2020/06/18 のログ
ご案内:「列車内」に月神 小夜さんが現れました。
ご案内:「列車内」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
月神 小夜 > とある休日、小夜は軽音部の新入部員である斬鬼丸を伴って電車に揺られていた。
軽音部で活動するにあたって楽器は必須。最初は他の部員のものを貸していたのだが、
やはり自分専用の楽器があった方がいいということで、斬鬼丸用のギターを買いに行くことになったのである。

「いや~、やっぱ休みってだけあって混んでるね~」

壁際に向かい合う形で立ちながら苦笑する小夜は、いつものパーカーとヘッドフォン姿。
休日の電車内は多くの乗客でごった返しており、とうぶん座席には辿り着けそうにない。

水無月 斬鬼丸 > カタンカタンと揺れる列車の中。
少年は緊張の中にいた。目の前には同じ部活の女子。
今日は彼女と楽器を見に行く予定で、今まさに、その移動の最中。

なぜ緊張しているのか?
そんなことは当たり前。
なぜならこの水無月斬鬼丸という男、女子と買い物に行くなどというのは初めてだからだ。
はっきり言えばなんてことはないが、今までそのような経験に恵まれなかった男子にしてみれば
疑似デートのようなものである。嫌が上にも緊張してしまうだろう。
しかも可愛らしいと来るのだからしょうがない。
そしてその上……電車が混み合っているせいか、かなり近い。この距離はよろしくない。
近くで顔を見れば、なんだか普段と雰囲気が少し違うように見えるが…女の子ってこんなもんなんだろうな…たぶん。

何か話さなければ、なにか楽しませなければ。
こう思考してしまうあたりが陰キャなのだがしかたない。
しかし、この思考のせいでうまくしゃべれないのもまた事実。
実際、会話を盛り上げること無くここまできてしまったのだから問題だ。

しかし、楽器に関しても音楽に関しても、女子の文化にも詳しくはないのであった。
そしてこの距離。考えなど彼女が声を発するだけで吹き飛んでしまう。

「そ、そっす…ね…てか…狭いっすね…」

月神 小夜 > こちらは緊張とは無縁な様子で時折スマホを覗くなどしている。
かと言って対面の彼を無視しているわけでもなく、会話には応じるし、こちらから振ったりもする。
返ってくる返事が一言ふた言なので、あまり続かないのだが。

「ホント、ぎゅーぎゅー詰めって感じ!
 ザッキー大丈夫? バッキバキに折れたりしてない?」

細身なあなたを心配するような、からかうような口調で訊ねつつ。
ヘッドフォンが外れないよう手で押さえているため、ちょっとふらついている。

水無月 斬鬼丸 > 月神さんは余裕綽々と言った感じ。
雰囲気的にやっぱりなれているのだろうか?
他の先輩やメンバーに比べて男慣れしていると言うか。
ならこちらも軽く、なんも?全然?大丈夫っすよまじで?といった感じであるほうが
バンドマン的なあれだろうか?

「ふぁっ!?え、ああ、大丈夫っす…
これくらいならまだ……
月神さんこそ、なんかにつかまったほうが」

ギリギリで大丈夫。折れない。
だが、足はしっかり踏ん張れない程度には不安定な状況。
月神さんもふらついているが、ちゃんと足を肩幅まで開き、地を踏みしめてバランスをとらねば
押されただけで倒れてしまいそうだ。

月神 小夜 > 「ヘーキヘーキ、このくらい…………にゃっ!?」

案の定というか、嫌な予感が的中というか、ひときわ大きく電車が揺れた。
その拍子に乗客達もよろめき、後ろにいた乗客に背中を押される。

「とっ、とっ……!」

慌てて何かに掴まろうと手を伸ばすが、傾いた体勢から届く範囲に吊り革や手すりはなく───
結果、目の前にいたあなたに顔からダイブするような形になってしまった。
むにゅっ。少女の柔らかな感触があなたを襲う!

水無月 斬鬼丸 > ガタン!強い衝撃。
とともに、人の群れがうねる。
安定しない電車の中で小さなよろめきが波のように伝わって襲いかかってくる。

「俺はちょっと足元が…うぁっ!?」

よろめき倒れそうになるもなんとか踏みとどまると同時に。
むにゅっ。
ムニュ?なにが?
視線を落とす。落とせば先程自分の前で話していた少女がピッタリと密着している。
ぴったりと。
向かい合っていた少女が、ピッタリと。そして、むにゅっである。

「み゜っ!?」

あ~~~いけませんお客様!!

月神 小夜 > 「あたた……ザッキーごめん、痛かった?」

身長差があまりないため、見上げる小夜の顔はあなたの目の前に。
体勢を立て直そうにも他の乗客が邪魔で、僅かに身動ぎすることしかできない。
当然、そんな事をすればさらに体を押し付けることになるわけで。
しかも運の悪いことに、ヘッドフォンが今の衝撃でずり落ちてしまっている。
こうなると、敏感な聴覚が電車の規則的に揺れる音や周囲の息遣いを嫌でも拾ってしまうのだ。
その結果───

「んんっ……!」

なんとも悩ましげな声を上げる破目になってしまう。

水無月 斬鬼丸 > 吐息吐息吐息!痛くはない。
痛くはないが全然大丈夫でもない。
視線を落とせばまさに目の前。ガチ恋距離というやつだ。
何だこの波状攻撃は。世界有数の軍師が俺に攻撃を仕掛けてきているのか?
残念だったな、その攻撃は初撃の時点ですでに致命傷だぞ。
彼女との密着面積、できれば胸元だけでも…それを減らすために身体を少しよじるも
無理だ、全然動かない。それ以上に、彼女の吐息が下からふわりとかかるだけで膝に来る。

「もだっ、問題ないです!なんも、はい!」

大有りだ。
上ずった声を上げ、こわばり全身が緊張しきった身体を再度捩ってなんとか
心の平穏をマイナスからゼロまでに戻そうと画策したそのとき、少女は妙な声を上げる。
だめだ、動けない。てか、何?今の声。
やっぱり動くとイロイロだめなんですかね?今あたってる場所的に?
次の駅!次の駅で人が減ればワンチャン!早くしてくれ。
斬鬼丸の斬鬼丸がイロイロと危機的状況なのだから。

月神 小夜 > この状況は小夜にとってもよろしくない。
密閉された箱のようなこの空間は様々な音で満ちている。
ほとんどは雑音でしかないが、特に人の声は耳に来るしもっと奥にもクる。
その刺激は自分で制御できるものではなく、意思とは無関係に肩が震えてしまう。
ヘッドフォンを直せば解決するが、両手は体と一緒に押し付けられて動かすこともままならない状態だ。

「ザッキぃ……」

頼みの綱は斬鬼丸。彼にヘッドフォンをかけてもらうしかない。
熱っぽい目で彼を見上げ、今して欲しい事を伝えようと口を開く。

「おねがい……んぁっ……かけ、て……」

なんだか物凄い誤解を与えそうな言い方になったのは頭がうまく回らないせいだ。

水無月 斬鬼丸 > 名前を呼ばれただけなのに、ぞくぞくっと背筋に何かが走っていくような感覚。
何だその呼び方。あかんやろ。
俗に言う甘い声。そう聞こえたとしても、男子学生に落ち度はない。

「ぁぃっ…」

小声で返事を返す。
感じる柔らかさと、震える肩、その声、視線
何もかもがやばい。
彼女は気やすく接してくれるが、まぁ…男子なので?
そして、続く彼女のオーダーは……

「え…いや、え?かけ?」

なにを?
なにをって、なんか…うん、あれなあれを?
ここ満員電車のなかですが?それはまずいですよ?

「月神さん!?それは、だめっすよ!?」

なにがだめなのか。だが、少女の言葉の意図を汲めなかった少年では仕方ない。
そして、彼女の言葉の意味を正しく理解できなかったがゆえの齟齬。
彼女も彼女で、自分の言葉を理解した上で拒否されたのかと思うかもしれない。
だが、そのことを考えられる余裕なんて、ミリ単位で存在しない。

月神 小夜 > 恥を忍んでの懇願に対し、返ってきたのはNOだった。
人のいい彼なら素直に(ヘッドフォンを)かけてくれると信じていたのに。
まさか、こちらが抵抗できないのをいいことに、この状況を楽しんでいるというのか。

「いじわるぅ……っ」

再度見つめるが、イニシアチブは完全に向こうに渡ってしまっている。
ならば自力でと動かそうとした手は、空しく彼の体を撫でるばかりだ……

水無月 斬鬼丸 > 意地悪もなにもない。
やってバレたら確実にお縄。楽器どころではない。
できるだけ触れないように努力はしているのだ。
見えないところで必至に足を動かす水鳥のように。
手もできるだけ上げておきたい。人混みから引っ張り出すように両手を引く。のだが…

「……ごめっ…ごめん、なさい…で、でも…」

あがらない。それどころかこれ、手ぇ月神さんにあたってない?
柔らかくすべすべしてる?見えないし、触れてるところどこも柔らかいものだから
自分の手がどこにあるのか見当がつかない。
ってか、彼女の手は逆に無遠慮と言っていいほど触れてくる。
というか、撫でるように動く。そのたびに肩が跳ね、妙な声が出そうになる。

「我慢、我慢してくださいって!」

彼女への言葉でもあるが、自身にも言い聞かせている。
それなのに男子の男子的なあれはすでに臨戦態勢なのだからまったくもって…
そう、我慢してください。月神さんも、俺も!

月神 小夜 > 「我慢って……んくっ、言われたってぇ……」

やはり、見透かされている。
絶え間なく音による刺激を受け続け、声を我慢するのだって精一杯なのに。
このまま駅に着くまで耐えさせるつもりなのだ。なんという鬼畜……!

「ひぅっ!? や、そんなとこ……だめぇ……っ」

責め苦は言葉だけに留まらなかった。
ただでさえ敏感になっている身体に彼の手が伸びてくる。
逃げるように身を捩るが、かえって密着するような結果になってしまう。
このままでは───そう思った時、電車内にアナウンスが響いた。

『間もなく○○、○○に到着します───』

水無月 斬鬼丸 > 「そう、そうっす、我慢……そ、そうだ!
話でもしましょう!話!えぇっと…この間ラーメンを食いに行ったときなんすけどね…」

そうだ、気を紛らわそう。
そうすれば、月神さんも落ち着くだろう。
陰キャではあるが頑張って話題を絞り出せ!!
お互いの平和のために!!

「!?ああっ…ごめっ…ってか
これ、どこでどうなって…ちょっと…抜かせてくださいよっ…」

もちろん腕だ。
どこに触れているかわからない状況。
彼女に触れたままではいろいろと我慢が効かなくなるだろう。
なのだが、月神さんがそれを許さない。もっと密着度が…そこで響くアナウンス。

耐えた!やった、助かった!!

「駅、駅ですよ!もうこれで…」

月神 小夜 > 後半、彼が何か話していたが、全く耳に入ってこなかった。
少しでも気を逸らせば刺激に耐えられないからだ。
断片的には……イった、とかヌかせて、とかなんとか聞こえたような。

『○○に到着───電車が揺れますのでご注意ください』

減速する電車。再び揺れる車内。

「~~~~~~っ!!」

その衝撃と音に、小夜はあなたの腕の中でびくびくと全身を震わせた。
ドアが開き、乗客達が続々とホームへ流れ出ていく中、ぐったりと肩で息をしている。

水無月 斬鬼丸 > もう駅だ!これで…少なくともこのすし詰め状態…
いや、密着状態は解消されるはず…いや、どこだっけ?
ここでおりるんだっけ?

そこで油断。
電車が揺れる。揺れる?

「~~~~~~っ!!」

衝撃の中押し付けられる少女の身体。
やわらかいその感触、震える身体を腕の中に収めたままに
全身が密着してしまう。あかん。
駅に到着すれば、彼女の肩を支えるように抱いたまま息を絶え絶えに…

「……大丈夫、すか?」

なお、俺は大丈夫ではない。早くトイレにいきたい。

月神 小夜 > 「…………降りよっか……」

大丈夫かと訊かれれば、熱に浮かされたような顔でそう言って。
この後どんな事をされてしまうのか、不安と期待がない交ぜになったような表情だ。
ずれて首にかかったヘッドフォンもそのままに、あなたに支えられながら電車を降りる。
今ならどこへなりとも連れ込めそうだが……?

水無月 斬鬼丸 > 「あ、えと…は、はい…」

ものすごい気まずさだ。というか、この妙な空気は一体…。
自分はともかく月神さんの様子は一体どういうことなのか。
もちろんヘッドフォンのこと…彼女の聴覚事情に通じているわけではないため
戻さないままではあるが。

なんだ、これは…なにがおこっているのだ?
一世一代のチャンスなのではないのか?
非モテ陰キャ卒業できるのではないか?

様々の意識が交錯する。やべぇ、こういう時どうすればいいんだ?

「少し、休憩しましょう…か?」

トイレにもよりたいし。
カフェとかファミレスにでもいって一息つけるならばそれでいい。
落ち着けばきっと笑い話だ。

月神 小夜 > ───バイタル規定値まで安定。思考ルーチンの異常をクリア。
人の群れから解放されたところで、頭の中がスッと透き通っていくような感覚があった。
身体はまだ熱いままで、冷静なもう一人の自分が俯瞰して見ているような感じ。
なるほど、くるみはいつもこんな感覚だったのか。

「休憩……ホテルとか……?」

冷静になって考えてみれば、彼はそんな度胸のあるキャラではなかった気もするけれど。
困ったことに、こっちは散々弱点を刺激されて疼いてしまっている。
その気がないなら……後でこっそり自分で処理するしかないか。
よほど疎いわけでもなければ、このド直球な質問でこちらの意図に気付くだろう。

水無月 斬鬼丸 > 電車から降りて駅から出てしまえばふわりと風が熱くなった頬を撫でていく。
冷静には…まだ程遠いが、いろいろとあったため先程よりは思考はクリア。
月神さんも…もう大丈夫そうだろうか?
視線を向けたその時、飛んできた言葉はどんな銃弾よりも強く疾いものだった。

ホテルとか。
この時間にホテル?
いや、そも休憩にホテル?
そうなったらあれだろ?いや、いやいやいや…

えられた仮初の冷静さはあっけなく赤熱させられた。
頬は再びみるみると染まって…

「ほてっ…ホ↑テ↑↑ル↓じゃ、なくてもっ…その、公園とか…カフェ、とかっ…か…」

意識してないわけじゃない。
もちろん。
理解してないわけじゃない。
当然。
声は変なふうに上ずってるし。
だが、こんなことにつけこんで、女をだけるような度胸を、この男は持っていなかった。
いわゆる骨なしチキン野郎であった。

月神 小夜 > 「……ぷっ。あはは! ザッキーったらキョドりすぎ!」

期待外れとも予想通りとも言える反応に、思わず吹き出してしまった。

「冗談だってジョーダン。真っ赤んなっちゃってカワイ~♡
 アタシとくっついてドキドキした?」

さっとヘッドフォンを直して、いつもの軽い調子で揶揄ってみせる。
これでいい。アタシも相当どうかしていた自覚はあった。
そんなつもりで買い物に誘ったわけじゃないし……軽蔑されたかな? それはちょっとヤだな。

水無月 斬鬼丸 > 「は……え…?」

さっきまでの言動とは裏腹。
突然いつもの月神さんが顔を出す。
可笑しそうに笑うその姿は、妙に距離は近いものの接しやすい少女の顔。
安心したような、残念なような…
だが、心臓はどくどくと早鐘を打ったままだ。

「ぁ…じょ、じょうだ…ん?
じょうだんって…やめっ、やめてくださいって
俺、その……なれてないんっすから…」

今までのアクションで、経験者ですーは通用しないだろう。
おそらく遊んでいる彼女にはお見通し。
軽蔑などしてはいない。そのかわり『そういう目』でみてしまった。
まったくもって情けない。

「と、とにかくっ!休憩!休憩!!いいっすよね!!」

やや早足で歩き出す。とにかく…適当な店に入ってさっさとトイレにいかなければ…

月神 小夜 > 「だってザッキーのリアクション面白いからさ、イジりたくなるってゆーか……
 ほれほれ、アタシのおっぱい柔らかかったっしょ~?」

服の上から二つの膨らみを持ち上げる仕草を見せつけて笑う。
電車内で当たっていたものとその感触を、否が応でも意識させられてしまうだろう。

「あ~ハイハイ、休憩ね。『ご休憩』じゃない方ね、分かってるって♪」

置いてかないでよ~なんて言いながら、早足で歩くあなたを追いかける。
その後は喫茶店で一服し、何事も無かったかのように楽器屋へと向かうのだろう。

しかし、あの時の表情と熱を帯びた声は、しばらくあなたの脳に焼き付いたことは間違いない───

ご案内:「列車内」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「列車内」から月神 小夜さんが去りました。