2021/02/05 のログ
神代理央 >  
「笑えない冗談だな。風紀委員の敗北は、その権威の失墜もさることながら、生徒への不安と不信に繋がる。
我々は手段は兎も角、学園の秩序と風紀を守ることが大前提だ。それを覆す様な事はせぬよ」

フン、と高慢な笑みと言葉。
過激な手段である事は自覚しつつも、学園の警察機構である誇りくらいはあるのだと告げて。

「…あそこか。確かに、隠し事をするにはもってこいだな。
ウイルスの類も構わない。それくらい此方で何とかできなくては、風紀委員の名折れだからな」

こくり、と小さく頷いた後。
続く彼の言葉には、クスクスと小さく笑みを浮かべる。

「やれやれ。私の部下も、貴様も、人の事を一体何だと思っているのやら。まあ、そう言われるだけの行動の結果故、文句も言えぬがね」

戦争になるだろう、と言う言葉に零す笑み。
己は確かに闘争を好む部類ではあるが、無益な戦闘に奔る程でも無い。思想の相違だろうか、と思わなくも無いのだが。

「…ならば、私も此れ以上は言うまいよ。しかし、燻る火種が大火の元になるのも良くある話だ。
落第街の秩序とやらを保ちたいのなら、くれぐれも留意する事だな。風紀委員会の行動など、一つの要因に過ぎぬ」

所詮、人は感情で動く生き物だから――という言葉は飲み込んだ。
其処まで言うのは、野暮な気がしたから。

「そういった使い方も勿論だが…私の異能は、本質的に精密射を必要としない。何方かと言えば、私に必要なのは砲撃に集中する為の前衛。或いは、砲弾に対抗し得る敵に対しての次の手札だ。
そう言った意味では、貴様の能力は前衛…というより、私を護衛するのに向いているやも知れないな。
砲兵を守る為の先鋒は、戦場の必須。であれば、その辺りの協力もいざとなれば求めたいところではあるがね」

【虚無】 >  
「そう考えると面倒な組織だ。ただの1度の敗北も許されないというのは……まぁそれゆえに強い者が多いのかもしれないが」

 自分達は言ってしまえば最後に勝てばいい。どれだけボロボロに負けようとも。
 だが彼らは違う。自身が背負う者達の為にただの1度も負けた姿を見せるわけにはいかないのだ。
 相手の笑いに対しては肩を竦めて見せる。

「そうだ、仕方がないさ……だが、ある意味で作戦としては成功なんじゃないか? それだけの畏怖と印象を裏の人間に植え付けているというのだから」

 実際彼らの活動で違反組織が減ったのも事実である。名前を勝手に利用させてもらった時にも……便利だった。
 それからの警告には少しだけ笑って見せる。

「ああ、よく知っている……その為の俺達さ。もし大火になりそうならそれを食い止める。それが俺達の仕事だからな」

 言わんとしている事は理解している。だからこそそれを上から押さえつける。ある意味であの町での暴力装置ともいえる存在。それが自分達だ。
 名前の通りその為ならば裏切りだろうとためらいなく行う。今まさに行っているように。

「ああ、それも契約の内だからな、松葉雷覇関連の事件の捜査、および攻撃の時には協力する……その時用にコードネームでももらっておくか? 虚無ではあまりにも風紀委員っぽくないだろうし、協力するときにお前も違反組織の人間を使っているとなっては印象が悪い。だから非公式公認メンバーで。そうだな……例えば番犬だとかな」

 別に名前に拘りがあるわけではない。丁度狼、つまりは犬のマスクを着けているのだ。それでもかまわないとばかりに。

神代理央 >  
「それくらいの気概が無くては務まらない…と迄は言わぬがね。
強者が多い理由は、その辺りにあるのやも知れんな」

敗北が許されない訳ではないが、それを生徒達に見せる訳にはいかない。
だから、風紀委員の戦場は過酷なのだろう。人手も足りない訳だ、と僅かな苦笑い。

「…本来は、個人の武勇に頼るやり方は好まないのだがね。
だから、特務広報部という組織を作った。違反部活に対する圧力を、個人ではなく組織としてパッケージ化する為にな。
それでも現状は、或る程度の戦闘力を持った個人に頼らざるを得ないのだが……と、此れは愚痴だな。すまない」

「理解しているのなら構わない。私とて、準備の整わない儘落第街と大規模な抗争を起こしたい訳では無いからな。
その為にも、貴様の活動には大いに期待したいところではあるがね」

結局、特務広報部も己の存在も、本質的には『違反部活の土壌を叩き潰す』為のもの。
仮に違反部活が無くなってしまえば、落第街に風紀委員会が手を出す必要は無い。代わりに、福祉や保護の為に生活委員会が出張るのだろうが。

「……コードネーム?ふむ。其処までは考えていなかったが…確かに、違反部活との関りを探られるのは面倒だな。
…番犬、などと恰好のつくものにはなるまい。我々の存在そのものが、出来損ないの猟犬ならば。貴様を呼ぶ時は『ストレイドッグ』……野良犬、と呼んでやろう。
出来損ないの猟犬(ヘークトフント)の影にいるのは、野良犬(ストレイドッグ)で十分だろう?」

それは、自嘲と誇りの入り混じった笑みと言葉。
特務広報部は、未だ育ち切らぬ猟犬紛い。そして己は、その主。
其処に協力しようというのなら…野良犬でしかあるまい、と。

【虚無】 >  
「別に個人の力は悪い物ではないさ。というより……どんな形であれ、個人の力は絶対に必要だと俺は思っている。その個人の周りにまた同じ志を持ったものがあつまるのだから」

 裏切りの黒はそうして生まれていった。多少その姿を変えても今に至るまでずっと。
 その後の発言には少しだけ笑った。

「やれる限りはやるさ。そうでなければ協力した意味もない……お前も期待しているぞ。戦争の最前線。などお前からしても面倒だろう」

 そうならないとも言い切れない状態。 
 最も研究者という事を聞けばあり得るのは戦争ではなく黄泉の穴の再来という可能性だ。何があってもそれだけは阻止しなければならない。
 コードネームをつけられれば思わず声を出して笑った。

「フフ、野良犬。野良犬か、気に入った。それで構わない……たしかにお誂え向きの異名だ」

 クククと笑っていた。あぁ、確かにピッタリだ。
 自分達としても野良犬が集まった組織でもあるのだから。
 ひとしきり笑えば立ち上がる。

「そろそろ戻らせてもらう。情報のまとめ作業だったり遣る事はあるからな……明日の昼までにはデータをしまっておく。確認してから刑事課に提出しておいてくれ」

 というと飛び立とうとして。後ろを振り返った。

「協力してくれたことうれしく思う……できれば、このまま敵対関係に戻らない事を願っている」
 
 とそれだけ言えば山の向こうへと姿を消すだろう。
 宣言通り、後日の昼までにはデータ等が送信されている事だろう。

神代理央 >  
「……確かに、悪い物ではない。だが、個人の力に頼る世界は、碌なものにはならない。…少なくとも、今の世界に『英雄』は必要無い。必要なのは『指導者』。例え武勇に優れずとも、人々を導き、従える者。
……まあ、夢物語かもしれぬがね」

或いは、それを英雄と呼ぶのだろうか。
圧倒的なカリスマによって立つ組織や国は、大概ロクな結末を迎えてはいない。それでも。

「そうでなくても面倒事が多いからな。
互いに、良い方向に物事が進む様に尽力するとしようか」

小さな溜息と共に頷いた。
違反部活だろうが何だろうが、使えるものは使う。
今の己に出来る事は、そう多くは無いのだから。

「気に入って貰えたのなら何よりだよ、ストレイドッグ。
首輪無き猟犬。或いは、廃屋の野良犬。精々、私に楽をさせてくれたまえ。
……データの件は了解した。サルベージ要員を此方も手配しておこう」

そして、飛び立とうとする彼を紫煙を燻らせながら見送ろうとして――

「……さてな。それを決めるのはきっと、私でもお前でも無いさ」

風紀委員会と違反部活。
所詮互いに、組織に所属する身分でしか無いのなら。
敵対に至るかどうかは、互いの知らぬところで決まる事も…あるのかもしれない。

そうして、飛び立った彼を見送った後、此方も廃神社を後にする。
後日、送信されたデータを電脳世界に聡い部下に回収させて――刑事部へと一つ、恩を売ることになるのだろう。

ご案内:「青垣山 廃神社」から【虚無】さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から神代理央さんが去りました。