2021/11/17 のログ
ご案内:「青垣山 廃神社」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
青垣山には、神霊が居るのだという。
事実、度々報告される霊障や曖昧な報告例、事件というまでも無いそれらが“ありえそう”と思わせる十分な説得力を持っていた。
そして実際に、祭祀局や霊体に関する仕事や能力を持つ人間ならとっくに解っていたことでもある。
この山では何が起きてもおかしくないと。
(とはいえ、あの時みたいなおかしな気配はもう無い、……かな……?)
青垣山をせっせと身軽な格好で登る少女がひとり。荷物は小さなリュックを背負っているくらいの。
別に山をなめてるとかではなく、割と安全なルートがもうあるからなんですけど。
目的も、山登りとか趣味でもなんでもなく、とある事件の事後調査と、廃神社の関連性を見出すため。
「……うわー……。
思ったよりぼろぼろ……」
これはまた見込みは薄く、延々と地味な調査が長引きそう……。
そう思いながらも、朽ちた鳥居をくぐる前にお辞儀を、ぺこり。
「ささっと調査だけ終わらせて帰って――、あれ?」
境内?とすら言えない草の生え放題の荒れた神社を眺めていたら、まさかの人影。
もしや亡霊の類なのでは――とか考える前に、相手が人のカタチをしているだけで、
「し、失礼しましたっ!
……こ、こんにちは~……」
なんて、独り言だと思ってぺらぺらしゃべってしまったことへの謝罪と、山登りでは挨拶が大事と聞いたので、恥ずかしそうに頬を掻きながら挨拶をしてみたり。
(う、うわ~っ……誰もいないと思って喋りまくっちゃった……変なコだと思われてませんように……)
■狭間在処 > 「………!」
落第街やスラムで暮らしている身の上だ。
気配や音にはそれなりに敏感で、普段ならある程度の距離まで近付かれれば自然と勘付く。
…その筈が、あちらから声を掛けられるまで気付かなかった。
思ったより疲弊しているのか、それとも表の側に感覚が慣れていないだけか。
あるいはこの場所が――…?と、あれこれ悩んでもしょうがないのだけれど。
(…しまった、まさか誰かが来るとは思わなかった。)
内心で軽く舌打ち。それよりも接近に気付けなかった自分の鈍さを呪うべきか?
ゆっくりと、相手に変に刺激を与えぬようにゆっくりと振り返る。
少なくとも亡霊の類じみた気配や空気は無いだろう。…衣服はちょっと薄汚れているが。
物静かな、風の無い凪いだ湖面の如き碧眼が静かに…少女へと視線を合わせて。
「………。」
変に警戒させたり敵対の空気に持ち込む気は無い。緩やかに頭を下げて会釈を返し。
とはいえ、こちらは喋れないので話題を振るのが少々難義ではある。
(…さて、ここはどうやり過ごすべきか。上手く行けば落第街まで思ったより早く戻れるかもしれないが。)
彼女の服装を見た限り…多分、学生…だろうか?ハッキリとは言えないが。
自身とは対照的な赤い瞳には不思議と光が無いようにも見えるがー…
ともあれ、大事なのは相手に不要な警戒や緊張をさせない事だ。…そうさせる自信は無いが。
■藤白 真夜 >
(……ほっ)
内心で胸を撫で下ろして、ひといき。
実のところ、あの山で行き交う時に挨拶を絶対しないといけないルールは、人見知りの私からすると大分つらいのでありました。
「……――」
私はこれでも、怪異を殺したことがある。逆のパターンのほうが多かったけれど。
相対するモノにどこか、妙な違和感が、あったかも……しれなかったけれど。
きっと、気の所為だろう。実際、そうなら私はもっとハッキリと感じられるはずであったから。
「……ふふ」
私にしては珍しく、小さく笑顔を作って言葉を切る。
相手からの返答が無いことは気にしないし、人見知りの私はそっちのほうが落ち着いた。少し、喉元の包帯に案ずるような目が行くかもしれなかったけれど。
挨拶がうまくいくとなんだかいい気分。だから山道のルールがあるのかもしれなかったけど。
崩れかけた社殿。もはや草木と変わらぬようなそこに、手を合わせる。
「……」
言葉のない祈り。
もう、届くかすらわからないけれど。神がすでにそこにあってもなくても、遺しておくべきだと思ったから。
合わせた掌の間から、紅く煌めく砂のようなモノが零れ落ちて、社殿の廃墟の中へ吸い込まれていく。
どこか、別れを告げるような静けさの中で。
「ふう。
……あの、もし……?」
振り返って、一息。もうやることは終えた。
「どうして、こんな所まで……?
神社とか、廃墟とかお好きな方なんですか?」
なるべく、人の良さそうな笑顔で話しかける。幸い、声は震えなかった。
「……も、もしかして。
…………迷子じゃ、ありませんよね……?」
最後の問いかけは、ちょっと申し訳無さそうな困り笑顔と、震えた声で。
■狭間在処 > 青年は人見知りではないが、何せ今まで落第街やスラムから表に出た事がただの一度しかない。
今回、ハプニングで表の側に飛ばされる羽目になった結果、色々あって今はこの山に居る訳だが。
「―――…。」
出来損ないの欠陥品とはいえ、本物の怪異と同質の気配は彼にも存在する。
が、あまりに微弱なそれは下手すれば気のせいと流される程度のものだ。
もっとも、だからこそ助かっている部分も大きいのだけれど…。
(勘付かれた――…いや、違和感を抱かれた程度か?)
身なりなどで怪しまれてもしょうがないが、『人造の怪異』という点だけは隠し通したい。
奇しくも、そのお陰で彼女の感覚にハッキリと引っ掛からなかった幸いに青年は気付かない。
「……?」
無言の挨拶を返すが、何故か小さく笑う少女に緩く不思議そうな面持ちに。
…何か笑われる不作法をしただろうか?…喋れないので気楽に尋ねる事は出来ないが。
包帯は乱雑に巻かれており、包帯の端が緩く夜風に靡いている。
勿論、山道初心者どころか山そのものが人生初体験の彼に、ルール云々は勿論分からなかった、が。
(……祈り、か。…もう誰も何も居ないこの場所で祈って意味はあるのか?)
尋ねる事は出来ない。だから、ただ静かに祈りを捧げる少女を見つめていた。
――だが、彼女の掌から零れ落ちた赤い砂のようなものが社殿へと吸い込まれていく。
――その時に感じたものは、恐怖だったのか安堵だったのか。
「………!」
祈り――やるべき事を終えた、とでもいうように笑顔で振り返り尋ねてくる少女。
答え様としてもこちらは言葉の意思疎通がどう足掻いても不可能な身の上だ。
で、とるべき手段は大まかに二つに限られてしまう。
(伝わるといいんだが…。)
まず、彼女の言葉に対して自分の喉元の包帯をトントンと指先で叩くように示して。
それから、口元で軽く指先で×を作る。『俺は喋れない』という意図は伝わるだろうか?
それはそれとして――迷子…迷子か。…正直認めるのも少々恥ずかしいが実際その通り。
その気持ちが態度に出たのか、少女から一度微妙に気まずそうに視線を逸らして。
何せ、この山の名前やどういう場所かすらも把握していないのである。
かといって、『落第街までの道を教えてくれないか?』と、安易に尋ねていいものか。
ご案内:「青垣山 廃神社」に狭間在処さんが現れました。
■藤白 真夜 >
(も、もしかして、手話?
ど、どうしよう……!手話なんてあっかんべーのポーズで歯を指して白って意味くらいしかしらない……!)
なんて、内心慌てそうになるものの、その解釈で意味は十分に通じていた。
喋れないのだから手話が必要になるのだから。
「――!」
どうしても、彼を見つめる顔が申し訳無さそうに下がる。
そう思うことですら失礼かもしれなかった、けれど。
「……うるさくしてしまって、すみません」
そんな人の前で一人で言葉を連ねること自体を、謝らなくてはいけないと思ってしまった。
けれど、迷子かとの問いに気まずそうに佇む姿に、そんなことを憂う暇は無くなってしまった。
「……えッ。
も、もしかして、遭難、ということですか……!?
あ、あの、良かったら、これ……」
がさごそとリュックを漁って、ペットボトルに入った水を、そーっと差し出す。
元気そうに見えるから必要は無いかもしれないけれど……。
「……何か、力になれることは、ありますか?」
青年の言葉が無いからというわけでは、無い。
どこか申し訳のなさそうな弱々しさは消えて。
ただ、困っている人を助けたいという意志を見せて、あなたを見つめる。
……引っ込み思案な分、静かなひとには喋れるだけかも、しれなかったけれど。
■狭間在処 > (…成程、意味合いは伝わったようだが、手話やジェスチャーの意思疎通は難しそうだな。)
彼女の申し訳なさそうな顔を眺めつつ、取り敢えずこちらが喋れないという事が伝わればそれでいい。
とはいえ、彼女の謝罪に一度瞬きをしてからゆっくりと首を横に振る。
まだ周囲は明るいならば、懐からペンとメモ帳を取り出して見せて。
そう、手話が駄目なら――筆談である。
『別に君は五月蝿くしていないし、むしろ俺の方が祈りの邪魔になっていなかっただろうか?』
と、筆談に慣れているのか高速でペンを動かしてからそちらにメモを見せて。
少し会話のテンポが悪いかもしれないが、そこは少女の寛大さに期待するしかない。
「……。」
遭難――まぁ、間違いない。認めるのもアレだが実際そうな訳だから。
徐に、慌てて何やらリュックからペットボトルに入った水を取り出して彼女が差し出してくる。
僅かに沈黙した後、喉はそれほど渇いてはいないが…軽く頭を下げてからペットボトルを受け取り。
『ここがどういう場所なのか。島のどの辺りなのか教えて貰いたい。最悪、この山から出るルートだけでも知りたい。』
ペットボトルの水を一口飲んでから、飲み口はハンカチで軽く拭ってから蓋を閉めて彼女に返そうと。
そのまま、再びサラサラとメモを書いて彼女に見せる。
彼女はおそらく表側…少なくともそちらに主に身を置く人だろうから、あまり積極的に関わるべきではない。
かといって、今の状況を考えると己にとって間違いなく救世主である…とはいえ。
(…出来るだけ彼女に負担や迷惑は掛けないようにしなければな。)
裏の人間として、日陰者として、出来損ないの欠陥品として。
多くを望めない自分は、だからこそ弁えるべきなのだと静かに言い聞かせながら。
■藤白 真夜 >
「な、なるほど、筆談……!」
思わず、私のほうまで納得するような顔をしてしまう。
……お互いに意志が通じあうならば、それがなんであれわかりあえるはずだったから。
「あっ。いえ、お水はどうぞ持っていてくださいっ。
私、水、あんまり好きでなくて……。
なんで買っちゃったんだろう……登山だなんて意識しちゃったからかな」
一応、新品だったはずだし。
ふむふむ、と見せられるメモ帳に目を通して、考える。
本当に、迷い込んでしまったひとだ。驚きは無い。転移荒野や異邦人が居るこの島では珍しいことではないと思ったから。
そして何より、安堵を覚えた。今ここに、私が間に合ったことに。
……登山のためにとカタチだけ整えるように買ってきた水と非常食がまさか役に立つとは……。
「ここは、青垣山です。常世島でいう、西のほうでしょうか……?
……んー……」
少し考え込む。
この当たりの土地勘に詳しいわけでもなく、それを説明したり地図として書くのは私には厳しい気がした。
「……じゃあ、一緒に山を降りてみませんか?
私も、帰り道ですし、行き来のルートは覚えていますから」
問いかけるように、軽く顔を傾げる。
文字の上でもわかる、優しい――ただ、私を遠ざけているだけかもしれなかったけど――その気遣いに、応えるように。
「少しだけ、うるさいおしゃべりをしてしまうかも、しれませんけど」
筆談でも、言葉が通じる。意志が繋がることは、嬉しいことだと思ったから。小さく、笑顔を浮かべながら。
■狭間在処 > 筆談なので、彼女の言葉に律儀に答える事は出来ないのが申し訳ない所。
だが、手話を含めたジェスチャーが駄目ならば、もうこれしか意思疎通の手段が無い。
それこそ、念話…テレパシーの異能か魔術が使えればいいのだが、生憎とどちらも青年には無い。
ともあれ、水が好きでは無い…と、いう彼女の言葉に不思議そうにしつつも軽くまた頭を下げて。
ペットボトルは取り敢えずコートの深めのポケットに一度仕舞い込んで置く。
(青垣山……西か。落第街やスラムは確か島の東の端に近い側だから――…)
まだかなり距離があると見るべきか。これは、徒歩だけではまだまだ時間が掛かりそうな気もする。
それに加え、学生区を避けるように大回りしようと思っていたので、尚更時間が掛かりそうだ。
彼女の申し出に、少しだけ考え込みつつも矢張りこの山はそろそろ出ておきたい。
なので、『じゃあ、手間を掛けさせて済まないがよろしく頼む』と短く筆談を返し。
遠ざけているのは間違いない。だが、それは彼女にこちらが迷惑を掛けない為に。
こういう所は甘さなのだろうが、表側で暮らす人達になるべく迷惑を掛けないのが彼のルールだ。
『雑談は別に構わないぞ。見ての通り筆談で返すからテンポは悪くなるかもしれないが』
と、筆談をしつつ軽く冗談めかして肩を竦めてみせる。
彼女と違い、表情は変化しないがちゃんと感情があるのは伝わるだろうか。
■藤白 真夜 >
「……ああ、よかった」
言葉が無いからだけでは、無いと思う。
どこか一歩引いたような、越えてはならない線があるような振る舞い。
でも、ちゃんと言葉は、文字は、意志は届いている。
それが、とても喜ばしいことに思えてならなかった。
「手間だなんて、とんでもありませんっ。
何かあったら、知らせてくださいね。
と言っても、ルートも整備されていますし直ぐだとは思うんですけど……」
承諾を得られれば、下山するルートを先導するように歩きだすでしょう。
やはり、鳥居の残骸をくぐる時はそれが自然体なのか、頭を下げたり真ん中を避けようとしたりするでしょうけど。
「……あれは、祈りだなんて綺麗なモノじゃないんですよ。
あんまり、良いことではありませんでしたから」
ぽつりと喋りだすそれに、感情は籠もっていない。
あれは、もう怪異が出たりしないようにというただの儀式であり、生贄であり、……撒き餌。
叶うならよし。叶わないのなら、それ自体が誘引剤となるだけの。
「ああ、でも。
あなたにお会い出来たのは、よかったです」
振り返りあなたの碧色の瞳を見つめる顔は、落ち着いて、安らいでいた。
助けられて、良かったと。
「……あ。忘れるところでした。
私、藤白 真夜って言います。
あなたのお名前を、見せてくださいませんか?」
しゃべることは、あんまり得意ではなかったけれど。
静かな彼を相手にすると、少しだけ口数が増えた気がする。
それでも言葉はわずかに、青垣山を二人で降りていくだろう。
心配性な私は、遭難していたあなたを病院にでも連れていこうとするけれど、事実として元気なあなたを見れば言いくるめるのは簡単なはず。
やはり、一線を引いたあなたを静かに見送るのでしょう。
……どこか、気分が良さそうに小さな笑顔を浮かべて。
■狭間在処 > 「……?」
良かった?何がだろうか?彼女が何に喜んで安堵しているのか分からない。
少なくとも、失礼な態度は取っていない…と、思う。自信は無いが。
落第街やスラムの人間とのやり取りは慣れているが、表側との人々との真っ当なやり取りは殆ど経験が無い。
『…知らせたいのは山々なんだが、俺は携帯電話とかも持っていないもので。』
と、少し申し訳無さそうにしつつメモを見せる。
正直、落第街に戻るまでは彼女も含めて誰かの手を借りる事もあるだろうと思う。
が、そもそも連絡手段が無いので――本当に一期一会になりかねない。
基本的に落第街から出ようとしない青年だから尚更である。
彼女の作法?に続いて、青年も真似をするように軽く頭を下げてから真ん中を避けるように鳥居の残骸を通り抜けて。
続く、彼女の言葉に感情は篭っていない――祈りという程のものでもないならば。
(何かの儀式か…さっき感じた感覚からすると――封印や魔除けか?)
本物の怪異に比べて数段色々と劣るとはいえ、それでも怪異の特性を持つ青年だ。
だからこそ、祈り――ではないそれを彼女が捧げている時に不思議な感覚を覚えたのだろう。
『そうか。俺も君がここに足を運んでくれて助かった。冗談抜きで迷い続ける所だったから。』
ルートがわかれば至極単純なのだろうが、山歩きなど今までした事が無い。
一般の感覚からすれば当たり前の事が分からない…という意味では天然とも言えるのだろうが。
そして名前――名前、か。下手に名乗ってももう会う事も無いかもしれないのに。
それは未練になってしまうし、矢張り彼女に迷惑が掛かるかもしれないと。
だけど――…ささやかとはいえ恩人だ。名乗らないのも失礼だろう。
『狭間在処…アリカでいい。苗字で呼ばれるのはあまり好きじゃない。』
そして、筆談で己の名を彼女に伝える。狭間に在るモノ――その名前を。
名前に意味があるとするなら、この名前こそが己を表しているとも言える。
その後は、彼女が主にぽつりぽつりと喋って、己が筆談で答えたり相槌を打ったり。
テンポは独特だが、それでもきちんと意思疎通が出来るのは少し…嬉しかった。
山を無事に下れば、街の付近までは付いて行くが病院の事も含めて丁重にそれ以上は断るだろう。
まさか病院にのこのこと出向く訳にもいかない――ただの自殺行為だ、己にとっては。
(…藤白真夜、か。何時か礼はきちんとしたいが――)
もしかしたら、もう会う事も無いかもしれないのに。
少し、名残惜しいと思うのは自分の甘さかもしれない。
表と裏の線引きは自分なりにしている筈なのにこれだ、情け無い。
最後に。
『次にもし何処かで会う事があったらその時は改めてお礼を。また何処かで、真夜。』
そう、筆談で最後に言葉を交わして――彼女に会釈をしてから、ゆっくりと別れるだろう。
ご案内:「青垣山 廃神社」から藤白 真夜さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から狭間在処さんが去りました。