2019/07/25 のログ
ご案内:「青垣山」にアリスさんが現れました。
アリス >  
今日は、ただの山歩きのつもりだった。
慣れてるコース。夏休みのちょっとしたリフレッシュ。
そのはずだったのに。

今は山道を全力疾走で逃げている。
パパが買ってくれたちょっとお高い登山靴は今日も大活躍なわけで。

「はぁ………はぁ…」

息を切らして振り返ると、山のようなサイズの僧侶が私を探してうろついている。
ダメだ、逃げ切れない。

最初に登山道で会った時にはただのお坊さんという感じだったのに。
見る見る大きくなっていって、今じゃ振り返るたびにサイズアップしていく。

このサイズの敵対的怪異が出たらフツー風紀が動きませんこと!?

アリス >  
『骨まで食んでやろかぁ……喉を絞めてやろかぁ…』

あのビッグサイズ坊さん絶対人食べてるよ!!
そしてあの巨大な手で絞められたら死ぬのは間違いない。
怖い。怖い怖い怖い!!

しかし戦うとなると不安になるのが火力。
この狭い山道でガトリング砲なんて錬成できないし。
巨大な岩の拳でも錬成してやろうかと思ったけど。
その影響で足元が崩れて滑落、となると笑えない。

あ、詰んでる?

全力疾走しながら周囲に人の気配を探る。
何かあったら助けてもらう、もしくは一緒に逃げなければならない。
でも不思議なくらい登山道に人がいない!!

アリス >  
「広い場所……広い場所…」

念仏のように唱えながら超巨大坊主から逃げている。
いつもの山歩きならそろそろどこか開けた場所があるはずなのに。
一向に辿り着かない。

恐る恐る振り返ると。
見上げた坊主はさらに巨大化が進んでいた。

「もう……やるしかないかぁー!!」

本当はパンデミックの巨大蜂との戦いのために取っておいた手だけど。
初披露といくしかない。

周囲の木を材料に飛行機のラジコンを大量に錬成し、
最後にゲーム機のコントローラーを山ほどくっつけたみたいなヘンテコ操縦装置を握る。

「自分より巨大で素早い相手……なら!」

一斉に空に飛び立つ飛行機のラジコンたち。
よろしくね……これが通じなかったらもう手がない。

アリス >  
坊主に向かって複数の操縦桿を器用に使いながらラジコンを飛ばす。
別にあのラジコンは機銃がついてるわけでも、爆弾を投下できるわけでもない。
なんてことはない、何の変哲もないただの飛行機。

でも。

一機が超巨大坊主に近づくと大声で叫んだ。

「ブラァスト!!」

錬成の応用。瞬間変異爆破。錬成したものを爆破する。
つまり……操縦してるラジコン全部が爆弾だ!!

顰め面で仰け反る超巨大坊主。
いける!! あとは絶え間なくラジコンを錬成して、爆破の手を緩めなければ……!

「ブラァァァァァスト!!」

ところで、あんな大きな怪異を相手に爆弾使って大立ち回りしてるんだけど!!
風紀とか来ないのかな!? かな!?

アリス >  
ラジコン爆弾を連続で送り込む。
触れても、除けても。こちらは爆破させてもらう!!
しかし、相手はさしたるダメージを受けていない。

それどころか。

見上げれば見上げた分だけ、巨大になっていってる気がする。
もう、こんな小さな爆弾ではどうしようもない大きさだ。

「あ……ああ…………」

自分の心が折れる音が聞こえた。
あのサイズの怪異を前に一個人でできることはない。
あとはアレがパパとママを襲わないことを願うばかり。

あまりにも残酷な死という現実。
体から力が抜けてその場にへたり込んでしまう。

アリス >  
へたり込んで、視線を下げる。
絶望というのは、あまり親しみたい感情ではないけれど。
死の寸前に諦めをくれるのは、そう悪いものではないかも知れない。

その時、視界の隅にいた坊主がサイズダウンした。

うん?
どういうこと?

視線を下げたから……小さくなった?
つまり今までは見上げていたから、大きかったということ?

足に力を入れて立ち上がり、視線をゆっくりと下げてみる。
見上げるほど巨大だった坊主は、どんどん小さくなり。
私の膝程度のサイズになり……

ポン! と間抜けな音を立てて一匹のトコヨオオタヌキに変化してしまう。
慌てて逃げ出していくタヌキを呆然と見送り。

後から聞いた話だと、あれは見越し入道という怪異らしく。
速攻で『見越した!!』と叫べば消える程度の怪異だったとのこと。

……じたばたと戦っていた場所は最初に坊主を見た位置と変わっておらず。
私は深い脱力感に苛まれたのだった。

ご案内:「青垣山」からアリスさんが去りました。