2020/10/15 のログ
ご案内:「青垣山 廃神社」にレオさんが現れました。
レオ >  
この島に来て、2か月が迫ろうとしていた。
その2か月で、習慣になりつつあることが、何個か出来た。

朝、ある女の子が来るまでに一通りの体慣らしを終えてシャワーを浴びておくこと。

その女の子に作ってもらった料理を食べて、保護した子猫を寮長に預けて学校に行く事。

授業が終わってから、寮長に子猫の様子を確認して、風紀委員の仕事に向かうこと。

その日その日の風紀委員の仕事をし、同じ時間に帰宅する事。

帰宅すれば、いつも通りやってくる女の子の作る料理を食べ、少しだけ静かな時間を共に過ごす事。

そして遅くなる前にその女の子を自宅に送り…

夜。
明日に差し支えないよう、遅くなりすぎない時間に、この廃神社に来るのが日課になっていた。

ただでさえ人の来る気配のないこの場所、こんな夜更けなら、さらに人の来る可能性は低い。
”鍛錬”に最適な時間と、場所だった。

「――――――ッ」

体の基礎的な鍛錬と、実物の剣を用いた一通りの型の練習。
まだ使い始めて日の浅い両刃剣で、少しでも動けるように、1日も鍛錬は欠かす事は出来ない。

剣を振るいながら、思考を研ぎ澄ます。
どうやって振るうのか。
何をイメージするのか。
足先を、脛を、太腿を、腰を、胸を、肩を、腕を、手首を、指先を…どう動かすかを。
総ての感覚を滞りなく感じ、動かせるように。
体を操作してゆく。


「(――――――まだ、何一つ…
  何一つ、成し遂げる方法は……見つけられていない)」


自分が、どうしたいのか。
変わるべきことは分かっている。
それを成す為に…どうするべきか。
想う相手に…
彼女の為に、何が出来るのか。

変わり始めたとはいえ、まだ、過程。
未だ、成らぬ道。

レオ >  
全身を集中させる。
振るう剣まで、己が一部とする為に。

「(――――まだ、全然粗い)」

剣と刀の違い。
剣が劣っているという訳ではない。
だが…己の本来の獲物との微細な勝手の違いが、”業の切れ”を喪わせる。

朧車との闘いを思い返す。
あの戦いは…剣に慣れていない故の苦戦が、顕著だった。
動作の一つ一つの精細さの不足故に、相手に有効打として繰り出せる業が無く…何よりその結果、仲間に自己犠牲の選択を迫らせる結果になった。

そうして、足を一本、折る事になった。

「(…刀で戦ってたら)」

一瞬脳裏によぎったその考えを、剣と共に振り払う。
それは、駄目だ。
刀は……
師匠から教わったそれを、今の僕は……自分の意志で振るう権利がない。
禍狩り人を辞め、あの人の下を去った自分が……
それを是とするのは、道理に反するから。

「―――――――ッ!!」

だから、刀は使えない。
剣を鍛えないといけない。

まだ――――――――

レオ >  
でも――――

「―――――――」

一人の女の子が、脳裏によぎる。

今……思いを寄せている女の子。
神樹椎苗の、姿が。

「(どうやったら――――

  どうやったら、あの人を”殺せる”…?)」

自分に、殺す事が出来ない女の子。
彼女を殺す事……
死ねるように、する事。

その方法が、未だ……分からない。









いや……
一つ。
一つだけ…可能性がある。
だが……

「(――――駄目だ)」

それは今の自分には”無い”もの。
そしてそれをもう一度手に取る事は、もう二度とないと、自分が決めた事。

レオ >  
それでも、時折思うことがある。
思い……剣が止まる。

汗を流しながら、呼吸を整え……
虚空をぼんやりと、眺める。

「………”あれ”があったら」

かつて、自分が”担い手”となった一振りの刀。
それを扱うという”御役目”を……自分は放棄した。
その上で、今になって”あれ”を求めるのは…筋違いだ。

だから。
剣を…己を、強くするしか、ない。

少なくとも……それしか今出来ることは、ない。










「―――――――師匠。

 





 どうやったら……僕はもっと強くなれますか」


空に、呟いた。

ご案内:「青垣山 廃神社」からレオさんが去りました。