2020/10/15 のログ
■園刃華霧 >
「……だいじょうぶ
あたしが ついてるから」
しずかに、くちにする
「……犬みたイなやつ、トは思ったケど……
いヤ、ほンと……変なヤつだナ、レオ……」
サラの思い出話を聞きながら、思わず口にする。
まさかそんな馬鹿なことを言い出してたのか……
「ン、あンがとナ。
で……ぬくもり、カ」
ふむ、と考えて……特に抵抗もなければ軽く抱きしめようとする
「こンな感じ?」
にへ、と笑いながら。
■水無月 沙羅 >
「本当に変な子だよ。
鉄火の代行者なんて呼ばれちゃって、良い気になって。
そんな覚悟もないのに。
今頃何してるんだか……。」
まさか自分の母替わりに思い煩っているとはつゆ知らず、彼のその後を気にする。
初めての後輩だから気にしているというのもあるが、どことなく彼からも似た気配を感じ取っている。
多分、あれは死を多く背負ったモノの気配だろう。
だからこそ、代行者足り得たのかもしれないが。
結局は彼は彼でしかない。
「あ、うん、そう。
そんな、かんじ……。」
冗談のつもりで言った言葉が、そのままストレートに帰ってくると案外恥ずかしいもので。
少しだけ顔を赤くしながら特に抵抗することもなく抱きしめられた。
暖かい、人の体温に包まれるとやはり安心する。
心音が耳に心地よく響く。
生きて居るという事に、安心する。
自分がではない、彼女が生きて居るという事に、酷く安心する。
自分の生死に、目を向けなくなっていることに、沙羅自身はまだ気が付いていない。
「………。」
安心した途端に、溜まっていたことを言いたくなる。
でも、この安らかな空間を壊したくは無くて、口をつぐんだ。
言ってもいいのか、言ってはいけないのか、そのはざまで揺らいでいる。
相談をしろ、とはよく言われるが。
「……ぁ、ん。」
やはり口にできなくて、言葉を飲み込むだけで終わった。
■園刃華霧 >
「……まァ、真面目に仕事ハしテたヨ。
迷いナがら、自分ラしさを探して、ネ」
それすらも迷いながらの行動ではあったが、
そういう意志を持っていたのは間違いではない。
だから、そういう風に伝える。
「サラが、こウして……此処に、イてくレてよかッタよ」
抱きしめて、優しく撫でる。
心からの言葉。
「……」
何かをいいかける、相手
「……だいじょうぶ」
ただ、それだけいってなでる
■水無月 沙羅 >
「そっか。 ……なら、良いか。」
彼が自分の道を探せるならば、それが一番い。
自分らしさ、それが何なのかは、きっと見つけるのは難しいだろう。
沙羅も、それをまだ見つけられているわけではないのだから。
「それ、病院に居たほうが良いっていうこと―?」
もちろん冗談として、クスクスとわざとらしく笑う。
ざわつく心をごまかしているのはきっと隠し通せないだろう。
続く『だいじょうぶ』という言葉に、思わず華霧の胸に顔をうずめる。
何が大丈夫なのか、相手が相手ならそう吠えたかもしれないが。
自分を尊重してくれるかの人なら、その意味も分かる。
だから、精いっぱい息を吸ってから、息を吐きだすように言葉にした。
「捨てられちゃった。」
初めて、誰かにそう口にした。
誰にとは言わずとも、きっと伝わるだろう。
それどころか、彼女はもうすでに知っているかもしれないが。
「居なくなっちゃった……。」
我慢していた言葉が、溢れて。
「私の、大好きだった居場所……無くなっちゃったよ。」
押し込めていた感情も、とめどなく。
静かに、ポツリポツリと言葉となって漏れ出した。
■園刃華霧 >
「うワ。手厳しいナ、サラ」
うへ、といたずらっぽく笑う。
冗談とわかっていても、真面目に受けたように。
「……つらかったね」
吐き出された言葉
それは激しさはないが、重みはどこまでも深い
そして その つらさは――
「よく いえたね」
すこしだけ つよく だきしめる
「あたしは できなかった」
なでる
■水無月 沙羅 >
「……うん。」
つらい。
「うん……。」
口に出すという事すらも、つらい。
「かぎりも、つらかった……?」
抱きしめられる体に、涙を少しだけ浮かべて。
できなかったと述べる彼女の頬をそっと撫でる。
暗い、昏い瞳の中に、それでも優しさと安らぎというわずかな光を宿して、自分を温める少女を気遣う。
■園刃華霧 >
「もちろん」
なでる
「つらかった」
つらかった
それを 意地とすりかえて
ただ ひたすらに 奔った
「でも、ね。サラ。いまは、サラの時間」
涙は 流さなかった
最後のほんの一時まで
「いまは あたしは いい。
……いまは サラが すきにしていい」
泣くのか
抱きつくの
ただ、静かに時を過ごすのか
それとも……
"選ぶ"のは 貴女
■水無月 沙羅 >
「わたしの、すきに?」
好きにしていい。
そう言われることはひどく苦手だった。
自由にしていいというのは、難しいことだ。
するべき事を自分で考えないといけない。
指示されたことをただ黙々とこなすことは簡単だ。
只与えられた仕事をこなすだけでいいから。
だから、好きにしていいというのは。
自分で行動を決定してもいいというのは、酷く難しい。
するべき事もなく、しなくてはいけない事でもない。
自分のしたいこと、それを見つけなくてはいけないから。
わたしがしたいことはなんだろう。
水無月沙羅がしたいこと。
「わからない。」
泣きたい、抱き着きたい、叫びたい。
どれも混在しているのは間違いなくて、でも。
今は其れすらも、酷くむなしく感じるのだ。
せかいがひどくさむくかんじる。
「さむい、よ。」
熱を求める様に、だきしめた。
「ここは、すごくさむいの。」
子供のように、訴える。
■園刃華霧 >
「…………」
自分がどういう性質の人間か、と言われれば。
そんなに単純明快でも
そんなに複雑怪奇でも
そんなに悪でも
そんなに善でも
すべて ない
だから
「そっか、わからないか」
ぎゅ、と強く抱きしめる
「……ゆっくりで、いいよ。
あたしが いる」
寒いのなら
「あたしが あたためるから」
ずっとずっと
■水無月 沙羅 >
「……うん。」
「かぎりは、あったかいね。」
強く抱きしめる腕を、そっと握る。
「うん、わかんない。」
「ゆっくりで、いいのかな?
また、だれか、いなくなったりしない?」
「ほんとうに、ゆっくりで、いいのかな。」
「もう、なくなるのは、こわいよ。」
ずっとなんて、あてにならないと。
自分が何かしなくてはいけないのではないかと。
ずっと怯えている。
いまも。
そして。
■水無月 沙羅 >
「ねぇ、かぎり。」
少女は、知っている。
「ずっとは。」
悲しいほどに。
「むりだよ。」
よく知っている。
「だって、人は。 私とちがって。」
「死んでしまうもの。」
「かわってしまうもの。」
「だからかぎり。」
■水無月 沙羅 >
「 」
■園刃華霧 >
「……ああ、そうだな」
吐息を一つ。
「なくなるのは、こわいな」
よく知っている
そして、沙羅の言うように
永遠など、無いことも
わかってはいる
「そうだな。 確かにな。
サラの言う通り、かもしれない。」
そして、前に聞いたサラの力
それは、そこまでのことを強いていたのか……
それでも
「でもさ、サラ。
アタシはさ。
諦めが悪くて、意地っ張りで
『どうしようもねぇヤツ』なんだ。」
思い出す
自分に、永遠を突きつけてきた人物を
■園刃華霧 >
「アタシは、一生変わってやんない
アタシは、生涯つきまとってやる
アタシが、くたばるなら……
アタシの、次を用意してやる」
だって
「アタシは、サラの『姉』だ。
アタシも、おまえを失いたくない
だから
何処までだって足掻いてやる。
似た者同士
どっちが音を上げるか、勝負でもする?」
一瞬だけ、挑戦的な……野性的な笑顔を浮かべる。
■園刃華霧 >
「……でもな」
「本当にそれを望むんだとしても」
「どっちにしたって」
「絶対にどこまでも付き合ってやる」
■水無月 沙羅 >
「………。」
少女のように、ほんの少しにへらと笑う。
「かぎりは、やさしいね。」
「でも、でもね。 かぎり。」
「かぎりの変わりはいないから、つぎなんてないの。」
「でも、うん、それでも。」
「さいごまで一緒なら、嬉しいな。」
次だけは、許容できないけれど。
貴方がそう望むなら、私も。
「ありがとう、おねえちゃん。」
自分の為にそこまでするという人間が居るのなら、もう少しだけ。
「信じてみる。」
■園刃華霧 >
「……ありがとう サラ」
わずかなわらいと
こたえのことば
もったいないくらいに
うれしい
「アタシは こんなだから
うっとうしいかも しれないけれど
そのぶん やくそくは まもるから」
だって
アタシには これしかないから
「……ほんとうに ありがとう」
■水無月 沙羅 >
「うっとうしくなんて、ないよ。
わたしのだいすきで、たいせつな、おねえちゃんだもん」
少しだけ、だきしめる力を強めて
「だから、わたしも、ありがとう。」
「かぎりが、おねえちゃんで、よかった。」
『水無月沙羅』というペルソナの内に隠した、サラという名前の本当の彼女は。
安心感と共に、吐き出した感情の渦に疲れ果てたのか、ゆっくりと力が抜けて華霧によりかかってゆく。
恥も外聞も、強がりも捨てた沙羅を知るのは。
後にも先にも、二人の家族だけかもしれない。
死に怯え、孤独に怯え、失うことを恐れる少女は、ようやく暖かな笑顔を取り戻して。
「すこし、ねむい。」
そのままゆっくりと瞼を閉じるだろう。
■園刃華霧 >
「……そう
おねえちゃん で いても
いいんだね」
やさしく ほほえむ
よりかかってくるからだを
しずかに ささえる
「いいよ
いまは ゆっくり やすんで」
「……おやすみ サラ」
目を閉じる少女を支えて、しばしの時を過ごす
寝息を 様子を
伺って
頃合いを見て……静かに、ベッドに少女を寝かせた
ご案内:「常世学園付属総合病院 入院患者用個」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属総合病院 入院患者用個」から園刃華霧さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属総合病院 入院患者用個室」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 >
いよいよ退院が数日後に迫り、リハビリも順調。
体力は戻りつつあり、精神的な不安定さも取り除かれつつあった。
もちろん根本が解決しているわけではないが、とりあえず目の前にやることがあるという事で気分を紛らわせている。
大切な家族の言葉もあり、とりあえずの平穏を受け入れることができていた。
それでも、やはり失ってしまった物の穴は大きく、病院の窓の外をぼんやりと眺めている。
今頃あの人は何をしているのだろうかと、つい考えずにはいられないのだ。
ご案内:「常世学園付属総合病院 入院患者用個室」にレオさんが現れました。
■レオ >
「―――――失礼します。沙羅先輩、いますか?」
コンコン、とノックされる扉。
そこから聞こえるのは、少女にとっては聞き覚えのある声。
最近は互いに色々とあったために顔を見せていなかったが、仕事をよく共にする間柄だ。
――――容体、良くなっていたらいいな。
扉の前に立ちつつ、そんな事を思案する。
原因は何となく察せれる。体の方の問題では、少なくともないと思う。
だからこそ、でもある。
常世島の医療技術は高く、体に負った傷なら程度は違えどかなり素早く治す事が出来る。
それは青年…レオ自身も実感している。
でも、体じゃない……精神的な問題は。
すぐに治る訳じゃない。
勿論カウンセリングや安定剤も日々進歩してるとはいえ、結局は時間をかけながら、ゆっくり治す他ないのだ。
まだ出会って日の浅い方である自分が、彼女に会って何が出来るのかは分からない。
でも…
『ちゃんと向き合うことが条件だ。
オマエの過去の誰でもない。『水無月沙羅』と向き合ってくれ』
…先日会った先輩に、そう告げられたから。
レオ・スプリッグス・ウイットフォードとして、水無月沙羅に…ちゃんと向き合って、そして何か出来る事を探さないといけない。
「お見舞いに来ました。レオです。入ってもいいですか?」
そんな事を想いながら、扉の先の彼女に声をかける。
■水無月 沙羅 >
「あぁ、噂をすれば。」
つい先日、話題に上がったばかりの後輩がやってきた。
入院したと聴いたら飛んできそうなイメージがあったが、どうやら彼自身も随分落ち着いたというのは本当らしい。
こちらに聞こえてくる声に、鬼気迫るというような激しさは感じない。
「どうぞ、開いてるよ。」
ベッドから少し身を起こして、来客者が来るドアの方へ向き直る。
彼に会ったのも随分前のように感じるが、さてどんな風に成長したのか少し楽しみでもある、
妙な方向に転がっていなければいいのだけれど。
■レオ >
「失礼します」
許可を貰えれば、扉を開けて中に入る。
入院していて元気がないと聞いていたから、話す事も出来ないんじゃないか…なんて、心配もしていた。
だから声が返った事に、少し安堵した。
病室にいる少女…水無月沙羅に、微笑んで一礼して、椅子に座った。
手には紙袋と、数輪の花。
「…お見舞い、何を持って来ればいいのか分からなくって。
花と…あと、クッキー持ってきました。
元気があれば食べてください。
…どうですか?調子は」
花…黄色いガーベラの花だと分かるだろうそれを、空いている花瓶に挿しながら訪ねる。
■水無月 沙羅 >
「あ、なんだかすごくお見舞いっぽい。」
花と手土産、席に座るよりまずは病室に手を付けるところから。
よく小説で見る、入院患者へのお見舞と言えば確かにこうしていたなと思いだす。
今まで見舞に来た人たちも決して礼を欠いていたわけではないが、彼は特別そういうのに気を遣うのかもしれない。
少しだけ珍しい光景にくすりと笑う。
「花を持ってきたのは君が初めてだよ。
ありがとうレオ君。 おかしは後でいただくね。」
調子は如何か、という言葉をかけられれば、少しだけこまったように微笑む。
絶好調というわけでもないが、とてもひどい状態というわけでもなくなった。
けれど、酷く不安定でもある、何とも表現がしにくい。
かといってそのまま伝えるのも余計な心配を招くことになるだろうし。
「んー……まぁまあ、かな?」
と無難に答える。
「ところでそのお花は?」
花の品種は辛うじてわかる物の、趣味は星空にすべてつぎ込んでいる関係で花言葉などには疎いところがある。
お見舞用に見繕ってもらったと言われればそれまでだが、何か意味があるのだとすれば少しだけ気になる。
■レオ >
「ガーベラ、って花らしいです。
黄色いのは…店員さんがなんて言ってたかな。
日光とか、優しさとか…そんな意味があるみたいです。
…そっか、よかった」
まぁまぁ、という言葉を聞いて再び安堵をする。
まだ本調子ではなくても……今は、大分安定してるように見えたから。
「ちょっと足怪我してたので、お見舞い…遅くなってすみません。
僕の方はもう治ったので、仕事を再開してます。
……入院って、暇ですよね。
僕は苦手で……沙羅先輩はどうですか?
あんまり動くのもかもしれないですけど……やる事なければ、何か持ってきますよ」
入院の経緯は、あえて聞かない。
見当が多少ついてるのもあるが……そういうのは、もっと親しい人と話したいだろう。
なら、こっちは穏やかな話をしよう。
それが自分の出来る事、向き合える事だろう…
■水無月 沙羅 >
「日光に、やさしさかぁ……それだとなんだか向日葵をイメージするなぁ。」
花言葉はともかく、そのキーワードで思い浮かぶのはやはり夏の花だろうか。
サンフラワーとも言われる向日葵にぴったりだと思うのだが、話してそのガーベラにはどんな思いが込められているのだろうか。
「そう……怪我してたんだ。
後遺症とか残るようじゃなくて良かった。
んー……そうはいってももう私も退院するからね、大丈夫だよ。」
暇つぶしは本を読めばいいし、テレビもある、そうこまることもない。
強いて言うなら一人で居るのが寂しいというくらいだが、目の前の少年に相談することでもないだろう。
「入院ね……あんまり得意ではないかな。
昔の、嫌な記憶とか、暇な時間だと悪い想像とか、よくしちゃうでしょう?
だから、好きではないよ。
大体みんなそうなんじゃないかな。
いやまぁ、よく入院する人を知ってはいるけど、好き好んでなわけじゃないだろうし。」
あの人はいつも生死の境をさまよっている気もする。
もう、ああやって心配することもないのかもしれないが。
そう思いだして、少しだけうつむいた。
■レオ >
「…確かに、病院が好きな人なんてそんなにいませんよね」
すこし苦笑して、その言葉に返す。
怪我は多い自覚があっても入院自体はあまりした事がない。そんなに…表で生きた人間でもないから。
ただ、病院自体はとても苦手だった。
それはまぁ…少し恥ずかしい思い出があるからではあるが。
「……」
ただ、そんな事を思うのも一瞬。
うつむいた彼女を見て、あぁ……と心の中でつぶやいた。
神代先輩の事を、考えてる。
それは直ぐに分かったから。
でも…それに触れる事が、躊躇われた。
また悩む原因を、作ってしまう気がして。
「……あぁそうだ、報告…じゃないか。
実は、家族が増えたんですよ。」
話題から逸らすように、明るい口調を作って携帯端末を取り出して操作する。
楽しくなるような話題をしてあげなくちゃ。
今の自分で出来そうな話題で、彼女の気が楽になりそうなもの…
そう思って、写真をとってきたものがあった。
つい今朝がた撮った写真を開きながら、端末の画面を彼女に見せる。
そこに映っているのは、まだ小さい……真っ白な子猫だった。
「色々あって、僕の所で引き取って…
マシュマロ、っていうんです。
椎苗さんもこの子を引き取るときに色々あって、よくお世話に来てくれてるんですよ。
退院したら、遊びに来ませんか? マシュマロも喜ぶと思いますから」
微笑んで、そう言う。
■水無月 沙羅 >
「家族……?」
携帯端末を操作する彼が、露骨に話題を逸らしたのがわかる。
こちらに気を使っているのだろうと、少しだけ柔らかに微笑む。
優しい子だな、という印象と共に、気を使い過ぎで疲れはしないかなという感想も沸いた。
誰かの為に何かをしないといけないという強迫観念に、未だに捕らわれている、そんな風に感じて。
それはともかく、今は彼の話に合わせるべきなのだろう。
彼の気遣いを無駄にしてしまうのもよくない。
真っ白な子猫を見て、少しだけ目を丸くする。
この常世内でまともなペットを見るとは思っていなかたっというのが一つ。
もう一つは、あの椎苗がペットを飼いだすとは思っていなかったから。
「そっか……マシュマロね。
あの人らしい。
うん、今度挨拶しに行くよ。
私の妹……みたいなものかもしれないし。」
助けを求められれば助ける、そういうスタンスだった彼女が、動物の命を預かっている事に少なからず驚いている。
この子の家族になるまでに、どんなドラマがあったのだろう。
彼女とレオが出会ったことで、どんな変化があったのだろう。
「レオ君は、仲良くできてる?
しぃ先輩とか、マシュマロと。」
■レオ >
「はは…ある意味、そうですね」
妹みたいなもの、と言う彼女の言葉に微笑んで。
そっか…椎名さんの子みたいなものだから、確かに…そうかもしれない。
沙羅先輩とも仲良くなって……この子も、沙羅先輩にも、何かプラスになってくれたら幸いだ。
「はい、仲良くさせてもらってます。
椎苗さんの方は……まぁ、僕が頼りないせいからかもしれないですけど、随分世話になりっぱなしで。
ネコマニャンのグッズが部屋に増えました」
彼女の左右にあるデカマニャンを少し見て、苦笑する。
最低一つはあの人が持ってきたんだろうな、なんて思いつつ。
今自分の家にあるネコマニャンぬいぐるみは、マシュマロの大事な友達の一つになりつつある。
「マシュマロも小さいけど頭のいい子で……世話の苦労はあんまりないですよ。
人見知りは…どうかな。
僕に懐いてくれる位だから、あんまりしない方だと思いますよ。」
妹みたいなものと言うから、折角だからと色々、話をしてあげよう。
僕がそうだからというのもあるけど、動物と触れ合うのは気持ちが安らぐ。
彼女も、少しは安らぐかもしれない。
別の事を考える時間だって、心を休ませるにはとても大事な事だから。
「色んな写真あるので、よければ見てください」
そういって、端末を手渡す。
中には、ネコマニャンのぬいぐるみとじゃれ合う子猫や、ベッドを占領してお腹を出してぐっすり寝てる子猫、おそらくは彼ではなく、彼の部屋によく来る少女…神樹椎苗のであろう小さな手と遊ぶ子猫等、色々な写真のデータがあるだろう。
■水無月 沙羅 >
「ふぅん……。」
随分と楽しそうに語る少年に、いつかの自分の面影を見る。
家族が増えた、少年はそう言った。
それはマシュマロの事だけなのかもしれないけれど。
「レオ君は、弟みたいに思ってるけどね。
大型犬のペットっていうと失礼かなって思うから。
弟。」
クスクスと笑う。
あの少女に拾われた時点で、きっとそういうものなのだろうと思う。
ネコマニャンのことといい、随分彼女の事を知ったようで、それはつまり彼女も気を許しているという事なのだろう。
昔の椎苗とは思えないほどのスピードで。
ならば、風雨の知り合いとは少し違う。
「すごく仲良いみたいだね。」
写真を見ながら、元気そうな猫と、自分の家族たちを見てやんわりと微笑む。
それは其れとして、明らかに自分たちの寮の部屋ではないとなると、男性の家に転がり込んでいるのか。
ほんの少し、眉がピクリと動いたかもしれないが些細なことだ。
「日常、楽しんでる?」
それは、自分ができなかったことだから。
彼にはそれを大切にしてほしいと思う。
■レオ >
ペットと言われると、複雑そうに苦笑しながら。
彼女の言葉に相槌をしながら、しっかり聞く。
日常を、楽しんでる…か。
「……手探りでやってるところです」
すこし、苦笑した。
生きるということを…楽しめているかは、分からない。
変わり始めたとは思うけれど、でもそれがどんな変化なのか、まだ自分の言葉に出来る程じゃなくて。
でも…
変わる事を考えてるのは、この島に来る前との大きな違いで。
「……沙羅先輩も。
一緒に…やっていきましょうね。
園刃先輩も、レイチェル先輩も、椎苗さんも…いろんな人がもう居て。
僕の席なんて、もうないかもしれないけど。
沙羅先輩が許してくれるなら…僕もその席の隣に立っていたいです。
僕は沙羅先輩たちの近くで、”生きる”…っていうのを、考えていきたいって思うから」
そう言って、少しだけ彼女から視線を外して、想いを噛み締めるように微笑む。
”生きる”は…大変だ。
まだ自分は、答えも見つけてはいない。
でも、それを考えたい。考えていかないといけない。
なら、”我儘”を言うなら……
”ここ”で。
誰かの”生きる”を見て。
誰かの”生きる”に関わって。
誰かの”生きる”を…支えて。
多分その先。
自分が”生きる”というものの答えを見つけられるのは、その…先にある。
ぼんやりとした、唯の、直感のようなもの。
でも……きっとそうだと。
そうでありたいと、想う。
ある意味…これも”我儘”だ。