2020/08/12 のログ
ご案内:「転移荒野」に御堂京一さんが現れました。
御堂京一 > 「はぁ……なんかでっかくね?」

荒野を撫でる風に吹かれてマントのフードが背中側に落ちていく。
目の前に居るのは岩のようなごつごつとした鱗を背中に持つ地竜と呼ばれる異世界から流れてきた生き物。
もっとも竜と名は付くものの真性のドラゴンとは血縁すらないただの巨大爬虫類である。
そう、巨大なのである。

強靭な後ろ足で立ち上がり鋭いカギ爪を持つ前肢を威嚇するように振り上げる姿はほとんど恐竜のようなもの。
頭の位置は低く見積もっても2mはある。

仕事として引き受けたものの心底嫌そうな表情が浮かんでしまう。

回想 > 「で、転移荒野?俺街の何でも屋さんなんでシティーアドベンチャー以外お断りなんだけど……」
『そう言うなって!狩人のじいさんがぎっくり腰やっちまってな…俺のとこに革、隣のばあさんとこに鱗が必要なんだって』

報酬のいい依頼がある、と聞いて内容も聞かずに相手の店に足を運んでしまったのが第一の失敗。
そして第二の失敗は渋谷でも評判のイイ店の菓子を口にするまで相手が世間話を引っ張ってる事に気付かなかった事。
事ここに至っては断るには罪悪感という余計なウェイトが邪魔をする。

『交通費は支払うし風除けのマントもちゃんとした呪具の奴を貸し出してやる。あと肉は屋台の連中で買い取るしなんなら精肉したのをドカンと渡してやる。どうだ?』
「いや……地竜だろ?でっけぇんだろ?そんな肉ドカンと貰っても食い切れねえって……」

『なんか、学生主催の肉祭りやるらしいじゃねえか。そこに持ち込んで混ざって来いよ』
「……」

さりげなく言ってみた、というあからさまにこちらを気遣う言葉に思い切り渋面を作る。
相手は自分が真っ当な学生時代からの知り合い、そして今の自分が真っ当ではない学生だという事も知っている。
たぶんおっさんなりに心配してくれているのだろう。
煙と共に長々とため息を吐いて…。

御堂京一 > 「こうなるんだよなあ……」

普段はサボテンとか食ってるらしいでっかい口をこちらに向けて威嚇する地竜に真っ直ぐ向かい合い、呼吸を整える。
風除けの加護が砂塵を避けて熱い空気だけが喉を通っていく。
照りつける日差しも軽減してくれるしこれ買い取ろうかな?と思うも街歩きには向かないデザインに首を振り。

「んじゃま、やりますか」
こぅ……っと呼気を吐き出しプラーナを練る。
全身を青い燐光が包みこみ、野生の感覚で敏感に脅威を感じ取った地竜の足が地面を蹴り走る体制に入り。
パン!と地面が爆ぜたのはこちらが先。
倒れこむように前傾になりながら足裏が地面を押す感覚が抜けた瞬間に地面を蹴り加速する。

泰山詠天拳序段が一 瞬穿
地を蹴る力と体重が余さず乗った拳が鼻っ面に叩きこまれる。
体重差を考えれば大した打撃にはならないだろうが痛点を打ち抜くそれは油断するとこうなるぞ、と警戒心を相手に持たせるため。

さすがに野生のパワーでなりふり構わず来られたら押し潰される。

御堂京一 > 縄張りをウロチョロする鬱陶しい二本脚から敵へと認識を切り替えた地竜が咆哮をあげ大顎を開き迫ってくる。
上半身をさっくり持っていきそうな歯の並びを見て膝を脱力し真下に落ちるように回避。
絶対に草食ってる奴の歯並びじゃねえ。

「ああ!もうカッテェなぁ!」
こっちを見失った一瞬に左右の拳を腹に打ち込むも返ってくるのはみっちりとした筋肉の感触。
岩のような鱗がないからと柔らかいと思ったら能力で強化していなければ拳をやってしまいそうな衝撃にイラだった声を漏らす。

普通に殴るだけじゃ絶対に狩れそうにない。
そういや狩人の爺さん、槍使ってんの?って聞いたらこれ矢って返ってきたし。

御堂京一 > 振り回されるカギ爪を避けて身体の横を通っていく風圧にうぇ…と嫌そうな声をこぼす。
鶏っぽいでっかい両脚がぐっと大地を踏みしめるのを見た瞬間間髪居れずに真上に跳躍。
鞭の様にしなるぶっとい尻尾が小石を撒き散らしながら地面を撫でていく。
なるほどあれだけ長くてぶっといならさぞ発達してる事だろう、一番美味い部位らしいがあれだけあれば食いでもあるだろう。

「こいつは……どうよ!」
空中に青いラインを引き脚を振り上げる。
始点はカカトが触れる場所、終点は地竜の目の間。
人一人を打ち出すほどの勢いが脚に一点集中し風を巻いて加速、一瞬後に重々しい音を立てて着弾。

今度は悲鳴のような咆哮を上げて地竜がバランスを崩す。
OKだいたいの力加減は判ってきた。

御堂京一 > 暴れるように全身を振り回し牙牙爪尻尾と繰り出される攻撃を身体を捻りステップを刻み回避していく。
まるで地面と足裏の間に隙間でも空いているかのような滑る歩法はケツを蹴っ飛ばされながらジジイに仕込まれたもの。
あの時はぶっ殺してやると思ったものだがこうして役に立っているのを実感すれば無性に腹が立ってくる。

無酸素運動の切れ間に大きく息を吸い込もうとした瞬間、滑るような足運びでしゃがみ込みながら懐に飛び込み、地面から蹴り足が一直線になるようにして蹴り上げる。
腹を打撃され呼吸に失敗し身体を追ったところで腰を捻り全身を回転させるように蹴り足を振り下ろし顔面を一撃。

泰山詠天拳序段の三 墜天
   続けてその四 破岩

振り下ろした足が大地を踏みしめ足裏からプラーナを練り上げる。
深く吸い込んだ呼吸が腹の奥でプラーナを練り上げる。
流れるように構えをスイッチし二つの力が螺旋を描き腕へと伝播していって。

御堂京一 > 「泰山詠天拳 破段の一 穿槍烈戈」
御堂京一 > 頭へと叩きこまれた拳がめり込み、コォンと清んだ音を立て後方へと青い光が抜けていく。
それは拳打の衝撃が頭を打ち抜き後方へと抜けていく可視化された衝撃。

そいつぁ無駄な力が抜けてってるって事だろうが、中に伝えて内臓爆砕させるくらいしてみやがれ。
なんてジジイは物騒な事を言っていたが蹴りで上下に揺さぶられた後の脳には十分なダメージで。
巨体がズンっと音を立てて倒れこむ。

御堂京一 > 「それじゃ……お前の命、無駄にしねぇからな」

意識を飛ばした地竜の首にこれまた借りてきた黒曜石の短刀を突き刺し、一気に引き降ろす。
頚動脈が掻き切られ、未だに仕事をしていた心臓が猛烈な勢いで血液を吹き出させ荒野に血溜まりを作っていく。
これで血抜きもしっかりと出来るだろう。

渡された狼煙を打ち上げればほどなくすれば輸送用の軽トラがやってくる事だろう。
タバコを咥えぼんやりと空を眺める。
学生同士のイベントか、長い事行ってなかったなぁと。

ご案内:「転移荒野」から御堂京一さんが去りました。