2022/11/03 のログ
ご案内:「開拓村」に矢構ハナチさんが現れました。
矢構ハナチ >  
開拓村、そこは希望とか可能性を期待された場所だったはずだ。
ここは、虚構・無法と学園都市の秩序に反する秩序がまかり通る《危険領域/デンジャー・ゾーン》。
 
それを証明するように響く音は、重い金属音の連弾。
さながら合唱。
返歌は―――。
 
「――執行妨害って事で」
 
少女が一人、
薄っすらと光輝く銀色の十手を両手に―――、
こんな場所には不似合いの学生服のような風紀委員の制服を着崩して―――、
決して早くはない速度で結い上げた髪の毛と踊るように揺れて―――、
複数名の男女から数多くの銃火器を向けられも恐れることなく、
 
そう呟いた。

矢構ハナチ >  
響いたのは、心地よい金属の棒が何かを弾く音。
一つ二つから先は数えるのも馬鹿らしくなる。
弾く弾く弾く弾く、放たれた総てを正確に芸術的に弾き―――跳弾させる。
 
一瞬の合唱で、
一人、二人、三人、四人―――自ら放った歌を返され、呆気なく奏者は減って。
立ち上がった砂煙の中から単分子切断剣ともいうべき一般には出回っていないはずの禁制品。
 
「―――『私を誰だと思っている』」
 
冷めた少女の表情に色が入る《祝詞/台詞》だった。
醒めた少女は、
 
「『私が―――《放弾投擲/シューティングドミネイター》』」
 
須臾の迷いなく、正確無比に対して繰り出されるのは銀色に煌めく十手。
単分子切断剣の前に多くの物質は、抗う術を持たない。
抗うのならば、触れる前に遠距離反撃の可能な異能や魔術での対処し反撃、破壊するしかない。
十手がまるでナイフを入れられたスポンジケーキのように切断される未来を、振りかざした男は確信した。
 
その刹那に、男は少女がブツブツと何かを言っている事に気づいた。

矢構ハナチ >  
「―――ハロウィンを返上して今日まで働いたのは私。
 私よりも年上がエンジョイ青春ライフ。
 明日よりも今が返上英雄ライフ。
 歯の黄ばむ奴らを残業して今日まで追ったのは私―――」
 
それは怨嗟だった。
それは呪いだった。
 

矢構ハナチ > 「『あの夜/ブラックマーケット』がなんだ!!」
矢構ハナチ >  
荒野に吠えた。
 
豆腐のように斬られると思った二つの十手は―――、単分子切断剣を受け止める。
激しい金属音と火花が翔ぶ。
 
「指名手配リストC-100280222B号、歓楽街『奥地』での違法薬物等の違法販売!
 『IVORY』にて未認可薬品・植物のぉーーっ!」
 
『何でも』斬れるはずの剣が『断てない』事に男は驚き、身を引こうとしたが。
武器を手放そうとはしなかったのが、運の尽きだった。
 
 
十手で挟み込まれた刃は無慈悲にも。
 
 
   ―――圧し折られる/ソードブレイク。
 
 
この少女の前には、すべてが弾け放てるモノならば支配されてしまうのかも知れない。

矢構ハナチ >  
「――違法販売をした件と公務執行妨害の現行犯で全員捕縛する」
 
砕け散る刃の輝きは、自分の悪事がここで終わりを示しているような衝撃があった。
唖然としたのが一瞬だったが、それで諦めるようなら悪党など男もしていなかった。
気持ちを取り戻す―――その時間を《支配者》は赦さなかった。
 
低い悲鳴を男が漏らしたのは、何をされたのか理解する前だった。
なぜ自分の口からこんな音が。
 
―――ただ高速で、正確に、肘と膝の関節を『弾かれ』外された。
 
倒れて後ろを見れば、跳弾で死んだと思った仲間が呻き声をあげながら他の風紀委員の制服を着た者たちに捕縛されて手当されていた。
開拓村を不法占拠し、支配しようとした武装集団の制圧。
表面上はそれだけの事件として報道されることとなった。
 
矢構ハナチ風紀委員元交通部、刑事部に転属して一週間の出来事であった。

ご案内:「開拓村」から矢構ハナチさんが去りました。
ご案内:「開拓村」に矢構ハナチさんが現れました。
ご案内:「開拓村」から矢構ハナチさんが去りました。