2021/10/14 のログ
ご案内:「列車内」にイェリスさんが現れました。
■イェリス > ガタンゴトンと、小さな振動が体を揺する。
不慣れな土地の初めて乗る私鉄。
おっかなびっくり乗り込んだものの目当ての駅に着いてくれるかどうか。
「どうしてGPSってこうもあっち向いたりこっち向いたりするのかしら」
頬を膨らませて所在無さげに脚先を遊ばせて、独りごちた。
駅に向かう事すら一苦労、イェリスの初めての冒険は難航していた。
手元のスマートフォンの中で開かれた地図の中、自分の所在を示すはずの青い点は消えたり付いたり、あらぬ所に表示を移したりと自由勝手に暴れている。
ご案内:「列車内」にイェリスさんが現れました。
■イェリス > 水平線の向こう側、緩やかに沈んで行く夕陽に目を向ける。
遠く、遠く。
数日前に後にしたばかりの故郷は眺める先か、はたまた明後日の方向か。
星もまだ見えない車中で、思いを馳せる少女を心地よい揺れが包む。
夕暮れ前の穏やかな気温、そこはかとなく聞こえる誰かの会話も、揺れに呑まれて聴き取れるほどにもならない。
「んっ、んー……」
座りながらに一つ伸びをしたのを最後に、イェリンの意識は微睡みの中に溶けて行く。
『次は──駅。──駅……』
学生寮前。
旅疲れの残る少女の耳にそのアナウンスが届くこと無く、列車は優しい音を立てながら少女を運んで行く。
ご案内:「列車内」からイェリスさんが去りました。