2021/10/03 のログ
ご案内:「配信チャンネル」に照月奏詩さんが現れました。
■照月奏詩 >
様々な人物が語り合う討論風配信。
中央にステージがあり、それを取り囲むようにおびただしい数の椅子が並んでいる会場。そんなステージの上では数名の人物が現れては消え現れては消える。
視聴者参加型の配信。話したい人が挙手をすればこの客席からステージの上に転送される仕組みらしい。
そんな配信チャンネルに観客として座っている。
「……半分は目立ちたいだけのでまかせや嘘だな」
そんなことをボソッとつぶやく。
議題はハロウィンでの幽霊騒ぎについて。本当に様々な人物が発言しており、内容も考察や体験談など様々。中には素人じゃないと思われるような人物も混ざっていた。だがそのほとんどは嘘やでまかせだ。
それでもここにいる理由。それは情報量だ。やはり数は正義であり、絶対。故にそれらが手っ取り早く手に入るこういった配信の場やSNSは犯罪関連でなければ情報収集としてはこういう場所を利用するのが1番手っ取り早いのだ。
■照月奏詩 >
なぜ半分は嘘やでまかせと分かるか。それは顔や話し方だ、それこそプロである風紀委員や裏の人間。役者などならともかく、素人の人間はそれらが如実に表れる。
顔がこわばる、ニヤけが出てくる。無駄に話が壮大……それらは大体が嘘だ。中には自分のチャンネルを紹介するようなお粗末な者まで存在する。
「とりあえず一貫性は見られないか」
だが、そんな中でも本当に会ったんだろうなと思われるような意見もたまにある。それらを組み合わせると一貫性があるわけではないという事、犯人は不明という事だけだ。
椅子に深く座り込む。何か一貫性でもあればと思ったが、そうもいかないらしい。頭の良い奴が考えれば別かもしれないが、自分程度ではとてもじゃないがこの中から法則を見つけるのは無理だ。
実際に出会うのが1番手っ取り早いのだろうが……運よく出会える保障などないし、会えたところでそういった類への対処方は所有していないわけで。傷は負わないがこちらも何もできないという構図になる。
結局もう少し配信を見守る事しかできないわけで。
■照月奏詩 >
しばらく話を聞いているが、そろそろ閉幕になっていくらしい。会話もまとめに入っている。
「外れか……」
そういって立ち上がろうとしたとき。
実は大当たりって事もあるかもよ、なんて声がかけられる。
油断していたわけではないのに、真後ろからだ。急いで振り返ると。
「……?」
そこには誰もいなかった。そういう演出なのか、もしくは本当に何かがそこにいたのか。
そんな少し奇妙な配信はこうして幕を下ろしたのであった。
ご案内:「配信チャンネル」から照月奏詩さんが去りました。
ご案内:「配信チャンネル」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「……これであってるのかな……、もう、なんで解る言葉で説明してくれないのっ。
……、え~と……匿名の、アーカイブ閲覧モードで、ログイン……、……できたかな……?」
慣れない手付きでデバイスを触りながら少しの葛藤のあと、なんとか画面に配信チャンネルのブラウザが開く。
完全なログインではない略式のものだったけれど。
「ふぅ~っ。
……もう、パソコンは苦手ってあれほど……、」
ぶつぶつ。独りで文句を言いながらも、カーソルはたどたどしく、カチカチと音を立てる。
……何も、件の幽霊騒動が怖くて配信を見ているだとかそういうわけではなく。
元より、祭祀局の捜査網の一つに、この常世ネットワークも含まれているだけのこと。
怪異が潜むのは闇だけではなく、情報や裏サイト、このネットワークの中にも潜みうる――、
つまり、怪しげな配信や動画に怪異を見出すのも祭祀局の仕事なのでした。
……勿論、私は相当な機械音痴なので、素人そのものなのですけど……。
「幽霊はお前に集まるから人気の無いところでじっとしてろ――って……。
それはわかりますけどね。
何も、こんな膨大な数の配信チャンネルと動画の中から怪異が絡んでそうな案件を探せとかそんな――」
ぶつぶつぶつ。
実際のところ、私の生贄体質のせいか、今町中を歩くだけで幽霊が寄ってたかって学業にも仕事にもならないので、半ば謹慎中、なんですけど。
「ネットワークに走らせてる自動走査なんとかかんとかがアルゴリズムの乱れを検知したとか言われてましたけど、だから何なのか私にはわからないというか。
そもそもアルゴリズムの乱れって何――!?」
ぶつぶつぶつ。カチカチカチ。
マウスのホイールでスクロールすることすら知らずに、スクロールバーの↓をカチカチ。
流れていくのは、夥しい数の動画のサムネイルと、ライブ配信中、の文字。
■藤白 真夜 >
「……はあ。
しかもこれ、人力でやるやつではないのでは……。
それ専用のプログラムとかあぷり?とか絶対ありますよね……」
眼前を流れていくのは、アイドルの生配信に、人気常世Tuberの動画、ゲームの実況プレイや、異能で◯◯やってみた、なんてものまで。
その中に、怪異が関連しているかもしれないのがあるのだという。
……文字通り、ネットという海から一つの砂粒を探り当てるような行為に、流石にげんなり。
「……。
……とは言っても。
絡んでいるのが怪異なら、ソフトウェアをすり抜けて人間が見ることでしか反応しない、なんていうのはありえます、ね」
……でも。そんな苦行を前にしても、割とすぐ立ち直るのが私でした。
事実、"人の目が見ること"をトリガーにする怪異や術式はかなりメジャー。
ネットワークを寝床にしうるならば、クリックしただけで異空間に引き込まれる、なんてものがあってもおかしくない、はず。
「……よし」
やる気を新たにした私。
……とはいえ、やることといえば――、
かちかち。かちかち。
かちかちかち。かちかちかち。
ひたすら、スクロールバーの↓をクリックし続けるだけ。
無数に次から次へと並び立つ動画のサムネイルの数々。
これは、と思うものをクリックしては首を振り、またスクロールの繰り返し――
「……う、う~ん……。
顔出し配信とか、私出来る気がしないなあ……」
それを延々と繰り返し、ほんの少しネットに染まったようなことを口走るころ。
「……――?」
ろくに詳細も何も無い、ぶっきらぼうなタイトル。
サムネイルも登録していないのか、どこかの景色が映っているだけの、それ。
(……まあ、こういう撮り損ねた動画みたいなのもいっぱいあるんですよね。
こういうのがいつまでも残っていくのって、ちょっとロマンチックな――)
なんて、益体も無いことを考えながらクリックした、それは。
■藤白 真夜 >
「あ~……顔出し配信だ~……。
こういうの、絶対恥ずかしく――、……?」
その動画は、ただ配信者が歩いているだけの、動画。
生配信であったはずだけれど、アーカイブに残ったソレは動画にしか見えなかったから。
どこか古臭い街並み。
うらさびた景色に、どこか物悲しい風景。
人間が誰も居ない街路に……、
――そして、明らかにねじ曲がった現実。
文字とすら言えない記号が浮き上がる道路標識に、物理的に曲がっているように見える並木道。
動画を見る前は疲れきった表情が、緊張で引き締まっていた。
(これ、明らかに常世島じゃない。そもそも、雨が降っていても誰も人通りの無い街なんて、……
……いや、そういう加工でも、しているの……?)
素人目には、その動画は現実にしか見えなかった、けれど。
(悪意は見えないし、私の体質でも反応はしない。
……悪質ではないはず、だけれど。
――確かめよう)
チャンネルの名前は、めらん子ちゃんねる。
何処とも付かぬ、雨の街を歩くだけの、動画。