2020/07/27 のログ
■羽月 柊 >
「……あぁ、エンディングまで居てやるとも。」
また取りこぼしたのかもしれない。
あの『トゥルーバイツ』は、どこかで止まったのかもしれない。
後悔を抱えて、また歩き出さなければいけない。
それでも、走り出したこと自体に、後悔なんてしていない。
――舞台は続くのだ、これまでも、これからも。
指をパチンと鳴らす。それでもここは一先ず幕引き。
■羽月 柊 >
さぁ、今度は君が、舞台に立つ番だ。
ご案内:「元トゥルーサイト部室跡地」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「学園内カウンセリングルーム」に橘 紅蓮さんが現れました。
■橘 紅蓮 > 常世学園内に存在するカウンセリングルームの一室。
中央に足の長い木製のテーブルが一つと、椅子が4つ並んでいる。
内部には簡易型の給湯室の様な設備が整っており、緑茶やコーヒー、紅茶など、一通りの飲み物が用意済み。
個人のプライバシーの為に多少の防音機能付きといういたせりつくせりな環境。
入り口近くにはカウンセリングについて簡単にまとめたパンフレットなどが並べられている。
これが橘 紅蓮のスクールカウンセラーとしての仕事場だ。
■橘 紅蓮 > この常世学園には様々な人種、境遇の『人間以外の者』も暮らしている。
当然、元来この世界にいる人間と異邦人との軋轢などによるトラブルは絶えない。
異能や、魔術といった特異な能力を持ってしまったばかりに様々な悩みを抱えている生徒や教職員も少なくはないというのが現状であり、それは内在的な『テロリズム』を抱え込んでいると言っても過言ではないだろう。
橘 紅蓮の仕事は、そういった内在的危険を予め把握し、抑制することが仕事というわけだ。
そうはいってもカウンセラーというものは基本的に相談されるのを待つ立場でもある為、あまり自分から赴く事は無い。
つまりどういうことなのかというと。
橘 紅蓮は現在暇を持て余しているという事だ。
『ピーッ』と音の鳴ったポッドから、インスタントコーヒーの粉末の入ったマグカップにお湯が注がれる。
ストレートの不味いコーヒーを飲みながら、学園内の生徒、及び教師達の精神状況を観察、定期的にレポートとして提出しなければならないという仕事を退屈そうに一人こなしている、そんな状況。
「まぁ、誰も来ないのが一番といえば一番なのかもしれないが……。」
それはあくまでも誰も悩みも苦悩も存在しなければ、という前提付きなわけで。
このカウンセリングルームという看板は、思っている以上に生徒たちにとっては堅い門なのだ。
入ったヒトはもれなく、『精神を病んでいる』というレッテルを張られかねないから。
■橘 紅蓮 > 先日、事態が収束したばかりの『トゥルーバイツ』が起こした一連の『事件』とも言えない集団自殺を企てたメンバーの書類が目の前にある。
当然、その隊長である日ノ岡 あかねの書類も存在した。
後天的に発現した異能による、生活環境の急激な変化に伴う精神的苦痛、苦悩を抱えた彼女による、『真理』への接触は失敗に終わった。
当然、『トゥルーバイツ』のどのメンバーも例外は無い。
おそらく『真理』に触れたと思われる人物は、例外なく死亡が確認されていた。
本来であればその苦悩を緩和し、穏やかな学園生活をサポートするのが自分の仕事ではあるのだが、きっと彼女達はその程度では止まれなかったのだろう。
止まれなかったからこそ、それ以外に求めなかったからこそ、『真理』に手を伸ばした。
たとえそれが命という名の片道切符だとしても。
止められなかった責任はどこに行くのかといえば、当然それを止めるべき人間に降り掛かるわけで。
「相変わらず、この世界は救われないね。 異能だの魔術だの、異邦の住人だの。
未だにこの世界の人間は理解できていないというわけだ。
彼らの精神が不安定である事がいかに危険かという事に。
……いや、気が付いているからこその傍観なのかな?
この学園が崩壊すればそれは、旧人類か、新人類の生き残りをかけた戦いが始まりかねない。
それを望む人間もいる……、だからこその。
いや、考えすぎか。」
湯気の立っているコーヒーを口に運ぶ。
「あっつ……。」
ミルクも要れていない熱湯そのままのコーヒーは彼女の舌を焼いた。
まったく、本当についていない。
こんな集団自殺が起きた原因を書類にまとめて提出しろというのだから、委員会も少しは心理学を学べとも言いたくなる。
■橘 紅蓮 > そもそも論として、『《異能》を持つ者と持たぬ者の間に、優劣の差は存在しない』というのがこの学園の立場という大前提が存在している。
反社会的組織『黙示の実行者』。
異能を持つものが『神』に選ばれた有意存在であり、異能を持たない不完全な生命を断罪するべきだ、と主張した『新天新地思想』の持ち主たち。
常世学園草創期に壊滅したその組織は分派して島外に存在しているという噂話は耳にするが、動きを見せているというわけでもないのだろう。
もしそうだというならば公安や風紀の人間が黙っているはずはないからだ。
無論、そういった思想が島内に全く存在していない、とは言い切れないわけだが。
「……まぁ、なんにしても一番恐ろしいのは異能でも魔術でも怪異でもなく、人間自身という事かな。」
目の前に広がっている過去の異能に関連した犯罪、事件、事故の書類を眺めながら、その情報を整理する。
《大変容》からその後、結局人間は余りにも成長していない。
いつまた、それが起きたとしてもおかしくはない。
それが彼女の私見であった。
■橘 紅蓮 > 彼女の、今回事件に対する報告書の内容は実に短く完結的だ。
「常世島に住まう者たちへの理解、サポート、社会的保護の不足による、現状打破を求める者たちの『反社会的思想』を除外した方法の模索によって起きた不幸な事故。」
それが今回の集団自殺の真相。
《大変容》が起きる前から人間か抱えている、何かを求める『強欲』が起こした悲劇。
「……救われないねぇ。 どいつもこいつも。」
ぬるくなった不味いコーヒーを飲み干して、苦い顔で彼女は締めくくった。
ご案内:「学園内カウンセリングルーム」から橘 紅蓮さんが去りました。
ご案内:「Free1」に橘 紅蓮さんが現れました。
ご案内:「Free1」から橘 紅蓮さんが去りました。
ご案内:「委員会街/公安委員会本部」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■東山 正治 >
……『某年 某月 27日』
東山 正治(ひがしやま さだはる)。
元弁護士。39歳。
現職業、常世学園「公安委員会」所属。
己の異能と弁護士としての情報収集能力を見込まれ、公安委員会へスカウトされる。
その手腕により、公安委員会でも地位は上の方。
……と言えば、聞こえはいい。
実際はいいとこ中間管理職。つまり、責任追及される側。
今日も今日とて忙しくしていたと言う訳。
隈の濃い目元を擦って、欠伸を一つ。
「ふわぁ……ハァ。面倒クセェよなァ、こういう"裏方"って。」
「なぁ、剱菊ちゃんよ。寝不足なんだわ俺。……何時もだけどな。」
何十、何通り、何時もの様に部下に出す"口癖"だった。
■紫陽花 剱菊 >
当の部下はと言えば、東山のデスクの前で凛然と佇んでいた。
相も変わらず、仏頂面の口一文字。
唯静かに、東山を見ていた。
さながら其れは、いみじくも罰を待つ子供の様に見えた。
■東山 正治 >
「相変わらず不愛想だね、お前。いや、もう慣れたけど。」
東山はつまらなそうに頬杖を突いた。
此の男はいつもこんな調子だ。
冗談一つ真に受ける、真面目な男。
からかいづらいったら、ありゃしない。
おまけに不愛想で、何考えてるのかはわかりゃしない。
東山は、紫陽花 剱菊の事が嫌いだった。
「まぁいいや、とりあえずが"ご苦労さん"。
大変だったろ?"違反組織"『トゥルーバイツ』相手に。」
「まぁ、まさかお前が頭とってくるとは思わなかったけどな。真面目な奴だとは思ってたけどね。」
元違反部活生威力運用試験部隊傘下独立遊撃小隊『トゥルーバイツ』
ある一件を境に彼等は『真理』を求めた散開行動を開始する。
"公安組織"の調べでは、『真理』の先にあるものを求めたらしい。
それは個人の欠落を埋める為の、ロマンチストに言ってしまえば『願い』だ。
最も、東山は"現実主義者"。あんな連中は、ただの大量自殺志願者。
もっと言えば、『社会の負け犬』程度の認識でしかない。
現に、『トゥルーバイツ』の目論見は全てご破算。
最も警戒されていたであろう、『日ノ岡 あかね』さえ、ご覧の有様だ。
「……でも、あの『連行』の仕方はちょっとおどろいたよねぇ。剱菊ちゃんさ、ああいう女趣味?」
「いや、悪くはねェけど、年下はどうかなぁ~。しかもアイツ、絶対性格悪いぞ?」
「いや、ホラ結構股緩そうだし。純情派公安委員な剱菊ちゃんにゃぁ似合わないと思うなぁ~。」
■紫陽花 剱菊 >
「……東山殿。」
刃の如き鋭い黒が、東山を射抜く。
紫陽花 剱菊は、静かで穏やかな本質の男だ。
だが、如何なる理由で在れ、偏見で在れ
"彼女への侮辱は許しがたかった"。
例え、目上の人間であろうと、関係無い。
「……お戯れは、程々に。今回、私の"処遇"について罷り越した次第……。」
東山を諫め、早急に本題を要求する。
剱菊が件の渦中に飛び込み、事実、『日ノ岡あかねの連行』に成功した人物となっている。
だが、あれは彼女の意志だ。己ではない。
それに、件について言及されるべきは、"紫陽花 剱菊"が明確に公安組織に対して裏切りを働いた事である。
『トゥルーバイツ』捜査の最中、彼は明確に同じ公安組織の人物を攻撃した。
其れこそ、罰せられるべき罪である。
勿論、日ノ岡あかねに対する利敵行為を含めて全て、今此の場で判決が下されるはずだ。
■東山 正治 >
水底の黒を、胡乱な瞳が見返す。
視線同士の鍔迫り合い。
東山はその程度で怯むような男でもない。
伊達に長く、この椅子に座り続けているわけじゃない。
…が、やがて面倒くさそうに溜息を吐いて、背もたれに持たれる。
此の安っぽい椅子の感触が絶妙に安らげない。
「何キレてんだよ、手間かかってんのは俺だぜ?
どっちがキレてェんだか……はいはい、わかった。」
「じゃぁ、今からお前の処遇読み上げてやるからなー。
ちゃんと判子持ってきた?……あ、もうねェか、判子文化。」
「時代は進んだよなー、俺まだギリギリあったんだよね。それじゃぁ……。」
東山は手元の書類を手に取った。
■東山 正治 > 「えー……『拝啓、紫陽花 剱菊殿』……あー、面倒クセェな。お前もどうせ要点だけでいいだろ?」
「お前なんざとの会話なんて、1秒でも長くしたくねェの。」
やだやだ、と軽く手を振った。
「いいか?よく聞け。」
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
■東山 正治 > 今の、ツッコミどころなんだけどなぁ。まぁいいか。
東山は胸中で独り言ち、淡々と言葉を紡ぐ。
『此度の騒動の貴殿の"活躍"を此処に称える。今後、より一層の活躍を期待せし』
『違反組織壊滅の"立役者"としての功績を考慮し、三日程の活動停止期間を設けるものとする。』
「……まぁ、要するに"長期任務お疲れ"ってことで、しばらく休んどけよ。」
はいはい、と面倒くさそうに手を振った。
■東山 正治 > 「うん、それだけ。」
■紫陽花 剱菊 > 「……たった、其れだけ、と?」
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
思わず、重なった声に顔を顰めた。
■東山 正治 >
「そう言うだろうと思ったよな、お前。"真面目"だもん。」
「お前に後からウダウダ言われるのが面倒だから、一から説明してやるよ。『異邦人』」
東山は、僅かにデスクから身を乗り出す。
■東山 正治 > 「今回の一件、島全体から見ても結果として全部ただの『自殺処理』か『行方不明処理』が丸いんだよ。」
「言っとくけど、面倒だから『そうしよう』っていうんじゃねェ。お前は知らないだろうけどな。」
「『異物<おまえらみたいな>』のが『門<あっちがわ>』側からウジャウジャやってきて、俺等の世界は大混乱。そりゃもう、地球が滅ぶんじゃないかってやべー位ゴチャゴチャした……らしいぜ?色々情報もゴチャゴチャしてんだよ。」
「……まぁ、そんな時に計画されたのが此の『常世学園』だ。」
「現に、計画成立から学園設立で大分諸々の調査が進んでな、世界はようやく安定期入ったってワケよ。」
「わかるか?要するにだ。大袈裟な言い方すりゃぁ、此の島は外からみりゃ『象徴』なんだよ。」
■東山 正治 >
「そんな『象徴』が、たかが『小娘一人の癇癪』で揺らぐと思ったか?んなわけねーだろ。天下の生徒会様も動かなかった。」
「つまり、だ。"俺等で上手くやれ"って言われてンの。わかる?」
「今回の一件、風紀の連中は大よそ『日和見』決め込みやがったからなァ。おまけに、そこでお前が手柄立てたんだ。おかげで、コッチは"仕事"が山盛りだ。」
■東山 正治 > 「俺達は風紀と双璧を成すこの島の『法律』みてェなモンなんだよ、剱菊ちゃんよォ……。」
徐に煙草を咥えて、再び背もたれに思いきり持たれた。
「おまけに俺等は、組織解散権なんて便利なモンまで持ってるんだ。今回の騒動はな。」
■東山 正治 > 「『何時ものように、島のエラーイ!委員会様が、島の平和を護る為に悪い奴らをこらしめましたとさ。めでたし、めでたし』」
「……で、いいのよ。そう、『なーんもかわんねェ』の。」
「『何処にでもあるような一件』」
「お前、ウチにきて日も浅いから知らねェかもしれねェけどなァ。こーんなの、良くある話だぜ?」
「ほら、同じ時期になんか立ってたじゃん。『黄泉の穴』の方だっけ?」
「そいや、アッチは風紀の連中の管轄下だったなァ。ま、そう言う事。」
■東山 正治 > 「『それで済ませられんなら、それでいいんだよ』」
安物のライターで火をつけ、静かに煙を吐きだした。
■紫陽花 剱菊 >
「……お言葉ですが、其れでは……」
■東山 正治 > ガシャァンッ!!轟音を上げて、東山のデスクが宙を舞う。
天井にぶつかり、双方ひしゃげて蛍光灯の破片が他の職員の悲鳴に乱反射した。
■東山 正治 > 「『お言葉ですが』……なんだ?」
■東山 正治 > 「『死んでいったものが報われない』とでも言うつもりか?
なめんなよ、『異邦人』」
「『夢破れたりだから可哀想』だとでも思ってンのか?
『トゥルーバイツ』も他の連中も、俺等にとっちゃ"インク"なんだよ。」
「俺達は『公安委員会』
世間様の影で監視し、集め、取り締まる。
法の番人様なんだよ。」
「テメェの意見がどうこうなんざ知った事じゃねェ。
この『情報<インク>』はもうそういう風に『書き終わって』んだ。……今更どうこう、ウルセェんだよ。」
■東山 正治 > 「──────それともよォ、『異邦人』」
■東山 正治 >
「いっぺん、テメェも"しょっ引かれて"みるか?ア?
『生活委員会からのお墨付き』だか何だかしらねェけど
いざ入れて見りゃ、上司の俺にガタガタ文句抜かしやがって。」
「テメェはよくよく立場ってものを考えろ、『異邦人』
この"辺"なら、お前を手厚く保護する『校則<ルール>』があんだよ。」
「……テメェ、自分が『不法入島者』だって忘れてねェか?
お前が保護されて、此処にいるのは『偶然』『運が良かった』」
■東山 正治 >
「……救われねェ奴なんざゴマンといんだよ。
『トゥルーバイツ』だけじゃねェ。」
「『お前』も『その他大勢』も。」
「一歩間違えりゃ、奈落の底に真っ逆さまだ。」
「この島じゃな、外よりもそれが『簡単』に出来んだよ。」
「テメェもいっぺん、紐無しバンジーきめてみっか?俺は構わないぜ。」
■東山 正治 > 「……"クゥティシス・トトル・ラクィア"……だっけか?」
「こんな使えねェ『狗』連れてきた『駄狼』女も連帯責任だな。」
■紫陽花 剱菊 > 「…!彼女は……」
■東山 正治 > 「『関係ある』」
■紫陽花 剱菊 > 「……!」
■東山 正治 > 「……いいか、よく考えろ。『異邦人』」
「『お前は今、何に生かされて、誰のおかげでこの地球<せかい>に入れるのか』」
「……この三日間……いや、三日と言わず暫くはそれを考える休暇期間だ。」
■東山 正治 > 「『この地球<せかい>に本来異邦人<おまえら>を保護する法律はねェ』」
■東山 正治 > 「お前は本当に、こんなクソ溜めみてェな場所でも『運』がよかっただけだ。」
「……ともかく、だ。」
■東山 正治 > 「『トゥルーバイツ壊滅の立役者として、英雄に暫しの休息を』」
「『何時ものように、生徒会の手を煩わせる事なく終わった。』」
「『安定期の御旗は、今も尚揺るがず』」
■東山 正治 > 「……わかったな?」
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
■紫陽花 剱菊 > 「……わかり、ました……。」
ただ、俯くしか出来なかった。
■東山 正治 > 「それでいい。やっと『尻尾の振り方』位覚えてきたじゃねェか。」
「……なァ、剱菊ちゃんよォ。俺達はなァ。風紀の連中と違って、『情報』で飯食ってんだよ。」
「『情報』っつーのはなァ、お前がいた世界じゃしらねェけど、もう此の世界じゃ『必需品』なワケ。」
■東山 正治 > 「外から見りゃ、こんな島『ちっせェ箱庭』だぜ?」
「……せめて、お前のだーいすきな民草位。『良い夢<グッドニュース>』聞かせてやる位が丁度いいんだよ。」
「俺等の仕事ってのは、"人知れず手を汚して、望まない栄光を得てなりたってんだ"。」
「……わかったら、とっとと行けよ。以上だから。」
シッシッ。
■東山 正治 > 「それにどうせ、此の島じゃ『よくある事』で終わりだ。七十五日もすりゃ、廃れるモンさ。」
「……まぁ、せめて、『本当の事覚えてるやつ』がいても、俺は良いと思うけどね。」
静かに、煙を吐きだした。
白い煙が、割れた蛍光灯に吸い込まれていく。
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
■紫陽花 剱菊 > 「……失礼します……。」
丁寧に頭を下げ、剱菊は踵を返した。
■東山 正治 > 「おう、長期休暇楽しんで来いよ?アー……俺も休みたかったなァ……。」
■天音 > 「……東山さん、いいんですか?あれで。」
事務作業中の事務員が、おずおずと尋ねた。
■東山 正治 > 「んー?いいよ、俺アイツ嫌いだし。ほんとに、アイツさぁー。いくら何でも、いきなり同僚斬ったりする?」
「ほーんと、"根回し"疲れたよ。此れでボウズで帰ってきたら、マジでしょっ引いてる所だった。」
「……ま、それにさぁ、天音ちゃん。」
■東山 正治 > 「誰かが嫌われ者になった方が、立ち直る時楽だろ?『あんにゃろ!』って感じで。」
「それに、俺は『嘘』吐いちゃいねぇよ。」
「どーせ、俺等は。死ぬまで生徒会<かいぬし>に尻尾ふってりゃいいわけだし」
■東山 正治 > 「それが嫌なら、テロでも『真理』でも起こしてみるしかねェさ。」
■天音 > 「成る程。所で、"この有様"、どうします?」
■東山 正治 > 「アー……。」
■東山 正治 > 「剱菊ちゃんの給料から引いといて。」
■天音 > 「普通に東山さんのから引きますけど?」
■東山 正治 > 「マァジか。いやー、やるんじゃなかったかなー。
俺、コントローラー投げるタイプだったしなぁー……。」
「まぁいいか。」
ゆっくりと、安物の椅子から立ち上がる。
■東山 正治 > 「じゃ、俺ちょっと"出るわ"。」
■天音 > 「サボりですか?」
■東山 正治 > 「違ぇーよ、"調書"取りに行くんだよ。」
「ったく、なんで風紀には地下牢あって俺等にはねーのかなァ。」
「風紀本部まで出向くのダルいんだけどなァ……。」
■天音 > 「調書って、『日ノ岡 あかね』さんの?」
■東山 正治 > 「も、とるかなァー。わかンね。」
「何せ、"数多い"からさ。なーんか、風紀の子とか、色々頑張ったらしいじゃん?」
「なんか一人位、違反活動部に拾われたらしいけどまぁ、それはそれ。」
■東山 正治 > 「せめて、『生きてる』連中の『生命<インク>』位はとっといてやらねェとな。」
「……面倒クセェけど……。」
■東山 正治 > 「……そう言えば、此の前通った時聞こえたなァ。『綺麗な歌声』」
■東山 正治 > 「…………。」
■東山 正治 > 「……どーせなら」
■東山 正治 > 「『歌の様に優しい箱庭なら、誰も苦しまなかったのかもな』」
■**** >
東山のぼやきが、煙と共に消えていった。
時刻はすでに夕暮れ時、茜色の空が眩しい頃合い。
──────もしかしたら、今日も何処かで、音の無い歌声が響いているのかも知れない。
ご案内:「委員会街/公安委員会本部」から紫陽花 剱菊さんが去りました。