2020/09/17 のログ
ご案内:「青垣山 廃神社」にレオさんが現れました。
レオ > 夕暮れの廃神社に、青年が一人。
まだ残っている腰掛石に上着と鞄を置いて、シャツのボタンを外して体が動かしやすい状態にしているだろう。

「よ…っ、し」

軽くストレッチがてら、傷の具合を見る。
傷がふさがるまでの間、戦闘の伴う仕事は控える。
先刻、先輩に告げられた命を守り、今日まで体を動かすのを控えていた。

今もまだ傷は、完全には塞がってはいない。
しかし、常世島の医療技術により通常よりもかなり速く傷は治っていた。
医療や魔術による治療が効きにくい体質の青年であったが、時間をかけて継続的に治療を行えば、十分に傷が癒える時間は速まる。

「…傷は大分治ってる。明日には復帰できるかな」

一人呟きながら、体の調子を確かめる。
傷は致命傷という程でもない、が…体を動かさなかった分少し感覚が鈍い気がする。
明日に警邏も復帰するとして、その前に基礎の鍛錬をしておいた方がいいだろう。
そう思い、人気が少なく”鍛錬の素材”に恵まれるだろうここに、赴いた。

…思った通り、ここなら鍛錬に困らない。
そう思いながら青年は、そこら中に生えている針葉樹の樹のうち、一つ、大きめのものの前まで向かうだろう…

レオ > 孤眼心刀流の鍛錬には、通常の鍛錬の他に指を重点的に鍛える特殊な鍛錬が存在する。
その鍛錬には、厚く、大きく伸びた樹木が必要だったのだ。

「―――使わせてもらいます」

目の前の針葉樹に手を合わせてから、左の掌を樹木に触れさせ、もう一方…右の腕を軽く後ろに引く。
薬指と小指、そして親指を畳み、人差し指と中指をぴん、と伸ばした状態にして、しっかりと針葉樹を見据える。


「――――ふッ…!」

そして、そのまま針葉樹を、その右腕で”突く”。
加減はしない。体をバネとして使い、力いっぱいの”突手”を行う。


大きな音を立てて針葉樹が揺れ、その樹に指が突き刺さるだろう。

レオ >  
孤眼流『矛指』と呼ばれる、鍛錬法であり技。
孤眼流で武器を振るう為に使う人差し指、中指をそのまま武器とする、貫手と言われる類の無手の一撃。
指を樹木に差し込む。差し込めるまで、何度でも同じように突きを繰り返す。

常人であれば、重度の突き指と、骨折を免れぬ狂気の沙汰。
だが、孤眼流を学ぶのであれば始めに覚えなければならない鍛錬の『基礎』

幾重もの突き指、幾重もの骨折。
爪が剥がれ、肉が裂けるのを繰り返しながら、指の”強度”を孤眼流に耐えうるものになるものに”変える”鍛錬。

孤眼流の鍛錬の『第一段階』。
これで樹木を貫く事が出来るようになって、ようやく次へと進む事が出来る。


そして指が深々と樹木に突き刺されば、今度はその指に力を入れる。
ミシッ…と、樹木の内側から音が聞こえる。
中で、何かが樹木を傷つけている音。

レオ >  
差し込んだ指を、フックのように折り曲げる。
当然、折り曲げる程空間が空いてはいない。
だから”無理矢理空間を作る”しかない。”指を動かす力”で。
指の”握る”力。クラッシュ力を鍛える『第二段階』

そして『第三段階』…
樹の軋む音が止み、指が完全にフック状に曲げられた事を確認すれば。
左手に力を入れ、樹木と自分を支える。
そのまま…


「――――――……ッ!!」


樹木から、指を”引き抜く”
無理矢理中でフックのように折り曲げた指は、そのまま樹木を”抉り取る”

孤眼流『削指』
指をフックにし、それで相手の肉を削ぐ技。
指を”保持する”力と”つまむ”力…ホールド力とピンチ力と呼ばれるそれを、鍛えに鍛えなければ指そのものが千切れる可能性すらある。
そんな常軌を逸した鍛錬の末に手に入る指。

それら一連の動作を受けた針葉樹は、スプーンでくりぬかれたような穴が出来上がる。



それを、何度も繰り返してゆく……

レオ >  
何度も、何度も繰り返し…
樹の幹が自重に耐え切れずに、傾き大きな音を立てた所で、それらの鍛錬を終える。

「―――ッ、ふぅ…」

汗を拭い、すこし息を整える。
やっぱり少し鈍っていたな、と…息が切れた自分の体を確認する。

「しばらく、毎日鍛錬だな…」

腰掛石に座り、持ってきていたスポーツドリンクを飲みながら、汗を拭いて体の火照りを冷ます。
風が心地いい。夏の暑さは、いつの間にかどこかにいってしまったようだった。

ご案内:「青垣山 廃神社」からレオさんが去りました。