2019/06/03 のログ
ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」にアリスさんが現れました。
■アリス >
今日は年齢を偽って花屋でバイトをしている。
それは夏に向けて軍資金が欲しかったからで。
遊ぶ金欲しさに選んだバイトは、花屋だった。
少女漫画とかでよく見る花屋というと、
なんかふわっふわの服を着て花に囲まれた笑顔が素敵な女性が働いているイメージがあったけど。
「…………」
店先に立つ私は返り血を浴びても目立たないんじゃないか?というレベルに派手なエプロンと
魚屋が使いそうな分厚いゴム長靴を装備している。
曰く、ポケットがたくさんあって汚れが目立たないエプロンを。
曰く、水をたくさん使うからゴム長靴を。
そして。
「ぬうん!!」
世紀末覇者みたいな声を出して花の束の茎を剪定バサミで切る。
そして水を替えるためにバケツを何度も移動させたりホースから水を無造作に注いだりしている。
力仕事だこれ!?
華やかなイメージが崩れた。花屋だけに。華やか。アハハ。
■アリス >
そして、この仕事。
花を贈るという人生のシーンを切り取る職業柄、実に様々な人間模様が垣間見える。
「い、いらっしゃいませ……」
見上げるような大男が来店してきた。
(私の身長なら大抵の男性を見上げるのだけれど)
ああ見えて花が好きなのかなぁ………?
よく見ると顔に引っ掻き傷のようなものがついている。
喧嘩した彼女に謝りたいのかな?
『喧嘩した相手に愛の言葉を伝えたいのですが』
喧嘩した彼女に謝りたいのだな。
「あー……今、店主が配送中で留守なの。だから私が選ぶなら……」
深紅バラ
美カーネーション。
小鐘ラン。
花に傷をつけないように慎重に選んで輪ゴムで簡単に束ねたものを作った。
「時間をかけてごめんなさい、こんな花束はどうかしら?」
どうでもいいけど敬語ができませんって履歴書に書いたのによく接客業に私を雇ったな!?
緊張しすぎで内心混乱しながら聞いてみる。
『それでいいよ、花束にしてくれ』
お客さんは厳つい傷貌でにっこり笑って頷いてくれた。
また私は世紀末覇者みたいな声を出して茎を切って揃え、花束を作って代金を伝えた。
見送りながら思う。
あの背の高さの顔に引っ掻き傷をつけられる彼女はどんな人なのだろう、と。
ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」に佐藤重斗さんが現れました。
■佐藤重斗 > 先日、風紀委員の先輩が怪我をしたらしい。
大事には至らなかったらしいが、講習会や仕事でお世話になっていた先輩だ。お見舞いくらい行った方がいいだろう。
「果物に漫画は買ったし・・・。あとは花か。」
何か目ぼしいところがないか探していると、一軒の花屋が目に入った。
店員は派手なエプロン、ゴム長靴・・・。
花屋ってもっとフリフリで可愛らしい感じじゃないの?
「こんにちはー。お見舞いの花を買いたいんですけど・・・ってあれ?」
何か見覚えがある店員さんだなぁ。
ていうかアリスじゃないか。何やってんだ?バイト?
「ひ、久しぶり、アリスさん?あれ、名前あってるよな?」
長らく会っていないと人の名前など忘れてしまうクソ低能。
こんなだから友達少ないんだよぉ?キミィ?
■アリス >
客足が途絶えてようやく座れる段階になって。
またも来店、お見舞いの花……って、頼んだのは。
「あら、佐藤重斗じゃない。アリスで合ってるわよ」
椅子から立ち上がって、口元に手を当てる。
「お見舞いの花ね? すぐ見繕うから待ってて」
「座って待っててもいいし、花を見ててもいいし、でも」
彼に近づいて見上げた。
「……年齢偽ってバイトしてることは内緒でね?」
安くしてあげるから、と一緒に伝えて。
自分の持ち場に戻る。
「死や苦を連想させる花はダメ、匂いがきつい花も避ける、鉢植えは根付くからタブー」
ぶつぶつ呟きながら花を吟味する。
店主さん遅いなぁ。来てくれたら一発で選んでくれるだろうに。
■佐藤重斗 > 「あいよ。知り合いのよしみだからなー。内緒にはしとくよ」
実は俺風紀委員ですとか、その身長で年齢偽れたのかとか言いたいけど、とりあえず口をつぐむ。
「花を見てていいと言われてもなぁ…。あ、この花カッコイイ」
黒いバラを見つけて少しテンションが上がる。
花言葉も花の種類も良く知らないが、こういうのはイイ。すごくイイ。
「黒バラか・・・。タキシード着て、仮面付けて、夜の街でも闊歩してみたいな」
あのカッコ良さなら女の子もイチコロですね!俺にもモテ期が来てしまうか…。
口からゲヘへへと変な笑いが漏れる。
どこから見てもやばい人な気がすんな。やめよう。
「アリス~、お花決まった~??」
うんうん唸りながら考えているアリスに声をかける。
■アリス >
安心した。
とりあえず異能のせいで背が伸びない19歳ですと店長には言ってある。
この嘘がばれたらとんでもないことになる。
「よかったー、それじゃ佐藤重斗、三割引!」
花を選びながら、万年菊……は匂いが強いから、隣のガーベラに手を伸ばす。
「黒い薔薇の花言葉は“憎しみ”よ……?」
振り返って小さな花籠の器を置く。
「素人判断だけど、多分花束なんて持っていっても花瓶の問題があるでしょ?」
「フラワーアレンジメントとかどうかしら、ガーベラを中心にオレンジ、ピンク、イエローでまとめるの」
電卓を打ちながら喋り続ける。
「ガーベラ、元気なイメージで花言葉は“希望”。それに結構数が出回ってる花で安いのよ?」
代金を見せる。三割は口止め料として私が払ってやろうやろうやろう。えへん。
■佐藤重斗 > 「アイエエエ!?憎しみィ!?」
マジかよ。俺、そんな花見てうっとりしてたのかよ。
心の底で誰かを呪い殺したかった可能性が微レ存・・・?
アリスが花について説明をしてくれる。
しかしまあ、俺にはチンプンカンプンな訳で。
よ、よし!ちゃんと聞いてる風に見える作戦!!
「おー。ほーー。へーーー希望か、いいね!」
あれ?何かバカっぽい・・・。
と、とにかく三割引してくれるらしい。
でもなあバイトしてる奴、しかも年下に払わせんのもなあ・・・。
あ、そうだ。
「アリス、これも追加で頼む」
近くにあった紫の花をアリスに渡す。
えっと、カキツバタ??まあよくわからんが、買う!!
「この花、アリスにやるよ。三割引のお礼だ。
・・・花言葉はいわないで。やばい奴なら捨てていいから」
花言葉なんて知らない!黒いバラが憎しみの象徴とか、何も信じられない!!
■アリス >
花言葉。まだ花屋がシャランラーな仕事のイメージだった時。
バイトに行く時に知ってたら絶対可愛がられる!!と妄想が爆裂した挙句、躍起になって覚えたもの。
それ自体はまぁ、役に立ったのだけれど。
仕事内容は八割が力仕事だったのでこんな時じゃないと披露する機会がない。
「憎しみの花を胸に抱いてタキシードに仮面つけてたら多分、犯罪演劇団フェニーチェと間違われるわ…」
相手の首肯を見ると、フラワーアレンジメントっぽく花を切りそろえる。
というのもフラワーアレンジメント、ものすごく奥深い。
素人が作ったものは素人なりのものにしかならない。
三割引というのは、勉強料も含んでいる。
カステラは弟子焼きの場合、店頭価格で三割引なのだ。
紫の花を渡されて、ふふ、と微笑を返した。
「ありがとう、佐藤重斗」
カキツバタの花言葉は、幸福が来る。
なかなか面白い花を選んだと思った。
代金を受け取って、フラワーアレンジメントの花籠を渡す。
「花はメッセージという意味合いが強いものよ」
「お見舞いなんでしょ、早く元気になぁれって気持ちを込めて贈りなさいよ?」
■佐藤重斗 > 「犯罪演劇団フェニーチェ・・・。あれ?それもカッコいい気がしてきた」
風紀委員の癖に風紀委員に追われそうとか言っちゃいけない。
というより昨日拒否った魔法少女とあまり変わらない気が・・・?
閑話休題。
目の前で着々と作られていく花の芸術に目を見張る。
これでバイトのクオリティなの?本業どんだけすごいの?
スゲー綺麗・・・。
「アリスって結構器用なんだな。なんか意外だ」
アリスの笑顔から目を反らす。
おいおいおい。美少女の笑顔は特攻が入るぞ?
「…!ど、どういたしまして」
花にはメッセージを伝える力がある、か。
お見舞いにはとりあえず花。
そんな軽い気持ちで買いに来たのだが、思わぬ所で賢くなってしまった。
「そうだなぁ・・・。贈り物は気持ちが大事だもんな。
わっかた。早く元気になって俺の分の仕事してくださいって願いを込める!」
ニヤリと笑って後ろを向く。
背の小さな知り合いに手を振りながら花屋を後にしよう。
「あ、あと俺の名前、佐藤でも重人でも好きに呼んでいいぞ!
フルネームは呼びづらいだろうし!」
■アリス >
「あなたね……ガチの人殺しとかいたからあんまり関わらないほうがいいわよ」
呆れた様子で溜息。
さすがの不運続きの私もフェニーチェと関わったことはない。
「意外とは何よ、私だって親友のために刺繍にチャレンジしたり色々やってるのよ」
にひひ、と笑って彼の腕をつっつく。
「なに、照れてるの? 女の子に花を贈る時くらい、格好付けなさいよ」
「あと仕事は分け合いなさいよね……何委員会か何かのバイトか知らないけど…」
手を振りながら彼を見送る。
希望の花を片手に持って。
「わかったわ、佐藤! この花も、ありがとう!」
さぁ、次の仕事だ。まだまだ力仕事は、山積みなのだから。
ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」からアリスさんが去りました。
ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」から佐藤重斗さんが去りました。