2020/07/04 のログ
ご案内:「転移荒野」にツァラさんが現れました。
ツァラ >  
ここは転移荒野。
世界と世界が交わる場所。
"異なるモノ"が闊歩する場所。

夕暮れ時の空のキャンパスに新たな絵具が追加される時、
その薄暗さの中に目立つ白がポン、と現れる。

くるくると空中で回り、見事な着地。10点。

「あれ、あれれー……???」

長い耳をピョコピョコと揺らし、"それ"はキョロキョロと周囲を見やる。

はて、こんな場所、己の記憶にあっただろうか、と。

ツァラ >  
それは少年の姿をしていた。少年は長い耳を持っていた。

「なーんかすごい所に出ちゃったなぁー…適当に飛んでたのは確かだけどさぁ。」

眩しくもないのに目上に手を当てては、
青空のような蒼眼を細めている。

興味津々だというのを示すかのように、長い耳に連動して、
その背を覆うかのような真っ白でもふもふの三尾を揺らした。

「さっき見えてた穴みたいなのも消えちゃったしなぁ…。
 第一村人さんみたいなのも見えないんだけど。んーーーー…???」

言動に全くもって深刻さが感じられない。

ツァラ >  
「あれこれもしかしてヤバイやつ?」

あはーと楽しそうに笑みを浮かべている。

なにせここは転移荒野のど真ん中。
そして先ほど、ほんの一瞬だけ、小さな《門》が開き、そして閉じた。

「べっつにヒトが居なくたって暫くは生きていけるだろうけどなぁー…。
 何か生き物がいるんなら久々に食べるのも悪くは無いケド。」

頭の後ろで手を組んでいる。




「まぁさっきからなーんか見られてる感覚はするんーだけどー……。」

はたしてそれは意志が通じるモノか、否か。

ツァラ >  
と、少年が後ろを振り向こうとした、瞬間。



――グチャリ。

と鈍い音がして、少年の喉元を黒い蔦の絡まった槍のような何かが貫いた。



「あ、ハ…………は…?」

ツァラ >  
ごぷ、と喉元を過ぎて口から滴る。
アカイ、アカイ……。

あぁ、少年はこの未開の地で、未知のナニカに命を奪われて――…。







確かに、そう、見えた。

ツァラ >  
どうと少年が地に伏せる。
じわりじわりと地を赤が染めていく。

少年を貫いたソレが放たれた場所で、歓喜の声と共に立ち上がる人型。
それは獲物をしとめたとばかりに這い出て来る。


と、


目の前を、青く光る蝶が一匹、ひらひらと目線を奪った。

ツァラ >  
『……ふふ、ダメじゃあないか。油断しちゃ。』

それの真横で、にこにこと、微笑むのは……先程倒れた白狐の少年だった。



ざざざざと青い光の蝶が少年の死骸から飛び立ち、
夕暮れを照らし、幻想的な光景が生み出される。

まるで茜空が、青空の浸食受けたかのように。

先程汚れたはずの口元も、土についたはずの白い服も、
全部、全て、何事もなかったかのように立っていた。

ツァラ >  
「第一村人はっけーん、と、言いたかったけど。
 君はヒトではなさそうかな。言葉は分かる? お話出来る??」

青い光の蝶が集まるともう一人、同じ姿の少年が現れて、
二人でくるくると黒い人型の……この世界で言う、怪異に話しかける。


ぎゃぁあ!と歓喜の声も表情も失くした怪異は、
手に黒蔦の槍を生やし、ぶんぶんとがむしゃらに振り回した。

「「あっはは! 怒ってはいるみたいだね?
 こんな子供におちょくられたから? ねぇねぇ。」」

二人の子供は槍で薙ぎ払われるとまた蝶に散り、
槍にその蝶がふわふわと留まると……。

ポツポツとそれは青い火に変化していく!

ツァラ >  
大量の蝶が怪異を埋め尽くすように次々に火へと変わっていくと、
黒蔦の槍を焼き尽くし、本体にすら燃え移り、
焦げ臭い匂いを辺りにまき散らす。

「うえー……ここのヒトって皆こんななの? ヤダなぁ。」

ポンッと一匹の青い光の蝶が白狐の少年に変化すると、
自分の長い耳の片方を撫でつけながら、
もがき苦しみ焼け落ちて行く怪異を無感情に見下ろしている。

他の人が見えない故に、そんな感想を零す。

ツァラ >  
「うーん、とりあえず適当に歩いてみるかぁ……。
 まぁ、流石に僕が存在出来るんだから、人間はいるでしょー。」

そんなことをぼやきながら、耳と尻尾が散るように青い蝶に変わり、
見た目は獣ではなくなっていく。

ふわふわと蝶と共に、転移荒野を少年は歩み行く。



「幸せがー欲しいなー。油揚げもあるといいなぁー。」

るんるんと、スキップでもしそうな調子で、少年は歩いていく。

ご案内:「転移荒野」からツァラさんが去りました。
ご案内:「開拓村」にシュルヴェステルさんが現れました。
シュルヴェステル >  
賑やかなりし常世島。華やかなりし常世島。ただし、概ね島の西側以外。
島の西側――未開拓地区には未だ手つかずの荒野も残されており、
スポットライトの当たることのなかった、様々な《未知》や《生命》の墓場である。
されどそれは厳しいだけでは決してありはしない。

亡骸を踏み、死骸の上で暮らすことによってそこに営みが生まれる。
恐らく、この開拓村という村は『そういう』村である……とシュルヴェステルは思った。

……この島では、よくも悪くも命の価値が可変だ。
というよりも、命そのものがモノでしかなかったり、モノに命を見ている者もいる。
そのどれもが歪で、おそろしいものに見えてならなかった。

「――、」

トントン、と指先でカウンターを叩く。
この酒場における、「もう一杯」の合図。
言葉を重要としないこの酒場は、居場所のない異邦人である彼の一種の拠点と化していた。

誰とも関わらない状態で、この島で生きていくことはできない。
だから、関わる相手を選んで、探す必要がある。
人は一人では生きられない、というのは、ひどく残酷な真実でしかなかったのかもしれない。

シュルヴェステル >  
そして、この島の摂理がそれだった。
関わる相手を選び取り、繋いだ縁を手繰って生きる。
目の前に正解がなかったとしても、その先にはあるかもしれない。

夢のような世界だ、と、シュルヴェステルは思った。
同時に、気味の悪い世界である、と、シュルヴェステルは感じた。

差し出された背の高いグラスに注がれた奇妙な飲み物を受け取る。
無言で目を閉じて、額の肌角のある辺りまで片手を持ってくる。礼の所作。
店主は、それを見ても何を言ったりも見たりもしなかった。

この世界には、起きるはずの戦いが起きていない。

歩くだけで地を揺らし、他者を踏みつけるほどの巨大種が存在しないことが幸福である。
もしくは、存在していたがいまはいない、というだけかもしれないが。

歩くだけで誰かを害してしまう者と、誰もが平和に安全に、という願いを持つものは共存することは不可能だ。

この一点だけで、どれだけこの世界が歪であるかということは考えずともわかる。
必ず足音一つで一人が死ぬのであれば、誰もが安全にはいられない。平和にはいられない。
だというのに、この「誰もが平和に安全に」が成立しているように見える理由は一つだ。

多数から少数に対する、生存を人質にした多大なる譲歩の強制。

これが、この世界では常に行われていると、青年は考えている。

シュルヴェステル >  
「あなたが歩くと、誰かが死んでしまうのであなたは歩かないでください」。

巨大種が大多数を占めるのであれば、きっと踏まれる側が踏まれないように努力するだろう。
木の上に逃げ出すかもしれない。空を飛ぶようになるかもしれない。
そういった、ある種生存に必要な「進化」を、そうやって獲得しているはずだ。

「……違う、」

口の中で小さく呟く。
先日、この開拓村の辺りに三ツ首の狼種が出たと風の噂で聞いた。
『モンスター』から開拓村を守ったのが誰だったかということは知らないが、
この酒場で肉料理として提供されたという話を聞いた以上、恐らく生きてはいないだろう。

この開拓村は「自然」に近い地であると勝手に思い込んでいたが。
どうやら、それは自分の見ていた幻想であるようだった。

強大ななにかがやってくるたび、自然の摂理に従って、滅びを迎える。
そして、頃合いを見計らって再び再生される。
そういう納得の下にある村と思っていたが、この村はどうやら「守られていた」らしい。

「あなたがいると、この村の住民が迷惑を被るので死んでください」。

自分がようやく見つけた居所だと思った場所も、そうではないことを知ってしまった。
この村も、島の東側と同じだ。大多数の不利益を見て、少数の生存は否定される。

「間違っている……ッ!」

拳を、強く強く握り込みながら俯いて、小さく吠えた。

シュルヴェステル >  
同じ共同体に属しているだけと言えばそうだろう。
ただ、いまは軒下で雨宿りをしているのだと言い訳もできる。
それでも、それはシュルヴェステルにとって。どうしようもないほどに。

「……ッ、」

奥歯がガリ、と音を立てる。
人間よりも数倍強靭な骨組織。同じようで違うものを、噛みつける。
まるで自分を呪うように。自分を罰するかのように。

「……まるで、まるで、人間ではないか」

『誰か』の善意を享受して、何もしないことで弱者として振る舞うこと。
それが意図したものであれ、そうでないとしても。
結果として、現状は『誰か』に守られ、『誰か』の殺した狼種の肉を食っている。
生きるためといえば聞こえはいいが、本来、汚れるべきは自分の手だ。

食事とは、「そういう行為」であったはずだ。
シュルヴェステルの属するオーク種にとっては、食事は汚れた行為である。
同時に、神聖であり不可侵のものであり、汚れを負うことで生命の傲慢さを確認する行為のはずだ。

……だというのに。

それじゃあ、この島のどこなら「自然」が残されているのだ。
此処にないのならば、どこにもないのではないか。
行く場所など、はじめからどこにもありやしないのではないか。

『聡き檻』のシュルヴェステルは、この世界にやってきたときに死んでいて。
このシュルヴェステルという男は、ただの異世界の亡霊なのではないだろうか。

戦士の誇りも、オーク種の誇りも、そのどれもに泥を塗りたくらねば。
この世界では食事にありつけない。……とどのつまり、既にもう《私》は死んでいるのではないか。

「……違う、違う。杞憂だ、詭弁だ……」

渦巻き始めた思考は、止まることを許さない。
進むほかを持ち合わせないオーク種にとって、止まるのは死と同義。

無間地獄がこの地球上にもしあるのならば、ここを指す言葉であるのかもしれない。

ご案内:「開拓村」にサクラ=ウィンスピーさんが現れました。
サクラ=ウィンスピー > 「ハローお元気ー? あのお肉どうー、美味しかったー?」

カランカランと寂れた酒場の扉が開くとともにこの辺りには似つかわしくない明るい声が響き渡る。

トコトコと意識もせずシュルヴェステルの隣りの席にドカッと座りニコニコとしているが言葉から先日の件で現れた狼種を狩った『何者』かというのがわかる。

彼女は自分のしたことを気にも止めることはなく。
むしろ狩ったモノの味を聞くくらいには負い目を感じていないように見え。

シュルヴェステル >  
「…………、」

一拍二拍の間ではなく。
まるで自分だけ時間が止まってしまったようで。
息ができなかった。呼吸が止まってしまったかと思った。
それほどまでの衝撃を自らに与えた相手が、自分の隣の席に平然と座る。

「貴殿」

呼びかける言葉は、少しばかり力なく。
様々な感情の入り混じった言葉であるものの、努めて冷静を装いながら。
自分より遥かに背も低く、体格ができているとも言い難い少女に対して。
まるで、肉食獣に話しかける草食獣のような有様で。

「先日、狼種を狩ったのは、貴殿か」

揺れる声色は隠せていただろうか。わからない。
自分の中では整理などつけようもない。ただただ、一つだけ問うた。

サクラ=ウィンスピー > ニコニコと横にいる彼に対して感想はない。
目の前のオーナーらしき人にあの後の狼の売れ行きや話なんかを交わして談笑していると、不意のように横から尋ねられる言葉に会話を打ち切る。

「そうだよ。あの子があのまま悪さをしていればこの辺りも危なかったからね。」

自分よりも明らかに大きな体格をしている彼へと視線を向ける。
カウンターに乗り出していた身体を引いて椅子の上でくるりと向きを変えて言葉を続ける、さも当たり前のように。

「それに、ボクはこの村から報酬を受け取ったよ。もらった分の働きはしないとね。」

前者と後者、どちらが本音なのかは悟らせる気はなく。
ただ事実は言う、実際にあのまま放置していれば狼の生活域に村は巻き込まれて少なくない被害を出していただろう。

それは確実なのだ。

シュルヴェステル >  
「悪さとは、何だ」

その返答に対しての礼よりも先に、そんな言葉が口をついて出る。
報酬。村が「そうしてくれ」と彼女に頼み込んだのか?
だとすれば、この村全体が異邦より参った狼種を殺せと言ったということか。

「……ああ、ああ、すまない。
 私が冷静を欠いているという自覚はある。
 わけのわからないことを宣っているというのもわかっている。ただ、教えて欲しい」

ごくりと生唾を飲み込み。
フードとキャップ、二段階で隠した赤い揺れる瞳が少女へと向かう。
そして、半ば祈るように。シュルヴェステルは神を信じてなどいない。
それでも、いまこの瞬間だけはこの世界の誰よりも『架空の第三者』による救いを求めている。
まるで機械仕掛けの神の到来を待つ、捩じ切れた脚本のように。

「……それは、殺されるほど、悪いことなのか。
 危なくなる程度で、人類種や私のような異邦の種がすべて滅ぶことはないだろう。
 ……それでも、殺されるほど、それは許されないことなのか?」

これが許されないことだと言われてしまったら。
――この世界の、生命の摂理の全てとの不協和を起こすことになってしまう。
それだけは、この世界に参った生命の一つとして、これ以上なく受け入れ難かった。

サクラ=ウィンスピー > 何に対しての悪なのだろうか。
彼の問いに対してバカにするわけでもなく首を傾げて悩む。

「んー…そうだなぁ。キミの悪の基準っていうのがボクにはわからないけども…、」

自分は頼まれたから、と切り捨ててしまえば簡単な話だろう。
対価を払えるだけの力を持った側が正義となる力isパワーと、簡単な図式だ。

しかしそれではない気がした。

「危険だって思われる事は恐ろしい事だよ。だから、この村の人たちはあの子一匹を生かすより自分たちの命を優先して、そして生き延びる手段があったから実行した。」

あの狼を脅威だと認識されてしまった。
理由はどうでもいい、会話が出来なかった、村に被害を出した。ヒトを殺めてしまった。
それだけでヒトにとっては害のある存在だと認識される。
特に、異邦からきた化け物はそうやって見られるし、元の世界だって言葉の通じない相手にそうして来ていた。

「でもそうだなー。それで言うならあの子は生き残るために努力をしなかったから死んだ。って、それだけじゃないかな。」

ただ、中立の立場でどちらが悪いってことはなくて、生存競争の中に置いてどちらがどれだけ足掻いて、どちらの運が悪かったか。
今回はたまたま数の多い方が生き残っただけなんだろうと、持論だけで言うならそうだ。