2020/07/19 のログ
ご案内:「転移荒野」にウィズさんが現れました。
■ウィズ > ごぼごぼと土が泡立つ。正確には、その土の下にあるもの……
その下に湧き出たものが、泡立ち湧き出す。
朝焼けのように鮮やかな橙の液体が地面を割って流れ出した。
「…………。」
ズルリと、その中から人の影形が立ち上がる。
……正確には、人そのものではない。
その腕は2対4本が文字通り四方へ伸び、液体が滑り落ちた顔には翡翠色の四眼が光る。
■ウィズ > 「…………此処は何処か喃(のう)。
我は先程まで……いや、何をしておったか。」
べちゃ、と地面に広がる粘液を踏みしめ、あたりを見回す。
草原と剥き出しの岩場が広がるだけの世界だ。
遠くには街らしきものも見えるが、なかなかに遠い。
『転移荒野』。
この世界とは異なる世界の何者かが、あるいは何かが、予兆もなく突如としてその場に現れる……
かつて世界を書き換えた『大変容』の傷跡の一つ。
……かどうかはわからないが……とにかく、そういった不思議な場所だ。
その事にはこのスライムは気付いていないし、気付くことも暫くはない。
……ただ、身に起こった「転移」という異常事態には気付いている。
■ウィズ > 「…………なにはともあれ、喉が渇いた喃。腹が減った喃。
何処か知らぬが、探せば飯の一つや二つあるであろうが。
……痕跡から見るに、ヒトの文明はあるようだから喃。」
ずる、と地面に這い蹲る。
……すんすんと鼻(を模した器官)を慣らし、辺りの土の香りを嗅ぐ。
この場に人が居た痕跡は、ある。踏み潰された草の汁の香りと、掘り返された土の香り。
それが遠く、恐らく遠くに見える街の方まで続いている。
腹の中、瞳と同じ翡翠色のコアの付近に手を突っ込み、中から黄金の小さな円盤を数枚取り出す。
「……応。この姿では無用に面倒か喃。
我の見知った『ヒト』かは知らぬが……行ってみるか。
……この世界でも金銭のやり取りが通じれば善いが喃。」
そしてそれをしまい込み、再び歩き出した。
……ウィズ・C(チェリイ)・ベルキュライム。
かつて在った世界において、スライム種の賢者と称される、『異常知能個体』。
本来知性や知能をほとんど持たないスライム種において、ヒトの成体と遜色ない
知能を持っていると判断された、規格外の存在である。
……最も、それがアドバンテージになるほど文明レベルが低くない世界だということは、
もうすぐ知ることになるわけだが。
ご案内:「転移荒野」からウィズさんが去りました。