降り立つ。
ヘルメットを外せば栗色の長髪が溢れだす。それも私だ。

「どうも。お疲れさまでした」

腕の中の私はすでに昏睡状態に陥っていて、体温が急速に失われていくところで。

「すみません。ちょっと失礼しますね」

赤黒い染みに染まった襟元の、眠るように穏やかな口元に顔を近づける。
吐息はすでに、微かにも感じられないほどに弱まっていて。

躊躇なく唇を重ねた。

今は献身に報いる言葉をかけることさえできない。カサついた唇の感触さえも愛おしい。
粘膜接触をトリガーとして、ふたりの私がひとりになる。
知識と経験と、主観さえもそのままに引きついで私たちは完全なる統合を果たす。

ボロボロの私は消えて、ライダースーツの私だけが残った。
改めてみれば、すごいアフロの人だった。風紀にもこんな人がいたんだ。

「大丈夫。そう簡単には……死なないから。けれど、あなたはそうじゃなかった」

山本 英治 >  
ライダースーツの少女は、また人見瞳。
お疲れさまでした、と言われれば。

「オウ、お疲れ様でした」

と返すしかできない。

自分自身からの口づけと同時に統合がなされる。
これが彼女の異能。
誰よりも奇妙な性質。それが人見瞳の本質。

「……俺は風紀だ」
「戦えない人の代わりに戦う義務がある」
「そして……あんたらの誰かが同じことを繰り返したら」

「何度だって助けに行くし、その度に叱るからな」

手の中から消えた重みを、ようやくその場から手放すように。
抱きかかえたままの構えから、手を下ろした。

人見瞳 > 「風紀に通報をしたのは……被害を最小限に留めるため」
「なのにあなたは、たったひとりで強引に解決しようとした」

この人さえいなければ、私なりの方法で事態を収められたはず。
決して褒められた方法ではないとしても、犠牲が出るよりずっといい。
―――そう考えていたのだけれど。

「私にも」
「命を使えない人の代わりに、命を使う義務がある」

私たちは《ブルーブック》。この奇妙な世界でさえずる炭鉱のカナリアだ。
空の果てからやってくる客人たちを出迎え、脅威の有無を確かめる役目を負っている。

「………それでも」
「必要に応じて、通報はします。ありがとうございました」

治安当局との連携は、財団との合意事項のひとつ。引き続き遵守はすると言明して。

「あなたのお名前は?」

山本 英治 >  
「お互い、信念があり……ぶつかるのにどちらも正しいというわけだ」

化け物の青い血は粘る。それをハンカチで拭った。

「……こっちこそ、邪魔をして悪かった」

ぺこりと頭を下げると、アフロが揺れた。
名前を聞かれると、口の端を持ち上げて笑って。

「英治だ、山本英治」
「あんたは知ってるぜ、人見瞳サン」

そして。
通信機が鳴る。単独行動。始末書。報告義務。早く出ろ。
そんな言葉が飛び交っているのだろう。

「それじゃ、俺は報告があるのでこれで」
「またな、美しいカナリアさん」

そう言って外に出ると。完全に包囲されていた。
完全武装の風紀と、怪異対策装備の生活委員会だ。
もう怪物は死んだぜ、と笑うと。

死ぬほど怒られた。

ご案内:「転移荒野」から山本 英治さんが去りました。
人見瞳 > こうしてまた一人、招かれざる客人が命を落とした。
この世界に馴染めなかったが為に、出会い方を間違えてしまったために。
遺骸の一部はラングレーの研究施設に送られ、またいつか訪れる脅威への対策に活かされることになる。

私たちのささやかな暮らしが混沌に呑まれぬように。
薄氷の上の平和を維持するために。

「よければ、また今度……」

財団の職員が遺骸の標本採取にとりかかる。
遺伝情報のひとかけら。体内の細菌叢。細胞組織を形づくる未知の化学物質。
胃袋の残留物さえも同じ重さの黄金以上の価値を持ちうるという。

私のパトロンと財団は、互いに出し抜きあうのではなく―――山分けにすることを選んでいる。
少なくとも、今のところは。

「お食事にでも、行きましょうか」

この人には、またいつかお世話になりそうな気がする。
そうでなくとも、別の形でお礼がしたい。
なぜって、この人は―――最愛の私を助けてくれたのだから。

ご案内:「転移荒野」から人見瞳さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」にサクラ=ウィンスピーさんが現れました。
サクラ=ウィンスピー > 門の出現というのにも様々な種類がある。
一般に門は言われるそれは時空の裂け目を観測する上でわかりやすい、亀裂のようなものとなっているが。

その日、門の注意警報が終わり、監視態勢も弱まったこの時間にポツンと大きな瞳が転移荒野に現れた。

無機質な爬虫類を思わせる瞳孔に金色に輝く瞳。
観測していたはずのこちら側を見つめる巨大なナニか。

そんな巨大な目がこちら側を見ている。

サクラ=ウィンスピー > 無機質な瞳から大きな雫が零れ落ちる。

それは涙のようで、別のナニかのような。

落ちた雫が空中で弾ける。
中には、

「あーもうっ、鬱陶しいなぁ!!」

少女と、それを抑え込むように組み合っているその少女の倍ぐらいのサイズがあるドラゴンと人を掛け合わせたような何者かがいた。

そのまま垂直落下、飛行機が飛んでいる高さから真っ逆さまに両者は地面に激突し大きな砂煙を立ち上げる。

龍種? > 「キサマハ イマ、ココデ オレガ ツブス」

砂煙が晴れ、視界が広がる。
一人は少女、その対峙しているドラゴンと人を混ぜ合わせたモンスターは、少女が無傷なのに対して、翼は半分なくなり、着ている鎧はボロボロ、大きな裂傷が幾つも着けられ満身創痍なのがわかる。

サクラ=ウィンスピー > 「まったくもう…。ムーブ、アクセル、チャージ、ストライク。」

満身創痍、いつ倒れてもおかしくないエルダーリザードのしつこさに溜め息を吐く。

中腰で自分の背の丈よりも大きい薙刀を構え、溜める。

勝負は一瞬だった。
元々、満身創痍であったエルダーリザードは何をされたのか訳がわからぬまま、それ以上言葉を話す事はなく地面に倒れた。

少女はいつの間にか、エルダーリザードの背後に立っていた。

サクラ=ウィンスピー > 「おーわりーっと。えーっと、はてはて?ここどこだろ??」

少しだけタフだったがいつも倒しているモンスターなどに遅れを取る理由もない。
なんの感慨もなく、倒れたエルダーリザードを背にバッグから地図を取り出す。

魔法の地図で何処にいても現在地を示してくれる便利なアイテムだ。
しかし、

「なにも描いてない。……えー!なにこれー!!!」

そう、いつも大陸と現在地が描かれていたマップは白紙になっていた。

サクラ=ウィンスピー > 「ぐぬぬ……ただの転移魔法にしては大掛かりだなーとは思ったけど、まさかあれって次元転移の魔法陣だったかなー。」

目を凝らして落ちてきた時の魔力の痕跡を探るが、そもそも大気中にあれだけ満たされていたマナがさっぱり見えなくなっている。

その痕跡もいつの間にか閉じてしまった瞳のあった場所で途切れている。

そして周囲には見知らぬ遺跡やら、先時代的な建造物。

状況証拠ではあるようだが、どうやら異世界に飛ばされたのだと気付くのに時間は掛からなかった。

サクラ=ウィンスピー > 「帰る方法は……。うーん、無理そうだにゃあ。」

とりあえず、バッグから帰還石を取り出して割ってみる。

パキンッ…………。

うんこれ、ちょっと綺麗なただの石だ。

とりあえず、他のアイテムも使ってみる。
グリフォンの翼、……これもダメ。
ポーション、……なんかただの水になってる。
召喚石、……うん、ただの石かな?

「サイゲツは……うん、これは大丈夫。後はー岳山龍の衣もまだ活きてる。」

それ以外は全部ダメそうだ。
これは前途多難そうだなぁ……。

一人愚痴る。

とりあえず、今こちらに向かってきている人たちに話を聞いてみよう。
話はそれからだ。

ご案内:「転移荒野」からサクラ=ウィンスピーさんが去りました。