2022/12/12 のログ
ご案内:「データ溜まり」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
高度な三次元グラフィックを描画する常世ネットワークの電脳空間上にあって、
非公式の自作アバターが跋扈するここデータ溜まりは無秩序の氾濫が起こっていた。
数十年前に流行ったアスキー・アートが服を着て歩いていたり、
バグったまま闊歩する四足歩行の動物は中身のユーザーがいるのかもわからない。

交わされている会話もミームまみれのトークからダクトなネタに至るまで。
喧しい界隈にポップしたのは、これまたレトロなアバターだ。
かぼちゃをくり抜いたジャック・ランタン。アバター名はK.F。

ノーフェイス >  
立体造形がされておらず、書割のようにぺらぺらなかぼちゃが、
ふわふわと掲示板エリアに近づくと、そこで停止。
テキストログを残すのに接触する必要性は本来ないのだけれど、
そうした形式や作法には妙なこだわりがあった。

ノーフェイス >  
ちずにないまち あまいくしやき
ふゆがふかまる つめたいよるに
さんたくろーすが あらわれます

あまいおかしに えっぐのっくも
ほっとわいんも そろっています
さむさをしのぐ こどもたちには
どうぞそのてを ふれないように

くろいらっぴんぐの ぷれぜんと
さんたくろーすに たずねてみて
ひみつのことば かがやくきんか
のぞめばきっと しっているはず

めりーくりすます

ノーフェイス >  
「……あの雪の降る街には、大きなツリーがたくさんあったよね。
 手をひかれて歩いたときのこと、ぼんやり思い出せてきた。
 でも、ボクはまぶしいくらいのイルミネーションも、
 聖なる人の誕生日も、甘いケーキだってそのときはどうでもよくて……」

ログアウト。
噂話は伝播する。
今回は、小規模な興行ー―というよりは仕切りの代行と客寄せが仕事。
落第街に灯す明かりは、今回は仄かなものでいい。

「ショーウィンドウの向こうのギターがいちばんきらきらして見えたんだ。
 あのとき泣いてぐずっていたら、どうなっていたかな?」

スパイスを効かせたホットワインを口にして、
電脳空間から自分のあるべき現実へ戻る。

ご案内:「データ溜まり」からノーフェイスさんが去りました。