2019/02/08 のログ
ヨキ > 「自力で読み解けなくては、資料の意味がないではないか。
 だからヨキはお前に教えを乞うと言っておるのに……。まあ、借りられるものは借りてゆくがな」

ふふん、と鼻を鳴らす。当然ながら、ヨキに魔術書の危険性を一目で判じるほどの目はない。

「何しろこうでもしなければ、お前はいつまでも乗らぬと思ったのでなあ?
 ずっと電車やバスばかり使ってきたから、街中の景色がまるきり違って見える。
 海沿いの道を飛ばすのはとても爽快だったよ」

“のりもの”が好きな子どものような調子で、うきうきと話す。

「……共に走るのが無免許のお前では、ハラハラして爽快どころではないだろうがなあ?」

そして苦笑い。
短くなった煙草を、テーブルの灰皿に押し付ける。

「だったら、聴衆にその『不可欠さ』を示してやればいい。
 仮にもお前は常世学園が誇る魔術学者の一人なのだから、皆と共にさまざまな可能性を提示して然るべきだ。
 お前を慕う学生や、尊敬する者にとっても大層刺激になるはずだとヨキは思うね」

獅南蒼ニ > 「右の列,それから奥側の3冊はやめておけ。お前の手に負えるような代物ではないからな。」

流石に貴方の扱いに慣れているようで,先に釘を刺しておくことを忘れない。
きっと,以前に何かやらかしているのだろう。

「…まったく。」

貴方が語る言葉があまりに純粋だったからか,肩を竦めて…

「…免許を取れと言いたいのだろうが,そんな時間がどこにある?
お前と違って,この通り私は仕事が多いのでな。」

…避けているわけではないが,獅南はいつも,免許の話を聞き流す。
きっと,この年になって教習などやるのは気恥ずかしいのだろう。

「そうさせてもらおう……もっとも,お前には必要ない代物だがな。」
ノートパソコンの画面にテーマを打ち込んで,提出する。
「魔術学者も魔法使いも魔女も,皆才能に溢れている者たちばかりだ。
必要のない技術に関心を向けるほど,愚かで暇な人物が居ることを祈ろう。」

珈琲を飲み干し,空き缶を机の上に置く。

「……で,ここでグダグダと3時間も私の邪魔をしたんだ,それなりの店を見つけて来たんだろうな?」

静かに立ち上がりつつ,貴方に声を掛ける。
研究がひと段落するタイミング,夕飯時。きっと,そういうことなのだろうと。

ヨキ > 「右の列と、それから奥の三冊……、」

本の山をしばらくじっと見つめてから、「判った」と頷く。
素直な代わり、こっちは持ち出していいのか、アレについて書かれた本はあるか、としつこく尋ねることになるのは目に見えている。

「ふふ。素直でない奴め。どうせ散々乗り回してきて、その年齢で今更教習などと、…………。
 ……幾つになるんだ、そういえば?」

“この年齢になって”と笑うには、相手の年齢も誕生日もよく知らなかった。
コーヒーを空にしながら、端末に向かう獅南の様子を眺める。

「そりゃあ、品物自体は必要ないやも知れんがな。
 お前が発表の場に立って、未来を語ること自体がこのヨキには大事なのだ。
 いくら煙たがられようと、応援することも、労うことも止めんよ。……」

本当に素直でない奴、と、同じ言葉を繰り返す。

「たとえお前に生まれつきの才能がなかったとしても、ヨキはお前の努力に敬意を表する。
 だから冗談でも、あまり謙遜してくれるな」

空き缶や吸殻を甲斐甲斐しく片付けながら、立ち上がる獅南を見上げる。

「三時間? もうそんなに? ……あ、本当だ。
 魔術のことは判らねど、美味い店を見つける鼻に自信はある」

不敵に笑って、機嫌よく。
プレゼンテーションばりに紹介してみせるのは、新しく出来て間もない、蕎麦と魚の美味く、品の良い店だった。

獅南蒼ニ > その全ての質問にノールックで答えられる程度には読み込んでいるので問題は無かった。
むしろ,魔術学の棚であれば,図書館も禁書庫も案内できるだろう。

「言っていなかったか?…次の6月で40だ。」

さらりと答えて,教習の話題には触れなかった。
バイクの話は確かに好きなのだが,いつもこの話題に展開されるのが悩みの種である。

「…愚かで暇な人間が,どうやらここに一人居たらしい。」

貴方の真っ直ぐな言葉に,獅南はそうとだけ返した。
獅南は,自らの研究が広く世界に受け入れられないものであると理解している。
だからこそ,貴方という理解者が傍らに居るという事実が,何より幸福だったのかもしれない。

「…あぁ,その点に関してだけは,全面的に信頼しているとも。」

貴方に導かれるまま,真新しい店へと赴き……獅南は数日振りに,人間らしい夕食を楽しむのだった。

ヨキ > 「六月でよんじゅう……」

呟いて、まじまじと獅南の顔を見る。

「……そうか。そうだったか。もちろん初耳だ。
 ヨキがお前の誕生日など知っていたら、毎年祝うに決まっておるではないか」

人間みんながみんな、ヨキのように産まれた日や年齢があやふやな訳がない。しばし呆気に取られて、頭を掻く。
堅物のヨキは、友人が無免許でバイクを乗り回すなど許せん、という性質ではあるのだが、諌める気持ちが何となく吹き飛んでしまった。

相手の皮肉な返答に、小さく笑う。

「暇人呼ばわりは心外だが、愚かであることは否定せんよ」

さて、と一声上げると、獅南を連れて研究室を後にする。
これまで三時間は喋り倒したというのに、まだまだ話の種は尽きそうになかった。

ご案内:「魔術学部棟第三研究室」からヨキさんが去りました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」から獅南蒼ニさんが去りました。