2020/06/18 のログ
ご案内:「スラムの入り口」に龍宮 鋼さんが現れました。
龍宮 鋼 >  
スラムの入り口に、数人の男がいる。
真面目とは言い難い風貌で、しかしあまりこちら側に慣れていないようでもある。
若気の至り、と言うところだろうか。
スリルを求めてスラムへと肝試しの感覚で入ろうとしているらしい。
初めは少し怖気づいていたようだが、人数が多ければ判断は鈍る。
決心がついたのか、その最初の一歩を、

「やめとけ」

背後から声を掛ける。
煙草を咥え、両手はポケットに。
その爛々と光る赤い両目で彼らを睨みつけている。

「その足一歩でも踏み出そうもんなら、テメェらはもう二度と戻れねぇぞ」

ゴツ、ゴツ、と言う重い足音を鳴らしながら彼等の横を通り過ぎ、通せんぼするようにその前に立つ。

龍宮 鋼 >  
ポケットに手を突っ込んだまま睨みつける。
彼等のような面白半分でここに来るような者とは違う圧。
三人は完全に怯んでしまっているようだ。

「どうしても通りてぇっつうんなら、別に止めやしねぇけどよ」

ポケットから右手を抜き、咥えていた煙草を摘まみ取る。
煙を吐き、投げ捨てて。
事実、自分がどうこうするつもりもない。
別に通るなら通るで無理に止める義理もないのだ。
ただ、彼等はもはや通る気は失せてしまっているらしい。
かと言ってここまで来て引き返すのも、と言う感じだ。

龍宮 鋼 >  
「――っざってぇなぁ、帰れっつってんだよ」

あからさまにイライラした表情。
より一層強く睨みつければ、彼らは明らかに怯む。

「たかだか不良一人ににらまれた程度で怯むような奴らがノコノコ入ってくんじゃねぇ!」

ガァン! と壁を殴る。
大きくひび割れ、小さくない破片がゴロゴロと転がって。
男たちは小さく悲鳴を上げ、元の方へと走って行った。

「ったく……」

その背中を睨みつけながら新しい煙草に火を付けて。
スラムの方へと歩を進め、やがてその闇に溶けてどこかへと――

ご案内:「スラムの入り口」から龍宮 鋼さんが去りました。
ご案内:「違反部室」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
違反部室の一つ。
ダーティ・イレブン。最近、力をつけてきた十一人の異能犯罪者の組織。
その部室のドアをノックする。

「入れてくれ。今日は……話し合いに来た」

ドアを小さく開け、顔を見合わせる違反部活の男たち。
そこに強引に体を滑り込ませるように割って入った。

「風紀委員だ。ボスに会わせてくれ。話がしたい」

そう語る男の大きなアフロが、揺れた。

山本 英治 >  
中に入ると銃や武器や掌を向けられる。
当然だ。異能犯罪者にとって風紀委員は不倶戴天の敵。
警戒されるのも仕方がない……

「何も持ってはいない、武器も、通信機もだ」

アフロに当たらないように慎重に両手を挙げる。

「ボディチェックが必要だろう、早くしてくれ」

そうだ。武器なんて要らない。
今日は彼らと……話し合いをしに来たのだから。

違反部員 >  
「じゃ、服を脱げや」

そう一人が言って、全員が下卑た笑いを響かせた。

「何も持ってないんだろ? 証明するんだよ、風紀のクソアフロ」

肩を揺らして一人が笑う。
今もアフロに武器は向けられたままだ。

山本 英治 >  
そう要求が来るとは思わなかった。
だが俺の思想、肉体、共に恥じるものなし。

その場で服を全て脱ぎ、鍛え抜かれた肉体を露にした。

「パンツも脱げばいいのか?」

全裸になって前に一歩出る。
たじろぐ男たちを前に漢立ちだ。

「もう一度言う。ボスに合わせてくれ、大切な話がある」

ボス >  
その時。部室の奥から眼光鋭き男が姿を現した。

「なんの騒ぎだクソども」

そして全裸のアフロを見て。

「風紀委員の山本か……何の用事だ?」

と、短く言って席についた。

「座れよ」

山本 英治 >  
左手の掌に右手の拳を打ちつけて一礼する。

「今日はあんたらに……自首をしてもらいたい」

全裸のまま対面の椅子に座り、テーブルにつく。

「あんたらは上手くやってる。だがやりすぎだ、風紀に完全に目をつけられてる」
「今のままだと全面抗争だ、お互い良くない結果に至る」
「誰が加害者でも、誰が被害者でもない。出るのは犠牲者だけだ」

真っ直ぐにボスの瞳を見る。視線は逸らせない。

ボス >  
「いいねぇ、抗争。大いに結構」

足を組んで腕組みをする。
そのカリスマ、今も怖じることなく。

「そもそもチンポ見せた状態で何かっこつけてるんだお前」

周囲の部下からも笑いが起きた。

山本 英治 > 「見せてるのはチンポじゃねぇ、漢だッ!!」
山本 英治 >  
「いいか……お前は一人じゃない」
「戦いになったら部下もまとめて死ぬかも知れない」
「俺はその未来を変えに来た……頼む、降伏してくれ」

居心地も悪そうに椅子に座りなおし、がしがしとアフロに触る。

「今、自首してくれれば悪いようにはしない」
「罪が軽くなるよう、あらゆる手を打つ」
「書類の何十枚……いや、何百枚だって書いてやる」

男の表情が悲しみの色に染まる。

「死んだら終わりなんだぞ! そして破滅の未来に突き進むのは、男気でも男伊達でもない!」

ボス >  
目を見開くボス。

「もう遅ぇ!! 人を傷つけ、武器を集め、金を集めてきた」
「罪は覆らねぇ!! 大人しく俺らと戦うんだよ、風紀の兄ちゃんよぉ!!」

足を組み替え、肩を揺らして笑う。

「それともなんだ? 風紀は狐狩りも躊躇う臆病者の集団か?」

山本 英治 >  
溜息をついて首を左右に振る。
アフロが悲しげに揺れた。

「そうじゃないだろう!?」
「過去は覆らない、現在は最悪、でも……未来は変えられるんだ!!」

テーブルに両手をついて立ち上がる。

「今、外に風紀がいる。雪崩れ込んでくれば、双方に大きな被害が出るだろう」
「それだけじゃない、タカ派に目をつけられたら皆殺しにされるぞ!!」

「頼む……勇気を持ってくれ。流血の結末を変える勇気を!」

しっかりとボスの目を見る。
周囲の男たちが、顔を見合わせていた。

ボス >  
山本の言葉に騒然となる部室内。

「おい、“目”。外を見て来い」

異能を使って外を透視する目と呼ばれた男。

『ボス、完全に囲まれてるぜ!! これは罠だ!!』

歯噛みをするボス。

「ここまで手筈ができているなら……奇襲をすればよかっただろう」
「何が目的だ山本ォ……」

山本 英治 >  
「お前らに死んで欲しくないからに決まってるだろ!?」

改めて座りなおして。

「いいか……俺の言葉は最後通牒なんかには絶対にしない」
「更正するんだよ、坂本哲司………」

ボスの名前を呼んだ。

「風紀だとか顔の見えない呼び方をするなよ、お前もだ高見三郎!!」
「俺はお前らの名前を全部知ってるぞ!!」

「一人一人、生きてきた人生があるんだろ!?」

「それを無駄にしていいのか! 何も良かねぇ!!」
「堀の中に入ってくれ……頼む………その先に未来は、絶対にあるんだ…」

ボス >  
「ネゴシエイター気取りはそれくらいにしな、山本」
「未来だなんだとおためごかしを並べやがって」

ボスの顔が苦渋に歪む。

「だが、漢は見せてもらった」
「でけぇ漢だよ、お前は………」
「お前らもいいな?」

周囲の男たちが、テーブルの上に銃や刀剣を置く。

「現時刻を持ってダーティ・イレブンは解体だ」
「自首しよう、風紀のお仲間にそう伝えてくれ」

山本 英治 >  
「……ありがとう、坂本…」

鼻を鳴らすと、目元を擦って。

「あんたも漢だった」

そう言うと外に出た。

キャー!!と女子風紀たちの悲鳴が上がって石が投げつけられた。
慌てて部室内に戻ってきて。

「おい、かくまってくれ!!」

ボス >  
「服を着ろ、バカ!」

そう言って笑う男たちに、侮蔑のニュアンスはもうなかった。

山本 英治 >  
そうしてその日、一つの違反部活は解散した。
俺は独断専行を咎められ、交渉を褒められ、結果として始末書を山のように書く程度で済んだ。

誰だって生きる権利はある。
命に貴賎はない。

そう思うだろう? そこのアンタも。

ご案内:「違反部室」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「Free1」に常世広報さんが現れました。
常世広報 > 『違反部活ダーティ・イレブン一斉検挙!!』
『風紀委員 山本英治 猥褻物“珍”列!?』

ダーティ・イレブン事務所にて、検挙直前に現役風紀委員が破廉恥な姿を晒していたことが明らかになった。
中でどんな事があったのかまでは分からないが、まさに『体を張った』話し合いをしていたであろうことは明らかだ。
特捜班が独自に収集した噂では、ダーティ・イレブン首魁坂本哲司が男色家であった!?という話もちらりほらりとあるようだ。
風紀委員は常世の風紀は守っても、己の風紀は守らないということなのだろうか?

ご案内:「Free1」から常世広報さんが去りました。