2020/09/06 のログ
ご案内:「常世島環状道路:高速道路/跨道橋上」に真田 御幸さんが現れました。
■真田 御幸 >
朝陽が昇りゆき、夜闇を払う頃。
高速道路を跨ぐ橋上も、晴れ間の多い雲からの天気雨に濡れている。
その下に、青い秋風を受けて髪を揺らす青年が居た。
新しく点いた煙草の火から、その風の流れに紫煙を混じらせる。
「此処か。《魔物(モンスター)》が出た、ッツーのは」
傍に獰猛な機械仕掛けの駿馬――愛馬「大千鳥」を従えたまま、
欄干に背を預け、背後の高速道路を見下ろす。
■真田 御幸 >
曰く――
《450km/h以上をマークした》。
《距離を殺した瞬間移動の正体は》。
《随伴していた白い少女は何者か》。
「莫迦莫迦しい、って言ってらんねェンだろうな……」
肺腑に吸い込み、そして吐き出す。
チョコレートのフレーバーが心地よい。
しかしそれは、胸の裡の疼きを癒やすには至らない。
■真田 御幸 >
「《N.E.X.T》――《完成(うまれ)》てたなんてな」
フィルタを咬む。
疾さを求めた狂人たちの熱情の結晶。
挑戦という言葉に取り憑かれた物理法則という神への冒涜行為。
与太話だとばかり思っていた。然し――
夏の終わりの《怪談話》に説明をつけるとしたら――
それしか考えられない。
「《墓場(きのう)》からまろび出て来やがって。
長らく退屈してたって時に――《興奮(ぞくぞく)》させやがる」
口許は笑みの形を刻んでいた。
■真田 御幸 >
《槍兵》の名を負う翠焔の《魔物(モンスター)》。
夢追い人の狂気の示現は、この島に――
もう一頭の狂気を出現させるのに足りた。
晩夏の熱に煽られて。
それを体内に閉じ込めるようにフルフェイスを被る。
「――《疾走(ツッパシ)》るぜ、大千鳥」
シートに飛び乗った。
歓喜の嘶きを上げるように、エンジンが吼え猛る。
■真田 御幸 >
橋を飛び降りるその巨躯。
空中で二回転し、槍撃の如く前輪が高速道路に叩き落された。
「《首級(クビ)》洗って、待っていやがれ――!」
瞬間――凡そ尋常でない初動加速で真紅の槍が解き放たれる。
挑戦者は――此処にも居た。
ご案内:「常世島環状道路:高速道路/跨道橋上」から真田 御幸さんが去りました。
ご案内:「列車内」にレオさんが現れました。
■声 > 『―――レオ君さぁ
公安、クビね』
■レオ > 「―――はぁ…」
ため息が一つ、列車に小さく、響く事もなく落ちる。
いるのは、多少伸びた髪を一つにまとめた青年。
年頃は15,6だろうか。まだ若く成熟しきっていない顔立ちの青年の表情は、若干暗い。
列車の向かう先は、委員会街。
風紀委員会の本庁の最寄り駅へと向かっている。
「…クビ、かぁ」
そう言われたのは、今朝がたの事だった。
入ってまだ3日しか経っていない公安の上司に当たる人物に、公安から風紀委員への異動を命じられたのは。
まだ仕事のしの字もやっていない。
訓練で多少体を動かしただけ。
「…何もやってない気がするけどなぁ」
何が悪かったのだろうか。考えてはみたが、分からない。
ただただ、気が重かった。
■レオ > 委員会街の方を眺める。
「――――――ビルがいっぱいだ」
味気ない感想。精一杯の感想だった。
常世島の中枢、学園地区にある委員会街。
島の中で都会に位置するのだから、ビルが立ち並んでるのは当然だ。
自分がいた公安の部署は、委員会街から少し離れた場所に部屋を置いていた。
委員会街に来たのは、正式に生徒登録する前に一度と、1週間前に生徒登録で来たのの、二回。
だから、委員会街をちゃんと見るのは初めてだった。改めて見ると、今まで所属していた所とはえらい違いだな、等と思いながら。
ぼぅ…っと、列車の椅子に座りながら窓を眺めていた。
■レオ > これから委員会街にある風紀委員会本庁に向かい、正式な風紀委員としての登録をする。
それから、説明を受けて、寮への挨拶に向かって、荷物整理をして……
兎も角やる事が沢山だった。
「……やってけるのかなぁ
公安も3日でクビにされてるのに…
風紀……何するんだろう。
出来るだけ普通の仕事だといいけれど」
口からはネガティブが溢れている。
歓楽区を抜け、人がはけてきた列車内で、未だに肩身狭そうにカバンを抱えている青年の姿は、人里に迷い込んだ捨て犬か何かのようだった。
■レオ > ともあれ、新天地だ。
なるべく、目をつけられないようにしよう。
平穏に、普通に生きれれば、それが多分、一番だ。
普通に、普通に。
上手く周りの人に溶け込めるように。
「……普通にやってればいいよな」
■レオ > ―――その、普通というのが、難しいのだが。
まだ常世島に来て日の浅い青年は、知る由もなかった。
ご案内:「列車内」に月夜見 真琴さんが現れました。
■月夜見 真琴 >
「ふつうとは、なにかな?」
ささやくような甘い声が、そっと少年の耳をくすぐる。
■月夜見 真琴 >
その少年のひとりごとを耳聡く聞きとがめたか。
おもたげな荷物を提げている女はというと、
キャスケットの鍔の下から、銀色の瞳で少年をみつめていた。
穏やかな眼差しで。
「ぜひ、ひとつ。
おまえの思う"ふつう"を、きかせてほしい」
ほら。と、ちょうど空いたばかりの隣席を、細指の先が撫でる。
■レオ > 「え―――」
声をかけられると思わず、そちらの方を見る。
驚いたというより、自分に来た音の方角を、そのまま確認するように。
目の前にいたのは、銀の瞳の女性。
自分より少し年上なのだろうか、自分よりも大人びた印象を受けた。
「普通―――ですか?
あ、いや…特に意味なんて考えてなかったですけど…強いていうなら、何も起きずに、何も起こさずに、過ごせたらな、みたいな……
……えっと、貴方は……?」
隣の席を指先が撫でると、譲るように少しだけ席の端に体を寄せ
率直な疑問を、投げかける。
■月夜見 真琴 >
「ふむ」
その返答にすこし、愉しそうに笑いながら。
よいしょ、と静かに荷物を足元においた。
色々入っているらしく、それだけでもがちゃりと音が立つ。
「世の倣いと考えれば――そうさな。
"ふつう"は、何かは常に起きるものだし。
何かを起こしてしまうものだとやつがれはかんがえた。
毎日、いろいろ起こっているしな、それがふつうだと思っていた。
後輩に銃で撃たれたり。それも三発も」
あれは事件だが――なんて愉しそうに笑いつつ。
少し考え込むように顎に手を添えながら。
宙空を見上げて、ちょっと考え込む。
「安穏無事に過ごす日常を"ふつう"とするのは。
すこうし、これからはむずかしいかもしれないな――ふふふ」
ひとりで愉快そうにしてると。
問い返されれば、ああ、と視線を向けて、満面の笑顔。
「申し遅れていた。非礼を詫びよう。寛大な心で赦せ。
月夜見真琴(つきよみ まこと)。
三年生。一応のところ風紀委員だ。
――よろしく。レオ・スプリッグス・ウイットフォード?」
白い手を、そっと伸ばして。
握手を求めた。
■レオ > 重そうな荷物。
ガチャリと音を立てたという事は大小さまざまな道具が仕舞われているのだろうか。
武器…じゃないだろうな。暗器ならそもそも音を立てる訳がない。
等と一瞬思いながら。
「銃で撃たれるのが普通なのは…流石に嫌ですね」
と、苦笑を作った。
「…あんまり問題ごととか、避けたいんですけど…
常世島、結構治安がいい印象ですけど……
月夜見、先輩……ですか。
僕はえっと、レ―――」
言いかけて、相手の言葉でその言葉が止まる。
「…あれ、何で僕の名前を?」
■月夜見 真琴 >
手を伸ばしたまま、眼をぱちくりとして。
「ああ、言っていなかったな」
悪いと思っているのかいないのか。
笑顔に困ったような色が宿った。
「公安を三日でクビになった男」
と、告げるなり。
「それも風紀への異動の辞令を貰っている、ときた。
そんな面白そう――いや大変な事情に見舞われている者がな、
いろいろと"道に迷って"しまわないように道案内をしてやれと。
たまたま同じ電車に乗り合わせて。
たまたま庁舎に行く用事があるやつがれに。
そんな命令が降りてきたというわけさ」
わかりやすいだろう?と小首を傾げてみせた。
「庁舎までの道のり、よろしく頼むよ。
やつがれも話し相手がいるのは、退屈せずにありがたい」
■レオ > 「ん”ッ」
公安を三日でクビになった男。
公 安 を 三 日 で ク ビ に な っ た 男 。
■月夜見 真琴 >
「あはははは!非凡な男が来たものだなあ、と。
いまもやつがれはうきうきとしているよ」
非凡。
普通ではない経歴だ。
■レオ > 他人に言われるのはショックが大きかった。
しかも初対面の先輩にまで知れ渡っているとは。
まさか、何もしてないのに既に悪名が立っているのでは?
レオは頭を悩ませた。
「ま、間違っては、いない、ですが……
そ、その………その話って、広まって…るんですか…?」
できるなら平穏に生きたいレオにとっては、まさしく目の上のたんこぶのようなワード。
うなだれるようにしながら恐る恐る聞いたりしつつ…
「でも、あ…そうなんですか。一応辞令ちゃんと出されていたのか……
すみません、態々僕なんかの為に…」
そう言いながら、一度「あぁ…」とズボンで手を拭ってから、握手に応じる。
■月夜見 真琴 >
「ああ、命令ともども経歴書がやつがれのデバイスに送信されてきたのだよ。
閲覧しようと思えばできるゆえ、勤勉な者は知るだろうが。
安心するといい、わりとアバウトな奴も多い。
良いのか悪いのかわからないが、変な色眼鏡かけない者も。
おそらくは、になるが、広まってはいないさ」
そうやって安心させるように、甘ったるい声をかけて。
礼儀を重んじる姿には、少し眉をくいっとあげて。
上機嫌にふふん、と笑ってから、握手。
手は小さい――というほどでもない。柔らかい掌。
「――"まだ"、な」
何がきっかけに連鎖していくかわかったものではない。
と、笑みに悪戯な色が混ざる。握手。
そこでふと小首を傾げてから。
「ふしぎな筋肉のつきかたをしているな。
特にひとさしゆびと――なかゆびの。
なんだろう。何かの競技か、それとも特異な武術の心得が?」
しげしげと、もう片方の手も彼の手に重ねて。
そのまま検分を始めてしまう勢いである。
■レオ > 「そう…ですかね?
そうだといいんですけれど…」
動作一つ一つ、言葉一つ一つに不思議な魅力のある人だ
公安の自分がいた部署にも綺麗な人がいたが、あの人は随分と口と態度が悪かったな、等と思いながら、手を握る。
女性の手、だ。荒仕事をしているような気配のまるでない、軟できめの細かい、小さな手。
半面自分の手は、堅く、ごつごつとしているのだろう。
血豆を何度も潰して分厚くなった手の皮は、比較的童顔に見えるレオの顔には不釣り合いだ。
そんな手を、観察される。
的確に指摘されたのは、レオが実際に、特に鍛えている個所。
「え、あぁ……その、刀―――
―――いえ、剣術を少々。
…見ただけで分かるんですか?」
刀と言いかけて、剣と言いなおす。
刀はもう握らないのだから、間違ってはいない。
■月夜見 真琴 >
「――ああ!そうなのか」
剣術の心得がある。
そう聞くと、嬉しそうに表情をほころばせ、顔を上げた。
「触れて、見てみればある程度はな。
風紀委員は警察機構――わかるかな?
荒事慣れをしている者も多いのさ、荒事を実際にする者も。それにしても――
こういう鍛え方をする剣術、どこかで覚えがあるような、ないような」
首を傾ぐものの、そっともみくちゃにした手を。
今度は両手で包むように触れた。
「いやあ、それにしても――僥倖だ。
うれしいよ。レオ。
色々ごたついているいま、"剣術の心得がある"委員が来てくれるとは」
心底、嬉しい。そう隠さない高い声。
潤んだ瞳で彼の顔を真っ直ぐに見つめながら。
「治安の維持はひとえに風紀委員たちの活動と、
他生徒教員たちの協力あってこその賜物。
然るに、その維持活動においては"ふつう"であり、
おまえにとって"ふつう"ではない問題が山積みなわけだが――」
うたうように言葉を並べて。
ぎゅっ、と両手で彼の手をにぎりこむ。
――逃がさない。
「――当然、おまえは"前線(まえ)"に出てくれるのだろう?」
■レオ > 「いやぁ、剣術といってもたしなむ程度―――――」
綺麗な女性におだてられれば、それなりに気も緩む。
苦笑交じりに謙遜をしながら……
「―――へ?」
―――顔が固まる。
■月夜見 真琴 >
「いやあ、最近は内紛だの治安の悪いところで小競り合いがあっただの、
あまつさえ訓練中の事故で負傷などと笑えない事故が相次いでいてな。
"前線(まえ)"に出られる委員は喉が手が出るほど、という状態だ。
最近も活きの良い槍使いの新米が来たのだが、
それだけで十二分に足るというわけでもなし――」
いつでも"人員募集中"の張り紙が張ってありそうな。
それはつまりどういうことかといえば――そういうこと。
「庁舎につき次第、やつがれから人事部へ掛け合っておくとも。
単位や俸給も十分に弾んでもらえるポストへ推薦しておくさ」
危険手当という名前の俸給もあったりするのかもしれない。
「ああ、安心したまえよ。
"風紀委員会"に属するという時点で、"ふつう"の日常など送れないのさ。
無論"ふつうでありたい"と努力をする分には個人の裁量だし、
やつがれはそうやって頑張る者を応援するのも、だいすきだ」
手を離して、男の腕であろう二の腕をぽんぽん。
"はげます"ように叩いてあげる。
「がんばってくれ!」
■レオ > 口をぱくぱくとさせながら何かを訴えようとしている。
声は、出ない。ぱくぱくとするだけ。
さながら餌を食べようとする金魚の如く。
結局無言の微細な抵抗等、塵にも等しく……
向かうは本庁。前線部隊。
委員会屈指の武闘派集団の根城。
嗚呼、拝啓、元上司の四方先輩。
普通の生活をしたいと言った筈なのですが、普通の生活は予想以上に険しい道のようです。
これからどんな場所に招待されるのか、既に僕は不安しかありませんが、其方は元気にしているでしょうか。
恨み節交じりの心の声が、空しくレオの脳内でのみ響いた―――
ご案内:「列車内」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「列車内」からレオさんが去りました。