2020/07/05 のログ
シュルヴェステル >  
「違う」

否定の言葉は口調が強かった。
少しばかり、周りの常連客たちが声をひそめた。
苛立ちを隠そうともせずに、正面から、まっすぐに少女を見て。
必死に他者の価値観への歩み寄りを試みながら――それが到底受け入れられないものでも――、青年は。

「私が言ったのは、貴殿が。
 貴殿が、『あのまま悪さをしていれば』と言ったことについて、問うている。
 ……その『悪さ』とは、一体何なんだ? 何をしたら、殺されるほどの悪となる?」

シュルヴェステルは、決して自分の価値観で物語ろうとしているわけではない。
精一杯、他者の言葉から、他者の価値観を、他者の物語を知ろうとしている。
知らないものを恐れているだけでは、殺された狼種と同じことを相手にすることになる。
そうするつもりはなかった。

「貴殿は、あのままいれば狼種が何をしたと考えた?」

質問はどんどん単純になっていく。
熱を帯びた言葉は、どんどん思考速度を上げていく。
だが、言葉が追いつかない。シュルヴェステルは、それを使う努力をしてこなかったから。
「生き残るために努力をしなかったから死んだ」。それと文字通り同じ。

生き残るために。この世界で、何らかの答えを得るために。
生存競争の中で、足掻いて、世界を呪いながら、それでも……どうしても!


――愚かなことに、諦めがついていないのだ。


「実際には何もしていなかったはずだ。
 襲われる側も生き残るための努力をしていないからそうなったのと同じだろう。
 貴殿の生業は、……弱者に、身不相応の武器を与えることなのか?」

サクラ=ウィンスピー > 「あの子に関して話すなら近い内に確実に出てたよ。」

周囲がどよめく、穏やかなはずの一時に波紋が立つような声色が響いたからだ。

自分よりも体躯の大きな相手が苛立つ様を見れば同じ体格の少女なら脅えるし泣き出しもするだろうが、それでも目を離すことはなく。

あの狼について絞って話す。

「まずあの狼が吐く息、三首の属性は違うけど火と氷と腐れを使った。個体としても一般人じゃ勝てないレベルだったし、キミはあの子が活動していた場所を見てみた?」

彼らが恐れていたのは抽象的な話ではなく、特にあの狼に的を絞った話であるなら、村に実質的な被害は無いが、存在するだけで恐怖を覚えられるということはつまり、間接的な被害は出ているということで、

「木や生物が根こそぎ枯れ果ててたんだよ。あの子が本当になにもする気が無くてもそれは脅威でしかないよ。」

あの狼の特性として共存すること自体が難しいなら追い払うか討伐するしかない。
残念だとは思わないし、倒す相手に感傷するくらいなら亡骸全部利用するのがサクラのため事実だけを告げる。

彼の求める答えにちゃんと答えられているかは自分はわからない。
比較的人間に近い体躯をしているし、自分はここに来ても恵まれている方なのがわかる。

だから目の前の自分よりも大きくて小さく見える彼にすべてわかってもらえるとは思っていない。

ここからは狼の話ではなく自分の話である。
サクラの持っているサクラの考え。

「それはそうだね。この村の人たちはたまたま居ただけのボクに会ったからたまたま生き残っただけ。でも、そうだね。ボクは対価をもらえば彼らが分不相応でもなんでも力になるよ。……例えば君が今、ボクに納得出来るだけの対価を提示して『納得がいかないからこの村を滅ぼせ。』なんて依頼をしてもボクはする。」

異邦人となってしまい、立場は違うがやることは一切変わっていない。
自分の発言でさらに周囲の空気が悪くなるのがわかる。
あからさまではないがこちらを監視するような目で、あの狼に向けていた目と同じものだ。

しかし知ってから知らずか、ジッと彼を見つめてどうする?と問いかけてみる。

シュルヴェステル >  
「噂程度には聴いている。
 ……私が言いたいのは、『強者による庇護はあらゆる進化を止める』と、」

そこまで言ってから、言葉は止まった。
首を軽く横に振ってから、「すまなかった」とだけ告げる。

彼が言いたいことは。
「危ないから」といって、全ての石ころを道から取り除くことが。
……それが正しいことなのか、ということであり、同時に。
彼女の言うことはシュルヴェステルの言う「自然な状態」の否定だということだ。
必ず生きていれば、生命である限り何らかのイベントは起こりうる。
それを「誰かに代わりにやってもらう」だけでは、先には進めない。進化できない。


「わからない問題」があったとして、答えを誰かに教えてもらうことは正しいのか。
目の前の少女は、頼まれれば対価があるとはいえ、当たり前のように答えを告げている。

それは正しくなかろう、というのが、シュルヴェステルの意見である。
きっとどちらが正しいという結論も出なければ、平行線でしかない。
平行線だからこそ、わかりあうことはできない。納得などできようものか。


植物も、生物も。そういった「上位種」がいるからこそ食物連鎖が起こる。
それに合わせて、長い長い時間を掛けて環境側が適応していく。
その可能性を奪うことは、長い目で見れば生命の進化の否定である、というのが彼の意見だ。

「貴殿に出会えてよかった。
 ……次に貴殿に、『このような場』以外で出会ったら。
 私は恐らく、言葉を用いることはしないだろう。それは、……ひどく、悲しい。
 荒野で貴殿に出会わないことを、どうか心の底より祈る」

瞬きを一度だけして、息を吐く。
冷静さを取り戻す儀式のように。人間の真似事をするように。

「私は、世界が壊れることは了承しよう。それが自然の摂理ゆえ。
 ……ただ、貴殿が世界を壊すためのつるぎを抜いたのならば、私は」

椅子から降りて、すれ違い際に一言だけ呟く。

「貴殿に、牙を向けることになろう」

振り返ることはしなかった。
熱を持った頭を冷やすように長いグラスの飲み物を、自分の頭の上で逆さまにする。
酒場の誰もが、もうシュルヴェステルを見てはいなかった。

シュルヴェステル >  
 
――言葉に、意味などない。
 
 

ご案内:「開拓村」からシュルヴェステルさんが去りました。
サクラ=ウィンスピー > きっと意見は合わないだろうんだろうなと、去っていく相手を見送っていく。

こちらにとっては弱者を守ることはよくある話で、自然の摂理だと割り切って先日まで笑い合っていた相手を無碍にする事は出来ないから。

きっと話してもわからないし、きっとどこかでぶつかるんだろうなと結論付ける。
それでもまた、どこかで話すなら今度は楽しい話題がしたいと思う。
眉間に皺を寄せてウンウン呻るよりもそちらの方が個人的に好きだから。

「おじさんー。それじゃあねー。」

最後に、先日の狼から採れた素材の換金を済ませる。
けっこうな価値があったらしく報酬と合わせて懐もホカホカだ。
今日はこれで何を買って食べようか。

先程のやり取りから切り替えてそんなことを思案しつつ村を後にするのだった。

ご案内:「開拓村」からサクラ=ウィンスピーさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」に持無 童男さんが現れました。
持無 童男 > 「某は、このダイスを、コントロールしなければ。守れるものを守れないと思った。」

怪異を鏖した。あのときのようにはならないように

「精神汚染を克服するために、この力を使うでござる。ここなら誰もこないでござろう」

と言いつつ。ベルトを腰に巻きつつ
「変 身!」
一呼吸をおいて、変身する

持無 童男 > 「イビルダイスロールゥ・・・・」
ダイスロールぅ!!!!!!と甲高い声とともにベルトのダイスが
回る
闇が持流を包み、そして、闇が従うように、持流に装着冴れていく
重低音とどすの利いた音がながれ、闇の中から赤い稲妻が走る。
地獄から響くような声とともに
「ワーニング!ワーニング!ワーニング!ワーニング!」
「RISE UP・・・ダークネスヒーロー」「ヴィラン、レッドラム、デストロイ、「「マーダーズ」」
「暗黒の英雄:ドラクロ!!!!!!ヤベーイ!!!エグーイ!!!」

なかから冷ややかな赤い目をした涙を流し、そして底冷えするかのような気配を携えた異形が底に立っていた。、

持無 童男 > 「・・・・・・」(よし今度は、うまくいっ・・?!?)」

うつむいたまま動かない、いや周りに動く目的がないから動けないのだ。

「(危なかったでござる。ここで人に会ってたら確実に「殺意しか無い」動きで追い詰めてたでござる。・・・しかし体は、もうちょっと馴染むでござるか。手は・・かすかに動けるでござるな。足は・・・まだでござるな)

意識とは裏腹に、思考とは裏腹に、転移荒野に、『殺意』が溢れ出す。

持無 童男 > 「(こういう自体にも、訓練して置かなければいけぬな・・しっかし、こいつ殺意が溢れ出過ぎでござろう。)」

と言いつつうつむいたまま幽鬼のごとくただただ佇む。

「(とりあえず足はまだだから、拳をうご・・!?殺意に飲まれかかる・!?)」

地面を思い切り殴った。瞬間、地面に亀裂が走る。

持無 童男 > 「(ちょっと動かしただけでこれでござるか。本当にエグい殺意でござるな)
思考しながら土煙の中から佇んでいる狂戦士がいる。

地面に亀裂が走っている。

あたりは暗いがさらに、凄まじく暗くなっている。「悪意」と「殺意が」あたりを更に暗くする。

「(お、足が慣れてきたでござるな)」
一歩踏み出そうとしたら、地面が、クリームのようにえぐれて、荒野に狂戦士が飛んだ。
(一歩でこれでござるか!!)

持無 童男 > 「(しかし、傀儡女の柰殿のようにここには怪異がいなくて、よかったでござるな。出会ってたら速攻で、バトルでしたぞ)」

空中に飛び出しながら落下しながら考えつつ

落ちていき衝撃音が鳴り響き着地する

「(よし感じはなんとなくわかってきたでござるが、たまに暴走するでござるなこれ)」

持無 童男 > 「(殺意に飲まれかけてるでござるが、動くものもないでござるしこのまままず足を慣らしていくでござるか)」
幽鬼のごとく、ゆっくり、ゆっくり一歩一歩踏み出すごとにあたりに「不浄」「殺意」「悪意」が更に溢れ出し深夜の夜を黒一色に塗りつぶす。

踏み出すごとに、黒い煙のエフェクトが流れ出てくる。

「(よし一歩を踏み出すことはなんとかせいこうしたでござる)」

持無 童男 > 常人が見れば悲鳴を上げるくらいには、その視線は赤くランランと輝いていた。

「(こうやって一歩踏み出すのでござるか。一歩踏み出すごとに飲まれかけるでござるなっ)」

圧がすごいでござるよな。この姿。と思いつつ

「・・・・・・・・」

幽鬼の狂戦士は、ゆっくりただゆっくり荒野をぐるぐるしている。

持無 童男 > とりあえずベルトを取ってから、帰って寝るでござるかと思いつつベルトを取ったが、凄まじい脂汗が吹き出た。

「ふぅ・・明日も練習するでござるか」

といって荒野を後にした。

ご案内:「転移荒野」から持無 童男さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」にさんが現れました。
> 広がる荒野。
空間に、小さな穴が開く。門と呼ぶにはかなり小さいが、それは間違いなく転移が起きる際に生じる『門』である。

そして、そこから吐き出される、小さななにか。

ご案内:「転移荒野」にキッドさんが現れました。
キッド > 転移荒野を歩く一人の男。
背丈の高い黒ずくめの少年。
咥えた煙草からは煙草特有の匂いこそしないが、吐き出す煙は当然けむい。
風紀委員の職務…と言う名の自己パトロールめいて移動している最中だった。

「まさに、荒野のガンマン……ってね。……ん?」

そうこう言ってたら、何かが現れた。
『門』の兆し。咄嗟にホルスターに手を添えたが
出てきたのは小さな小さな……人影?
訝しげに見ながら、荒れた大地を踏み鳴らして近づいていく。

「なんだなんだ、随分と小さなお客さんだな。よぉ、気分はどうだい?」

> 飛ばされてきたそれは、べちゃっと地面に叩きつけられてから、すぐに頭をあげる。

「ᚼᛂᚱᚮ, ᚱᚢᚿ ᛆᚥᛆ......ᚼᚢᚼ...? ᚥᚼᛂᚱᛂ ᛁᛋ ᚼᛂᚱᛂ?」

小さな人の形のそれは、声を掛けてきた存在を見ると、その眼前までふわりととんで、まくしたてる。

「ᚥᚼᚮ ᛆᚱᛂ ᛦᚮᚢ? ᚥᚼᛂᚱᛂ ᛁᛋ ᚼᛂᚱᛂ?」(あなたは、だれ?ここはどこ?)

キッド > 「……おっと……。」

目の前の小さなそれが囀った音。
全く以て聞きなれない言語だ。
転移荒野、異世界の住人。誰も彼もが初めから言葉が通じる訳じゃない。

「参ったね。アメリカ荒野じゃなくてジャパンだったかい?」

ジャパンを何だと思ってるんだ。

とは言え、男も用意がないわけではない。
何事も下準備くらいはしておくものだ。
そんなわけで目の前の小さいのの前に
ペンとメモ帳を置いた。
人間用なので、相手からしたら大きく見えるかもしれない。

「悪いなティンカーベル、もう一度だ。今度はソイツ書いてみてはくれねぇかい?」

今度は身振り手振りをつけて伝えてみる。
さて、とりあえず第一段階
言語の文字化までいけるかどうか。

> どうやら、こちらの言葉は届いてない。
相手の言っていることもよくわからない。

「ᛑᛁᚠᚠᛂᚱᛂᚿᛐ ᛚᛆᚿᚵᚢᛆᚵᛂ...」(言語が違う…)

どうしたものか、翻訳の妖精魔術を使うにも相手が未知の言語では難しい。

そうして悩んでいると置かれた棒と紙。
あちらでも似たようなもの──それは羽ペンと羊皮紙ではあるが──を見たことが有り、意図はなんとか察した。

『ᚥᚼᛂᚱᛂ ᛁᛋ ᚼᛂᚱᛂ?』(ここはどこ?)

両手で抱えて、全身を使って文字を書き込む。
書かれた文字は、例えるならルーン文字に似ている。

キッド > よしよし、意図は通じたようだ。
少なくともある程度の文化はあるらしい。

「どれ……。」

書かれた言語を見ながら、常世産電子辞書のカメラにかざす。
科学区産の優れもの。似たような言語をピックしてくれる。
そう、飽く迄"似た言語"を。そうそうドンピシャといかない。
世界の数だけ、言葉があるのだから。

「…………。」

煙草を上向きに咥えて唸り声。
にらめっこしながら何分、何十分。
男はペンを紙面に走らせる。

『ᛏᛟᚲᛟᛃᛟᛉᛁᛗᚨᛁᛋᛖᚲᚨᛁ(とこよじま いせかい)』

『ᚹᚨᛏᚨᛋᛁᛏᛁᚨᚾᛁᛉᛁᛋᛟᛋᛁᚲᛁᚾᛟᚺᛁᛏᛟ(わたしちあんいじそしきのひと)』

『ᚨᚾᚨᛏᚨᚺᚨ(あなたは?)』

さて、似たような言葉を必死に書いてみたが、どうだ。
緊張の一瞬だ。

> どうやら、自分が迷い込んだ側らしい。
相手は意思疎通をしようとしてくれてるわけだし、おそらくそれにあやかるのが最善だろう。

「ᚥᚼᛆᛐ...」(何……?)

しかし、書かれたものは確かに似ている文字だがなにか違う。
少し顔をしかめて考えた後、何かを唱えた。

"ᚠᛆᛁᚱᛦ ᛘᛆᚵᛁᛍ: ᛁᚿᛐᛂᚿᛐ ᛐᚱᛆᚿᛋᛚᛆᛐᛁᚮᚿ"

それから、文字を指でなぞって、口をぱくぱくさせる。
読み上げて欲しいようだ。

「ᛔᛚᛂᛆᛋᛂ」(お願い)

キッド > 「……アー……。」

如何やら、ちょっとミステイクらしい。
これだけでは意思疎通に至らなかった。
口元をへの字に曲げて、後頭部を掻いた。

「参ったな……。ア……?」

今度は読み上げろと言っているようだ。
チッ、と舌打ちを打ちながら翻訳機とにらめっこ。

「おいおい、此処は大使館じゃねェんだぜ?まったく、しょうがねぇな……。」

悪態吐きながらも真面目にやってくれるようだ。
死ぬほど唸り声を上げながら口にちょっとずつ出していく。

「……ふ、ふぇありー……まじっく……いん……?……?何……?」

これであってるのかどうかさえ不鮮明。

> ちょっと驚いた顔をする。

先程相手が書いた文字列を読んでほしかったのだが、
書き込んだ呪文の方を読まれてしまったようだ。
しかしそれでも問題なかったようで。

「,,,,,,」

顎に手を当てて考える。thinking_faceの絵文字のように。
何かを唱える。手元に葉が現れる。一見普通の木の葉だ。

「ᛚᛂᛆᚠ」

それを指差して。

「り、い、ふ」

合ってる?、と目線で確認する。

キッド >  
「……アー、もしかしてマズい事言っちまったか?」

意思疎通の完全すれ違い。
変に目が良いのも考え物だ。
驚いた顔されたものだから、困ったように頬を掻いた。

そうこう言っていると、小さなの手元に葉っぱ。

「お……。」

「そう、それだ。リーフ。オッケーだぜ、ブラザー。」

人差し指と親指グッド、とマルを作りニヤリと笑った。
どうやら前には進めたらしい。

> ぐっと手を握って頷く。
身振りが大きいのが本来の意思疎通の形のようだ。

「tocojoximaisecai、とこよじま、いせかい」

納得したようにもう一度頷いて、何かを唱える。
ぽわっと、妖精の姿が光る。

「あー、こんにちは、こんにちは、どう?通じる?」

ふわりとまた眼前に飛んできて、伺うように覗き込む。

こちらが異邦の存在であるなら、郷に入りてはなんとやら。
ひとまず簡易でも翻訳魔術を作り上げる。

キッド >  
ヒュー、思わず口笛が漏れた。
小さいのが光った途端、すっかり此方と同じ言葉を喋っている。
何かの魔術のようだが、通じれば何でもいい。
ほっとひとまず、胸を撫でおろした。

「ああ、バッチシだぜティンカーベル。ついでに、ほっぺにキスでもしてくれるかい?」

ニヤニヤと何時ものジョーク交じりに頷いた。
煙草を一旦二本指で挟んで、煙がかからないようにはしておく。

> 「やった」

くるくると頭の周りを飛ぶ。
なんだかシャラシャラと音がする。

「えー?投げキッスで我慢してもらえる?」

片手で軽くジェスチャーの後、再び顔の前に戻ってくる。

「さて、冗談は置いておいて。
 ここ、ᛑᛁᚠᚠᛂᚱᛂᚿᛐ ᚥᚮᚱᛚᛑ……異世界って言ったね。私が、迷子なのかな」

翻訳はあくまで簡易。ところどころ違和感はあるかも知れない。

キッド >  
「ベルでもつけてんのかい?お前さん。」

なんだかシャラシャラいってるぞ。
本当にティンカーベルなんだろうか。

「ヘッ、仕方ねェな。ツケにしとくぜ?」

何て軽口を叩きながら、煙草を咥えた。
多少の煙たさは我慢して頂く方針だ。

「アー……何?ま、とりあえずそうだな。生憎ここはネバーランドじゃねェ。」

「と・こ・よ・じ・ま。…常世島って吹き溜まりさ。ここは、アンタみたいなのが良く出てきてねェ。」

「俺みたいな暇人が保護なり何なりしてるってワケだ。」

「ま、アンタはつまり幸運だった、って事さ。」

> 「ベル?……ああ、音のこと。妖精は"そういうもの"だと思って」

特有の飛行音らしい。突っ込んでも原理はわからないかも知れない。
研究機関にでもかかれば話は別だが。

「あぁ、つまるところごった煮なのね」

煙を気にする様子もなく、翻訳の結果で変な言葉を使いながら、頭を掻く。
変な所に迷い込んでしまったし、この様子だと帰る手段もそうそう無いようだ。

「幸運、それはそうだね。
 あのモンスターがついてきていたら、お話どころじゃないし」

どうやら追われていたようだ。
不運にも迷い込んだが、幸運にも逃げ延びた。
それは肯定する。

「私は、テ。あなたは?」

キッド >  
「"そう言うもの"。」

成る程ね、そう言うものなら仕方ない。
本人がそう言うならそう言うものだと考える。
異世界の常識なんて、そんなものだ。

「理解が早くて助かるねェ、ティンカーベル。ま、それなりに楽しい所さ。」

くつくつと喉を鳴らしながらからかうように笑っている。
割と適当な事を言っているのは間違いない。

「キッド。ろくでなしのクソガキ、キッドさ。」

「テ。テ、ね……いや、シンプルな名前だと思うぜ。モンスターッて事はアンタ、襲われてたのかい?」

コッチから見れば中々不思議な名前。

> 「まぁ、魔法、魔術のようなものね」

少なくとも科学的な物ではないだろう。
物理的に考えれば、こんな虫のような薄い羽で、飛べるはずがない。

「"子ヤギ"……?じゃあなくて、名前か。キッドね。分かった」

翻訳で誤認しそうになる。ありがちなやつ。

「やっぱり違和感ある?
 私のところでは妖精は個体が少ないから、名前も短いの。
 大きなヘビのようなモンスターに、勇者様たちと襲われて……」

味方の窮地の話をするが、取り乱す様子は無い。
どうやら無事を確信しているようだ。

キッド >  
「成る程ねェ、生憎そう言うのはからっきしでねェ。とっておきのジョーク位しか披露出来なくてね。」

知識は無いがそれに排他的になる程でも無い。
混沌とした世界の中でも種族だの魔法だので差別するほど
器が小さい男でもない。口は軽いが。

「フフフ、生憎チーズは品切れさ。」

仰々しく両手を広げて、肩を竦めてみせた。

「まぁな。コッチの世界から見ても、珍しい名前だと思うぜ?
 個体数で名前が決まるなら、さぞ人間様の名前は長いんだろうな。」

「で、だ……勇者、勇者ねェ。御伽噺でもされてんのかい?俺は。
 ……まさかとは思うが、その"モンスター"ってのも付いてきてねェよな?」

可能性は無くはない。
徐に周囲を見渡して、他の転移予兆などが無いか警戒しているようだ。

> 「ジョークが上手いのね、あなた」

そのジョークも、本人のスタンスも嫌いではないようだ。
くるりとその場で回って笑う。

「どうかな。例えばᚵᛆᛁᚢᛋ ᛁᚢᛚᛁᚢᛋ ᛍᛆᛂᛋᛆᚱって感じの名前。」

カタカナに直せば12文字。しかし妥当な翻訳が出来ないので、意味は伝わらない。

「勇者と言っても、こっちの言葉だと…ハンターみたいなものだね。
 モンスターは……」

ふわっと少し飛び上がり、あたりを見回す。
そしてすぐに戻ってきて。

「来てないよ。隔離の魔術はうまくいったみたい。
 私もこうして隔離されちゃったけど……」

やれやれと、真似をするように肩を竦めてみせる。
転移の予兆もなさそうだ。

キッド >  
「モテる男の秘訣って奴さ。」

どちらかと言うと人に嫌われるスタンスをとっているタイプだ。
この言葉も自身への皮肉、ジョークである。

「"賽は投げられた"……ってね。名前だけでいやァ、そこまで俺達とセンスは変わらないみたいだな。」

翻訳機片手に自身のこめかみをトントン叩く。
とは言え、持ってこられた名前も偶然か。
聞けば聞く程ファンタジックな世界のようだ。

「成る程ね。それなら俺も、アンタにとっちゃ"勇者"って所か。」

正しく、悪を裁くハンターだ。
跳び上がった時に何気なく"下から覗こう"と視線を上にやったりする辺り、男の子だ。

「ソイツは結構。余計な弾を使わなくて済んだな。」

> 「カタいのよりは全然いいよ」

軽く流す。
彼女が言う勇者もまた軽いタイプの人間なのかもしれない。

「何?格言かなにか?」

向こうの人がどういう生き物かはわかるが、人の歴史には疎い。
といっても、向こうの歴史を知っていた所で、役には立たないだろうが。

「あら、偶然……でもないか。
 見た所人の気配もないようだし、ここがそういう場所なのは予想ができる」

誤解をしているが、さして問題もないだろう。
下から覗かれたことには気付いていない。なお、ぱっと見は人間と同じだ。

「……それで。あなたが私を保護してくれるの?」

保護してもらえるというのなら、おとなしく従うのが最善だろう。
意思疎通の出来ない、いわば悪霊のように扱われては溜まったものじゃない。

キッド >  
「そりゃどうも。」

言葉通りモテて嬉しいよ。
白い煙を吐きだして、鼻で笑い飛ばした。

「フ……いいや、"捨て台詞"さ。」

少なくとも男にとっては、如何なる野心家も半ばで倒れればその程度だ。
死人に口なしを良い事に、言いたい放題。怖いもの知らずだ。

「運命の導きって奴さ。……ま、俺以外にも"勇者"のくくりは星の数ほどいるがね?
 それこそ、俺よりも過激な連中や、正義漢もいるってことさ。」

向こうの勇者のくくりは知らないが、自分の知る限り目立つタイプはそんなものだ。
こういう時にちょ~~っとだけ異能を発動してよく見ておくのも大分ちゃっかりしてる。
……まぁ、ちょっと後ろめたい気持ちはあったのか
ンン!と軽く咳払いした。

「一人荒野を彷徨いたいなら別だがね。アンタは話も通じるみたいだし
 生活委員会……ま、所謂アンタみたいな迷子を保護してくれる部署までエスコートするさ。」

「お手をとってくれるかな、ティンカーベル。」

なんて、わざとらしく、キザったらしく
人差し指を握手代わりに差し出した。

> 「捨て台詞ねぇ……」

語られる捨て台詞がある。さぞ有名な人物なのだろう。
まぁ、今はそんな事はどうでもよい。

「なるほど、これは確かに幸運だね。
 相手によっては出会い頭にはたき落とされて文句も言えなかったわけだ」

怖い怖い、と縮み上がるジェスチャー。わざとらしい。
体が小さい分、身振りは大きくしているようだ。
向こうでも人間との交流には必要なのだろう。

「一人でもまぁ……生きながらえることは出来ると思うけど。
 教えてもらいたいね、ここのこと。そのほうが、過ごしやすいし。
 どのみちすぐには帰れなさそうだし」

「よろしく、キッド」

くるりと回って、両の手で人差し指を掴む。

キッド >  
「あり得なくはなかったな。あンまりきかねェが、アンタみたいなのは此の島でも結構問題にあがりがちなのさ。」

異邦人街一つとっても、異邦人問題は尽きない。
そもそもこの世界一つとっても、肌の色でいざこざを起こすような人間もいるんだ。
世界が違う、文化が違う、そう言った違いすら許容できなくてある意味当然だ。

「……ソレに、この荒野自体がな。"何が起きようが自己責任"でね。ソイツは多分、"アンタ等"もって事なんだろうさ。」

臭いものには蓋をしろ、とは言う。
面倒事に関わらないのが一番なのは間違いないが
面倒を起こす前に"無かったこと"にしておけば幾らでも言い訳も出来るという寸法だと思っているようだ。

「フ……。」

掴まれた人差し指を軽く上下、ニヤリと笑う。

「ようこそ、テ。世界から爪弾きにされた冥途の世界に。」

「とりあえず、面倒が起きない内に行くとしますかね?」

男は軽く踵を返し、歩き始める。
付いてくるのも肩に乗るのもご自由に。
何時もの様に軽口を交えながら、彼女を生活委員会に送り付けるだろう。

> 「じゃあ……パニックになって通りがかりの誰かさんに襲いかかって殺される、なんてこともありそう」

小さい種族なりに、身の振り方……世渡りも技術の1つなのだろう。
自分のように折れることができない、という存在も居るだろうことは予想出来る。
そのあたりがどうやって折り合いを付けているのかも、少し気になった。

「自己責任、か。迷い込んだ知らない側からすれば溜まったものじゃないね」

渋い顔をする。ひどい話だ。
……本当に今回は運が良かったようだ。


「ん、早く行こ。荒野じゃない所も見てみたいし」

拒まなければ帽子の上、そうじゃなければ肩に乗るだろう。
自由に飛べるとはいえ、体力は使うらしい。

翻訳魔術を少しずつアップデートしながら、エスコートに身を任せるのだろう。

ご案内:「転移荒野」からキッドさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」からさんが去りました。