2019/02/03 のログ
ご案内:「常世ディスティニーランド」にアリスさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン!
去年の四月から常世学園に通っている一年生!
今日は楽しい楽しい遊園地に来てる。
「………」
ひとりで。
いや、いや。待って欲しい。
確かに私は元ぼっちだけど今は友達いるし。
今日もパパとママと三人で来る予定だったし。
まぁ、パパとママは急な仕事が入って私に謝りながら職場に行ったんだけどね!
滅びれ、世界。
■アリス >
ちぇっ。何がディスティニーランドか。
島根と鳥取と佐賀と常世にしかないマイナーテーマパークじゃない。
こんなところに一人で来ても楽しくもなんともないって。
周りを見渡せば、親子連れに恋人同士に仲のよさそうな集団に。
笑顔のスイーパー(掃除担当者)、ちょっと無表情なバイト警備員。
……やっぱり学園都市だけあって、学生が多い…
あれ、一人カラオケに一人メシに一人遊園地を経験済みって……やばくない?
私ってこれでいいの?
白衣姿のまま立ち尽くす。
震える指で携帯デバイスの表面を撫でる。
Twisterに位置情報入りで
『ディスティニーランドソロ攻略なう』
と書いてみる。
アハハ、ちょっとウケた。アハハ………ハハ…
死のうかな。
ディスティニーランドに入ってすぐ、絶望に満ちた表情を浮かべた。
■アリス >
第一、もうパパとママにべったりの年じゃないし。
多感な14歳……あ、今日で15歳か…
私の誕生日は2月3日で。
そのお祝いに遊園地で目一杯遊ぼうって話だったのに……
「パパとママのバカ………」
しょんぼりとした気持ちを抱えたまま、物販コーナーへ。
「これください」
しょんぼりとした気持ちを抱えたままディスティニーマウスの耳を模したカチューシャを買う。
「あ、それとこれもください」
しょんぼりとした気持ちを抱えたままグッティーという犬のマスコットの顔がデザインされた背負い鞄を買う。
しょんぼりとした気持ちを抱えたままカチューシャと背負い鞄を身につけ……あれ。
結構エンジョイしてる風になってきてない?
■アリス >
違うし。こんなテーマパーク全然楽しみじゃなかったし。
でもまだお昼を過ぎた辺りだしアトラクションを回ってみよう……
「……!」
あ、ドナルドピジョン……ドナピジがいた!
イエバトのディテールを残しつつ着ぐるみとして違和感がないレベルに落とし込んだ芸術的デザイン。
「ねぇ、ドナピジ。握手してくれない?」
話しかけるといともたやすく握手に応じてくれた。
(握手といっても彼はイエバトなので羽をこちらが握っただけだけど)
動きを見ているだけで楽しくなる。
「その……写真もお願いしていい…?」
もじもじしながら聞くと、気さくにうなずいてくれた。
自分撮りの要領でドナピジとピースサインをした自分を携帯デバイスで撮影。
「あ……ありがとう、ドナピジ…」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら去っていくドナピジに、お礼を言いながらぶんぶん手を振った。
ハッ!?
エンジョイしすぎじゃない、私……?
■アリス >
OK、落ち着こう。まずは状況を整理。
私、今日で15歳になるんだよ!?
日本ならゲンプクって言って子供がサムライとして認められた年齢だよ!?
それなのに……ひとりで遊園地に来てはしゃいでるなんて…
そんなこと…………!
『僕らのチームのシアター』でディスティニーキャラクターの演劇を見る。
『ディスティニーキャッスル』に入って写真を撮りまくる。
『宇宙山岳』コーナーでプー様たちと無重力体験をする。
こんな……こんなところ…!!
「…超楽しい」
おっと? 心では反発していても言葉は正直だね?
■アリス >
あーやばい。
ディスティニーランド超楽しい。
誰? 誰がこんな島にテーマパーク作ろうなんて思ったの?
前に出てきて。
お礼言うから。
熊のプー様は尊大で有体に言って偉そうなんだけど、
なんだかんだでハグや写真を拒んだりしないの最高だと思う。
次はホラーコーナー!
15歳未満立ち入り禁止なゴア表現多めのアトラクションもあるんだけど、
私は今日から15歳だから無問題!!
ジュースを手に、ネズミ耳カチューシャとマスコット鞄を装備し、
軽い足取りでホラーコーナーに向かう。
■アリス >
やってきました、お化け屋敷!!
その名前もええと……真説・薄刃影蝋?
なんかややこしい名前してるけど……
テーマパークのお化け屋敷が怖くて異能犯罪者の相手ができるかー!
(いや好き好んで異能犯罪者と戦ったわけじゃないけど)
「すいません、真説・薄刃影蝋のチケットを学生一枚で」
これ見よがしに学生証の誕生日を誇示しつつ、お化け屋敷に踏み込む。
どーれどれ、どんだけ怖いものなんだかー。
最初の部屋に入ると、薄暗い部屋だった。
なるほど、暗闇は恐怖心を煽るっていうものね。
でも15歳!の私にこの程度の……え?
よく見ると、最初の部屋には何かが吊るしてある。
薄いビニールのようなもので包まれた、赤黒くて大きな何か。
それは。
死体袋だ。
理解した途端、背筋に冷たいものが走る。
部屋は狭いけど、無数の死体袋がフックで吊るされていた。
……狭いので、ある程度アレに触らないと通り抜けられそうにない。
「……ブレーキを踏め!!」
何いきなりトップスピードで怖いモノ放り込んできてるの!?
大人でも怖いでしょこれ!?
あとパンフレットだと『多少のゴア表現があります』って話だったよね!?
これは多少じゃないよ!?
盛大にグロいよ!? 最高速で生理的嫌悪感を煽ってきてるよ!?
思わずお化け屋敷の入り口で硬直してしまった。怖い。
■アリス >
冷や汗をかきながら、お化け屋敷に踏み込む。
中は防音設備が行き届いていて不自然なまでに静か。
生臭さとか、消毒液の匂いとか。
そういうのが一切ないのがまた精神にダイレクトアタックを仕掛けてくる。
死体袋を小柄ボディを生かして掻い潜るように避けて通っていると。
死体袋の一つがビクンと跳ねた。
「ひぎゃあああああああああぁ!?」
うわあああああぁぁぁぁぁぁヤメロぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
怖いでしょ!?
なんでこんなことするの!?
もうダメ、計算されつくしている……
最初の部屋すら通り抜けられていないのにもう心臓が破れそうなくらい。
落ち着いて……落ち着いて…
15にもなってお化け屋敷が怖くてギブアップしましたとかナイから…
落ち着いてアリス・アンダーソン………
涙目で最初の部屋を抜けると、次は狭い廊下があった。
アンティーク調のシックな佇まいの中に。
強烈な違和感を持って培養槽が存在していた。
「えっ」
培養槽の中の小さな人形? のような? ホムンクルス……?
が。
不定期かつ音量ランダムにぎゃああと叫んでいた。
「あ、すいません。ギブアップで」
ギブアップで。
もう無理です。
勘弁してください。
私は係員の誘導で非常口から外に出た。
■アリス >
やばーい。
こわーい。
精神にちょっとヒビが入った感があるけど。
晴れ渡った青空を見ているとさっきの恐怖もいい感じの思い出に昇華されてきた。
ホラーエリアの一角で目元をハンカチで拭う。
泣いてないし。ちょっとホラーが心に刺さっただけだし。
ディスティニーランド、マジ半端ない……!
油断していたら殺(と)られる。
それからもあれこれと騒いでいるうちに、夕暮れ。
そろそろ帰る時間。
レストランで(どういう技術が使われてるかわからないけど)
ディスティニーマウスの顔の形に卵黄が形成されたゆで卵が添えられたハンバーグを食べて。
なんだかんだで良い誕生日だったかな、とか。
パパとママが帰ってきたら笑顔で迎えてあげよう、とか。
色々考えて。
ふと、携帯デバイスでTwisterに『常世ディスティニーランド…本気でおすすめ』と書いておいた。
やっぱりややウケだった。
ご案内:「常世ディスティニーランド」からアリスさんが去りました。