2019/06/11 のログ
ご案内:「VRゲーム「幕末剣風録」」に在洲坂【アリス】さんが現れました。
在洲坂【アリス】 >  
VRゲームをまた買った。またかって言わないでちゃんとクリアするから。
今度は詰まないから。今度こそクリアするから。

と、自分の良心に言い訳をしてスペクトラルギアで没入したのは幕末世界。

攘夷浪士、在洲坂 銀子(ありすざか ぎんこ)となりVR世界を歩いている。
うわー、すごい再現度。

攘夷浪士に女がいたかどうかは問題じゃない。
この世界に私がいるという事実が全て。

さーて、さっそく川原で刀を抜いてみよう。
一番安い打刀を早速、抜刀!

んん? なんかこう……構えがチンピラっぽくない?
あ……この下段構えっていうのはそういうことなのか…
なんか言葉のイメージで円月殺法みたいなのを想像したけど。
このまますり足で敵を取り囲んだらいい感じに三下っぽい。そんな風に見える。

今度リビルドした時にスキルを選びなおそう。

在洲坂【アリス】 >  
いや決して下段構えのことを悪く言っているつもりはない。
むしろこれはこれでスゴ味があると思う。
ただ私は弱い。かなりの初心者だ。

弱い上にこの構えはちょっと私のプレイイメージを損なうというか。
せっかくの出来がいいゲームなんだからヒロイックに遊びたい。

今のスキルは下段構え、対多戦術、疾走、名乗り、体力増進、気力亢進、気迫。
よくよく考えればWikiを見ながら選べばよかった………

『いやぁぁぁぁ!!』

ム、絹を裂くような悲鳴。
これは駆けつけざるを得ない。

駆けつけると、禿頭凶相の浪人? かな?
とにかく刀を持った男が町娘を浚おうとしていた。

「日中堂々と娘をかどかわす……かどまかす…? かかわす……」

噛んだ。真っ赤になりながら啖呵を切る。

「か……かどわかすなど言語道断!!」

とりあえず町娘も凶相ハゲもNPCみたいだ。よかった。

在洲坂【アリス】 >  
咎められた悪人面は、こっちを睨んで威圧をしてくる。
おお、かなりの迫力。これはレビュー高評価モノ。

『なんだぁお前は……死にてぇのか!!』

刀を抜いた!! 私もこのタイミングで抜刀!!
周囲を取り囲むハゲの仲間のチンピラたちも刀を抜いた!!
わー!! テンション上がるー!!
って。あれ。なんかおかしくない。

私も含めて全員、下段構えだこれ。

構え被ってるじゃん!!!
私もなんかこう、構えを変えようとしてみるけど基本動作が固定されてるみたいですり足しかできない。
周りを見渡してもチンピラたちが全員、下段構えですり足をしている。

「いやおかしいでしょ!!」

真っ赤になって叫びながら切り上げでハゲに斬りかかった。
あ、この構え防御的ってチュートリアルで説明されてたけど。
咄嗟に攻撃しやすいなぁ。いい構え。

ご案内:「VRゲーム「幕末剣風録」」にクロウ【天月九郎】さんが現れました。
クロウ【天月九郎】 > (川沿いを深編み笠を被って被って歩くプレイヤーが一人。 笠の効果である陣営隠蔽効果を使い、裾や袖がぼろぼろに擦り切れた初期装備とは違う着流しを身に付けた格好はようやく脱初心者といったところ。
 そうしてふと目に留まったのが川原で睨み合うプレイヤーとチンピラたち。
 下段の構えでじりじりと様子を伺う姿は良くある膠着状態で……)

「獲ったぁ!」

(ザン!と瞬発力を活かし川原を蹴り付け飛びだし、攻撃行動により編み笠が宙を舞い素顔があらわになる。
 VR初心者のせいでスキャンされた顔そのまま使ってしまいリアルとほとんど同じ顔立ちだが知り合いに出会わない限り気付かれないだろう。
 そうしてチンピラの一人に後ろから組み付くと心の臓を一突きにする。
 他人が睨み合ってる横から切りつけるごっつぁん天誅である。
 そのまま血煙の術を発動させ赤いものが飛び散り周囲の敵に恐慌判定が行われ)

「今のうちに、弱そうな奴から切っちゃえよ」

(すっかりサツバツとした言葉を投げかけ…あれ?なんか誰かに似てねぇ?と小首をかしげる)

在洲坂【アリス】 >  
ハゲとの剣戟の合間に周囲のチンピラからじりじりと詰め寄られてジリ貧。
そんな状況で。チンピラが一人、組み付かれて討ち取られた。

「えっ、あ、うん!」

かけられた声に聞き覚えがあるなぁとか思いながら怯えた表情のチンピラたちを斬ってみる。
あ、これはいい。ファーストキルのトロフィーがあっさりもらえた。

「って………プレイヤーネーム:クロウって…そのままじゃない?」

知り合いだこれ!?
で、でも今はとりあえず数を減らさないと。
これだ、名乗りスキル。名乗ったらステータスアップ!

「我が名は在洲坂銀子……剣の理を持って天誅を下す!!」

ここまでフル詠唱してようやくステータスアップかー、微妙!
とりあえず雑魚を斬って斬って斬って。

雑魚が減った段階でハゲ頭に蹴りを浴びせて距離を取る。

「とりあえず、あれを倒しましょう」

ハゲと同じ下段構えですり足をしながらそう言った。

クロウ【天月九郎】 > 「その声その発言……アリスじゃんか! いや名前を入力してくださいっていうから名前入力したらそのまま付いちゃって……」

気のせいじゃなかった!と天を仰ぎ、初心者のやりがちな失敗を口にする。
VRギアに登録されたアカウントネームも当然本名である。
なんで名前二度も聞かれてんの?と思いながらも「名前」を入力してしまったわけである。

「あ、こっちじゃ銀子って呼ぶべきか、おお…名乗りスキル……」

自分があっという間に捨ててしまった王道系のビルドがちょっと眩しい。
というかアリスも動きが慣れてるというかリアルで結構強い系?

「了解、こっちは不意打ち系ビルドなんでかく乱するな」

中段の突きの構えを取って滑るような足捌きで横に動き、相手が自分を目で追った瞬間翻るように反対に切り返しながら突き放つ。
強めに設定されたハゲはそれを受け流すが、アリスからは視線がそれ僅かに体幹もブレている。

在洲坂【アリス】 >  
あまりにネット初歩なミスにずっこけそうになった。
いや私もアリス坂ってつけてるけどさぁ…

「銀子って呼んでね!」

そう叫びながら向けられた剣戟を弾く。
むぐ、ステータスアップしても膂力が足りてない。
受け太刀のたびにこっちが一方的に崩される。

「お願いね!」

視線がズレたタイミングで右切り上げ、左切り上げ、逆風と
下段構えから繰り出される斬撃で敵を斬る。

「クロウ、背後いける? 今度はこっちがタゲ取るから!」

派手に攻めて視線を集める。
序盤のクエストボスだけあってこれだけじゃ攻め切れない、けど。

クロウ【天月九郎】 > 「了解、銀子。 俺はクロウと呼んでくれ」

うん、いつもどおりだね。
苗字がないから農家の生まれだとか色々後から設定が出来上がっていくことだろう。
今の俺は都会に志を持ってやってくるも打ちのめされて剣で日銭を稼ぐ野良犬浪人だ。

「承知した……。なんてな、っていうか上手いな銀子」
今なら負けるつもりはないが同じ時期の自分と比べればどうみても手際がいい。
アリスが連続攻撃で敵の注意を引いてくれているうちに深呼吸をしてスタミナを回復。

膝を抜き倒れながら瞬発力を使い矢の様に加速、しかしここまで激しい動きでは忍び足スキルが発動をミスり大きな音が出てしまい気付かれてしまう。
伸び上がるような片手突きを放つ、が、ギリギリで避けられる。
素早く刃を横に寝かせ避けた方へ振り切る事で喉を切り裂き……悪あがき的なスキルを持っているのかすぐには倒れず大上段に刀を振りかぶってくる。
脚も腕も伸びきったこのままの体勢だと手痛い反撃を受ける……が、慌てずアリスにアイコンタクト。

在洲坂【アリス】 >  
「わかったわ、クロウ!」

これ普段と、図書館で九郎に英語教えてる時と何も変わらない!!
あまりにも身近にいたVRゲーマーの悲劇!!

「VRゲーム慣れしてるからかしら」

今までも釣りからガンマン、果ては宇宙戦争やロボットものに至るまで色んなVRゲームをしてきた。
VR体育があったら余裕で単位が取れるのに。

「ナイス、クロウ」

そのまま滑り込むようにハゲの足元に潜り、相手の脚を斬る。
ふふふ、去年の末に時代劇でやってた隠し剣・羅刹爪だ。
邪剣大いに結構、生き残ればいいのよー。

倒れ込んだハゲは苦悶の表情で末期の言葉を語る。

『お、俺を倒したことを後悔するぞ……あの女を浚えと言ったのもあのお方の権力ゆえ…』

あのお方……こ、これはまさか。連続クエストね!
雰囲気作りがとてもいいわ。レビュー☆5ね!

「あのお方……」

意味ありげに呟く。これも雰囲気作りの一環で。

『お前らに……もう、明日は…来ない』

そう言い残して人攫いは絶命した。
町娘は私たちにお礼を言って去っていった。

「どの道、己(おれ)に明日などない……過去を捨て、未来を失った己にはな…」

ミュージカル剣乱武刀の台詞でフィニッシュ。
シ、シビれる。しばらくは対人戦は避けてクエストでスキルアップしていこう。

「ありがとう、クロウ。助かったわ、敵の数が多くてねー」

いきなり素に戻る。

クロウ【天月九郎】 > 「俺はこれがVR始めてなんだよなあ。モーションアシストが慣れない!」

素人でも一流の動きが出来るようにと用意されたモーションアシスト。
スキルを使おうとすればそれらが助けてくれるが自分の動きが誘導される感覚に慣れなくて最初のころはうっかりキャンセルが頻発していた。

そうして二人の連携で敵を倒しきれば血振りを行い慣れた動作で刀を納める。
まあモーションアシストして貰ってるから当然なんだけど。
あと血振りに至っては完全になりきり、ロールというやつである。

「所詮明日をも知れぬ野良犬の命、いっそ噛み付いてやろうか」

ノリノリのアリスに合わせてくくっと凶相を浮かべ、倒れ付すクエストボスを見下ろして……。

「まあ俺も助太刀ついでに経験値欲しかったしな、あと装備新調したからお金も」

物凄い手馴れた様子で雑魚共の身ぐるみを剥いで財布の中身だけ貰ってポイ捨てする無頼ムーブにNPCのお姉さんはドン引きの表情を浮かべている。
AIの挙動が自然なんだよなぁと立ち上がれば、リアルよりも視線の位置が10センチほど高かったりする。

在洲坂【アリス】 >  
「リアルで動ける人の悩みかしら?」

私はリアルではさっぱり剣術ができないので逆にモーションアシスト万々歳。
斬り上げなんかも普通にやればへっぴり腰だろうに、この感じならいける。
でも下段構えはリビルドの時に外そう……

「カルマ値がないゲームでよかったわねクロウ」

対人がメインコンテンツだからカルマとか考えてられないだろうけど。
私は去っていく町娘の方角を見ていた。
多分、あっちに宿場町があるのだろう。

「……なんかクロウ…身長が高…………」

言ってから途中で言葉を切った。
私もファンタジーゲームで大人の魔女をやっているので。
そこにツッコんではいけない。そう思った。

クロウ【天月九郎】 > 「まあリアルだと全力出したらもうちょい早く動けるしなあ……でも上位プレイヤーは普通に異能全開にした俺より凄い動きしてるしな…二段ジャンプとか」

振り切った!と思ったら空中で跳ねて一気に距離をつめてきたときはジャンルの違う恐怖を感じたものだ。
他にもパルクール一刀流なんて独自テクを開拓している集団も居るそうな。

「いやぁ……プレイ初日にちょっと土の味噛み締めたからなあ……弱肉強食の言葉を思い知らされた」

ふっと遠い目で今のビルドに変えたときの暗い想いを思い出す。
今はもうこのスタイルを楽しんでるがあの新撰組野郎はいつか絶対に切ってやる。

身長の話しはしれっと聞き流す。うん、だって弄れる項目に身長ってあったらそりゃあね…
10センチだけ…いや11センチだけ伸ばしたのはギリギリの見得と欲望の妥協点だったりする。

「俺は装備見に行くけど銀子はどうする?」
着流し以外にも腕や脚装備も色々見てみたい、あとおしゃれアイテムとか色々あるし。
ほい、と剥ぎ取りアイテムの分配分をアリスに差し出して、クエストトリガーはアリスが引いたしボスドロップは全部そっちで。

在洲坂【アリス】 >  
「へー、リアルのクロウって……いやまぁあの動きを見たら納得か」
「って二段ジャンプ!? そんなのあるの!?」

恐るべし、幕末。恐るべし、志士たち。

「もしかしていきなりPK可能エリアに行ったの……?」

いやもしかしたら他のゲームとは違って全域PK可能なのかも知れないけど。
それにしたって五条河原辺りは絶対行きたくない!!

「あ、行く行くー」

分配をもらって両手で高く掲げる。

「……攘夷浪士ってカンザシつけてもセーフかなぁ?」

そんなことを話しながら、ホクホク顔で宿場町に向けてクロウと歩いていった。

クロウ【天月九郎】 > 「ん~例の変身状態なら垂直で5mはいけるよ。着地だともうちょい無茶できる」
「そうそう、スキル鍛えてるのかそういう入手イベあるのか知らないけど……まあビームは無いみたいだから大丈夫」

「中立エリアもちゃんとあるんだけどね……案内してくれた人が幕軍エリアに誘導してくれて……」

ふっとVRだというのに瞳からハイライトが消えてうつろな笑みが浮かぶ。
あの時の屈辱、土の味、忘れはせん、忘れはせんぞ……!

「OKんじゃ商人プレイしてる人の拠点あるから行こうぜ。焼き討ちされて無いならまだあるはずだから
 ああ、暗器スキルあればバックスタブで補正でかいらしいぜ、それ」

言葉の端々にサツバツとした空気を漂わせながらのんびりと歩いていくのだった。

ご案内:「VRゲーム「幕末剣風録」」からクロウ【天月九郎】さんが去りました。
ご案内:「VRゲーム「幕末剣風録」」から在洲坂【アリス】さんが去りました。