2022/06/20 のログ
ご案内:「転移荒野」にイェリンさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にセレネさんが現れました。
イェリン > 「そろそろかしら」

今日は友人と約束した手合わせの日。
言いつつ手袋の裾を軽く引っ張り感覚を確かめるが、調子は申し分ない。
先に日取りが決まったのもあってコンディションを整える余裕もあった。
腕やベルトに通したポーチはいつも通りに。
ただ、貰い物のアクセサリ類は自室に仕舞ってきた。

流石にあれを無くしたり壊したりしては当分ショックから立ち直れそうにない。
そうそう飛んでしまったりするような事の無い造りの物だけれども、
それ以上に私の"やり方"は荒っぽいのだから。用心するのに越した事は無い。

セレネ > ――ふわり、空から淡い蒼を纏った羽根が落ちる。
ひらひらと舞う羽根と共、
待たせていた夜色の彼女の数m先に降り立つ蒼月色。
背には蒼い大きな双翼が一対。彼女にも、以前見せたものだ。

「…お待たせしました。」

時間通りには…いや、少し早めに来たつもりだったが、
思った以上に彼女の方が早かったようだ。
だいぶ待たせてしまったかと、向ける蒼には些か不安そうな感情を乗せて。

「本日はお手合わせ、宜しくお願いしますね。」

互いの実力を存分に出し合う絶好の機会。
悔いのないようにしなければ。

イェリン > 待ち人は空から現れた。
神話の一幕のように、荒れた荒野に降り立つ双翼の女神。

「ううん、私も今来たところだもの。気にしないで」

準備もあったしね、と言いつつ心配そうな瞳を向ける彼女に向けて笑みを向ける。
楽しみな事を待つ時間も心躍るという物で。

「えぇ、よろしくね――っとその前にこれだけ」

一本の黒檀を上空に投げて、そこに刻んだ術式を起動する。
荒野に建てておいた四本の同型の物と共鳴して作り出される人払いの術。
お互いあまり誰にでも人に手の内を晒すようなタチではない。
聡い彼女であれば張られた暗幕のようなそれの効果も語らずとも気づけるだろうか。

セレネ > 気にしないで、と微笑む彼女に少し安堵する。
自分が待つ分にはいくらでも待てるが、
他者を待たせるのはどうにも嫌なものだから。

「――あら。随分手間をかけさせてしまったかしら。」

彼女が空へと投げたもの。それに刻まれた術式を視ては蒼を細める。
手合わせをしたいと申し出て、場所の指定をしたのも己の方だ。
本来ならばこういった人払いも己がすべきなのが筋だったろう。

「有難う御座います。」

その気遣いと、手間に対する礼を。
一礼と共に告げるだろう。

イェリン > 小さく頭を下げる彼女の伏せられた顔が前を向く。
その蒼の双眸を見据えてから小さく1つ伸びをして。

「あんまり人払い維持してるとそれはそれで怪しまれるし……
 それじゃ」

――始めましょうか。
友人に向ける笑顔は、一端そこまで。
ひらひらと舞う黒のパレオから一本の槍を取り出し、
腰を落として胸の前で構える、切っ先を相手に向けて構える。

こちらの用意は整った。
その意を伝える己の蒼は、神をも葬る一族に恥じぬ狩人の眼をしていた。

セレネ > ふふ、と。微笑む表情も雰囲気も月の女神相応の穏やかなものだろう。

夜色が一振りの槍を黒から取り出し、手慣れたように構える。
己の蒼も、笑みもそれを見て凪いだ。

双翼が互いの視界を遮る。
自身を包むように。
夜空に浮かぶ月は欠けて丸くはないが、地上の月は丸く、蒼く――

セレネ > 次に翼を開いた時には、その姿は一変していることだろう。

漆黒の夜の色。月色を覆い隠すフードローブ。
表情は伺い知る事が出来ない程フードを深く被り、口元も同じ色の布で覆っている。

彼女が魔や神族を葬る狩人であるなら。
――己は月と狩猟を司る神族である。

イェリン > 言葉は無い。
目深に被られたローブに隠され蒼の瞳も交わされ無い。
迷いや躊躇いを持ち込むつもりなど微塵も無かったけれど、
身体に染みついた理性よりも先の直感が目の前の存在にひりつく。

「――行くわ」

芯の通った槍の構えのまま、普段と変わらぬ語気で告げる。
さらに重心が落として、一歩前へ。たった一歩、されど魔術師の一歩。
ブーツの底面、鋼に刻んだルーンを重心の移動に合わせて起動する。

移動と同時に突き出されるのは手の内の漆黒の槍。
神屠りの一撃は瞬きの間にフードに隠された喉元へと迫る――

セレネ > フードの奥の蒼の”双眸”はしかと彼女を捉えている。
一言、告げられた後一歩踏み出した相手。
その姿が不意に消えた。
次の瞬間、それは目の前――。

『≪カリストー≫』

小さく呟いた名。
呼応するように響いた獣の唸り声と、割って入る黒く大きい獣の腕。
熊の手だと、相手が認識できたかは分からないが。
鋭い爪と強靭な膂力により、己に傷を負わせる筈だった攻撃が大きく逸らされるだろう。

相手の攻撃が一時的にも止まったならば、月色の毛並みを持つ大型の猟犬が複数。
彼女の腕、脚に噛みつき傷をつけようと牙を、爪を向け襲い掛かってくる。

イェリン > それはお腹の奥に響く獣の声が聴こえたのと同時。
何処からか現れた黒い獣の腕もその穂先ごと力任せに逸らされる。

「……んぅ」

薙ぎ払うようにして振られたその腕の膂力に逆らう事無く後方に飛び退き、
一つ声を漏らす。召喚獣の類だろうか。
呼べる物であれば還す事もできるが――

思考を遮るように眼前に迫るのは猟犬の爪牙。
一対一であれば長所である槍のリーチ、それは複数に群がられた際には短所にもなり得る。
槍を跳ね上げ、回し、足運びを駆使して捌くが内の幾つかはどうしてもすり抜け、
それは剥き出しの左腕に食い込む。

骨ごと噛み砕きかねない一撃。
それに対して一瞬だけ防護を施して防ぐ。
持続性を犠牲に効果を高めた物、それが機能している内に獣の頭に手をかざす。

退散の術式を組むだけの時間的な猶予は無い。
だからこそ"握力"でそのまま握りつぶす。

「今ので……全部かしら?」

解除した防護の術式はそう連続して使える物では無い。
だからこそ、次までにその対策を思考する。
己の魔術師としての特異性を挙げるとすれば、後手での対応幅。
反面、扱う術式自体の威力は高くは無い。
言ってみれば器用貧乏、それを実戦レベルにまで持ち上げているのは、
他ならぬフィジカルの強さである。

セレネ > 『あら。…やはり神格が半分だとこの子達の力も半減するのね。』

もしくは、相対している彼女の咄嗟の判断が良かったのだろうか。
何れにしてもやはり威力不足なのは否めない。
小さく溜息をつき、猟犬達をいなしていく彼女を見やる。
頭を握り潰すという力任せな攻撃に、光の粒となって消えていく様を眺めて。

「いいえ?まだまだ、この子達は沢山居ますよ。」

言うや否や、己の足元から続々と出て来る月の猟犬。
狩る側が狩られる側になど、あってはならない。
それは己のプライドが許さない。
召喚獣を利用しているのは、彼女の戦術を見極めているからだ。
ただの様子見である事に他ならない。
それに、己は真正面から対峙する戦闘は比較的苦手だ。
得意とするのは搦め手。敵の隙を突くやり方。
…さて、如何に彼女に隙を生ませるか。

イェリン > まだまだ沢山—―
言葉通りに際限など無いかのように出で来る猟犬。
二度は同じ手を受けない。それが魔術師としての己のスタイルだ。

「≪イェーリャ≫」

ポーチの内、取り出したひとひらの紙片に月の獣の情報を写し取る。
反転させるか、あるいは同様の術式を返すか。
後者は論外、同じ形の魔術を使えば適正と熟練度で圧倒的に劣る己が押し負ける。故に選ぶのは情報の指定。

迫る猟犬に向けて無造作に投げ放つのは炭の破片。
それ自体は特殊な物でも無い。必要なのは"黒い"と認識される物。

「――ラハタェラ」

小さく声に出すのは己の肋骨の破片を素材の一つとして実父の手で作られた槍の名。
それは己が黒いと認識している物から取り出す事もでき
――そして射出する事もできる。

宙を舞う炭の破片から、矢のように放たれるのは槍の群れ。
無作為に放たれるそれらに指向性を持たせる。
その矛先は先ほど写し取った猟犬達。

「……実は一本じゃないのよ、これ」

とはいえ本数は無限では無い。
文字通り再現無く召喚されるようであれば他の手を取る他無い。