2020/08/02 のログ
ご案内:「留置所」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 > ここは風紀委員会留置所。いわゆるブタ箱ってやつ。
ひひ、すまないね。また、なんだ。
ってわけで、此処は悪の巣窟。たまに善人なんかもいるかも知れない。
しらんけど。
ま、そんなこんなでおいでませ留置所ってね。
ここは天国……じゃなくて監獄だけどな。

園刃 華霧 >  
さてはて、此処に入ってからどれくらい経ったのか。
長いようで短いようで。
流石に壁に傷つけて日数を数える、とかやろうとしたら怒られたからしてないしなあ。

いや、真面目に日にち感覚狂うんだけど。

「ン―……」

ごろり、と寝っ転がる。
今日も特になにもない。

愛しの取調官殿は今日は来ないし。
クソ。

「いつ出らレるか知らんけど……やルことリスト、でも考えルかネぇ」

ぽつり、とつぶやいた。

園刃 華霧 >  
「ン―……アレか。りおちーからメモ取り上げナイとナ。
 アイツあれで根性曲がってルから何すルかわかラん……
 ノロケ話も聞けりゃ聞きタいが。」

今、外の世界で起きていることはロクにしらない。故に、そんなことも考えてしまう。

「そーいヤ、葉山クンとかどーしテっかネぇ。アタシの居ない間に捕まってタりせんだろーカ。
 ま、様子見でもしてヤっかぁ」

思い返してみれば、いろいろな人物に会ってきた思い出だけはある。
まあ、いつもの"ドブさらい"の一環だったりもしたわけだけれど……

「ってコト、はー……ン―、其の辺思い出して見てもイーかぁ……」

これからのために必要なこと、なのだろうとちょっと思ったりする。

ご案内:「留置所」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > 囚人がごろごろとしているところに。
野太い声がかかる。
曰く、面会らしい。面会希望者は光奈。
風紀委員会の前で世話を焼いてもらった相手が捕まっていると伝手に聞き。
慌てて、留置所を訪れたのだった。

それを受けるも受けないも、囚人の自由ではある。
面会時間も短いため、それほど込み入った話も難しいだろう。
けれど、それでも光奈は会いたいと思っていて。


「………。………」

ただ、じ、と…面会室で、相手を待っている。

園刃 華霧 >  
わー、まっさか風紀の面子じゃなくて光にゃんが来るとは思わなかった。
ちょっとドキドキしちゃうね! などとのんびり思いながら……

……にしても、どうして知ったんだろう。
一応身内のやらかし案件、とかだし秘密なのでは……
常世広報? いや、そんなもんに一々列挙しないだろう。
……あれか?アイツか?

いっぱい妄想しつつ、今回は勝手の違う面会室まで連れ出されていく。

いつもの身だしなみ……というか、身だしなみとか整えていない身だしなみ。
ちょっと違うのは首元にチョーカーがついていること。

「ヤー、光にゃん。どしタのさ、こんナとこまデさ。」

へらり、とやってきた女は笑った。

修世 光奈 > 光奈も、詳しいところは聞いていない。
友人…と光奈は思っている相手から、ぽろ、と聞いたのだ。
勿論、誰にも言っていないし…ワルガキ、とはいえ風紀委員の紹介もあって留置所に入ることができた。

ここに来た理由に、深いものはない。
ただ、どうしたのか聞いてみたいだけだ。

「良かったー、キリちゃん。…変わって無さそうで…」

一先ず、落ち込んでいるということは無さそう。
一度会っただけだが、とても親しみやすかった相手が牢に入っているのは何とも奇妙な気持ちだ。

「えっとー……その、どうしたのかなって、心配になって。
…私に良くしてくれたキリちゃんがなんで捕まったのか…それが気になったの」

勿論、自分が…悪い言い方をすれば騙されていた可能性もあるにはあるが。
例えそうだとしても…なにがあったのかぐらいは知りたいと。

園刃 華霧 >  
「あはは、マジか! マジ、たったソんだケの理由でこンなトコまで?」

一連の事件。
あかねちんは派手にビラをばら撒いたりはしたけれど、
あんなもの普通の学生にとってはただのちょっとオカシなヤツの
変な宣伝、だけで終わっているはずだ。

つまり、光にゃんはまったく欠片も話を知らない、はず。
それなのに、わざわざこんなところまでやってきたわけだ。

しかも、アタシが実は大悪人だった、なんて可能性もあったのに。


「ひひっ、それサ。
 実はアタシが大悪党だった、なンてことダッてありえるンだけどサ。
 そンでも聞きたいノ?」

だから、思わず聞いてしまう。
ああ、だからそういうところだアタシ

修世 光奈 > 「マジですよー。……、キッドにちょっと感謝です。知らないままは、嫌ですし」

何気に呼び名が変わっている…のは置いておいて欲しいが。
今のところ『日常』を生きる光奈にとっては。
あらゆる物騒なニュースは気を付けよう、程度のものだ。
だから、何があったかは全く知らない。それでも…

「悪人だったとしたら、それは…ショックですけど。
…でも、……そうじゃないって、信じたい…かなぁ。だから、聞きたい…です」

いつでも光奈は直球勝負だ。
回りくどいことは、ほとんどしない。
だから、留置所という場所であっても、素直に。
えへへと笑って。相手が囚人であるのは変えられないが…やむを得ない事情があったのだと、信じたい。

園刃 華霧 >  
「ン?んー…? キッド、ォ……?」

あれ、前ってなんか「さん」ついてたよね?
え、ちょっと本気でなんか間狭くなったりした?

とりあえずみなまでつっこまないけれど……
それはちょっとキッドのやつをシバカなければいけない気がしたぞ、アタシ

あー……生きててよかったな?

「ン、そッカ。んじゃ、マ。
 知ラなくていいヨうなオハナシ、しヨっか」

何処まで話していいやら、とは思うけれどまあ風紀云々の話は本筋じゃないし其の辺引っこ抜いて話せばいいだろう。
どうせ監視が付いてるから余計なこと喋ろうとしたら即刻ストップされるだろう。

「光にゃんはサ。
 どウしても叶えタい『願い』って、あル?」

だから、そんな問いかけから始めた。

修世 光奈 > 「あ」

…しまった、と口をふさぐも時すでに遅し。
何やら、世話を焼いてくれた"後輩"に飛び火しそうだがそれはそれ。

「……うん。……願い?」

唐突な質問。
ただ、何か話に関係があることなのだろうと真剣に考える。
考える時点で…はっきりとしたものが無いのはわかりきっているのだが。

「…どうしても、叶えたいって言うのは…今は無い…かな?
探し物は…私が探したいもの、だし…。キリちゃんが無実なら解放してあげたい…ぐらい?」

どうしても、という言葉が付かなければ…
欲しいものはたくさんあるし、やりたいこともあるが。
叶えたい願いは…今光奈には無かった。

園刃 華霧 > 解答を聞く。
うん、そうだよな。光にゃんはそういう子だ。
だからこそ、こんなトコまでわざわざ来ちゃう。

猫だって探しちまうわけだ。
 
「ん、そッカ。そりゃイイコトだ。
 じゃあサ、光にゃん。ココからは、本当に……
 知らナクてもよかッタ話になるけど、いいカい?
 アタシのは、まあ馬鹿らしいバカ話だけどさ」

へらへらとしたいつもの笑いとは違う。
どこか、優しくも見える不思議な笑顔。
コレが次の問

修世 光奈 > 見ようによっては、悪そうにも見える相手の顔が優し気に笑う。
それだけで、本当に…聞かなくてもいい事だとわかる。
けれど、それでは意味がない。だって――

「…その…。…良くしてくれたキリちゃんの話なら。
知らなくていい話なんて、無いと思う。バカな話でも、何だったら、今日あったこと…とか。
そんな小さな話でも…聞きたいと思い…ます」

こく、と頷いてその笑顔に応える。
風紀が止めてくるならそれは仕方ないが。
せめてそれまでは聞いていたいと。
僅かに身を乗り出して。
真剣な目を相手に向けよう。

園刃 華霧 >  
「おッケ。いいよ。
 えっとナ。あンま詳しクいうト怒られルから、ざっくり言うとネ。
 『きっとどんな願いも叶えてくれる』けれど、『成功率は1%』、おまけに失敗すれば『あの世行き』。
 そウいう、賭けに出た連中が居たノ」

静かに話す。
きっとあまりに荒唐無稽で、信じられないような話。
まあ嘘をついていると思われればそれまでだけれど、それはそれでいい。

ある意味、其の方が気は楽だし。

「それゾれが、そレぞレの理由で集まって。そンな挑戦のたメに必死になって行動しタわケ。
 本当に、色々な理由でネ。」

自分が聞いて回った理由。
それは本当に様々だった。

聞ききれなかった面子も……間違いなく、個人の切なる『願い』があったはずだ。


「ンで、まあ……結果、挑んだ面子は皆、失敗。
 それぞれの理由で挑まなカった連中は……
 まあお騒がせした罪で、このザマってワケ」

肩をすくめてみせる。

修世 光奈 > 「………、きっと?、1%…しかも、死ぬ…」

自分には想像もできない。
そんなリスクを負って叶えたい願いは光奈には無い。
けれど相手が嘘をつく理由もないため…そのリスクに挑んだ人たちはいた、のだ。

それに協力したとあれば…人殺しに加担した、と取られても仕方がないと判断される可能性がある。
だから、捕らえられているのかと、光奈は理解し。

「…全員…。……そ、っか。………………」

その無謀に挑んだのは…何人かも、わからない。
けれど、『皆』、『連中』…そんな言葉から…それなりに数は居たのだろう。
そんな人たちが、全員となると。
…平凡な光奈には、飲み込むのに時間がかかる。
目の前の相手が、それに曲りなりにも参加していたことをしっかりとかみ砕き。

「……それ、は。…仕方、無いのかな。捕まっちゃうのは。あはは……。
…ありがとう、ございます。話してくれて。
…キリちゃんが、そうしたかった…んですよね。例え、すごく無謀だったとしても」

少し震える声で。けれど小さく笑みを浮かべながら
人が死ぬ話など、創作の中だけにしか感じたことはない。
けれど…静かに話されたその内容は鉛の塊の様に光奈の精神に落ちる。
それでも…相手に問いかけて。

園刃 華霧 >  
「ま、理由は……すッゴく下らナいし……『願い』もつッまンないモンだったけど、ネ。
 少なくとも、あの時のアタシは、本気の本気だったヨ。
 『全部』が欲しい、ダってサ?」

けらけらと笑う。
前提からして間違っていたのだけれど。
それでもその時の本気は確かだった。その気持ちそのものを嘘にはしたくない。
例え、『馬鹿』が『馬鹿』だから『馬鹿』をしてしまっただけ、だったとしても。

 
「……やっパ、重かっタ?」

少しだけ申し訳無さそうな顔。
軽い謝罪と雑な謝罪なら腐るほどしてきたけれど、
こういう時にどんな顔をしたらいいのかはまだよくわからない。

それでも、平和な日常を生きてるような相手にいきなり投げかけるような話でも無かったな、と
後悔だけはしっかりと感じる。

修世 光奈 > つまらない願いだと、バカな願いだと相手が言っても。
光奈には、ある意味信じられなかった。
だって、命を賭けたのだから。
たった1つしかない、自分の人生の過去から未来全てを賭けて挑んだのだから。
それを…つまらない、バカな願いだとは思えなかった。

「重い……、うん。聞いたの、ちょっと後悔してるかも…」

ずん、と表情が沈む。
けれど…それで終わる光奈ではない。

「…あーもう…。………キリちゃん。一個約束!
…ここから出られたら、学生通りのDXパフェ!奢って!」

くしゃ、と少し髪に触れてから顔を上げ。
唐突で、意味不明な提案を。
話してとせがんだのは自分なのに。後悔しているような相手の表情は、耐えられない。

「…聞いておいてなんだけど、やっぱり実感湧かない!
だから、もっともっと聞きたい!何をしてたのか、とか…風紀委員のことももっとキリちゃんから聞きたい。
……何か悪い事をしたからって、捕まってるからって、その相手との関係を…簡単にやめたくないって思う…から。
重い話をせがんだのは私だし、ね。だから、パフェだけ!それでいい!」

確かに想定外に重い話だった。
けれどそれで…光奈が想う相手の像が壊れたわけではないと。
更に、もっと関わりたいと告げつつ。
…なんとか、笑顔を作ろう。

園刃 華霧 >  
「…………」

後悔に歪んだ顔が、きょとん、とした顔になる。
しばし、考える。

アタシに、奢れ、と
そう、目の前の少女は言っている。

「ひ……」

思わず、声が漏れる。

「ひひ、ひひひひ、はははは、あっはっはっはっははっっっっっ!!!」

げらげらと、ちょっと乙女にあるまじき馬鹿笑い。
のけぞって倒れそうである。

「ひひっ、まっさカ、アタシに、ひひっ…奢れ、と……ひひひ……
 あー、もー……さいっっっっっっっこう、ダわ」

思えば、自分の愛称なんぞをつけたのもこの少女が初めて。
そして、アタシが奢らせる、のではなくアタシに奢らせる、なんていうのも初めて。

ああ、本当……生きていてよかった。
両手を上げて、降参のポーズを取る。

「おっけー、分かっタ。アタシの負け。奢るヨ、しょーがナイ。
 けど、一個だケ。お喋りは、今の調子デお願いしたイね?」

気づいているだろうか、彼女は。

「……後、アレ。今ミたイにおっもい話、聞くことニなるかモよ?」

……静かに笑う。

修世 光奈 > 「な、何笑って…。も―――…!」

せっかく、気持ちを切り替えたのに。
乙女にあるまじき声で大笑いされては、どう反応していいかわからない。
思わず立ち上がって風紀委員に軽く注意され、また席について。
そろそろ、面会時間も終わりに近いか。

ひとしきり、相手が笑った後の言葉に…また胸を貫かれるも。

「…うん。いいよ。…いや、えと、ほんとは……しんどいけど。
でも、聞きたい。もっと詳しく。重くても、いいよ」

こく、と頷く。
また言葉が砕け…友人にするような優しい口調へと変わっていく。
静かな笑いを受け止めて。

「だから、えっと…そういうのがあるかわからないけど模範囚?になって早く出てきてよ、キリちゃん
パフェ、楽しみにしてるから」

努めて明るい表情をし。
その笑いに対抗しよう。

園刃 華霧 >  
笑いを収め。
静かな笑みだけを浮かべる。

「上々。
 悪いネ。アタシ、ロクデナシだからサ。
 アタシを掘るト、ロクでもナイ話が出てキちまウのサ」

極力、其の話を避けてきたのは何故だろうか。
面倒くさいから?
風紀の仲間なら、資料さえ見ればすぐわかるから?
一々いうまでもなかったから?

どれも違ったのかもしれない。

「だから、サ。光にゃん。
 それデも……『トモダチ』シてくれル?」

修世 光奈 > 「…話すなら、聞くよ。キリちゃんが話したいって思った時に、話してくれれば、それでいいから」

風紀委員が、そろそろだ、と。
空気を読んでか無理矢理に追い出すことはしないが…そう告げて。
光奈もゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫。私結構、根性はあるんだから。
……『友達』の話は…いっぱい聞けるよ!」

にこり、と屈託なく笑う。
友達という言葉を肯定し。
更に、既に友達だとも言外に告げていこう。
何もなければそのまま、緩く手を振って…面会は終わりとなるだろうか。

園刃 華霧 >  
「……ありがトね」
 

園刃 華霧 >  
それだけ答え、手をひらひらさせて見送る。
その顔は、ただ、笑っていた。

ご案内:「留置所」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「留置所」から園刃 華霧さんが去りました。
ご案内:「シミタードーナツ常世店」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「シミタードーナツ常世店」に追影切人さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
とあるドーナツ店、そのテーブル席に座る少女と、少年

「顔合わせるのはお久しぶり、かな?」

風紀委員として少年の監視役を務める少女
…といっても少女は彼に対し一定の信頼感を持っており、生活の細部監視までは行っていない
外出のチェック、帰宅のチェック…大きな問題を起こさなければその程度に留まっている

「何かあれから変わったこととかあったら、教えてね」

既に見慣れただろうにこやかな笑みを向けながら、そう問いかける
対面に座る二人の間には大きなプレートの上に色とりどりのドーナツが並ぶ

この店をチョイスしたのは、彼が差し入れたドーナツを妙に気に入ってくれたから…という理由でしかないが、喜んでもらえているのかどうか

追影切人 > 本日、己の個別監視役の先輩少女からのお呼び出し、というかお誘い?により指定された場所は――ドーナツのお店。

あの時のお見舞い品で貰ったドーナツを食べて以来、初めて食べた甘い物だったせいか、すっかり好物になってしまった。
彼女の対面に座りつつ、風紀の赤い制服姿という珍しい格好。ついでに言えば左目の義眼を隠している眼帯も本日は無い。
左右色違いのオッドアイを晒しながら、目の前に並んだ色とりどりのドーナツを真顔で見つめている。
――どれから平らげるべきか。まぁ、取りあえず定番のからでいいか。どれが定番か知らないけど。
と、プレーンぽいドーナツを無造作に手に取りつつも、凛霞の言葉にそちらに視線を戻して。

「あーー特に俺の方はねぇな。この前のトゥルー何とか?の一件も俺”達”に協力要請とかは来なかったしよ?」

と、肩を竦める。複数形なのは自分以外にも公表されている第一級の監視対象が”二人”居る為だ。
ただ、変わった事は一つある。――黙っているべきなのだろう。自分の立場が余計に微妙になる。

だが――

「……いや、一つあるぜ。”黒触姫”とやりあった傷から俺の体内に入り込んだ怪異の因子?みてーなのが活性化してきてる。
――手っ取り早く言やぁ、俺は徐々に怪異になりかけてる」

と、割とヘビーな事を隠さずに淡々と口にする。実際、もう固有の特殊能力にも目覚めている始末だ。
未だに人間の要素がかなり強いが、既に一部は怪異としての特性を備えつつあるのは否定できない。

伊都波 凛霞 >  
「そっか。あ、好きなの食べていいからねー」

奢りー、と微笑む
呼び出したのだからこれくらいは経費のうちだ。否、経費にしちゃおう

「トゥルーバイツの一件は風紀委員自体がそこまで動いたわけでもなかったからね…」

あの時動いていたのはあくまで私情に走った人間のみ
風紀委員としての権限を行使しまくっていれば槍玉にあげられただろうけど、ほとんどは個人の責任で収まる範囲内だ
──自分はさすがに警告を受けたけれど

「ん…因子の話自体はお医者さんから聞いてる。
 活性化…っていうのは、あの…アーヴァリティちゃんみたいになっていく…ってこと?」

少しずつ人から離れていく、それをどう受け止めているのか
重く開かれた口からは、少年の相応の精神の揺らぎを感じる

追影切人 > 「おぅ、遠慮はする気はねーしな!」

と、そこは遠慮しろよ!という感じだがお構いなしに食べまくる方針だ。
ただでドーナツが沢山食えるなら遠慮なく食べさせて貰おう。経費?そんなのは知らない。

「そうそうトゥルーバイツだったか。まぁ、俺にゃ関係ねー話だけどな」

要請が無かったとはいえ、仮にあってもどうせロクな役回りにはならなかっただろう。
少なくとも、追影切人の役目は汚れ仕事――後始末に近いものだからだ。
むしろ、この男が出張る事は相応に事態が深刻化しているようなものでもあり。

「んや、あくまでアイツの因子と俺の遺伝子?が偶然適合しただけっつーか。んで、適合したせいか俺に合わせて変質してるっつーの?まぁ、要するに新種の怪異になりそうって話しらしーぜ」

その適合率は99・8%…と、いう検査した医療関係者も二度見したらしい適合率だった。
とはいえ、男に適合云々言われても正直ピンとこない。小難しいのは苦手だからだ。
一つ目のドーナツを食べ終えれば、今度はポンデリング?なドーナツに手を伸ばして頬張りつつ。

「んぐ……まぁ、怪異になったらなったで隔離か処分対象になるだけだろーがな。
どのみち、元から化物扱いされてたんだし、本物の怪物になった所で大して変わんねーよ。
…ま、そっちには苦労掛けるかもしれねーけどな」

彼女の視線や様子に気付いたのか、食べながら肩を竦める。
別に無理をしている訳ではない。ただ、化物になろうがなるまいが、扱いは変わらない。

――元から人ではなく”刃”として生まれ育った男が”怪異”に成り果てようが…”何も変わらない”。

伊都波 凛霞 >  
「(そんなに食べても大丈夫なのは羨ましいなー)」

自分もたくさん食べたいー、と思いつつ我慢。女の子はこういう時に葛藤が生まれる…

「新種の怪異…か……」

ドーナツを一口ぱくり

「うーん……どこまで報告するか悩むところ。
 そうなる確証があるわけでもないんだよね?」

今の話をそのまま報告に挙げれば、確実に監視は厳しくなるだろう
過激派が聞きつければ別の提案もされる可能性は多いにある

「追影クンがこの先、風紀委員会にとってどういう存在になるか次第…かな」

怪異になって、自我も何もかもなくなってしまう…なんてことにならなければ、きっと何も変わらない
けれどそうなる保証も、そうならない保証もおそらく提示できないのではないだろうか

「止める手段…、なんかは?」

本人を見る限り、あまりそれに抵抗を感じている様子は感じられないが──

追影切人 > 実際、食べても特に太らない体質だ。目の前の先輩少女の葛藤を他所に次々にドーナツを頬張っていく。
一応、ちゃんと食べて飲み込んでから喋るようにはしている辺り、変な所で行儀は良い。

「確証は勿論ねーな。あまり前例がある事でもねーだろうしよ?
少なくとも、怪異の因子が適合して”まだ人間を保ってる”例は希少とか聞いたぜ?
とはいえ、楽観視も出来ないだろうよ…自分の体だから何となく分かるんだわ。
少なくとも、何もしなけりゃ持って1年くらいじゃねーかなぁ。進行が早いか遅いかは判断基準がねーから何とも、だが」

と、バカなりに男は自己分析も交えながら凛霞にそう言葉を返す。
それが、何処か他人事というか突き放した見方なのは――単純な理由だ。割り切っているだけ。
――既に怪異になり掛けているのだから、じたばたした所で解決する問題でもないのだ。

「まぁ――そっちの報告に任せるけどよ?暫くは風紀委員会にとっても今まで通りじゃねーか?
ただ、露骨に怪異化が進行して余計な被害とか出すようなら…ま、処分か隔離は免れねーだろうよ」

自我については何ともいえない。今の所は完全に自我はあるし、思考も怪異の影響を受けてはいない。
――元々、アレな性格だから分かり辛いというのもあるのだけれど。

「止める手段ねぇ?――俺は怪異に詳しい訳でもねーしな。特に新種の怪異っつーとサンプルがそもそも少ないだろ。
それに、俺の立場じゃあれこれ調べ回ると”上”が色々と睨み効かせてきそうなんだよな」

むしろ、個別の監視役が彼女であるのがせめてもの幸運だろう。追影としてもそこは素直に感謝している。

「――ま、もしどうしようもなくて、俺がいよいよヤバくなったら…そん時は”コレ”頼むぜ」

と、ドーナツを右手に持ちながら、左手で己の首を掻っ切るジェスチャー。冗談のようだが本気だ。
死に対する恐れや恐怖も無いし、怪異にじわじわ成り果てる不安や絶望も特に無い。

――あくまで3年間の学生生活で表面上だけ人間らしくなっただけ。
彼の内面は未だに刃のままであり、人であるという自覚というものが致命的に欠けている。

伊都波 凛霞 >  
「…まぁ、確かに前例は私はそこまで聞いたことないかな」

自分の体のことだからなんとなくわかる、ということにややその目を細める
楽観視ができない、と前置きした上でその言葉は、胸にズンと来るものがあった

少年の言う通り、前例の少なさも含めて対応対処は難しいだろう
彼が代わりの効く存在であるならば、"上"の考えることは容易に想像できる

「簡単に言ってくれるんだからー…」

監視役…つまりはそういうことでもある
それを十分に理解した少年の言葉と、それを示す動作…

「…ね。
 怪異になっちゃうこと、…処分されちゃうかもしれないこと。
 ……──、怖く、ないの?」

追影切人 > 「つーか、凛霞はアレか?怪異方面とか詳しいのかよ?何かこう、話してる感じから慣れてる印象受けるんだがよ?」

ふと、首を傾げながらそんな疑問を。正直、この先輩について男が知っている事は殆ど無いに等しい。
親睦を深めるにもお互いの立場が立場だし、人との距離の縮め方が追影切人には”分からない”。
ただ、こうやって疑問を口にして、意見を交えるだけでも男としてはかなり上等な部類だ。

「そりゃ、凛霞には悪ぃとは流石に俺でも思うけどよ?野放しにも出来んだろうし、手元にも危なくて置けねーなら…。
まぁ、普通にソレしかねーだろ実際。どのみち、第一級ってのは色々スレスレのバカばっかだしよ?」

ハッ、と笑うがそれは自嘲でも誰かを嗤うでもなく、何処か諦観というか予想していた事がそのまま起きて「だろうな」と、いう納得に等しい。

「――俺にはいまいちわかんねーんだよなぁ。何かに恐怖するとか、そういう感情っつーの?

…最初に物心付いた時には手は血塗れで誰かを斬った後だった。
んで、それからも斬って、斬り続けて、そればっかりをひたすらやってきた。
恐怖なんて感じる暇もねーし、周りは敵しかいねー。嘆くのも悲しむのも怒るのも全部ただ斬る事に傾けた」

独り言のように、僅かに目を閉じてからドーナツを一息にパクリ。咀嚼してゆっくりと飲み込んでから再び口を開いて。

「――俺は刃だ。刃に人の心なんてわかんねーよ。…それでも…まぁ、凛霞には感謝してるぜ?
俺みたいなバカの監視役なんて好んで引き受けるもんでもねーしさ」

苦笑気味に。その笑みは人間らしいもので年相応で。けど、やっぱりまだその根幹は人間ではないのだ。

伊都波 凛霞 >  
「ん…うん。そうだね。生まれた時から青垣山に自宅があってそこに住んでるし…」

青垣山
魑魅魍魎、悪鬼、怪異、あやかしの類が跋扈する山である
そこに自宅があると平然と話す。まあ別に隠すことでもないし──

それから、恐怖といったものがわからないと話す彼をまじまじと見つめる
そう…彼は人らしく整えられた刃だった
怪異の因子が適合した…というのも、僅かながらそういった部分が影響しているのだろうか

「うーん…じゃあ例えば、キミが死んじゃうことで悲しむ人がいる、みたいなことを考えてみると、どうかな。
 もしかしたら私が泣いちゃったり、するかもしれないとか、そういうの
 わかんないかもだけど、想像してみたら何か、感じない?」

くるくると人差し指を立ててまわしながら、そんな例え話
彼にとって身近な存在…といえるかどうかはわからないが、自身の顛末が誰かを悲しませる…という感覚
それを彼は、想像することができるだろうか

ドーナツと共に頼んでおいたコーヒーを口に運んで、彼の感謝してるという言葉に、照れくさそうに笑う

追影切人 > 「あーー名前だけは聞いた事あったかも。俺も自由の身なら行ってみるんだがなぁ」

生憎と、怪異になり掛けている状態もあって、そちらへの単独での移動は禁じられている。
勝手に移動しても左目の金色の義眼に”追跡”されている以上、誤魔化しも効かない。

「――うーん、凛霞が泣く、ねぇ?俺が仮に死んだ場合―――」

考え込んでみる。特に何も感じない――いや、ほんの僅かに”ノイズ”が走る。それを無理矢理に言葉に表すなら…”不快”だろうか。

「――ちょいと”不快”ではあるな。俺が死んだ”程度”でいちいち泣いてんじゃねーよ、とは思うぞ。
例えば、凛霞は身近な家族とかダチとかもっと死んだら悲しいやつが多分いんだろ?
――涙はそういう奴のためにとっておくべきだろ。命は平等じゃねーんだ、俺みたいな刃に涙はもったいねーよ」

静かに、ゆっくりと吐息を零しながら口にする。上手く言いたいことは纏められただろうか?

それでも、まぁ感謝しているのは本当だ。そこはまがりなりにも、3年も学生生活をやっていたのだ…人の型に嵌められた刃にも若干の”何か”はある。

伊都波 凛霞 >  
「行っても何もないよ。ハイキングには向いてないし」

苦笑する
廃神社があるくらいではなかろうか、あと中腹に凛霞の自宅

さて、こちらの言葉に何やら考え込む様子を見せる少年

「不快でもいいよ。そういうの、他にもあったりしない?
 多分それだけで、自分をもう少し大事にしなきゃと思えるタイミング、きっと出てくるから」

最も、それ以上に自分が刃でしかないという矜持も大きいのかもしれないけれど
それでもそう感じることが出来る、それを知れただけでお大きな収穫である

「──そっか。やっぱりそれじゃあ…風紀委員は辞めるってわけにはいかないなぁ、まだ…」

小さく息をついて、そう零した

追影切人 > 「あ?いや、怪異と魑魅魍魎?とかいんだろ。面白そうだろ何か」

と、悪ガキのように笑う。実際は好奇心というより、そういうのを”斬ってみたい”だけだが。
何だかんだ根幹はやっぱり刃なのだ――生まれてからずっとそう。早々変わるものではない。

「そうだな――まぁ、例えば俺の左目潰して敗北させたレイチェルとか…。
あと、アーヴァ…あー黒触姫のアイツな?その二人は俺の中だとなーんか、こう、特殊っつーか上手く言えねーけどそういう感じ。
―――あと、お前もだな、うん」

と、ドーナツを頬張りつつ凛霞を軽く指差して。特別な感情とか、特別な存在とか、そういうのではない。
ただ、”刃”の自分を何かしら変えてくれている――そういう連中だ。
だが、自分を大事に、と思えるような境地…いや、”当たり前の感情”にはまだまだ遠い。

元々、生まれた時からずっと刃であり続けた男が人の型に嵌められたのだ。
歪さは多く、監視対象の制約で刃が殺がれようと本質は全く変わらない。

追影切人は――何処まで行っても”刃”である。けれど、その刃を振るう矛先は”選べる”。
まだ、彼自身はそこまでの考えには至っていないのだが。

「――何だ、お前風紀辞めるつもりだったのかよ?
個人的には俺はお前が俺の監視役じゃないと何か嫌なんだけどよ?」

きょとん、とドーナツを食べる手を止めてそう口にする。
勿論、辞める気なのを止めるつもりはないが、彼女はまだ辞める訳にはいかないと口にした。
ならば――

「ま、続けるなら別にいーんだけどよ。そん時は俺も”利用”しろよな。斬る事くらいしかできねーが」

伊都波 凛霞 >  
面白そうだ、と論じる少年に男の子だなあ、なんて思ったりして、思わず口元が綻ぶ

少年の口から飛び出る、"特別"
その中に自分も含まれている、ということには素直に嬉しさを感じた

彼がこの先どのような研がれ方をしていくのか
また別の刃へと変わっていくのか──それはまだ、未知数だけど
こうやって言葉を交わし、不満も口に出来る彼は……少女には、人に思えた

「少しだけ悩んでた。辞めるかどうかね。
 でもやっぱりキミの監視を誰かに任せちゃうのはヤダなって思えたし、
 他にも色々…風紀を続ける理由はまだ一杯あったから」

コーヒーカップを置いて、改めて笑顔で向き直る

「クビにならない限りは続けようかなー。もちろん、追影くんも…あ、そうだ」

胸元で手をぽん、と打つ

「仕事でしか顔合わせないっていうの、私あんまりしっくりこないから…。友達になろう、追影くん」

もちろん公私混同はしないから、と笑いかけた

追影切人 > 結局の所、例え表面上だけだとしても。好奇心、誰かを特別に見る見方など。そういう人らしさは多少なりともあって。
本質が”刃”なのは絶対――けれど、その刃を覆う”鞘”は少しずつ出来つつある。

今はまだまだ、刃の側面が矢張り強すぎるし怪異になりかけている、という諸問題も多いのだけれど。
だが――何時か。その”刃”が。伊都波凛霞や他の誰かの困難を”切り開く”刃になる時が来る…そういう未来もあるのかもしれない。

「へぇ…まぁ、お前なんか交友関係広そうだしなぁ。話しててそんな感じがするし。
ま、そんだけ一杯理由とやらがあるなら続けるのがいいんじゃねーか?
――ああ、けどバカなりに一つアドバイス、って程でもねーけど」

そこで言葉を一度切ってから、また一つドーナツを頬張る。気が付いたらもう3分の2くらいは少年が食べていた。

「何でもかんでも背負い込み過ぎるんじゃねーぞ。お前、しっかりしてると思うけどそういう所がなーんか、俺から見ても危なっかしいつぅか」

とはいえ、彼女はそういう所も客観視できそうだから過度の心配はしていない。
してはいないが、それとこれとは別だ。言いたい事は素直に今言っておくべきだろう。

と、唐突な凛霞の提案に「は?」という顔で。丁度自分の分のコーヒーカップを手に取った所で動きが一瞬止まる。

「……いや、別に構わねーんだがよ。ダチねぇ?監視対象とダチってのもどうかと思うが。
――ま、いーか。俺でよけりゃかまわねーぞ。んじゃ、改めてダチとしてもよろしくって事で」

乾杯、とカップを掲げる真似をしてからコーヒーを一口。甘い物ばかりで甘ったるくなった口を苦味がほどよく掻き消してサッパリさせてくれる。

「んじゃ、ダチとしても俺に協力出来る事があれば遠慮なく言えよな。さっきも言ったように斬るくらいしか出来そうにねーが」

それに、些か打算的になるが、彼女が”承認許可”を取ってくれれば限定的だが自分の能力や魔術が解禁される。
おそらく武装も貸与されるだろうし、そうなればなんだかんだ溜まった鬱憤――斬る欲求を果たせるかもしれない。

伊都波 凛霞 >  
「それ、すごく色んな人から言われるんだよねぇ……そんなに背負い込むタイプに見えるー?」

うーん、と首を傾げる
そんなに危なっかしいかなあ、なんて

「監視対象とか風紀委員とか関係なくさ。
 監視が終わったからって全く関わりなくなるー、とか私、寂しく感じちゃうタイプだから」

いえーい、とこちらもカップを掲げて、笑顔

「ふふー、そういうのが必要になったら頼りにさせてもらうー。
 でもほら、普通に遊ぶことなんかも、きっと色々教えられるからさー」

こういうお店でお腹いっぱいスイーツを食べたりとか…とドーナツをまた一つ、手に

「よし、細かいお話は終わり!
 さー、まだまだドーナツあるしお腹いっぱい食べて帰ろうね」

友達増えた記念日だ、今日は自分もたくさん食べちゃおう
今夜のお風呂の後の体重計をやや危惧しつつ、楽しげに頬張る姿

友達が一人増えた
なんかだかそれだけで──今日はいい日だ
そんなドーナツ屋での、夏の一幕

追影切人 > 「背負い込むっつーか……何だろうな、俺バカだから上手く言葉に表現できねーけど、まぁそういう感じ」

周りから凄く言われてるって、それほぼ確定じゃねーか?と、思うが口にはしないでおく。

「寂しい、ねぇ?そこは正直俺にはよく分からんが。まぁいいんじゃねーの?」

分からないモノは分からない。今はそれでいいのだろう。刃が人になるには時間と経験が必要だ。
二人で乾杯の真似事をする。ちょいと店員さんから変な目で見られたが許せ。

「あーーまぁ、正直真っ当な学生らしいっつーの?そういうのよくわかんねーしな。
教えて貰えるなら素直にその言葉に乗っからせて貰うわ」

例え表面上でも見せ掛けでも、本質が刃でも――人に近付く事にきっと意味はある。
まぁ、このバカはそこまであれこれ深く考えている訳ではないのだけれど。

「お、おぅ腹一杯はいいんだがよ?凛霞、お前女子なんだから体…何でもねぇわ」

うん、この刃にも多少は空気を読む機能くらいはある。むしろ今は読まないとやばい気がした。
ともあれ。その後は堅苦しいあれこれは無しで。ドーナツとコーヒーと、そして雑談を楽しもう。

監視役と監視対象だけでなく、友人同士として――この日、刃に友が一人増えたのであった。

ご案内:「シミタードーナツ常世店」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「シミタードーナツ常世店」から追影切人さんが去りました。