2020/06/17 のログ
ご案内:「違反部活ル・メディ拠点」にエルヴェーラさんが現れました。
ご案内:「違反部活ル・メディ拠点」にアリソンさんが現れました。
エルヴェーラ > 新月の夜。

多くの違反部活が存在するこの一帯に、2つの人影があった。

一つは、長耳。
白い髪を風に靡かせる彼女は、狐を模した漆黒の仮面を身に着けている。
機会的な手付きで仮面の位置を直しながら、少女――エルヴェーラは、
隣に立つ人影に『口を動かさず』に伝える。

「ここがル・メディの拠点です。くどいようですが、今回の任務は暗殺――
いくらこの仮面があるといっても、超えてはいけない一線があります。
なるべく気取られぬよう、慎重に歩を進めましょう」

そう言って彼女が指さすのは、自らが纏う漆黒の狐面だ。

裏切りの黒に属する者達が必ず身に纏う漆黒の仮面。
そこには『認識阻害』と『念話』の術式が刻まれている。
この仮面をつけている限り、面をつけていない者からは、
ただうっすらとした黒い霧がそこに在るようにしか見えない。
要するに、暗殺にはうってつけ、というわけである。

ただし、『認識阻害』はかなり繊細な術式で、少しの衝撃で剥がれてしまう
可能性があるのだ。そのことを示唆して、エルヴェーラは釘を刺したのだった。

「頭は、セクトと呼ばれている男。中肉中背、銀のオールバック、
右目に傷を負った男です。異能は――「死者を操る能力」と調べがついています。
奇襲には、十分気をつけてください」

廃ビルを前に、エルヴェーラは淡々とそうして『念話』による情報伝達を行う。

アリソン > 新月の闇夜深き夜の静寂 違反部活が大小犇く一帯の一角に二つの影が蠢く。

一つは白黒で裾に赤い斑点が滲むように汚れているものの高級そうなオーダーメイドなメイドである。
顔は見えないがー羊角を禍々しく生やした黒い仮面をしている。
僅かな振動、僅かな音で『口を動かさず』小さく音波を放ったりしている。

『是。暗殺畏まりました。気取られたら潔く撤退は推奨に。』

手短過ぎる、全盲のアサシンは異能の殆どが超音波による反響定位と暗殺処世。
どうもう一つの影たるエルヴェーラに伝えているのかが謎だが
逐一どこに手下がいるとかどこに罠がある等伝えている…。
新月の夜で明りも乏しく『認識阻害』『念話』に『潜みし遥かなる総譜』による
闇の中でも見えなき地図を送って情報共有をしている始末であった。

『畏まりました。では、一撃必殺の暗殺は向きませんね。
 如何致しましょうか、私の暗殺処世では粉砕技は派手に音が割れる恐れが御座います。』

廃ビルを前に少し考える素振りを。ヴァイオリンは持ってきていたが、
少しでも音色を出す必要があって使えない気がふつふつと。

エルヴェーラ > 「ええ、深追いは厳禁です。ただし、失敗も許されません。ただ粛々と、ただ淡々と、確実に」

そう伝え、光の灯っていない瞳でビルを見つめるエルヴェーラ。


「さて、いきましょうか。現状では正確な位置までは
 貴女から伝えていただくことはできません。
 屋内に入ってから、適宜索敵をお願いします」

念話にすら、何の感情もない。
色のない声がアリソンの脳内に響くことだろう。

「何も問題はありません。対象を骨と皮にするのは貴女の得意技でしょう。
 そこから先の『処理』は私に任せてください。貴女はただ、頭を殺すこと
 のみを考えていただければ、それで」

足音を1つだけ立てて合図をし、歩を進める。
目標はこのビルの地下、最奥部に居る筈だ。


廃ビルの奥からは、死臭が漂ってきていた。
見れば、事前情報の通り、視界の端に地下へと続く階段がある。

「お願いします」

索敵を頼んだ、ということだろう。
隣の影に目配せするエルヴェーラ。

アリソン > 『畏まりました。粛々と冷酷にひんやりと確実に屠ると
 いう事で承りました。私目は私目の役割を果たす事と致しましょう』

見えぬ瞳を敢えて開き見えているように振舞うはメイドの皮をかぶったアサシン。

『是』

楽器を持ち運びしやすい様に事前に結わえていた紐で結び背負う。
そして少し屈んで折り畳み式のナイフ数本を手に取るとそれを指の間に挟み、
一言返事をすると、あまり音が響かず範囲は狭いが非常に無慈悲に精密な索敵をし始める。

こちらもゆっくりと歩を進め始める。
僅かに振動はするがそれは索敵の振動だったりする。
蝙蝠か虫が放つ僅かな音みたいな振動を仄かに。
視界の端っこに階段がある、だがその手前の小部屋に動かないが人のシルエットが三つ、
階段の前の床に落とし穴?が二つ。壁に隠されている骨が数体…。
もうこの廃ビル 生きている方より死んでいる方の敵が多い…。

『…手前 西の小部屋人三ツ、壁に隠されている骨数体…生きている方より死人は多し』

索敵範囲は狭いが見える範囲での…索敵一回目以上終わり。
逐一 索敵は行っている模様で、積極性暗殺はしていない。処理はとなりの影がやる事でしょうし…。

エルヴェーラ > 『期待していますよ、サキュバット。あなた以上の人材は居ないと判断し、
同行をお願いしていますので』

事実、エルヴェーラはヴィランコード、サキュバット――アリソンの能力に
信頼を置いていた。
異能、潜みし遥かなる総譜。超音波を用いた驚異的な索敵能力。
エルヴェーラも簡易的な索敵は魔術で行うことができない訳ではないが、
彼女の異能の前では足元にも及ばない。


重々しいコートを上下に揺らしながら、エルヴェーラは歩を進める。
じめじめとした空気が頬を、足元を撫でていく。
何より、鼻につく臭い。表の世界を歩く者であれば、顔を歪めるか、
嘔吐するか。
だが、我らが身は影。死の臭いなどとうの昔に慣れている。

『……流石』
報告を受ければ、そんな独り言のような呟きがアリソンへと
念話として伝わってくるだろう。
相変わらずの平坦な口調であるが、どうやら心から感心しているようだ。

『西の小部屋と壁を避けて進みましょう。死人の方が多いとは、ぞっと
しますね』

無論、微塵も心を震わせてなどいないのであるが、
どうやらこのエルフ、たまに軽口を叩くようである。

アリソン > 『抜かりなく。光栄に存じ奉り』

全盲であるがゆえに異能 潜みし遥かなる総譜以前に五感の内四感が元々鋭い。
超音波を発したり返ってくる音を拾って総合的に集め形を作り視覚より視える事を主としたもの。
音が返ってくれば壁や床天井、人、その他 返ってこなくば
吹き抜け、空間があり、とにかくその先に何があるかも視える。

表の世界よりもはるかに闇の世界に潜みし我らは影、死と血肉の香りは褒美かごちそう。
じっとりしとしと湿気が上がる生暖かい風が少ない肌を触る。

『北側は少ない…南側に移動をしている三つないし少数の何か。
 ただし北側は罠が…東側に隠された通路…風が洩れている音が少し致します。』

逐一索敵を続けている。範囲外の移動をしている何かは部外者か何かだろう、
廃ビルの中に一向に入ってこないからだ。北側には少ないが東の方に連絡路があると念話で伝える。

その他 見つからない様に時々動きが止まり物陰や柱の陰に隠れる仕草は本業アサシンのようであった。
無駄な動きが全くにもない、極めて合理的に補助役を務めあげる気満々のようで。

エルヴェーラ > アリソンの情報を受け、小部屋には見向きもせず、
落とし穴になっている床を注意して飛び越えるエルヴェーラ。

さて、ここから先は本格的に敵の懐へ飛び込むこととなる。

『隠された通路。事前情報にはありませんでしたね』

事前情報との差異に目を細めるエルヴェーラ。
やはり、同行を頼んで正解だったようだ。

『で、あれば。東の連絡路へ向かいましょう。事前情報と合わせて
 考えれば、そちらへ向かうのが最短ルートになります』

こくりと頷くエルヴェーラ。
ところどころに砕けたコンクリートや注射器が散らばっている。
この違反部活は、多くの違法薬物を売り捌く組織であった。
だが勿論、これだけでは裏切りの黒が動く理由にはなり得ない。
エルヴェーラは注射器に意識をくれてやることなく、そのまま歩を
進めていく。

『……この先ですね。準備はいいですか?』

東の通路にたどり着く。
アリソンの異能にも、この先の地下へ続く階段の形がありありと映る
はずだ。そしてその先の最奥部の部屋には、一人の生きた男の影。
そして、その床に散らばっている数多くの人型――死体も映るだろう。

アリソン > ゆっくりと移動をして落とし穴の床は必要最低限に飛び越え
乗り越えてしまった。索敵を主とするお勤めは割と体力を使わないが、アサシンとしては体力温存の少ないチャンス。

敵の懐へと繋がるゾーンに入った気がする。
喋る必要性がない所では無言は肯定を示すとばかりに念話を送らない。
索敵をする上で護衛か同行者がいると此方も楽。
一人だと的確に索敵がしにくいので今回の様なじりじりと潜入作戦は取らない。
一撃必殺木っ端みじんで崩落事故した方が早いからだと。

コンクリの砕け具合、注射器が散らばり 死体か骨の粉末が所々に転がっている。

準備は良いかと伝わってくれば 武器の準備を素早く終わらせる。
抜かりなし、と頷くにとどまるメイドの皮をかぶったアサシン。

悍ましい気配が形作った一人の存在が濃密に視える。
それを囲う様に人型の死体の様なものが数多く積み上げられているかのよう。

『死者の国を思わせる…』

エルヴェーラ > 『……それでは』

沈黙を肯定と受け取った。
このアリソンという女は、索敵能力・戦闘能力ともに高い。申し分ない。
その点は揺るぎない事実なのだが、
少々その思考が過激過ぎることは既にエルヴェーラも把握している。
故に、この重要な戦力を最大限に活かす為、
自らが同行することを決めたのである。

そして、そう。この任務であれば、間違いなく彼女の力を最大限に発揮できる。
調べは既に、ついているのだから。



階段を降り、その先にある部屋の扉を静かに開く――。

アリソン > 防御等を元々捨てている節が見られる。一撃必殺多殺粉砕。
戦闘能力そのものは高かったが思考が人ではないのが満載で
食事=つまみぐいと称している事から人をどう見ているか。

新月の夜のみコロシのお勤めをするという暗黙のルールを自らに課してその夜を迎えるとさっくりヤルと。
使いようによっては強いが使いこなせなければその組織は危険という事。

扉がエルフによって開かれるその後ろから 口を少し開いて高出力音波魔法が口から狙いは部屋の中として
視えない攻撃として発射された!先手必勝とばかりに!!

さらさらさら、っと死体とか骨とか諸々どの位かどうかは分からないが
何かが音波粉砕魔法攻撃により木っ端みじんになった模様だ。
人物の安全については全然生死を問わないレベルに上がっていた模様。

『再充填は暫し…』

エルヴェーラ > 『む……』
エルヴェーラが扉を開ける後ろから、凄まじい威力の音波が飛んでいく。
横髪を数本持っていかれるエルヴェーラは、やはり無表情のままである。


扉近くに横たわっていた複数の屍が粉微塵に消し飛んだ。
最早、跡形もなく。
同時に、反動により両者の仮面の効果は消し飛んだ。
二人同時に、その姿が顕となる。

「……やれやれ。ま、想定の範囲内ではありますが」

エルヴェーラが肩を竦めて見せる。


その向こう。
一人の男が、最奥部の部屋で、デスクに座っていた。
整えたオールバックに白いスーツと、清潔感が溢れている。
しかし彼が支配する『死者の国』は、まるで対照的である。


「おやおや……まさか私の、生きる屍《リビングデッド》に気づかれることなく、ここまで侵入してくる者たちが居るとは……驚きですねぇ」

オールバックを撫で付けながら、男はフンと肩を上げて笑った。

「ですが、懐に入れば私に、いや私たちに勝てると思っているその考え、甘すぎますねぇ。
 嬲り殺して、我が軍団に加えて差し上げましょう!」

男が小さく指を鳴らせば、部屋一帯を闇が覆う。

「空間の断絶ッ! これで、あなた達の逃げ場は無くなった!
 どこの組織の者か知りませんがねぇ、助けを呼ぶ声も! 悲鳴も、最早
 外には聞こえないイイイイッ!!」


床に転がっていた何人もの死体がよろよろと立ち上がる。
死人ゆえ、その動きは緩慢。

そんな風に思っているのであれば、それは考えが甘すぎるというものだ。

3つの死体は、獣の全力疾走の如き速度で、エルヴェーラとアリソンへと飛びかかる。

アリソン > 『…』『仮面の効果も消し飛びました』

高出力の音波が発射されたが仮面の効果も一緒に吹き飛んでしまった。
これは無音暗殺のアサシンではなく一撃粉砕音波系殺し屋の間違い。
狙いは部屋の内部というアバウトすぎる狙いだったが扉付近の屍が複数粉々になった事から
当たれば確実粉砕復元も何もできないというある意味ヤバい魔術だった。

「ここでなら暴れても、宜しいのではないでしょうか?」

今更では、と開き直っている節が漏れ始めたアリソン。

向こう側の男は何というか痛い白いスーツという格好。
『死者の国』に君臨するという身にしては清潔すぎる。

「その口黙って頂けないでしょうか?口を開けば死臭が致しますので」

ゆっくりとした動きでにぎにぎと握りこぶしを作ったり開いたり、さっとフル仕草をした―
ぴんっと何か糸が張られた気がする。闇に覆われた空間雖も元々全盲のメイドに何ら問題はない。

『部屋含む一帯が暗いだけです。…エルの左右からリビングデッドの切り裂く攻撃が来ます。
 一体は私目が 切りましょう……他愛もありません。」

三つの死体の内 一体を操糸術で細切れにして見せた。エルの様子を見れるほどの余裕はまだ…ある!

エルヴェーラ > 『……はい』

繊細な術式をふっとばす殺人砲。
気取られぬよう、という最初の忠告は彼女の本質にはそぐわない。
一度火がつけば、炸裂する爆弾。何もかも消し飛ばす、爆弾。

――だが。



エルヴェーラがこのような時に笑うことができる者なら、口の端は上がっていたことだろう。
彼女は強い力を持つが、制御の難しい存在だ。

――だが、それがいい。

一歩間違えば、組織の事が明るみに出る可能性だってある。
全てを消し飛ばす、爆弾だ。

――それでこそ、だ。


そんなことは、エルヴェーラも分かっていた。
分かっていて、この任務への同行を頼んでいる。
ただ物を破壊するだけならば、落第街を歩いている者を適当に連れてくれば、
何とでもなろう。

だが、この女の放つ魔術は違う。根本的に異なるのだ。
当たれば確実に、対象を粉砕する。復元すら不可能なその一撃は、
ここで何が起きたか、そのあらゆる証拠すら消し去るのだから。


「死体を操り、不死の軍勢で以て落第街をねじ伏せるつもりだったようですが……
 その果敢ない悪、無駄口とともに、ここで断ち切らせていただきます」

エルヴェーラが腕を横に振るえば袖の内でジャラリ、と鋼鉄の擦れる音がした。


「黙るのは、そちらの方ですよォォォ!!! 黙りなさい、永遠にねェエエエッッ!!」

一体は、アリソンが細切れにして見せた。

残る二体は、エルヴェーラの首元へ牙を突き立てんと迫った、その数瞬後。
見やれば。死体は、肉片となって地に落ちていた。

エルヴェーラの手から弾丸の如き勢いで放たれた鎖が、死体を一瞬にして解体したのだ。


「――さあ、始めましょう。裏切り《トラディメント》を」

肉片が降り注ぐ中で、エルヴェーラは初めて笑みを見せるのであった。
彼女の笑みは、嗜虐の中でこそ。





つづく

ご案内:「違反部活ル・メディ拠点」からアリソンさんが去りました。
ご案内:「違反部活ル・メディ拠点」からエルヴェーラさんが去りました。