2019/04/19 のログ
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アリス >  
私、アリス・アンダーソン!
今年の四月から二年生になった常世学園の生徒!

今日は新作ゲームの発売日。
だけど誰にもそのことは言ってない。

だって、買ったのは乙女ゲーだから。

フォルトゥナ・ファミリア。
本作の主人公はあるマフィアのボスの一人娘。
我が愛娘を射止めたものを次期のボスにするという父親の突然の宣言!

突如動き出す恋の嵐!
そして主人公に秘められた能力!!
あんなイケメンやこんなイケメンたちとの大立ち回り&ラブ!!

前作をプレイした時にドハマリして、昨日は興奮のあまり眠れなかった。

軽いステップで買ったゲームを手に帰路につく。
パパとママには内緒だし、なんなら誰にも話す気はない。
私と彼らの恋は秘められたものなのだ。

アリス >  
さて、ここからは最短ルート。
誰にも気取られずにフォルトゥナ・ファミリアをプレイするために。

可能な限り家まで最速でつかなければならない。
アリス・アンダーソン。状況を開始する。

まずはこの常世第四公園を通ってショートカット。
桜はもう緑が混じっているけど、今も人は多い。
大丈夫、さっと通り抜けるだけ。

軽い足取りかつ脳内地中海でダンスりながら歩いて、ふと、気がつくと。

なにやら公園の向こう側で騒動があるみたいだ。
そしてリードを引きずりながら中型犬が公園を爆走している。

あーあー。このパターンね。
散歩中に犬が逃げる。よくあるよくある。ただ、問題は……

「……こっち来た…」

アリス >  
と、なると今後のパターンも読めるというもので。
犬に跳びかかられたりしてビックリした私が手元のビニール袋から乙女ゲーのパッケージを露出させて笑われる系だ。
アハハ。

「……絶対に邪魔はさせないわ………」

私は誇り高きマフィアのボスの娘。
私は誇り高きマフィアのボスの娘。
私は……負けない!!

犬がこちらを見て半笑い(のように見えるアホづらだ)で全力疾走してくる。
これだから犬というやつは愛嬌たっぷりだ。
でも……

「Stay back……」

悪鬼羅刹の表情で犬を睨みつける。
眼力に怯えた中型の白い犬が私を前に急制動で止まる。

乙女ゲーを守る。それだけの意思が、犬を立ち止まらせる迫力を生む。

アリス > 「Stay back!!!」
アリス >  
犬が完全に尻尾を丸めて後方に後退り。
勝った……!!
久しぶりに出した大声でちょっと喉が痛い。

直後、飼い主が犬を捕まえて私に小さく頭を下げた。
私は長い髪を靡かせてなんてことない、という風を装う。

常世第四公園、状況クリア。

アリス >  
続いて、常世学園の生徒が大勢、帰宅の道を歩いている難関。
悪夢の十字路。
いや、今かんがえたけど。

乙女ゲーの入ったビニール袋を大事に抱えながら歩く。
ここで知り合いに会ったらピンチだ。

……嫌な予感がしたし、そして数秒で的中した。
私が常世学園に来た時に絡んできた上級生のお姉さま方コンビが向こうから歩いてくる。

あの時は追影さんに助けてもらった。
でも、今はヒーローには期待できない。
自分の意思と力で切り抜けなければならない。

とりあえず曲がり角を戻って嫌な奴らの死角へ。
どうする? どうしよう!?
絡まれて所持品の乙女ゲーがバレたら笑い者だ!!

ご案内:「通学路」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 放課後行われていた委員会会合の帰り道。
普段はタクシーなり委員会の公用車なりで帰宅するか本部迄直行、という形が多かったのだが、今日はこれといった用事も活動も無く、同僚達と徒歩で帰路を共にする事になった。

一人、また一人と別れていき、気付けば残ったのは己一人。
自宅であるマンションまでは未だ距離もある為、何処かでタクシーでも捕まえようかと思った矢先。
視線の先に映るのは、顔なじみの女子生徒の姿。何だか、鬼気迫る様な雰囲気を醸し出している……様に見えるが。

「……こんな所で何をしているんだ?かくれんぼをする様な歳でもあるまいに」

幾分遠くから彼女を見つけた為、のんびりと歩み寄って声が届く距離まで近づいてから声をかける。
何かを大事そうに抱えて思い悩む少女に、怪訝そうな表情と共に声をかけるだろう。

アリス >  
突如、声をかけられて口から心臓が飛び出そうなほど驚いた。
その声は。最近、結構話す機会の多い風紀委員の。

「理央……驚かせないでよ」

口元を手で押さえて再びゲームの入ったビニールを両手で持ち直す。
慌てない。マフィアのボスの誇り高き一人娘はこんなことで慌てない。

「あー……今、人に見られたくないものを持ってて」
「それで向こうから私に悪感情を持った上級生二人が歩いて来ています」

マイクを持つジェスチャーで理央に手を向けて。

「はいどうする! 異能の使用もこの際、考慮に入れるものとする! 完全解答10点!」

要は解決策を丸投げ。
今にもあの二人が角を曲がってこっちへ来るように思えた。

神代理央 > 「…勝手に驚いたのはお前だろう。というか、其処まで驚くとは思わなかったぞ」

鳩に豆鉄砲、というよりは、死角から水をかけられた猫の様に驚く少女の反応に、寧ろ此方が若干驚いてしまう。
とはいえ、彼女から状況を聞けばふむふむ、と頷いた後曲がり角に視線を向ける。そしてその視線は、少女の顔と抱えた荷物を行き来した後――

「…要するに、お前だと気付かれなければ良いのだろう?」

と、理解の色を浮かべて言葉を返した後、彼女の身体を壁に押し付けて右手を伸ばそうと。
所謂壁ドン。背中を曲がり角側に向ける事で、己の身体で彼女を隠そうと試みるだろう。
ついでに腰のホルスターにぶら下げた拳銃と風紀委員の腕章を敢えてちらつかせる事で、興味を持たれても近寄りがたい雰囲気を出そうとするだろう。

——―尤も、最善とは言えぬこの行動。彼女が抵抗するなり驚いて身動ぎすれば、此方もあっさりと引き下がるだろうが。

アリス >  
今にもあの二人が来そうで足踏みでもしそうなくらい焦っている。
私の異能は万能だけど私自身ははっきり言ってポンコツもいいとこだ!!
何かして隠れる方法があるならそうするけど、そんな方法パッと思いつかな……

その時。
ふわりといい匂いがした。

「のあっ」

全くカワイくない声を出し、しかしそのまま口を両手で塞いで。
なるほど、たった一つの冴えたやり方。
真っ赤になりながら壁ドンされたまま目を白黒させていると。

あの二人の靴が見えた。
私に気付かずに通り過ぎていく。
や、やったッ!
背の低いちんちくりんに産んでくれてありがとうママッ!!

「……行ったみたい」

はー、と安堵の息を吐いて。
それにしても壁ドン。手馴れていたような?

「理央はマフィアの次のボスになりたいの?」

あかん。脳内混乱中。

神代理央 > 少女を壁に縫い付けつつ、背後の気配を伺う。この際、眼下から聞こえた呻く様な声は気にしない。

ロマンチックな要素等微塵も無い様な表情で、背後を通り過ぎていく女子生徒達が遠ざかる足音を知覚する。
足音が遠ざかっていくのと比例して安堵の表情を浮かべる彼女を見るに、今通り過ぎて行った女子生徒が"悪感情を持った女子生徒"とやらなのだろう。

行ったみたい、と彼女が吐息を吐き出せば、目的は果たせたかと彼女を解放しようとして――

「……風紀委員に尋ねる台詞では無いな。それとも、俺がそういう男に見えるのか?」

呆れと怪訝を含ませた声色と表情で、壁ドンの体勢のまま彼女に言葉を投げかけた。

アリス >  
「ああ! いや! その! 今日買ったゲームの話で!?」

というかこの姿勢のままというのは違う誤解を量産する可能性が!!
真っ赤になってわたわたと左手を振る。

「……乙女ゲーを買ったのよ、マフィアのボスの一人娘になって婿を選ぶ感じの…」
「あの二人にどうしてもバレたくなかったのっ」

互いの吐息がかかりそうな距離で必死に説明する。
ここまで言ったのだから解放して欲しい。
さすが悪夢の十字路。状況は不全……

神代理央 > 「……げーむ?」

見られたくない物とはゲームの事だったのだろうか。
今時、買ったゲームくらいで難癖をつけてくる者がいるとはな、と思いつつ、彼女が言葉を発する度に交じる吐息に幾分擽ったそうに瞳を細める。

「……ふむ?まあ、お前にも色々事情はあるのだろうし、その乙女ゲー?とやらを隠し通さねばならないのも仕方のない事なのだろう」

個人個人の趣味に干渉する気の無い己としては、バレたくないという思いが今一理解しかねる所ではあったが、それはあくまで己個人の話。
彼女にも色々あるのだろうと思い直すと、疑問が解消されたので素直に彼女を解放する。彼女も、今の体勢では幾分身動きしにくいだろうし。

とはいえ、そうして彼女を解放してから僅かに逡巡した後、クスリと少し意地悪な笑みを浮かべて――

「……ということは、俺がマフィアのボスになってお前を娶る、という錯覚を抱いた訳か。中々愉快な話だな?アリス」

実に揶揄い甲斐のあるネタを見つけた、と言わんばかりの表情で、じーっと彼女の瞳を見下ろしている。

アリス >  
涙目で彼を見上げる。

「乙女ゲーをプレイしている事実を悪意ある第三者に知られたら社会的に死ぬっ」

身振り手振りで必死に説明する。
そして解放されると額の汗を拭う。
第一種ぼっち業に従事して去年まで友達もいなかったのに壁ドンされるとは。
生きていると予想もつかないことが起きる。

「うぐ」

しまった。社会的にではないけど死んだ。
これをネタに無限にからかわれてしまう。

「違うのよ……色々と………乙女ゲーを楽しみにしてあんまり寝てないから…」

だらだらと冷や汗を流して、錬成したハンカチで拭う。
ああ、失敗した。アリス・アンダーソン。お前に人生は重荷。

「…それにしても、手馴れてなかった? 女の子にいつもこんなことしているの?」

神代理央 > 「…そんなものなのか。まあ確かに、俺のクラスにも男が大勢の女性と友好を深めるゲームを楽しむ男子生徒もいるが、別にどうということは……無いとは言わぬが」

そういった趣向のゲームを良く思わない者がいる事もまた事実。個人の趣味に口出しする暇があるのなら、勉学に励めとも言いたくはなるが、それは別問題。
今は、必死な口調で説明する彼女に素直に同意する様に頷くばかりだ。

「虚構と現実の区別がつかなくなる様ではいかんな。しかも、よりにもよって風紀委員である俺にそんな妄言を吐くとはな。マフィアのボスに娶られる前に、ブタ箱にぶち込まれるバッドエンドが御好みか?」

少女が垂れ流す冷や汗を愉快そうに眺めながら、揶揄う様な口調と言葉は続く。
しかしその表情は、次いで彼女から投げかけられた言葉に停止する事になる。きょとんとした様な、幾分不思議そうな色合いの表情に切り替わり――

「……特段手慣れているつもりは無いが。それに、女子にそんな器用な事をする程暇でも無ければ、洒落た台詞を垂れ流せる訳でもない。そういうのは、もっと性格の良い男がするものだろう。
………第一、俺の様な性格の悪い男が、そんな気障な真似を出来る様な相手がいるわけもあるまい」

己の性格が悪い事は"一応"自覚しているので、若干自嘲めいた笑みと共に小さく肩を竦めてみせた。

アリス >  
「あるでしょ、問題……」

ギャルゲーのプレイをフルオープンにする男子の評価が定まっているように。
乙女ゲーのプレイを公言する女子の行き着く先も知れたものなのである。

「ひっ、そのバッドエンドは見たくないしトロフィーも欲しくない…!」

前作にもあったなー、主人公の女囚エンド。
アルカナ『運命の輪』の異能を持ってるんだから使えばいいのに、とか思わなくもない。
きっと異能キャンセラーがある世界なのだろう。

「ふーん……? ま、その慣れないことを私を助けるためにしてくれたのは感謝するわ」

笑顔で頷いて。そうだ、お礼がまだだった。

「ありがとう、理央!」

両手で乙女ゲーを持ったまま、お礼を言った。

それからは二人で話しながら歩いた。
とりあえず、色々考えることはあるけど。土日はゲームだ!!