2019/06/06 のログ
ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」にアリスさんが現れました。
アリス >  
今日も今日とて年齢を偽って花屋でバイトをしている。
夏に向けて軍資金を貯めて、アガサやアイノと一緒に海で遊ぶ!!

そのために発揮される学生の行動力は凄まじい。
アガサとアイノはなんかカエルを捕まえてたらしい。
負けていられない。

おっと、燃えている間に親子連れの来客。
子供は大分ぐずっている。

『すいません、お祝いに花をいただきたいのですが』

品の良い母親と思われる女性と、その手を掴んだまま不満を顔いっぱいに貯めこんでいる子供。
すぐに子供が母親の手を引っ張った。

『お花よりオモチャ買ってよー!!』

ああ……そういうことか。
どうしたものかな。

アリス >  
今の時間は店主は留守。
私がいない間はテキトーに花売っちゃってー、という力強い言葉をいただいている。
つまりド素人のワンオペで。

これ大丈夫なのかな? とか思いながら。
スイート・ジー。
虹色セージ。
イチョウラン。
を選んでみた。お祝いって感じならこうだよね? 多分……

子供のほうは泣きが入った。
どうやらオモチャを買ってもらえなかったのが相当お気に召さなかったようで。

母親に花束を渡してから、代金をもらう。
その後に子供の前に屈んで視線を合わせ。

「はい、お花のオモチャをあげるわね」

と、笑顔で手の中で錬成した造花を渡した。
それはパッと見て、手品にしか思えないだろう。

「あんまりお母さんを困らせちゃダメよ?」

と、言って子供の頭を撫でた。
ど……どうやら泣き止んでくれたみたい。

親子連れは私に手を振りながら去っていった。
花屋、いいかも。力仕事八割だけど、こういうのも悪くない。

アリス >  
次に来たのは、女性だった。
学生だろうか。見た感じ、17歳くらいに見える。
漆器を思わせる長い黒髪が美しい。

「いらっしゃいませ」

笑顔で出迎える。
いくら敬語が使えない暦が長い私にだっていらっしゃいませくらいはわかる。

『可愛らしい店員さんね、弔花をくださいな』

なんと、予想外の方向からきた。
誰か亡くなったのだろうか。
確かに彼女は真顔というか、ちょっと余裕のない表情をしていた。
すぐに笑顔を引っ込める。

「わかったわ、用意するわね」

一応、弔花に使う花というのも置いてある。
準備しながら、彼女に聞いてみる。

「亡くなったのは目上の方…?」

恐る恐る聞いてみると、彼女は寂しそうに笑って。

『私の好きな人、これから死ぬの』

はい?
え? どういう?

『私を裏切ったから死ぬのよ』

あかんやつだこれ!! 風紀委員ー!!

アリス >  
「ひ、人殺しはよくないわ……落ち着いて…?」

冷や汗を流しながら必死に止める。
もう花屋どころの騒ぎじゃないけど、帰ってきて店主さん!!

『あんなに尽くしてあげたのよ? 死が妥当』

死が妥当。すごい。こんな言葉をリアルで聞くことになるとは。
でも全く嬉しくない!!

「色恋沙汰が刃傷沙汰になるのはダメー!!」
『そんなことにはならないわ、私、氷雪系の異能だから』

凍死もダメだってば!!
まるで話が通じない!? と、とりあえず風紀に連絡を……

「わ、わかったわ……弔花を用意するから少し座って待ってて…」

カウンターの下で携帯デバイスから風紀ホットラインに連絡した。
誰でもいいから通りがかってほしい。
無理かな……無理かな。この仕事もうやめたい。

アリス >  
ぶるぶる震えながら弔花をのろのろと準備していると。

『店員さん』

と病み属性の女性に声をかけられた。
本気で怯えた声を出しそうになった。

『ありがとうね』

セーフ!! 風紀に通報したの、バレてない!!
でもお礼を言われて嬉しくならない経験なんてなかなかない!!

生きた心地のしない状況でそろそろ弔花が完成してしまいそうな時。

風紀が到着した。

彼女は大人しく連行されていった。
聞いた話によると、片思いからの傷害事件を過去にも起こしたことがあるらしく。
彼女は島外退去になるかも知れないらしい。

私?
私なら風紀に事情を話す段階で年齢を偽ってバイトしてたのがバレてクビになった。

もう花屋では二度と働かない。

ご案内:「花屋『花フォールンエンジェル』」からアリスさんが去りました。