2020/10/05 のログ
ご案内:「レオの自室」にレオさんが現れました。
ご案内:「レオの自室」に神樹椎苗さんが現れました。
■夢 >
―――――古い記憶を夢に見た。
それは、僕が”師匠”に拾われて、修行が始まって……少しした頃の夜だった気がする。
『――――極東で言う獅子は、今でこそライオンを意味する言葉になっちゃいるが…起源を辿れば狛犬を表す言葉でな。』
■夢 >
『狛犬は神社…神の領域を守護する聖獣だ。
お前はこれから先、遠い過去に神共から委ねられたこの世を守護する事になる。
その証として、この名を与えた。
極東で獅子を意味する、”レオ”の名をな。
それは心しておけ。
が……』
師匠は酒を煽りながら空を見て、言葉を重ねた。
酒の味を愉しめ、と言われてきたけど……まだ、よくは分からない。
何時か…と言っていたら、その何時かも、喪われた気がする。
それでも、酒を飲んでいる師匠の姿は、よく思い出す。
師匠はあまり、酒を飲んで言動が変わるタイプではなかったけど。
酒を飲みながら僕に話すときは、少しだけ…静かに、語りかけるように、話していた気がする。
『従順な星の犬に成れって言ってる訳じゃねぇ。
何せヨワムシの雑魚だが吼の弟子だ。
吼を見てみろ。従順な犬に見えるか?
断言するが吼はそんなモンになったつもりはねぇ』
■夢 >
『―――――お前は獅子になれ。
使命でも、情でも、愛でも構わん。
自らで、就く相手を選べ。
選んで、その為に生きろ。戦え。』
■夢 >
『吼に牙を向くようなら速攻でブッ殺すが……
お前がそれを選ぶなら何も言わん。
いや、違うか。
吼が少しでもその選択を是と思ったなら、それを否定はせん。
例えお前が死のうと、苦しもうと。
お前が選んだ道だ。お前が胸を張る事で、吼がとやかく言う事ではねぇ。
勿論、甘ったれた理屈なら半殺しにでもして叩きなおしてやるがな。』
■夢 >
『…今とは言わん。
だが、この先で見つけろ。
師から弟子への忠言だ。
今は分からなくてもいい。が…』
そんな事を、言われた気がする。
何故か、今になって思い出した言葉―――――
『忘れるような真似だけはするんじゃねえぞ。』
―――忘れてませんよ、師匠。
貴方が真面目に話をする事なんて、そんなに…多くなかったんだから。
■レオ >
―――夢から、覚める。
ぼやけた視界から見えるのは、自分の部屋の天井。
外は明るく、もう既に日が昇り切っている。
夜になると冷えてくる季節になったから、日が昇り気温が上がっても、むしろ心地よいくらいだった。
「………久々に聞いた気がする、な。
師匠の声…」
勿論、夢の中の事で、本当にあの人がいる訳ではないけれど。
あの人のもとを去ってからまだ1年も経っていないのに、随分と…昔のように思えた。
「もうお昼、か……
何か食べて、軽く体でも動かそう、かな…」
眠い頭を稼働させながら、やる事を考えた。
今日は休日。学校も仕事もなくて、本当にやる事がない。
それに、右足はまだ骨折が完治してなくて動かせない。
けど、動かせない所以外は動かしておかないと、直ぐに鈍ってしまうし。
何よりじっとしてるのはあんまり好きではないし。
そんな事を考えながら、身を起こした。
結んでいない髪が肩に当たって、すこしくすぐったい。
「……ご飯は適当に缶詰でいいか。」
■神樹椎苗 >
青年が目を覚ますと、ふわりと、香ばしい匂いが鼻をくすぐるだろう。
何かが焼ける匂い、そして小さな足音。
「――ん、おきましたか。
ほら、コーヒーです。
蒸しタオルも用意しましたから、顔を拭いて目を覚ますといーです」
そう言いながら、小さな手が小振りなトレーを差し出す。
その上には言葉通り、コーヒーが注がれたカップと、うっすら湯気の立つタオル。
「よく眠れたみてーですね。
足は痛まねーですか?」
と、青年の顔をのぞき込みながらたずねる。
■レオ >
「うわっ…!?」
ぼんやりとしていれば少女に顔を覗き込まれ、おもわずびっくりする。
「来ていたんですか…椎苗さん…全然気が付かなかった…
え、あ…すみません、態々。
足はまぁ……痛みはもうないですね。もう後は自然治癒で明日くらいにはギプス外せるって、先生が。」
足を怪我してからの数日間、目の前の少女…神樹椎苗には、ずいぶんと世話を焼かれてしまった。
断っても押し切られ、食事から風呂まで、隅から隅まで。
実際不便だったのでお世話は有難かったけど……
すごく、恥ずかしかった。
「何か…本当に、すみません。
ずっと世話してもらっちゃって…」
出された蒸しタオルで顔を拭きながら、そう言う。
程よく温められているそれが気持ちいい。
眠気がすっと抜けてく気がする。
■神樹椎苗 >
「もう、何日もいるんですから、いちいち驚くんじゃねーですよ。
そうですか。
まあ外れてもすぐに動き回れるわけじゃねーですが、少しは楽になるでしょうね」
ベッドの上、青年の隣にコーヒーの載ったトレーを置いて、椎苗はまたキッチンに戻る。
そしてすぐ、皿に載せたホットサンドが運ばれてきた。
「だから謝る必要はねーです、っていつも言ってるじゃねえですか。
しいがやりたくてやってるだけなんですから、お前が気にする事じゃねーのです。
ほら、朝食ですよ」
と、皿を持ったまま、青年の隣、触れ合うような距離でベッドに腰掛ける。
■レオ >
「まだちょっと慣れなくて……
まぁ、動かせてない期間がそんなに長くないので、筋肉の衰えはそこまで心配ないらしいです。
それでももうしばらくは鍛錬で勘を取り戻さないとですけれどね。
…はは、もうお昼ですけどね
ありがとうございます。椎苗さん、半分こしましょうか。」
苦笑しながら、運ばれたホットサンドを二つに分ける。
昼ごろまで寝ていたのなんていつぶりだろうか。
睡眠も最近はよく取れてる気がする。
安心…に近いのか、どうか。
人間の生活に戻ってきたともいえるんだろうが。
■神樹椎苗 >
「いきなり鍛錬とか言い出すんじゃねーですよ。
まずはリハビリと理学療法です。
衰えがなくてもどうしたって固まってしまいますからね。
しいもマッサージくらいはしてやりますから、少しずつ調子を戻していきましょう」
肩を触れ合わせながら、隣を見上げ。
半分にされたホットサンドを返されれば、ふむ、と少し思案顔。
「しいはべつに――ああ」
何か思いついた、と言うように。
皿を膝の上に置くと左手にサンドを持って。
そっと青年の口元へもっていく。
「ほら、あーん、です」
どこか楽し気に表情を緩めながら、差し出し。
■レオ >
「ご飯、一緒に食べた方がおいしく感じるんです。
椎苗さんはもう食べたんですか?なら、一人で食べますけ……ど……」
そう言いながら彼女の様子を見ていると。ふいにホットサンドを口元に持ってこられる。
あぁ、この人は……また……
「……あの、自分で食べられますので…腕は怪我してませんし……」
目の前に出されたホットサンドの意味を悟って少しだけ赤面しつつ。
いつも、隙さえあればからかうようにこんな事をされている気がする。
そんなに僕の反応、面白いのか…?
■神樹椎苗 >
「――――」
青年に差し出したまま、じーっと見る。
ほんのり顔を赤くする様子を眺めて、しかし口が開かないようだと。
「――嫌でしたか」
と、少しだけ残念そうに視線を落としながら、手を引こうとする。
■レオ >
「いっいやっ! 嫌ではない、です、けどぉ……」
残念そうな顔をされると慌てて訂正する。
訂正してから、少し考えて、ぐぬ…という顔をして。
「……からかって…ません?」
と、聞いてみる。
■神樹椎苗 >
「むう、からかったりなんかしてねーです」
と、不服そうにむくれて見せて。
すぐに楽しそうな笑みが浮かぶ。
「可愛がってはいますけどね。
ほら、あーん」
そしてまた改めて、青年の前にホットサンドが迫ってくる。
■レオ >
「ぐぅ……」
可愛がって。
可愛がって。
ちょっとフクザツな気分。
でもこれ以上拒否も出来る訳がなく、されるがままに、口を開ける。
さくっとした触感。あたたかいごはん。
とても、美味しい。
けど、少し恥ずかしい。
「まぁ、椎苗さんが楽しいのなら、いいですけれど……
そうだ。最近はその……沙羅先輩とかは、どうですか?
僕も怪我したのもあって、ちょっとの間顔を見ていませんけど」
■神樹椎苗 >
「んふ、楽しいですよ。
今だって、赤くなって照れてる所とか、他で見れるもんじゃねーですし」
そう密着するような形で身を乗り出しながら、サンドを食べさせて。
しかし、娘の話が出ると少しだけ眉をしかめた。
「――好きな女の前で他の女の話ですか。
なかなか度胸がありますね」
と、じとっとした目で青年を見上げる。
■レオ >
「えっ、あ、いやっ!!そういう意味じゃ……
うっ…す、すみません……」
好きな女の前で、他の女の話。
流石にドキリとした。慌てて弁解しようとしてしまった。
「そ、そうじゃなくて…前に会った時も不安定だったので、心配だった、というか……
何も無ければいいんですけど……
ほ、ほら、椎苗さんも、彼女の母親…?みたいな立場だって聞いてたので、つい…す、すみません…」
しょんぼりと謝る。
■神樹椎苗 >
「――ふふ、そうやってわかりやすく狼狽えるのが可愛いんですよ」
そう、しょんぼりとする青年を、一度ホットサンドを皿に戻して、撫でてやる。
普段はしっかりしているくせに、自分の前では年相応に少年らしい姿が見える。
それがなんだか、楽しくて仕方なかった。
「まあ、娘の方はもう、後はなる様になるしかないでしょうね。
しいがとやかく言って解決するなら、問題として表出したりはしねーでしょう。
あとは見守るだけですよ」
そう言いながら、ふと、身体を伸ばして、青年の顔に近づく。
顔のすぐ近くで数度、小さく鼻をならした。
「――ん、ちょっと匂います。
それなりに寝汗を掻いたみてーですね。
これを食べたら、手伝ってやりますから、シャワー浴びちまいましょう」
と、また食べさせるためにサンドを手に取って、青年の口元に運びつつ。
■レオ >
「ぐぅ……と、兎も角、そうですか…
上手くいくといいですね。本当に……」
からかわれてるのは分かってても、彼女にむっとされたりしょんぼりされるのとつい冷静じゃなくなってしまう。
そういう所が面白いんだろうけど……『惚れさせてみやがれ』と言われた側としては、複雑だ。
ともあれ、娘…沙羅先輩の事を聞けば、少しだけ思案する。
実際、あとは当人たちの問題、という奴なのだろう。
関われる人間も限られている。外野がとやかく言うのは、間違ってるのかもしれないし。
そうしていれば、急に顔を近づけられて…
少し驚きながら、彼女の様子を見た。
顔が近いと、ちょっとだけ、どきりとする。
と、思ったら……
「…え?
あ、あぁいやっ!シャワーくらい、一人でも浴びれますよっ!?
流石にその…その…?!」
シャワー。
浴びちまいましょう。
体を拭かれたり殆ど裸を見られたりはしてるんだけど。
でも待って欲しい。
僕だって一応16で、貴方は好きな相手なので。
ほんと、待って欲しい。
■神樹椎苗 >
「ん、別に今更恥ずかしがる事ねーでしょう。
お前の裸なんてもう見てるわけですし。
それに、一人でやろうとして何かあっても、困りますからね」
言って、ホットサンドの皿を青年に押し付け。
自分は軽く弾むようにベッドから降りる。
「それじゃ、タオルや着替えも準備しときますから。
お前はゆっくり、食べて待ってるといいですよ」
と、浴室の方へ向かっていってしまう。
■レオ >
「いやっ、その…いやいやいやいや……
普通は恥ずかしがるので…
あと、その…その、あ、あー…その……あー……」
口ごもる。
何が困るの?という顔をされれば、何がって…あれが困るのであって。
彼女はまだ自分に好意を持ってないのだからまぁ分からないのかもしれないけど。
こっちにとっては色々と問題があるというかなんというか。
でもそれを直接言うのも憚られて。
結局ホットサンドを押し付けられると、浴室に行く彼女に何も言えず…茫然とするだけだった。
「……困った…」
ホットサンドを一口齧った。
美味しい。
美味しいのが逆に、ちょっと辛い。
■神樹椎苗 >
青年の気持ちなんて、どこ吹く風といわんばかり。
浴室からごそごそと音がしたと思えば、部屋に戻ってきて、青年の着替えを一式。
下着まで出して準備してしまう。
「ああ、今日はどこか出かける予定はありますか?」
と、着替えを用意しながら声を掛ける。
■レオ >
「うぅ…、…え?いえ…出かける予定は、無いですけれども。
何か行きたい所でも?」
久々に何もない日。だから本当に何するか迷っていたが。
彼女の方が付き合って欲しい事があるなら、何でも付き合える。
別に予定があっても優先するつもりだが。
■神樹椎苗 >
「いえ、そう言うわけではないです。
それなら部屋着で構いませんね」
そうして容赦なく開けられ、一式揃えられる着替え。
「こちらは大丈夫ですから、少し食休みしたら、汗を流しましょう」
簡単に準備は終わったのか、戻ってきた椎苗はまた青年の隣に座る。
■レオ >
「大丈夫とは…」
まぁ、私服など殆どないも同然ではあるが。
別に変な事を考えている訳でもない。
相手は10歳かそれにも満たない訳だし。
好きといっても…そういう事をしたいという意味でもないし。
いや、意識してしまったから、したくないというと、嘘にはなるけど。
だとしてもこう…今更だけど、色々と駄目なので。
「…‥‥‥‥あー…」
隣に座られ、少しの休憩。
何を話そうか、妙に緊張する。
実際の所、どうしたいのだろう?
彼女と”そういう”関係になりたいのだろうか。
でも彼女と僕は年も離れていて、なにより、その年の差が埋まる程長くは、僕は生きられない。
今更だけど…自分が生きてられる時間はあまりにも短いのだと、痛感してしまった。
「……あの、椎苗さん」
声を、かける。
何を言おうかも考えてはいないけど。
一緒にいれる時間を考えたら、妙に焦ってしまった。
「……椎苗さんの事、もう少し…教えてもらえませんか?」
■神樹椎苗 >
「それにしても、家具は揃いましたが、ほんとになんもねーですね。
今度、買い物にでも行きましょうか」
食器類なんかは、椎苗が通うたび、いつの間にか増えていたりするのだが。
衣類になってくるとそうはいかない。
青年に肩を寄せながら、まるでそれが当然のように軽い体を預ける。
「――しいの事、ですか?」
そして問われると、青年の顔を見上げる。
いつもの、どこか余裕のない表情。
それを見ると、なぜか無性に構ってしまいたくなる。
「構いませんが、なにを知りたいんですか?」
青年の口元についていたパンくずを指先でとって。
その指を舌先で舐めながら。
■レオ >
「何も買ってこなかったので…
そうですね、近いうちに…休みをとって、行ってもいいのかな…
……何を、ですか…、…ん、あ」
パンくずがついていたのに気が付かず、手でとってもらって。
だらしない奴、と思われてるんだろうか。
年相応に見えない悪戯っ気と面倒見で、何時も世話を焼いてくれる。
だから、されるだけなのは少し嫌で、もっと知っておきたくなったのだけど。
何を、と聞かれながら体を預けられると、少し困ってしまった。
何を……聞けばいいんだろう。
好きなもの…甘いものとネコマニャン。
あと、家族想いだから、家族もかな……
嫌いなもの…は、良く知らない。
けど、それはあまり…改まって聞くような事でもないし。
彼女の願いについては……
方法があるなら、とっくにやってる筈で。
なら、何を…
何を聞けばいいのだろう……
「…例えば……
僕に、何を…してほしいですか?」
良く分からない、質問。
そんな事を言われても困るだろうに。
■神樹椎苗 >
「――お前に?」
そう言われれば、首を傾げる。
椎苗はなにか、青年に求める事があるわけではない。
椎苗は自分がやりたい事をやっているだけなので在り、対価を求めるつもりもない。
しかし、何もないというのは、青年を傷つけてしまわないだろうか。
自分の口が悪い事はよく知っている。
「そう、ですねえ」
少し困った。
要求される、求められることには慣れているが。
いざ、自分が誰かに何かを求めるとなると、難しい。
「――お前が、心からやりたい事、思う事をしてほしいです、かね。
余計なモノに縛られたりしないで、自由に、思うままに。
お前はどうも、自分を抑え込んで、みないようにしてる――そんなふうに見えますから」
身体を預けたまま、青年の手に左手をそっと重ねる。
青年が心に従って『生きる』ために、自分が必要なら。
出来るだけ、支えてやりたいという思いを込め。
■レオ >
「それ……僕の事じゃないですか。」
困ったように苦笑する。
貴方がやりたい事をやりたいのに。
貴方は僕のやりたい事をやってほしいだなんて。
なんだかぐるぐると互いに回ってるみたいだな、と。
「…じゃあ、そう、ですね…。
椎苗さん、ラックの二番目の段に、木でできた小さい箱が一つあるので…それ、取ってもらえますか?」
あれです、と最近彼女によって設置されたばかりのラックを指さす。
多少、彼女の用意した小物が置かれているだけでまだ物の少ないそのラックには…一つ、素朴で小さい木製の箱があるだろう。
■神樹椎苗 >
「そうですよ。
しいの望みはお前が、自分らしく生きる事ですから」
そう答えていれば、箱を取ってきてほしい、そう言われる。
少し不思議そうに頷きながら、ベッドから降りてラックに向かう。
「二段目の箱――これですか?」
小さな木箱を手に取って、またベッドの上に戻ってくる。
持ってきた箱は、青年に向かって渡すだろう。
■レオ >
「なんだか…な。」
彼女の言葉に、少し悲しい顔をした。
自分が自分らしく生きて欲しい。
結局彼女個人の事は、何も言ってもらえてない。
僕と同じように、彼女も。
自分の事、というのが考えられないんだろう。
だとしても、自分の”我儘”を言ってもらえないのは…少し、寂しかった。
「あぁ、椎苗さんに渡す為に作ってたものなので。
そのまま開けてください。」
どうぞ、と言いながら箱を開けるように促す。
箱の上は蓋になっていて、開ければ……小さな、木で出来た縦長の笛が入っている。
鉛筆を短く切った位の大きさ。
リコーダー等のように、複数の穴が開いている訳ではない。
ホイッスルのように吹くだけのもののようだ。
「一度、吹いてもらえます?それ」
■神樹椎苗 >
「はあ、しいにですか?」
怪訝そうに首を傾げつつ、箱を開ける。
中にあった小さな笛のようなものは、用途もいまいち、見た目ではわからない。
言われるまま、軽くくわえて息を吹き込んでみるが。
「――何も鳴りませんが」
手に持った笛をのぞき込んでみたり、ひっくり返したり。
首を捻りながら弄っているだろう。
■レオ >
「そういう作りなんです。
まだ完成していないので、最後の仕上げをしますね。
貸してもらえますか?」
そう言って彼女から、笛を渡してもらう。
渡されれば、それを自分でも一度吹く。
先ほどと同じように、音は全くしない。
ただ、魔力を感知できれば、彼が吹いた時に魔力を笛に通らせていたのは分かるだろう。
そしてその後、箱の中に入っていた小さな平筆と小瓶を取り出し。
小瓶の中身を筆で掬って、笛の表面にそれを塗っていく。
塗られた笛は独特な……金に近い琥珀色の光を反射させる。
軽く乾かすように笛を振ってから、それを少女に手渡すだろう。
「これ、紐を通せば首から下げれるので、出来れば肌身離さず持っていてください。
前の仕事の時に使ってた笛で…”呼び笛”って僕らは呼んでいました。
僕の戦いの師匠に、作り方を教わったものです。
ちょっと特殊な作りをしてて…最初に吹いた人が吹いた時だけ、作った人間の耳にだけ何処にいても音色が届いて、大体の場所が分かるんです。
…何かあった時に、吹いてください。」
■神樹椎苗 >
「――呼び笛。
しいとお前だけが分かる、連絡手段ですか。
これを吹いたら、いつでも来てくれるんですか?」
なんて、少しだけ意地悪な言い方をして。
再び笛に口を付けて息を吹く。
しかし、やはり椎苗に音は聞こえず、本当に機能しているのかはわからない。
「――聞こえましたか?」
と、確かめるようにたずねる。
■レオ >
少女が呼び笛を吹けば、青年の耳には独特な……鳥の鳴き声のような音色が届く。
目の前の少女が吹いた笛の音色だという事は、作り手だからすぐに分かる。
「ええ、聞こえます。
椎苗さんにも、他の人にも聞こえないでしょうけれど……
僕には聞こえますよ。
それと…
―――行きますよ。
何時でも。
何処でも。
何がいても。
――――絶対に、助けにいきます。
たとえ、神様相手でも。」
笑う事はない。
真剣に、彼女の方を見て。
鈍い金の目は”絶対”という言葉と同じように…意志を感じさせるかもしれない。
そして、そっと視線を移し…思い出すかのように、遠く先の方を見た。
「……レオって、極東で獅子って意味なんです。
今じゃ獅子はライオンの事を指す意味になってるけど……本当は、狛犬らしくて。
神様の領域を守る、聖獣です。
…師匠に言われました。
『お前は獅子になれ』…って。
『使命でも、情でも』……
『愛でも、何でもいいから自分の就く相手を自分で選べ』…って。」
きっと、この話を夢に見たのは、そういう事なんだろう、と。
そう、師の言葉を思い出しながら。
■神樹椎苗 >
「不思議なもんですね。
――疑うつもりはありませんよ。
お前はきっとくるんでしょうね、そこに何があっても」
例えどんな状況でも、自分の事を探し出してきてくれるのだろう。
そんなことは、あの濁っていた瞳が輝きだしたのを見れば、言葉がなくても信じられる。
──けれど。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■』
僅かに思考が止まる。
手に持った笛を強く握り、頭を振った。
「しし、ですか。
つまり、お前は、しいを守る聖獣――聖獣――似合わねえですね」
手は強く笛を握ったまま、努めて可笑しそうに笑顔を作る。
「じゃあそうですね、退屈な時にでも吹いてみましょうか」
などと、冗談を言いながら笑う。
■レオ >
「――――――」
彼女の表情に、一瞬…違和感を感じた。
そういう人の機微に敏感な訳ではないけれど…
目の前で、彼女に…神樹椎苗に、異変があれば。
それは、それだけは、気づく。
「―――大事な時に、吹いてくださいね。」
そう言って、彼女の右手…動かない方の手を優しく握った。
―――――”端末”
手を握れば、前に彼女が口にした…その言葉を思い出した。
思い出して……
酷く、怒りがこみあげてきた。
「……僕は”神樹椎苗”の味方ですから。
それは…忘れないで欲しいな。」
だから……許せない。
死にたいと思う程理不尽に生かされる事も。
勝手に彼女の体を使って何もかもを見聞きしてる事も。
今、一瞬…だけど、確かにあった違和感が、それに関係するなら、それも。
全部気に食わない。
怒りを抑えてゆっくり、吐き出すように言葉を紡いでいった。
「……これが僕のやりたい事…今の”我儘”ですから。」
不死を殺して。
好きだった人を殺して。
大事な人を殺して。
死なない存在に終わりを与え続けて、それで限界を、迎えた筈なのに。
何でなんだろう。
いざ彼女と出会って。
そして殺せない事を知って、『死にたい』という想いを聞いてしまったら。
彼女を死なせてあげたくて…
殺せるのであれば…殺したくて、仕方なくなる。
■神樹椎苗 >
「わかってますよ。
悪戯で吹いたりなんて――たまにしかしません」
椎苗の右手を握れば、直に骨を触っているかのように硬く、ゴツゴツとした感触が、包帯越しにわかるだろう。
笛を大事そうに閉まってから、左手で青年を抱き寄せる。
「変な我儘ですね。
まあ、それがお前のやりたい事なら、しいは構いません。
それでも、しいのためにって無茶をして、命を縮めるような事は、するんじゃねーですよ」
抱き寄せた青年を優しく、宥めるように撫でて。
ほんの少し、甘えるように体を摺り寄せる。
「愛される、って妙な気分ですね。
こうして身をゆだねるのが、なんだか心地いいのです」
青年の体温を感じていると、やはり心が安らぐのを感じる。
恋や愛だという感情はまだわからないが、この心地よさは、確かなものだった。
――まあ、それはそれとして。
「――やっぱりにおいますね」
青年の身体に頭を寄せて、すんすん、と鼻を鳴らす。
男子特有の、やや汗臭いような体臭が鼻を抜ける。
■レオ >
「――――善処しますね」
命を縮めるような事をするな、と言われれば…そうとだけ返す。
きっと彼女の為なら…僕は無茶をする。
それを望まなくても、そうすると思う……
”我儘”だったとしても。そうしてしまう気がした。
前だったら、命じられれば…頼まれれば、断る事は出来なかったのに。
今は何故か…
はいと…言えなかった。
もう島に来た頃とは…在り方が大分、変わり始めているのかもしれない。
「椎苗さんが喜ぶなら、いくらでも…愛し続けますよ。
惚れてもらえなくても、死ぬまで。
だから…、…‥‥?」
我ながら、恥ずかしい台詞だと思いながら言葉を続けていれば。
すんすん、と匂いを嗅がれているのに気が付いて。
「…あ”」
……そういえば、さっきも匂うって言われたばっかりだったっけ。
どうにも、カッコつかない。
そう思いながら肩を落とした。
「…シャワー、浴びますね。あ、えー…あー…
…タオルつけるので外さないでくださいね……?」
■神樹椎苗 >
「んふふ、別にこれくらいの匂いは嫌でもないですけど。
清潔にしておくに越したことはねーですからね」
ぽんぽん、と肩を落とす青年を笑いながら慰めて。
「何言ってんですか。
外さねーと洗えないじゃねえですか。
ああ、ちょっと待つのです」
そう言ってベッドからおりると、おもむろに服を脱ぎだす。
ワンピースがするりと足元に落ちると、現れるのは下着姿、ではなく。
紺色の、所謂スクール水着。
「これなら濡れても平気ですからね。
包帯も今日は全部、耐水撥水バンテージですから。
これなら問題ねーですね」
と、体にぴったりとした露出の少ない水着姿を晒す。
椎苗からすると、これで準備万全なようだ。
■レオ >
「いやっ、そこは自分で洗いますから…っ!!
って、うわぁっ!? なっ、何で今脱い…っ!?」
流石にまずいと目を瞑って……
ちらっと見た。
裸でも下着でもなく、水着。
スクール水着。
でも、やっぱり目を逸らした。
「‥‥あの。
どの辺が大丈夫なんでしょうか……」
見るのが憚られるというか。
いや、水着は見ても大丈夫なものなのだけど。
それはそれというか。
というか、そっちがそれでセーフならこっちも水着着けたいなぁ、と思ったりもした。
持ってないけど。
買っとこう、とだけ誓った。
■神樹椎苗 >
「ふむ、まあそれならいいですが」
別に意地でも洗いたいとか、そう言うわけではないので、すんなりと退く。
水着なのだから気にする事ないだろうに、目を逸らす青年に首を傾げる。
「どの辺もなにも、お前が一々騒ぐからですよ。
しいは別に裸でもかまわねーのですが」
つまり、裸になると青年が焦るようだからと水着を用意した、と言う事だ。
■レオ >
「そりゃ、騒ぎますよ……」
一応、既に取返しのつかない状況なのは分かっていつつも…彼女と接する上で自分の中で線引きはしているのだ。
時折、彼女の実年齢を忘れかけるから。
自分の理性とかその辺を、律する為に。
‥‥‥まぁ、彼女の方が軽々とそれを踏み越えてくるのだが。
彼女に惚れられるまでは、せめてそういうのは控えようと。
そういうのとは、まぁ、そういうのである。
「……じゃあ、その…よろしくおねがいします…」
とはいえ、体を洗う為に色々と準備してくれてるのに、無碍にすることも出来ず。
前だけは死守して、洗われる事は甘んじて受けただろう…
■神樹椎苗 >
「別に騒ぐような事でもねーでしょう。
どうせ肌面積より包帯の面積の方が広いですし」
そういう問題ではないはずだが、その程度の感覚のようだ。
「ん、よろしくされます。
それじゃあ、さっさと脱ぐのですよ。
ほら、脱衣所まで行くより、ベッドの方が安全ですからね」
なんて言いながら、青年の服を脱がそうとその裾に手を掛ける事だろう。
■レオ >
「自分で脱げますので…!
あと、タオル、タオルを…!!」
羞恥心を、覚えて欲しい。
というのは……彼女の年齢からすると無茶なのだろうか。
自分の時はどうだっただろうか……
彼女と同じ位の年…
そんな事を想いつつ、兎に角今は自分の貞操(?)を死守する事に専念した…
ご案内:「レオの自室」からレオさんが去りました。
ご案内:「レオの自室」から神樹椎苗さんが去りました。