2019/02/05 のログ
ご案内:「青垣山」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私、アリス・アンダーソン!
去年の四月から常世学園に通っている一年生!
平日の放課後。
私は異能や魔術を持った人たちと一緒に青垣山に来ている。

目的は紅葉狩り狩り狩り。

えっ? 何? とか思わないでほしい。
私だってこの言葉が正しいとは微塵も思っていないから。

正確には、Dランク敵対的怪異であるレッドプラント・マンイーター……
紅葉に擬態して紅葉狩りに来た人を襲うハンター。
異世界から来た外来種でもある彼らの駆除のためで。

赤い葉っぱを持つ彼らは、秋だと見つけるのが困難だけど。
今の季節になると非常に目立つので駆除が容易になる。

アリス >  
紅葉狩りハンターである彼らが集団で襲い掛かると無力な人は命を落とすことがある。
だから、青垣山から彼らを排除する必要があるのだけれど。

なんと、これがお金になる。
彼らを倒した後に核胚(コア)を生活委員会に提出すれば一匹3,000円になるのだ。

オキナワにいるハブという蛇が駆除したら同じ値段らしいから、危険度もそれくらいと思われる。

パパとママには内緒で来た。
お小遣い稼ぎのための冒険の始まり。

「新作ゲームのための犠牲となれ……」

物騒なことを呟きながら山を歩く。
周りの学生たちもキャンディーをシェアしながらキャッキャと登山気分で駆除に来ている。

敵対的怪異の駆除は遊びじゃないんだよ。
私は本気で稼ぎに来ている。

ご案内:「青垣山」に玖弥瑞さんが現れました。
玖弥瑞 > 「んほーーーーーーーーーっ!!!」

頂の方から悲鳴が響く。うら若き女性の悲鳴だ。
はたして駆除隊の耳までその声は届くだろうか? 少なくとも遊び気分で来ている連中には気づけないくらいには遠方だ。

新任教師、玖弥瑞。なぜか山の中で樹木の怪物に捕まっている。
両脚を蔦で絡め取られて、宙ぶらりん。冬だというのにスク水姿で。

アリス >  
悲鳴が聞こえてきた。
駆除隊の一行はほとんどが気づいていない。

「……誰かがいる!?」

周囲の人に山頂に行くと告げて、山道を駆け上がっていく。

そこで見たのは。
レッドプラント・マンイーター。
蔦で幼女の足を掴み、根っこでしっかりと歩き、
そして赤い葉っぱにびっしりと生えた歯がグロテスク。

って幼女が捕まってるー!!?

「ちょっと待ってね、今助けるから!!」

そう叫んで……どうしよう。どうやって助けよう?
とりあえず高い枝も簡単にカットできる系のハサミを錬成。

「対ショック体勢ー……よっと」

彼らの動きは鈍い。蔦をカットして幼女を助ける。

「大丈夫? 今、あいつを倒すから」

拳銃を錬成して適当に紅葉狩り狩りに連射。
こうして最初の紅葉狩り狩り狩りは達成された。
や、ややこしい。

玖弥瑞 > 頂付近にいたマンイーターは幸いにも1体。
それが玖弥瑞にとっては幸運と言えば幸運だったが、遅かれ早かれ葉っぱの歯によってボロボロになっていただろう。

「お、おい、そこの金髪の女子っ! すまぬっ、誰か助けを呼んで……」

すぐさま現れた金髪碧眼の女性を呼び止め、誰かを呼びに行かせようと声をかけるが。
その女性が樹木の化物に臆することなく立ち向かい、それどころか虚空から武器を取り出して仕留めて見せると。
スク水姿の化け狐は言葉を詰まらせ、その手際に見入るばかりだった。

「…………ッ!!!」

自分とそう背丈の変わらない、『少女』と呼ぶ他ない人間が、躊躇なく拳銃を構えて引き金を引く。
鳴り響く爆音にはとっさに耳を伏せ、肩をすくめてしまう。

「……こ、こりゃこりゃ、なんとまぁ……手慣れておるのぅ、外人の娘さんや。
 まさか登山客ではなく、狩人だったんかぇ? そのハサミや鉄砲は……異能というやつかぇ?」

蔓による戒めから解き放たれ、地面に転がる玖弥瑞。
すぐさま拘束を振りほどき、埃を払いながら立ち上がりつつも、アリスを見つめて色々と問いかける。
やや興奮気味だ。

「……あ、ああ。すまぬ。妾は玖弥瑞、最近この学園に赴任した教師じゃ。
 助かったよ、礼をいう」

やがてすぐに落ち着くと、うやうやしく一礼。

アリス >  
「ええ、私はハンターよ」

ついでだし拳銃をナイフに錬成し直してマンイーターを抉る。
慎重にコアを切り取ってリュックに入れた。

「そう、異能……空論の獣(ジャバウォック)は物質を創造する異能なの…」

ここまで驚いてくれると気分がいい。
胸に手を当て、彼女の前でふふんと気取ってみせる。

「私こそ“創造する異国人”“オートアクションで棒に当たる犬”」
「“見えざる不幸・着飾るタイプの不運・むしろ幸運が去る”」
「“鳴いてないのに撃たれるキジ”……」
「アリス・アンダーソンよ!」

ビシッとターンを決めて名乗る。

「あなたはクミズね……って教師ぃ!?」

今度はこっちがびっくりする番で。
え、どう見ても年下……!!

「せ、先生だったの? でもどうして先生がこんなところに一人で? しかもそんな格好で?」

玖弥瑞 > 「ほう……ほうほうほう……じゃばうぉっく……ありす………。
 面白い娘さんじゃの! ……って、ええ……その化物、解体するのかぇ。煮て食うんか?」

ハンターという自称を裏付けるがごとくにナイフで怪物のコアを穿り出す様には、口の端を釣り上がらせ。
そしてまるで演劇のごとく朗々と自己紹介をする様には、口を尖らせながらもこくこくと頷き。
華麗にターンを決めれば、パチパチとややローテンポな拍手も送ってやろう。

「物質を作る異能かぇ。そいつぁなかなか、悪用も効きそうじゃな。悪そうには見えぬが。
 妾の状態を見てすぐさま高枝バサミを作るとは、機転もきく。風紀か公安に入っても活躍できそうじゃの」

そして、ずれた眼鏡を正しながら、もう一度冷静に彼女の異能を吟味してみよう。
実のところ、異能……それも攻撃的な異能が振るわれる様を実世界で見るのはこれが始めて。
未だにすこしドキドキしている。

「……妾のことかぇ? なに、まだココにきて日が浅いんでの。土地を知るためにあちこち歩いてみてるのじゃ。
 この山の傍に来てみると、ポツポツと赤い木があるではないか。冬に紅葉とは珍しい……と近づいてみたらコレじゃ。
 本当に助かったぞ。……ああ、カッコのことは気にするな。妾はこういう生き物なのじゃ。寒くはないぞ」

自分の容姿に対するツッコミにも、淡々と答えつつ。玖弥瑞は周囲の茂みを掻き分け、何かを探す仕草をする。
やがて、1つの板を拾い上げる。スマホだ。襲われた折に落としてしまったのだ。
玖弥瑞は慣れた手付きでそれを操作すると。

「……よし。アリスよ、さっきの自己紹介をもう一度やっておくれ。録画するから」

アリス >  
「食べないわよ! このコアを生活委員会に持って行けば駆除した証拠になってお金になるの!」

指を振って説明を始める。

「いい? このレッドプラント・マンイーターは駆除対象のDランク敵対的怪異よ」
「今みたいに人や動物を無差別に襲うから、一匹駆除するごとに3,000円の報酬が出るの」

どうでもいいけどBランク敵対的怪異とかあからさまに危険そうな怪異を倒したらいくらもらえるんだろう。
気になる。

「なるほど……そういうことなのね。入山規制こそ行われてないけど、結構危ないわよ、山は」
「クミズ先生は寒さは関係ない、ということだけはわかったわ」

スマホを向けられると元・ぼっちの習性で硬直してしまう。

「撮影するなら嫌よ! とにかく、クミズ先生は危ないから私から離れないで」
「まだ駆除隊のメンバーが来るまで時間があるしね」

そういえば走ってきたから冬とはいえ汗をかいた。
タオルを錬成して首の辺りを拭う。

「クミズ先生って何の教科担当なの?」

玖弥瑞 > 「なんと。金になるとな。マジのマジにハンターだったんじゃな。
 そいつは良いことを聞いたの……くふふ。……いや、今のでDランクとか言われると、ちょいと尻込みもするが」

実際、そのDランクに襲われて危うく死にかけたのだ(死なないけど)。
山に入るに際しナイフの1本も持ってなかったのだから、そうもなろう。玖弥瑞がアホなだけだ。

「……ああ、うむ。まったくアリスの言うとおりじゃ。山は危ない。
 お前さんに従って下りることにさせてもらうよ」

神妙な口調でぶつくさ言いながら、ちょっぴりしょぼくれた顔でアリスの忠言を聞き入れる。
やんわりと録画を拒否してくる態度にも、素直にスマホのカメラを停止しつつ。

「…ん、妾の教科かぇ。コンピューター技術じゃ。
 妾は機械に、特に電子計算機に強いんでの。ネットワーク、プログラミング、データ分析、なんでもござれ。
 ゆくゆくはそういう講義も持ちたいが、新任なんでの。今は超初心者向けのパソコン講座しかやっとらん」

自分の職務について聞かれれば、アリスの背後に付き従いながら、ぺらぺらと自分の得意分野を並べ立てる。
まるで繕ったように古風な口調から、次々とカタカナ語が出てくる。

「アリスは、コンピューターは得意かぇ?」

アリス >  
「ゲートを通じて異世界から渡ってきたらしいけど…」
「外来種もいいとこだから数を減らしておかないとね」
「あ、でも私パパとママに内緒で山に来てるからどうかナイショで…」

へへー、と頭を下げて頼み込む。
お小遣い稼ぎに危険な山登りとかぜったい怒られるヤツ。

「風紀か公安に入ることも考えたんだけど、どう考えても足手まといだし…」
「私、運が極端に悪いし、咄嗟のアドリブ効かないし、すぐテンパるから」

タオルをスコープに変換して周囲を見る。
結構、山はマンイーターだらけで。

「へー、コンピューター技術。古風な喋り方だから意外というかなんというか…」
「私? 自宅のPCでマルドゥークオンラインと蓬莱オンラインと…とにかくゲームしてる」

嗚呼うら若きネトゲ廃人。
コアを失ったレッドプラント・マンイーターがぐずぐず、ブジュルブジュルと音を立てて溶けていく。

「そういえば……ん?」

ガサガサと音がした。
それも一つや二つじゃない。

気がつけば、周囲を4、5体? くらいのレッドプラント・マンイーターに囲まれていた。

「……紅葉狩り狩り狩りに来たら、紅葉狩り狩り狩り狩りが来た、みたいな」

サーッと青褪めた。

玖弥瑞 > 「パパママと同居中かぇ。それでいて内緒のハンター業、あげくゲーム三昧とは! かぁー、いやはや!
 もう少し親孝行をしたほうが良いと思うぞ。ええ? アリスよ」

やはり根はおばあちゃん、アリスの言葉につい小言を入れてしまう。

「蓬莱オンラインはともかく、他のネトゲは暇人のするものじゃ。時間泥棒の極地じゃからな。
 アリスのようなうら若き乙女はそのようなものに時間を費やさず、もっと勉学と青春と親孝行に……む?」

ぶつくさ、ぶつくさ。アリスに先導を任せて、ろくに注意を配らずに歩いていたものだから。
眼の前のアリスの様子に警戒の色が見えたのを伺ってはじめて、玖弥瑞も己等の窮地を自覚した。

「……来た、ようじゃの。やれやれじゃ」

くるりと転身し、背中を預け合う体勢に変わる。そして目配せ……個体数を数える。
視界の端に何かを見つけ、最小の動作でそれを踏みつけ跳ね上げる。パシッと握るは、そこそこに太く丈夫な棒。
とても、怪物に対抗できる武具とはならない。だがまぁ護身用としては最低限。空の手よりはずっとマシ。

「すぐテンパる、と言うたな。よいか、テンパるなよ。テンパるんじゃないよ。こういう時こそ平常心じゃ。
 平常心のために、1つ妾のことを伝えておく。妾はちょっとくらい怪我してもすぐ治る、不死身という奴じゃ。
 いざとなれば逃げる手段もある。……じゃから、アリス。妾のことは気負うな」

すでに若干焦燥の気配を見せる背後の少女に向けて、やや早口でボソボソと伝える。
玖弥瑞は腕っぷしこそ凡庸だが、覚悟して直面したピンチに対しては豪胆に構えられる。
魔物討伐の助けになれない分、この少女を心理的に支える側に回りたい。

「……とはいえ、お主に打開してほしいがな」

アリス >  
「……この局面を切り抜けられたら、親孝行も考えるし!」

クミズと背中合わせに、隙を作らないように警戒する。
砂を作って攻撃する? あれは成功率が高くない。
銃? 剣? まず防御? それとも興奮剤………?

混乱を始めた脳内。そこに響く、彼女の声。
テンパるな。その言葉が、ちゃんと聞こえた。

「不死身? そ、そう……」
「ええ、ありがとう……ちょっと、頭冷えたから…」

その場で両手を地面につく。

「ジャバ……ウォック!!」

囲まれて泥仕合を避けるための手、その一。
防御を徹底する。
自分とクミズ先生を守って余りある、防弾ガラス製のドームを作り出す。

9mmパラベラム程度なら通さない。
これで自分たちは安全。
D級にこの防御は破れない。

「そしてこう!」

囲まれて泥仕合を避けるための手、その二。
一方的に攻撃できる状況を作る。

寄ってくるマンイーターたちを前に、銃だけ出せる程度の穴を防弾ガラスに開けた。
小型拳銃を錬成し、両手で握る。

「クミズ先生、これ耳栓」

といって、ちょうど獣耳にぴったりハマるサイズの耳栓を錬成して放る。

「いっけぇー!!」

近寄ってくるマンイーターを撃つ、それだけのことを5回繰り返した。

玖弥瑞 > 「そうじゃ。いつもクールに、少しニヒルに! それがネトゲで暴言吐かれないためのコツじゃ!
 ……むっ!」

背中合わせでもぞわぞわと緊張が伝わってくる、アリスの狼狽っぷり。
しかしすぐにそれは引いてくる。よかった、かけた言葉が通じたようだ。
すぐさま別の緊張感……異能の行使に伴う『氣』の偏りとでも言うのだろうか? それが周囲に満ち始めれば。
右手に棒、左手にスマホを握り、警戒の目を隙なく配りつつも、邪魔にならぬよう玖弥瑞は身をすくめる。

「バリヤー……いや、ガラスか! 良いぞ!
 ……って、な、なんじゃと? 耳栓? お、おうっ」

視界の全周囲がキラリと瞬き、音響が変わる。ガラスの障壁が生まれ、マンイーターの触手が為す術もなく弾かれる。
それでも警戒体勢は解かず耳をくいくいと動かしていた玖弥瑞だが、何やら大きな円筒を渡されれば。
すぐに、何をするつもりか察し、躊躇なく狐耳の中に突っ込む。
程なくしてドーム状の空間にすさまじい銃声が断続的に響き渡れば、その都度びくびくと玖弥瑞の肩が震える。
先の遭遇以上の大音響、耳栓があるとはいえ、鉄火場に不慣れな玖弥瑞では度肝を抜かれっぱなしだ。
……しかし、その口の端は不気味に釣り上がっている。怖いけど、楽しいのだ。リアルな危険というものが。

「………っ!」

半ば座り込む形で、アリスの射線を遮るまいと身をすくめていた玖弥瑞。そのお尻の下に、不可解な振動を感じた。
勘が働く。何かヤバい。

「……アリスッ!! 下じゃ!! 右下っ!!」

とっさに棒を構え直し、振り向く。
地面の下から、トゲの付いた触手が2本、2人のサイドから挟み込むように現れた!
銃弾を受けて死にかけたマンイーターが、最後の力を振り絞り、ガラスの防護の下を這って襲いかかってきたのだ。
受ければ、致命傷には至るまいが、傷は避けられない。
玖弥瑞は渾身の力を込めて、アリスの左手側から現れた触手を打ち据える。しかし、もう一本。
アリスは対処できるか!?