2020/07/22 のログ
ご案内:「異世界産廃墟郡」にアーヴァリティさんが現れました。
■アーヴァリティ > この島は異常だ。
いや、そんな事は今更言い直すまでもなく、この島に来た時からわかっている事なのだが。
光の柱を見つめる怪異の頭に突然浮かんだ言葉がそれだったというだけだ。
転移広野の一角にある何かの結界が貼られた異世界の廃墟郡。
地球でも探せば似たような場所はあると思えるような、そんなありきたり、と言っては何だが異世界らしく無いと言うか、独創性に欠けた廃墟。
その中心に近い場所にある一際遠くまで見渡せそうな瓦礫に腰掛ける怪異。
転移広野に立つ巨大な光の柱を遠巻きに眺める姿は、風紀委員会に指名手配される恐ろしい怪異というよりかは、辛い現実に思い悩む一人の人間のようで。
虚、という程でも無いが。
何か答えの出ない問いに没頭しているような、何を映しているかわからない瞳で光の柱を眺め続ける。
夜の闇に浮かぶ煌々と、神々しく輝くそれを。
「…やっぱり、この島に来てよかったよ」
足をぶらつかせ、気分転換か気まぐれか、その足をゆっくりとぶらつかせて。
現実逃避気味に呟いた言葉が怪異を一時的に現実へと引っ張り出す。
と言っても、何も写さなかった瞳が光の柱をいう異様な光景のみを映しだす鏡へと変わっただけだが。
■アーヴァリティ > 「うん、やっぱりこの島は可笑しいよ」
やけくそ気味の笑みが漏れた。
ああ、本当に可笑しくて、素晴らしい島だよ。
別に悪口が言いたいんじゃ無い。この島は本当に素晴らしい島だよ。
この島に来てからいっぱい戦えた。切人とか、神代君とか、アフロ君とか、凛霞ちゃんとか。
他にもいっぱい戦えた。楽しかったよ。
「うん、楽しかったよ。楽しかった。楽しかった。」
言い聞かせるように呟く僕。
やめろ、自覚するな。無理に笑うんだ。
戦うのは楽しい、僕は怪異だ。僕は怪異であることに誇りを持っている...
『楽しかった事はそれだけ?』
両手で頭を抑える。そしてそのまま振り下ろす。
腰掛けている瓦礫に頭をぶつける直前で思い止まった。
自傷行為しに来たわけでは無いと。
言葉を発したら認めることになる。
認めたく無い認めたく無い認めたく無い。
必死に、頭にこびり付いた何かを無理やり払おうとするように。
首が飛んでいくんじゃ無いかというほどに首を左右に只管に振り続ける。
■アーヴァリティ > 『切人と体を重ねたり看病しに行ったりお話ししたりしたのは?
神代君とお茶したり銃を貰ったのは?
凛霞ちゃんと病室でばちばちしたのは?』
やめろ。
『レイヴン先生と駆け引きをたのしんだのは?
ありあに看病してもらったのは?
ルギウスに昔のことを話したのは?』
やめて。
『学園に忍び込んで生徒のふりをしてお話ししたのは?
生徒のふりしてアイス屋でバイトしたのは?
違反部活生のふりをして違反部活に参加したのは?』
『たのしくなかったの?』
「やめろやめろやめろやめろ!やめて!
これ以上言わないで!」
頭をいくら振っても落ちない。
酷くこびり付いた、否、自分でこびり付かせてしまった思考が脳を犯す。
楽しかったのは何も戦いの記憶だけでは無い。
気づけと。気づかなければいつまでもこのままだと。
なぜ死を恐れた。なぜ進化を続けてきた。
それを思い出せと。お前は何故こうなったと。
『なんで、本当の姿を誰にも見せたく無いの?』
「知らないよ!知らない知らない知らない知らない知らないっ!?」
いくら頑丈な怪異とはいえ、その人外じみた力で頭を振り続ければ、危険である。
頭の振りすぎ、なんて馬鹿らしいが。振りすぎた脳味噌が限界に近づき、一時的に体が痺れた。
頭を振った勢いのまま、人形のように倒れる怪異。
気づけば息は荒く、目の端には涙が溜まり、倒れた衝撃でその涙が流れ出した。
■アーヴァリティ > 「僕が...本当の姿を...見せたく無い理由は...」
一度流れた涙は止まらない。
止め処なく、せせらぎは音も無しに流れ続ける。
頭を押さえたまま、痺れた思考の中で。古い記憶を。大変容よりも前の記憶を。
違和感なく戦い続けた狂った僕を思い出す。
あの時の僕は...いや、今もそうかもしれない。
痺れた思考が、ヒビの入った堤防がその真実を。
もうこれが溢れれば止まらないだろう。
さあ、壊せと。聞こえない声が。痺れた思考の影から応援する。
悪意なき、我が身を思いやる優しいこえで応援する。
そのくだらない自己防衛の堤防を乗り越えて、成長しろと。
「孤独...が...嫌だから...」
『おめでとう!少し気が早いけど、僕はきっと乗り越えられーーー』
「違う違う違う違う!僕は人間じゃ無い!怪異だから!人間じゃ無いから!」
なんて事を口走ったんだと。慌てて、そうでもなければ死ぬのかってぐらい勢いよく体を起こして。
勢い良く空を仰ぎながら、言い聞かせるように。
孤独でいいんだ、って。孤独じゃ無いんだって。
僕は孤高の怪異なんだって。
醜くい叫び声を上げ続ける。