2020/09/27 のログ
川添 春香 >  
「先輩が頭が良くないとは全く全然さっぱりこれっぽっちも思いませんけどね」
「それはそうと永遠ちゃんさんとも仲良くしたいです」

彼の手を取って歩きながら話す。
男性的な大きな手。
新しいガジェットに少し緊張しているのが伝わらないように話す。

「起動したら即座に飛んじゃうんですか?」

スカートの端を指で摘んで。
スパッツくらい装備しておけばよかったなぁ。

「スカイファイトも周回スイムも楽しそうですよね…」
「動画を見たんですが、みんな真剣で!」

よろよろ歩いていて。

「あっ」

フラッと転びそうになる。

杉本久遠 >  
「そうか?
 いつも成績はギリギリだぞー?」

 それは頭が悪いのでなく、単純に勉強の時間もスイムに当てているからなだけなのだが。

「起動しただけだと少し浮かぶだけだな。
 いきなり逆さまになったり、高く飛んだりは、そうだなあ。
 もし出来たら天才かもしれないな!」

 だはは、と笑う。
 スカートを気にしている様子はさっぱり気づかない。

「おお、それなら生で見たら感動するぞ。
 ほら、そこにも張り紙が出てるが、来週はスカイファイトの世界大会だからなあ!」

 と、いかにも楽しみにしているんだと興奮した調子で話し始めるが。
 後輩がバランスを崩しそうになると、素早く回り込んで、体で受け止める。

「お、っとと。
 大丈夫か川添、ちょっと歩くの早かったか?」

 太く大きな腕と、厚い胸板で後輩の身体を支える。
 やっぱり女子は軽いなあ、なんて感想を抱きつつ。
 体勢を整えられるように手を貸して。

川添 春香 >  
「先輩は会話に知性があるじゃないですか」
「地頭が良いかどうかの話ですね」

インテリジェンスというのは、勉強のできるできないだけでは決まらない。
会話してて楽しい人は、やっぱり頭がいい人なのだ。

「ふふふ、それじゃ私、飛んじゃうかも知れませんね」
「スカイファイトの世界大会! それは楽しみですね!」
「生で試合が見られるのも!」

その時、彼に抱きとめられた。
抱き……パパにしかされたことないのに!!
真っ赤になって慌ててバッと離れた。

「だ、大丈夫です………だいじょうぶ…」
「だって大丈夫なんですから…」

両手を前に突き出して大丈夫アピール。
そのままよろよろと一人で吹き抜けになっているスペースに歩いた。

杉本久遠 >  
「だはー、そう言われると照れるなあ」

 そう、杉本久遠は褒められ慣れていないのである!

「おお、すごい自信だな川添!
 いいぞー、いきなり飛べたら帰りにケーキをご馳走してやろう!」

 と、そんな話に夢中になっていたから、トラブルも仕方なし!
 が、赤くなって一人で歩き始めるのを見ると、ちょっと心配になる。

「本当に大丈夫かー?」

 まあ怪我をしてる様子もないし、少し慣れてきたようだし大丈夫だろうと。
 当然、どうして赤くなっているかとか、久遠にはわからない!

 吹き抜けスペースは試着、試泳用の空間になっている。
 他にも数人、試泳している人がいた。
 エアースイムはマイナーとは言え、人口が居ないわけではないようだ。

「さてと、だ。
 S-Wingを起動するには、自分が浮かび上がるイメージをすればいい。
 そうしたら思考と意思を読み取って、S-Wingが作動してくれるからな」

 人差し指を立てながら説明する。

「人によっては掛け声をつけたりするな。
 その方がイメージしやすいというのもあるんだろう。
 だが、S-Wingが自動でしてくれるのは浮かび上がるところまでなんだ。

 そこからは、空中でしっかりと姿勢を整えなくちゃいけない。
 でも最初は難しいからな、その辺りはまた今度じっくりやろうな」

 と、言いながら後輩の前に行って、両手を差し出す。

「最初は体を起こすのも難しいからな。
 勢いよく倒れたりするから、しっかりオレの手をつかんでおくんだぞー。
 ああでも、セーフティがあるから、床にぶつかったりはしないから安心していいぞ」

 そう心配いらないぞ、と笑いかける。

川添 春香 >  
赤くなって火照る頬を手で仰いで冷ましつつ。

「大丈夫です」

ああ、我ながら男性免疫ゼロ。
子供の頃はパパと結婚するって言い切ってたし。

「それよりケーキの話、忘れないでくださいね」

と言いながら吹き抜けスペースにたどり着く。
説明を受けながらメモを取り。

「わかりました!」

と、シュビッと両手を上げてから先輩の手を掴む。

「掛け声………」

となると、何かかっこいいものにしたい。
よし、と考えて起動をイメージする。

「イグニッションッ」

と叫んで目を見開く。
ふわり、と浮かんで。

「あっあっあっ、と、飛び、飛んでます、先輩」

ほんの10センチ!!

杉本久遠 >  
 イメージをするためか目を閉じて、掛け声を考える後輩をみまもる。
 そして、勢いよく声を上げた後輩は、見事に飛び上がった!
 最低高度の10㎝だけ!

「だははー!
 うむ、ちゃんと浮いてるな。
 でもやっぱり、手を離したらひっくり返りそうだなあ」

 と、手を掴む後輩の手が、力んでいるのを感じつつ。

「どうだ、不安定で怖かったりしないか?」

 そう気遣うように聞きつつ。
 両腕はしっかりと後輩を支えて、うっかりバランスが崩れないように。

「大丈夫そうなら、少し足を動かしてみるといいぞ。
 倒れないように支えてるから、安心しろー」

 身体の間隔としては、水の重さこそ感じないが、足のつかない水中にいるようなものに近いだろうか。
 気を抜くと急に浮き上がったり、沈んだりしてしまいそうな不安定感があるだろう。

川添 春香 >  
「怖……いような、楽しいような…!!」

相手の手を掴んだままふわふわと浮かんで。
これは姿勢維持に慣れとコツがいる。
体力が必要というのにも頷ける。

「離さないでくださいね、絶対の絶対に絶対ですよ先輩ッ」

ふわふわ浮いてる状態で、足をバタつかせてみる。
ちっとも浮かぶ気がしない!!
これファーストアクションで高空にいけたら紛れもなく天才だね!!

「わ、わ、わ」

ほんのちょっと高度が上がった。た、たのしい!!

杉本久遠 >  
「だはー、大丈夫だちゃんと掴んでるからな!
 ようし、ここで楽しいと思えるならやっぱり、川添は上手くなれるぞ」

 エアースイムは技術や体力もさることながら。
 何よりも、頼るもののない空中を怖がらずにいられるかが大事だ。
 怖いと感じつつも楽しめるなら、それはまさしくスカイスイマーの素質だ。

「だはは、全然浮かばないだろー。
 水を泳ぐのと同じで、まずは力を抜かないとな。
 支えててやるから、そうだなあ、寝転がる時みたいにだらーんとだなあ」

 力を抜くという感覚をうまく伝えられないが。
 ちゃんと力を抜くことが出来れば、手の高さに合わせて身体が浮かび上がるだろう。
 

川添 春香 >  
「それは嬉しいですねー……! 上手くなれればいいな!」

水泳は得意だけど。
空泳はどうかな!!
そんなことを内心考えながら脱力して足を動かしてみる。

「あっ……浮いてきましたよ先輩!!」

ぷかぁと浮き上がってきて。
そしてスカートを気にしてようやく。

「下ろしてくださいー!!」

とスカートを押さえて必死に叫んだ。
ああ、格好つかない。

 
「はぁ……はぁ…」

地面に足をつけたまま荒い息をしていたけど。
すぐに笑顔で親指を立てて。

「ナイスファイト、私っ」

と前向きに考えましたとさ。
(この後、一式を部費で購入して帰りました)

杉本久遠 >  
「おお、中々上手い――ああっ、すまん!」

 スカートを押さえたのを見て、やっと気づき。

「降りるときは降りようと思えば自動で着地してくれるからな、慌てなくていいからな!」

 そう言いながら、自然と腰に手を回して体を起こせるようにサポート。
 着地して落ち着いた様子を見ると、少し心配にもなったが。
 その後輩の笑顔を見れば、こちらも笑顔が浮かぶというモノ。

「うむ、ナイスファイトだ川添!」

 それから、S-Wingを購入して、忘れずに領収証ももらい。
 寮に着くころになってやっと、スイムスーツを買い忘れた事を思い出すのだった。
 

ご案内:「スイムショップSIRASAGI」から川添 春香さんが去りました。
ご案内:「スイムショップSIRASAGI」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」にツァラさんが現れました。
ツァラ >  
「やーぁ賑やかだねぇー。」

白い尻尾が揺れる。白い耳が揺れる。
狐はちょっとした陸橋の真ん中、手すりの上に腰かけて、
眩しくもないのに額に手をつけて日指のようにして、遠くを見つめている。

遠くの方で、土煙が上がった気がした。

ここは裏の常世渋谷。
普段はまぁ、ちょっとしたドンパチもあるけれど、そこまで賑やかって訳じゃない。

いつもならこそこそっとヒトが探し物をしにきたり、お宝を求めてきたり。
そんな中で、自分たちみたいなカミサマだとか、隣人だとか、怪異だとか、
そういうのとちょっとした小競り合いはあったりはする。

でも今日は違う。
なんたってあっちこっちを列車がしゅっぽしゅっぽ走ってるんだよね。
巻き込まれたヒトもいるみたいだけど、表のヒトも意図的に来てるみたい。
前に逢った警察のおねーさんの仲間っぽいヒトが遠くに見えた。

ご案内:「裏常世渋谷」に伊伏さんが現れました。
伊伏 >  
伊伏が歩いていたのは、常世渋谷の交差点だ。
ほんの数秒前までは、確かにそうだった。
ちょうど黄昏が終わるくらいの時間で、コーヒーショップの新作が美味くて。
こんな、世界から色をそぎ落としたような、ゲームじみた世界で起きた話では無かった。

伊伏がそれに気づいたのは、携帯端末の表示がおかしくなったからだ。
ゲームアプリの更新が上手くいかなくて、ホーム画面に戻った。
そこでまず、立ち止まるべきだったのだろう。画面に映る時間はでたらめで、液晶画面はノイズが走っていた。

「は?」

酷く間抜けな声だったろう。
ゲームをしながら飲んでいたクリームティーが、伊伏の唇の端からとぽっとこぼれた。
辺りを見渡し、脳裏に浮かぶは噂の【裏】。同時に沸くのは、面倒くせえ事になったという焦燥感。


「自分に薬を利かせたつもりは無いんだが……」

ツァラ >  
高みの見物でもいいし、ちょっとしたお手伝いをするのも良い。
いたずらっ子のカミサマはルンルン気分だ。
目の前にお菓子の山が置かれた気分をしている。

しかしだ、間の抜けた声が真後ろから聞こえた。

目の前に、ひとつお菓子が置かれた。


それはいつかの青年で……。


「あは、まいごのまいごの……なんだろね?」

手すりに両手をついて、上肢を捻って後ろを見る。
青年にとっては、いつか浜辺で逢った少年の"カミサマ"だった。
白いもふもふした耳も、同じ色の三つの尻尾も、今回は最初から出している。

それは縁の悪戯か、はてさて。

伊伏 >  
もう一度携帯端末を開き、どこへとなく電話をかける。
が、そんなものはもちろん通じる訳が無い。
嫌な金属音やノイズ、笑い声などが入り混じった音が耳をつんざく。
元来たはずの道もすでに確認済み。自分が突っ立ってた場所も。
だからもう、伊伏は目的もなく走っていた。
遠くで戦闘音によく似た音もするし、じっとしていても解決の光は無いだろう。
とはいえ、本当にどう【表】へ戻るかを考えなくてはいけない。

その少し走った先に白い狐耳の少年がいたのは、果たして幸運だったのか。

「……あぁ?」

黒で塗り潰された世界の中で、幸運の祟り神は本当によく目立った。
たった1回だけの出会い・会話だというのに、知っているものを眼にするだけで、少し安堵を覚える。
現金だろうが、この際はどうでもいい。


「キツネチャンだよな?…ここ、どこか分かるか?」


答えは分かっているようなものだ。
それでも、楽しそうにしているこの狐神に、問いかけるしかなかった。