2020/09/16 のログ
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 売店」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 水無月斬鬼丸は病院にいた。
先日、後頭部を強打したためだ。
個人的には大丈夫だとは思っていたのだが
その状況を作り出した少女たちはどうしてもというので…
少し渋々といったところだ。

正直、病院は苦手だ。

今日も待合で名前を呼ばれたし。
やめろ。人の名前を連呼するな。

診察の結果は、まぁ、異常なし。
結果的には少し恥かいた程度で済んだというところだ。
とはいえ、今日は病院も盛況なのか支払いの待ち時間がなかなかに長い。

「(なんかジュースかコーヒーでも買おうかな…)」

なんて軽い気持ちで売店に顔を出してみたり。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院 売店」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > 様々な副作用が出るかもしれない、と医者は言った。

確かに、左手の握力はいまだに殆ど無いままだし。
目にも問題は抱えたままだ。

その中でも一番の問題は、眠れないことだった。


純粋に睡魔が来ない。
眠くならない。 目を閉じても脳だけが無理やり起こされているかのように動き続ける。

ようやく眠りに落ちれば落ちたで、今度は悪夢にたたき起こされ。
脳が延々と回転し続けているような状態のまま、長い長い時間を過ごすことになっていた。

そんな彼女の僅かな楽しみは、本を読むこと。

まだ出歩くのは控えるように言われていながらも、ゆっくり、ゆっくりと歩きながら売店の前で雑誌を購入。
そんな金色の髪をした女を、少年は見たことがあるかもしれない。

「……あら。」

気が付いていても気が付いていなくても、こちらは気が付く。
にこり、と微笑みを向けた。

水無月 斬鬼丸 > 手にとったのはペットボトルのカフェオレ。
結構甘いやつ。それ以外はあまり買う必要はない。
病院に長居したいとは思わないし。

さてと、と顔を上げ
レジに向かうさなか、こちらに向かって笑顔を向けてくれる
金髪の女性の姿を見た。

「あ、マル…えーと、マリーさん?」

なんでこんなところに彼女がいるのか。
しかも検査衣。
入院中ということか?
どうして?

「え?あれ?どうかなさったんです?」

急なことにうまく言葉が出てこない。

マルレーネ > オダくんも、輝も本を持ってきてくれた。
でも、そこからさらにお願いをした。
だって、読んでも読んでも時間が余る。

「………あはは、気が付きませんでした?
 まあ、まあまあ、確かに風邪すらひかなさそう、ってよく言われますけど。」

とほほ、と小さく肩を竦めて、にひ、と笑う。

「……ちょっとばかりいろいろありまして。
 少し、症状が治まるまで入院中なんですよね。
 幸い、山場は越えたと思うんですけど。」

そうやって笑う女性の目は、僅かに焦点が合っていない。
意識がとんでいるのではないのは分かるだろう。

水無月 斬鬼丸 > 人の良さそうな…
可愛らしい笑顔は変わらない。
そのせいで余計に心配になってしまうのだが。

「気づかないっていうか、いると思わなかったっていうか…
どっか怪我でも?いや、病気とか…過労?」

あきらかにヤバそう。
山場は越えたと言っているが、山場があったということが驚きなのだ。
いや、驚き度合いで言えば、入院しているということがすでに…。

「っていうか、大丈夫なんですか?
取り敢えず、座りましょう?あんまむりしないで…
いや、その、まじで…」

意識も飛び飛びで、目もうつろ。
そんな彼女の手をとって

マルレーネ > 「あっはっは。
 まあ、こうやっていろいろ動いていると、事件に巻き込まれるってこともあるわけでして。」

からり、と笑ってウィンク一つ。

「あ、ええと、大丈夫大丈夫。 目はずっとこんな感じなんです。
 しっかりしてますから、ご安心くださいね。」

心配する相手に微笑みながら、そっと手を取られれば、ではでは、と素直にエスコートされて。

「………とはいえ、すっかり体力が落ちてしまったのは事実ですから。
 確かに、話すなら座った方がいいのはありますね。」

よいしょ、とソファに腰掛けながら。
何度も吐息を吐き出して、目を閉じる。

水無月 斬鬼丸 > 「あるわけでしてって…そんな…」

修道院で話したときのように
明るく笑ってウィンクまで決めてみせる。
それに対して笑えるほど、こちらは気楽ではない。
彼女が一体何をしたというのか。
それはわからないが、こんな事に巻き込まれていい人ではない。

「安心できませんよ。っていうか、入院してるなんて…
ってか、すいません。
気の利いたもんでももってこれてたら良かったんですけど…」

流石にこの自体は想定していなかったので
今日はほぼ手ぶらだ。
彼女の隣に腰掛けて、その様子をみれば
やはりどこかつらそうだ。

「えと、寝てたほうが楽なら無理しないで…
今度また、お見舞いにでも来ますんで。
いや、早く退院できたほうがそりゃいいんですけど」

少しまくし立て気味。
しかたない。こっちも少し混乱しているのだ。

マルレーネ > 「あはは、何、こういうことは慣れっこですから。」

ぽんぽん、っと肩を叩いて。
その上で、少しだけ自分の頭を手で押さえる。
辛そうな表情こそ見せないままに、少しだけ間を置いて。


「知ってるわけないんですから、大丈夫ですよ。
 それよりも、むしろ。」

「お兄さんらしくできたんでしょうか。」


少しだけ首を傾げて、相手に問いかける。
穏やかに微笑みながら、目を細めて。


「何、退屈だから本を買いに来ただけで。
 じ、っと一人で座っていると、今度修道院に戻った時に口が回らなくなっちゃいそうで。」

へへへ、と笑って頬を掻く。

水無月 斬鬼丸 > 「慣れてるのと大丈夫は違いますよ!」

思わず声を荒げてしまう。
肩をたたいてくれる彼女だが
正直頭を押さえることもあり、たまに言葉も続かなくなる。
表情そのものはわからないが
見ているだけでもつらそうなのがわかる。

「すいません…その、何があったのかも知らないのに…
でも、その…甘えさせてもらってばっかで
なんもできなくて、でも、お世話になった以上は…
無理はしてほしくないっていうか……」

なんと言えばいいのやら。
甘えてほしいなどと声高に言えるほど頼りがいがないのはわかっているが
それでも、お世話になったシスターに何もできないのは歯がゆく

「それよりも…って…ええっと、あれから会ってないと言うか…
俺のことはいいんですよ、ほんと…」

穏やかな口調、その問いには少し言葉を濁す。

「もう…歩くのも大変そうなんですから…
なんかあったら電話でもメールしてパシリにでもつかってくださいよ
そんなんで無理してたら治るもんも治りませんって」

マルレーネ > 「ふふ、なあに。」

目を細めて、相手の言葉に歯を見せて笑う。
まだ、全てを取り繕うことはできていないから、心配をかけているのだろう。
まだまだやるべきことは多い。

「大人として。
 そして、ああやって修道院にいる人間として。

 甘えてもらって、頼ってもらって。
 初めて自分という存在を確認できるんですよ。

 ただ無為に、無駄に、ただただ甘えるだけでは意味はありませんけど、そうではない、本当に悩んで、困っているのならば、甘えてしまっていいんですよ。

 そうすれば、まだまだ私は大丈夫だと思えるんですから。」

穏やかに、穏やかに。
ゆっくりと包むように言葉を相手に語り掛ける。

「昔は砂漠を徒歩で横断したんですけどねぇ………
 こうやって昔のことを言い始めたら年ですかね。」

なんて、からり、と笑う女。

水無月 斬鬼丸 > 「だったらマリーさんも甘えてください」

入院して、こんな状況で
それなのに笑って見せて
優しく語りかけてくれる。
だからこそ、心配になる。

「マリーさんは大人ですし…この程度、屁でもないと思ってるかもしんないですけど
えっと、なんていうんだろ…
あって大して時間も経ってないっていうか、一度話して、甘えてしまっただけなんですけど
恩とかだって返したいと思ってます。
マリーさんが大丈夫と思えるのはそれはそれでいいんですけど…」

砂漠を横断とかなんかすごいこと言っているが
それはそれだ。
それが大丈夫だったからと言って
今が大丈夫なわけじゃない。

「大人でも、辛いことは辛いって言ってくださいよ…
俺は子供だから、頼りがいないかも知んないですけど」

マルレーネ > 「むつかしいこと言いますね。」

苦笑を浮かべた。
そうですね、と少しばかり考えて、ゆったりと口を開く。


「では、甘えるというのはどんな行動でしょうか。」

相手の言葉に合わせて、少しだけ首を傾げるようにして、僅かに笑う。

「相手に思いの丈を預けて、何もかも身を任せるのもまた甘え。」
「相手の時間を何の見返りもなく貰うのも、また甘え。」
「人はこうやって人と関わって生きていく間、ずっと他人に甘えているんです。」
「………と言っても、きっと納得できないでしょうね。」

くすくす、と笑いながら。


「こうやって、理由も無く話し相手になってもらっている時点で、私としてはだいぶ甘えているつもりなんですけどね。」

水無月 斬鬼丸 > 「むぅ…」

納得できるかどうか…といえば納得はできない。
だが、説明だってしきれるものではない。
たしかに、一介の男子学生が
シスターに対して甘えてほしいなどと言ったところで
それが何を示すのかは難しいところだ。

含蓄のある言葉をかけることができるわけでもなく
包容力で包み込むことができるわけでもないのだから

「…だったら、いつでも話し相手くらいにはなりますから…」

彼女にとって、それが甘えるということならいくらでもだ。

マルレーネ > 「そうですね。
 そういう意味なら………。それが一番かもしれません。」

ふふん、と胸に手を当てて威張って見せる。
その所作だけはあの時と全く変わらないまま。


「………むしろ、今までと同じように甘えたっていいんですよ。

 むしろ、………変わらずに話ができるということが、私にとって一番の慰めでもあるんですから。」


一番怖いのは、今までと同じことができなくなってしまうこと。
そう伝えながら、あ、来ます? って両腕を広げて見せる。

病院だけど。

水無月 斬鬼丸 > 彼女が両手を広げれば一瞬ためらう。
そりゃそうだ。
だって、彼女は入院中だし、山場を超えたところ…
傍目から見てつらそうなくらいなのだから…

だが、きっと…

「…はい」

病院だけど。
ひともたくさんいるのだけど。
彼女の胸に体をあずけるように抱きついた。
それがいい気がした。

マルレーネ > 「……ん、よろしい。」

ぎゅ、っと頭を抱えて、その後頭部を2回、ぽんぽん、と撫でてやる。

彼女の身体は以前と同じように柔らかく。

それでいて、思い込みかもしれないけれど、少しもたれるだけで揺らいで。

でも、体温は変わらぬまま。


「………なーに、すぐに戻りますからね。
 ゆっくりと休みますから、時々暇になったら来てください。
 本を読んで、少しばかり勉強してますから。」

ね、と少しだけ目を合わせて、なだめすかすように。

水無月 斬鬼丸 > 「……」

受け止めてくれたシスターは
変わらず柔らかで、温かい。
コレで安心してしまう。
強すぎないように、弱すぎないように抱き返し
前と変わらぬように…いや、それよりも遠慮なく、彼女に甘える。


「はい、そうします。
えっと、退院したら、修道院の方にもいきますんで…
その、早く元気になってください…」

ここで誤算が一つ。
彼女が検査衣だったことだ。
生地の厚い修道服とは違う感触がダイレクトに伝わってくる
非常によろしくない状況。
だが、彼女は入院中だし、今はそんな事を考えている状況ではない。
平常心を保て。

マルレーネ > 「あはは、そうですね。
 すぐに元気になる予定ですから。
 元気でいなければいけなくなりましたからね。」

ふふん、と自信満々の様子だけは見せつつ、気にした様子も無く頭を撫でる。

「今日は何をしに来たんです?」

相手の様子など気にした素振りも見せない。
変わらぬままに今度は自分の腕を解いて、相手に普通に質問を返す。
変わらないままの彼女。

水無月 斬鬼丸 > 「そうしてください」

とても心配なので。
撫でられながらも顔を上げる。
チョット頬が赤く染まってるかもだが
そのままでいると少し息苦しいし…

「俺は大したことないです
後頭部打って、病院にいけーって言われたんで…」

あまりのかわらなさ。
きっと、こうあることが彼女の安心なのだろう。
だから、遠慮するのはやめた。

マルレーネ > 「あー、怪我は危ないですからね。
 特に後頭部だと、大丈夫大丈夫、と思っていて、ってこともありますから。」

弱々しいままだけれども、健康を説くシスター。
変わらないままだけれど、さっきまでの抱く腕は弱かった。


「貴方が、お兄さんらしい行動を………いえ、焦らずに、誰かに拠らぬ判断ができますよう、祈っておりますね。」

なんて、ウィンクをぱちり、っとして。

水無月 斬鬼丸 > 少しばかり弱々しいシスターの腕。
それが離れたことにちょっとした寂しさを覚えてしまうあたり
結局今日も自分のほうが甘えてしまっているようで。

「説得力ありますね」

入院している人間が言うと重みが違う
シスターの代わりにとしっかりと抱き返しながら
彼女に対しては苦笑を返す。

「逆に心配かけさせたみたいであれですけど…
なんとかやってみます。
えーと…代わりにマリーさんの快復を…」

異能が治療系のものだったら良かったのにと強く思った。
今の自分の異能は、傷つけることしかできない。

マルレーネ > 「なぁに、そこに関しては安心してください。
 まあ、そういう意味では?

 いきなりいなくなって管理責任が問われてしまえば。
 修道院にいられないし、何処に行こうかなーってところではありますけど。」

とほほ、と頬をぽりぽり。


「人は誰でも弱って痛むものです。
 大丈夫大丈夫、私はこのくらいでへこたれるほど、弱いシスターではありませんよ。」

なんて、かはは、と笑って背中をぱん、っと叩くのだ。

水無月 斬鬼丸 > 安心してくださいといいながら
まったくもって安心できない一文が付け加えられる。
このひとは…いや、こういうひとは?だろうか。
苦労を背負い込んでもそれを笑う。

「やめてくださいよ。
そうなったら、甘えに行くのも苦労するじゃないですか…」

そもそも、どこにいるかもわからなくなってしまう。

「入院して笑ってられるんだから強いんでしょうけど…
俺…っていうか、知り合いは気が気じゃないとおもいます」

軽く背中を叩かれつつ
ふかりとまた彼女に体を預ける。
病院だけども!

マルレーネ > 「いやいや、学園にいますから。
 生徒ですからね。

 まあ、実際にそうなったとしても、どこかで似たような真似事はしてるとは思いますけどね。」

困難でもなんでも、それをウィンクと共に笑って返して。
実際、どこででも似たようなことを続けてしまうのだろう。

「まあ、そうかもしれません。

 そういう意味では、それでもかまわない、と言ってもらえるのなら、甘えてることになりません?」

逆説的に甘えることにする女。

水無月 斬鬼丸 > 「学園って言っても広いじゃないっすか…
つか、家くらいはちゃんと確保してください」

シスターとは住所不定はいただけない。
いろいろな意味で。
それでもかわらず、その困難すら笑って乗り越えるのだろうけど。

「そういうなら、それでいいですけど…
マリーさんのそばにいる人は大変そうですね」

自分の妹と照らし合わせてみれば
見守る側の気苦労は計り知れない。
一度あって、彼女と話しただけの自分がこうなのだから。

マルレーネ > 「修道院をその間お借りしていたんですよね。
 まあ、取り上げられはしないとは思いますけど………。」

ここだけは希望的観測、頬をぽりぽりと掻きながら。


「なーに、私は相談を受ける側。
 どーんと受け止めるのが基本ですからね。

 困ったらぽーん、と来てくれればいいんです。」

基本的に、見守る側の女。
見守られることが無かったからこその、この無頓着。

水無月 斬鬼丸 > 頼られ慣れすぎて
甘えられすぎて

自分が甘える事を知らないようにすら見える
この女性。
そういう意味では不器用な妹よりもいくらか不器用。
超絶不器用だ。

だが、頼られることが彼女の安心なのだろう
だからこそこう無頓着でいられるというか。

「そうします。
マリーさんには…なんていうか
遠慮なく甘えられる空気があるっていうか…
…なんか結局こんなとこでも頼っちゃってますね」

マルレーネ > 「あはは、それならよかった。
 ………それなら、帰ってからも変わらず続けられそうですね。」

少しだけ、ほっとしたように目を伏せて笑う。
よしよし、と頭を軽く撫でてやって。

「……さ、それじゃあ、これ以上時間を使わせてもいけませんし。
 それにそろそろ、先生にバレて怒られる頃ですからね。」

ぺろ、と舌を出して、はいはい、と背中を叩く女。

水無月 斬鬼丸 > 「ともあれ…なんかあったら呼んでください。
えーと…連絡先、教えておきますんで…
不便とかあったら…」

甘えさせてもらうのはいいとして
手助けがほしいときには頼ってほしいもので。
それに、病院に来たらすでに退院してましたとかだと悲しいし。

ポンポンと撫でられ、声をかけられると
ハッとする

そういえばだいぶ時間を取らせてしまったと言うか、病院だここ。
慌てて体を離す。

「あっ!?えっ、ごめんなさい!
えっと、えー…ありがとうございました…」

深々と頭を下げて。

マルレーネ > 「……ではもうちょっとしたら!
 いま、友人に電話買ってきてもらってるんですよね。
 まあ、使い方分からないんで、………やっぱりもうちょっとしたら!」

電話の購入を友人に頼んである。
実際問題、連絡ができないのは辛いものがある。
なので、それを手に入れたらちゃんと連絡しますね、と約束をして。


「いいんですよ、私がまだまだ、変わらずお話が出来て安心しました。
 ちょっとだけ心配してましたからね。
 変わらずお話ができるかなって。」

ん、っと伸びをしつつ。
外をちらりと見て、時計にちら、と視線を送る。

「さ、私はお医者さんに出会う前に部屋に戻りますよ。
 しっかりと、悩みが無くなるように頑張ってみてくださいね。」

水無月 斬鬼丸 > 「じゃあ、ちょっとまって…」

キョロキョロと周りを見回して
なんもなかったので仕方なく
受付にメモ帳を借りて、連絡先を書き写しておく
お礼を言ってから彼女のもとへ戻り

「これ…どうぞ」

あと、このシスターの少し抜けているところだが…
こういう事を言うということは
彼女がいつもどおりに話ができなくなるかも知れないほどに
ひどい目にあったということである。
それを読み取れてしまえば、少しだけ渋い顔。
だが、このシスターはそういう表情を好まないだろう。
頑張って笑顔を作る。

「ええ、気をつけて戻ってくださいね?
俺もその…がんばるんで…」

病室に向かい彼女を見送る。
面会の手続きはしていないから病室に送ることもできない。
結局何もでき無い自分を、歯がゆく感じるのだった。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院 売店」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 売店」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「流留家」に阿須賀 冬織さんが現れました。
阿須賀 冬織 > 「ここが……噂の。」

学園地区から外れた研究区のさらにはずれ。海底遺跡の眠る海を望む岸壁の道沿い。
今にも崩れて海に落ちそうな姿でそれは存在している。
ボロボロの外観から発せられる異様としかいいようのないオーラのようなものに思わずごくりと唾を飲み込む。
なぜ彼がこんな場所にいるのか。それは数日前にさかのぼる。

阿須賀 冬織 > <<回想始まり>>
少し前に望外にも出会えた友人。その邂逅にて話題を変えるためとはいえ飯に誘うと口にした。
別に誘うことも、なんならお祝いと言うことで奢ることになっても別に構わないのだが、頭を悩ませるのはどこにするかだ。
そのときは再開を祝してのつもりだった。だがそのあと知った事実。
これは気合を入れなければならないと彼の中で変なスイッチが入った。



「……うがぁーーーー! どれを選べばいいんだよ!!」

彼はネットの海に溺れていた。探し始めて数時間、下手に理想が高いせいで上手く合うものが見つからない。
というか、そもそも相手の好みを知らない。なんで過去の自分は相手の好みも聞かずに誘おうとしたのか。今でも疑問が残る。

阿須賀 冬織 > ……別に不味くなければどこでもいいのではないかと分かっている。(いやまあ勝手な想像だが)
分かっているのだが、このまま何も成果が得られませんでしたでは終われない。
サンクコストはなんとかして回収しないといけないのだ。

だがまあ、時にはそれが報われることもある。
常世一のラーメン屋。そんな文字を見つけた。
ぶっちゃけまあ誘いに行く店を探すというよりもう何か気になるものの一つでも見つからないものか
そういった惰性でネットの海を揺蕩っていたためその情報に飛びつく。
場所が結構遠かったので次に空いてる日に行くかと予定をたてて見つけたサイト――26chとかいうネット掲示板――を閉じた。
<<回想終わり>>

阿須賀 冬織 > 目の前の建物には古びた看板が立てかかってある。
嘘。まっすぐではなくなんか斜めになってるしところどころ滲んだり霞んだり錆びたりしている。
だがまあ文字は問題なく読める。
   りゅうりゅうや
ラーメン流 留 家。それがこの店の名前だ。……なお、某島国の系列とは一切関係がないらしい。

客たち > 「おやじ、いつもの一つ」

「そうそう、この味が一度はまっちゃうとなあ……」

阿須賀 冬織 > 意を決して店内に入る。辺鄙な場所からは想像がつかないほどの人がいた。
カウンター席のみのようで、聞こえた声からどうやら熱心なリピータもいるようだ。
内装はまあ一言でいうと正直ボロい。だがそれがかえって店内に妙な味を作り出しているようにも思えた。

「さて、メニューは……どれどれ。」

ざっとメニューに目を通す。ラーメン屋らしくラーメン、チャーハンといったものから、海鮮丼なんかの文字も見える。
看板メニューは海鮮ラーメンで、どうやら朝に獲った海産物を使用しているらしい。
他のメニューもそういったものを使用しているようで、店内が妙に磯臭いのにも納得する。

「すみませーん、この海鮮ラーメン一つ下さい」

対応した店主と思しき人物は目の大きい男で少し独特の雰囲気を醸し出していた。異邦人だろうか?
そんなどうでもいいようなことを考えながら、頼んだ品が来るのを待つ。

阿須賀 冬織 > 妙に時間がかかってやってきた。
なんだか麺やわかめがしっとりしている。

「いただきます。」

匂いを嗅ごうとしたがどうにも店内の臭いがきつくてわからない。
まあいいかと手を合わせ、麺を口の中に含む。

阿須賀 冬織 > 「まっっっっっず!!!!!」
阿須賀 冬織 > 常世一”不味い”ラーメン屋流留家

そこは今日も舌がおかしくなった熱狂的リピーターと怖いもの見たさでやってきたもの好きで繁盛していた。

「……誘うのは普通の店でいいや。」

ご案内:「流留家」から阿須賀 冬織さんが去りました。