2020/07/02 のログ
ご案内:「転移荒野」にスピネルさんが現れました。
■スピネル > その日、転移荒野に1基の棺が姿を現す。
棺の中には長らく眠っていた闇の種族が一人。
長らくの時を超え、今目覚めるのであった。
「なんだ? ここは。
我の知らない場所だぞ?」
棺の蓋を内側から開き、外を見渡す。
確か、もっとちゃんとした建物の中に居た気がする。
それがどうしたことか。
だだっ広い平野の中にいるではないか。
「今が忌まわしい太陽の出ていない時間だから良い物の。
あやうく照り付けられる所ではないか。」
■スピネル > 棺から身を乗り出し、久方ぶりに自らの足で歩き始める。
「何もない荒野と思っていたが、違うな。
遠くにはよくわからん物が転がっている。」
所謂浦島太郎状態のスピネルは世界の変容を知らなかった。
周囲に転がっている品々も鳥居や車など、見て分かるモノもあれば。
携帯電話、タブレットなど見ても分からないモノもある。
「なんだこれは…剣か?」
その中でも一振りの刀を手に取る。
形は一般的な打ち刀。鞘を掴み、刀を抜き取ると刃は月の光を反射して輝いていた。
「ふむ。異国の剣であろうか。
しかし、詳しい者が誰もおらんでは我も難儀するな。」
スピネルが眠りについた時より遥か昔。
かつては眷属が多数取り巻き、スピネルは玉座に鎮座しているだけで全て思うがままであった。
そんな栄光の時を思い出しては、刀を鞘に入れ。
ご案内:「転移荒野」にシュルヴェステルさんが現れました。
■シュルヴェステル > 昼間に比べて、夜の転移荒野は気温が低い。
フードの下に隠した頬を撫でつける風は少し冷ややかに。
「……貴殿」
広い転移荒野は音を伝う。
音を伝い、探し、手繰るように辿った先にいたのは棺の中の君。
金色の、血のような赤い瞳をした――恐らく、異邦人。
パーカーのフードを被り、黒いキャップをその下に重ねた青年が。
「貴殿は、異邦の民か」
短い問いかけとともにやってくる。
その手には、僅かに血のついた角材を握りしめて。
月光の下、青年の白い髪の下から君と同じ色の瞳が覗き込む。
■スピネル > 荒野をうろついているスピネルの耳に人の声が届く。
こんな時間にこんな所を人がいるのかとやや安心するも、相手が何者かわからないだけに警戒する。
だが、高貴なスピネルは身を隠すような真似はしないのだ。
「なんだお主、この辺りの者か?」
背丈の高い人物であるが、手には鮮血の付いた角材を持っている。
早速物騒なことが起きたかと口元に笑みを浮かべる。
「異邦の者とやらが何のことか分からんが、我は今ここで起きたばかりだ。
ここはなんだ。どこの国だ? 知っているのなら教えてくれ。」
白い髪に赤い瞳…スピネルがこれまで見た人間達とは異なる。
どちらかと言うと同族か、それに近い種族だろうか。
■シュルヴェステル > 「ああ。この辺りの者だ」
鸚鵡返しのようにそう頷いてから、青年は片膝をつく。
言葉が通じるのであらば、と言わんばかりに角材を荒野へと置く。
そして、武力が不要だとわかれば仕草で交戦する気がないことを示す。
「……貴殿のように、ここで、何もわからない者は多い。
して、私もその一人。貴殿よりも僅かひと月先んじたのみ」
両の手の甲を荒野へと触れさせる。手のひらは天を仰ぐ。
首を落とすなり、腕を落とすなりもワンモーションで行えるだろう。
無抵抗と害意のなさを示し、……少しばかりの敬意を添える。
「『常世の国』だ」
短い言葉を告げる。自分も、それ以上ここを解っているとは言い難い。
「……人類種(ヒューマン)が、この島の王である。
貴殿は、人類種と異なると見受けた。匂いが違った。この鼻は嗅ぎ分ける。
故に、オーク種である私が、貴殿を探した」
■スピネル > 「ほう、ならばちょうどよい。」
スピネルは抑揚に応える。高貴なる者として辺り前のことだ。
相手は角材を足元へ置き、片膝をついた。
まるで騎士か従者のようであるなと、在りし日の記憶が蘇る。
「我の偉大さを一目で見抜くとは聡い奴だな。
褒めてつかわす。」
スピネルは両足を広げた状態で両手を組むと、ふんと鼻息を荒げた。
相手の仕草をみると、過去の世界に飛んだかのような感覚に苛まれる。
実際にここが過去の世界の可能性もあるのだが。
「知らん国だな。 なんだそれは。」
どうやら異世界とやらに飛んだのか?
話しには聞いていたがわが身に及ぶとは、とスピネルはまだ実感を伴って理解できていなかった。
「いかにも。我は好奇なるヴァンパイア族のスピネルである。」
スピネルはマントを翻すかのような仕草を取る。
かつては赤いマントを羽織り、傍らには僕が居たのだが。今は一人である。
「しかし、予想はしていたがここは人間の領土か。
そこらに転がっている遺物で気はついていたが。
で、お主はオークだと言うか。流石の我もオークは初めて見るぞ。
さてオークとやら、我を探していかんとする。
我はこのように単身飛ばされたばかり。お主の求めに応じてやることはできんかも知れんぞ。」
■シュルヴェステル > 「吸血種か」
褒辞には一度の長い瞬きで応えた。
それ以上はなく、実際の自分の知恵の中でもこれは当然のことでしかなかった。
吸血種。夜の王。血の王夜幕引くもの。夢魅せるもの。
それは、オーク種よりも明確に智慧の中で生きるものであるが故に、
やはり青年が敬意を向けて接するのは至極当たり前のことでしかない。
「彼ら人間はここを『常世島』と呼ぶ。
過去も未来も関係なく、《門》にて異世界より客人を招く島。
私はそうであったが、貴殿がどうかは知れないが……恐らく、貴殿も。
ここは転移荒野と人が呼ぶ。《門》より来たりし異邦の民の港のようなもの」
視線をスピネルから広々とした荒野へと向ける。
大きな石や岩が、不自然に削れていたりする。恐らく別種の生き物の痕跡であろう。
問われたのならば、シュルヴェステルは。
「水先案内のようなもの。
行き先のわからぬ入り組んだ水路には、みち暴く者が必要だろう。
この世界で生きていくのであらば、その一歩目を示す者が入り用だろう。
――異世界でなど生きるつもりを持ち合わせていないのなら、その息の音止める者」
赤い目を、静かに君に向けて。
「貴殿は、どちらが入り用だろうか」
■スピネル > 「いかにも。」
相手が口を開くまでの間、スピネルは顎を上げて横柄な態度を崩さない。
威厳溢れる?態度を取っている間もスピネルの脳内では不思議だらけであった。
オークと言う生き物は聞いている話ではもっと野蛮で、二足の野獣のようなイメージであった。
それがどうだろう。目の前に居るのは紳士然としている。
「なるほど、お主もその門とやらで呼ばれた口か。
我はもっと整った場所で眠りについていたはずだが。
目覚めるとこの有様よ。」
スピネルは拾った刀を左手に持ったままであった。
相手が敵意が無くとも、未知の領域では何があってもおかしくない。
そして、スピネルは自らの身体が眠りにつく前に比べて大幅に弱っていることを実感していた。
「そうだな…我がこの世界に呼び出されたことには意味があるのだろう。
ならば、その意味を探すのも良いのではないだろうか。
さて、水先案内人とやら。まずは名前を教えてくれるか。
まさかオークと呼ぶわけにはいくまい。」
紅い瞳を細め、スピネルは答えた。
■シュルヴェステル > スピネルの態度に異を示すことはなく。
細やかなオークはそれが当然と言わんばかりに頭を垂れる。
白く、長めの前髪が目に掛かる。
「ああ、ああ。
……眠ったまま来られたのならば、幸いであったやもしれない。
《門》は何も考えずに喚び立てる。何をしていたとて平等に取り上げる」
刀に映り込む月が、僅かに途切れる。
雲が月を覆って、今は漏れ出る月の残滓のみが揺蕩う。
「そこに意味は、ないかもしれない」
静かに。それでいて、切実な呟きが一度だけ落ちる。
それきり、言葉に温度は再び含まれることはない。刀のように、熱は持たない。
「シュルヴェステル。人はそう呼ぶ。――『聡き檻』の。同胞はそう呼ぶ。
どちらでも構わない。必要なのは名ではない故。
意味を探すのならば、貴殿が人を厭わないのであらば、街へ」
人。この国を支配するもの。人類種。
それを、スピネルはどう思うか、と、静かに問いかける。
■スピネル > 「その様だと、お主は連れられる時に困った事があったようだな。
そして、今も苦労しているように見える。」
スピネルは相手の顔を覗かんと、首の角度を変える。
しかし、何度見てもオークとは思わん姿、振る舞いである。
人間と差異はどこにあるのだろうか。
「それはお主の解釈だろう?
我の解釈とは違うな。」
椅子も何もない場所で、頬杖めいた仕草を披露する。
今や一人で何もない荒野に居るまでに落ちぶれようと、長年身に着いた仕草は変わらない。
「『聡き檻』のシュルヴェステルか。
そうだな、まずはこの世界のことをよく知る必要があるだろう。
街へ案内せよ。後のことはこの世界の現状を知ってから考えねばな。」
シュルヴェステルに向け、指をさすスピネル。
どこまでも偉そうであった。
■シュルヴェステル > 「生を受けてからは苦労以外を知り得なかった」
ゆっくりと立ち上がる。
30センチ上からスピネルを見下ろすようなかたちになりながら、
流れるような所作で角材を片手に、くるりと踵を返す。
「街には、私は相伴に預かることはできない、が。
街へ往くならば、街を歩く案内人のほうが相応しかろう。
私は、この荒野の案内人。街は、既に人の領域。私には足の踏み場もない」
静かな言葉が、荒野に続けられる。
吹き付ける風は、ざらざらとした砂をも運んでくる。目を細める。
スピネルの歩幅に合わせて、その半歩前を常に歩き続ける。
「……街の入り口までなら。そこから先は、人の世故に」
そして、少しだけ皮肉げに。
「この世を歩き、意味を見い出すことがあったのならば、
私にどうか教授してほしい。……異邦の民の見出す意を、私は識りたい」
一言、ぽつり。
■スピネル > シュルヴェステルと名乗ったオークは巨体であった。
立ち上げれば、スピネルと視界の高さが随分と異なる。
細身であってもその巨体と手にした角材は相当な威圧を与える。
「お主、こんな荒野に暮らしておるのか?
てっきり街まで案内してくれるのかと思っておったぞ。」
異世界の遺物も乱立するこの荒野を領域としているらしいシュルヴェステル。
スピネルは彼の同行を期待していただけに当てが外れてしまった。
シュルヴェステルに先導されるまま、街の方角へと歩む。
「よく分からんが、お主にはお主がこうしているだけの理由があるのだろう。
我は我で街についてから色々と調べてみよう。
世話になったな。 そうだな、困った事があれば我を頼ると良い。
我は高貴なヴァンパイア。下々の者たちを導く者である。」
皮肉めいた科白にもスピネルは堂々たる態度で応え。
世話になった例に右手を差し出す。
彼が手を取ったなら、固く握り返して。
その後、スピネルは人の街へとたどり着いたことだろう。
■シュルヴェステル > 「街は、」
数瞬の間が置かれて、滔々と語り始める。
シュルヴェステルは、一般的に知られているオークの印象とはまた違う。
種全体が「こう」なのではなく、彼が変わり者であるだけだ。
「勧めない。私はこの荒野の先……現在の目的地。
ここは、この島の未開拓地区にあたる。その「開拓」の最前線。
……開拓村、と人が呼ぶ地に腰を据えている。いまは、だが」
海水魚が淡水で生きられないように、まさに文字通り。
進んだ「開拓」の地では生きられなかった異邦人の一人が、彼だ。
街にも、町にもいられなかったオークが許容できた共同体の大きさは村までというわけだ。
「……ああ。私も理由があり、理由があるがゆえにこうしている。
『人の世』に降り立ち、呼吸ができたのなら、どうか忘れて欲しい。
そして、『人の世』に少しでも違和を覚えたのであれば、どうか思い出して欲しい。
貴殿が、何ぞの理由を得ることを、私はどうか、祈っている」
アウトローな雰囲気が漂う旧時代の村。住んでいる者は風変りな者が多いと言われる村。
あるのは宿泊施設や住居、簡易研究所や畑、酒場程度。
その、「街」への窓口でシュルヴェステルは再び片膝をつく。
「高貴なりし吸血種よ。どうか幸運あれ」
手を取り、顔までそっと寄せる。
キャップに隠した肌角が手の甲に触れる。オーク種のまじないの一種。
ひとりの異邦人と、ひとりの異邦人が。
夜半、緩やかに道を違えた。
ご案内:「転移荒野」からスピネルさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」からシュルヴェステルさんが去りました。
ご案内:「開拓村のはずれ」にサクラ=ウィンスピーさんが現れました。
■サクラ=ウィンスピー > ある意味この辺りでは日常の一つではあるのだが、門から現れたモンスターが転移荒野で処理されず開拓村の方まで流れてきてしまうというイベント。
普段ならばこの村に住んでいるヒトたちだけでも、それほど苦労もなく退治できるモンスターばかり、むしろ食料といった意味合いでは積極的に狩られているはずなのだが…。
「わーお、こんな子が野放しにされてたりするんだ。」
稀に、ここで発生したのか事故で直接転移してきたのか、この村のヒトでも処理出来ないようなモンスターが現れる事がある。
その際は公安やら他の所から戦力を回してもらうのだが今回はたまたま遊びに寄っていたサクラが出向くことになった。
相手は見るからに凶悪そうな首が三つもある狼、それも各々の首によって扱う属性が違うのか、吐く息は辺りを凍らせ、燃やし、腐らせる。
自分の世界には存在しなかった力を持っているモンスターを目の当たりにして楽しそうに笑い自分の背丈よりも大きな薙刀を器用に片手でクルクルと回し、モンスターを見つめている。
■サクラ=ウィンスピー > 「さてと、実力拝見。オーガくらいには強くあってね?」
互いに警戒して動かない。
と言うわけではなく、こちらは単純に向かい合っているモンスターを観察しているだけ。
その間に攻撃の一つでもされれば反撃していたのだがそんな様子もなく、身体を低く構え、唸り声を上げながら逃げるわけでもなくこちらの様子を伺っている。
こちらも報酬をもらっている以上、村の人たちをそれほど待たせるわけにも行かない。
とりあえずは試しにとこちらも半身足を下げ、腰を落として構える。
「一発で死なないでね? チャージ、」
とりあえず中級スキルを一つ発動。
短時間の速度バフと次の一撃だけ火力を向上させる、ただの凡庸スキルだが。
だいたい4mほどの距離、踏み込みと同時に一息の間に詰め、片手のみで自身の得物を振るい袈裟に斬り裂く。
「ありゃ、これじゃあまだダメか。」
着地点に踏み込みと同時に流れるような一閃、通常のモンスターならその一撃で倒してしまうものだが、その首を一つ切り落とそうとした所で逃げられた。
完全に両断も仕切れず三分の二ほど切られた氷を吐く首は動かなくなっているがそれでも予想外である。
改めてこちらを危険と感じたのか、三首の狼は宣戦布告と言わんばかりに遠吠えを放つ。