2020/10/28 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁・刑事課」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 >
ハロウィン当日もまじかに迫るという最中、ようやく風紀委員の職務に復帰したのは良いものの、配属替えによる提出書類や、報告書に追われているというの現状である。
それも丸一日格闘して居れば、いい加減に終わりになりつつあった。
自分が提出書類の中にいくつか現状の学園の状況を知るために取り寄せた書類が幾つか混じっている。
なんでもつい最近風紀委員と公安委員による合同の情報交換会なる物があったらしい。
朧車のその後や、神代理央が、あれから何をしているのか、気になることは多い。
「それにしても、病み上がりにこの仕事量……なかなかどうして。」
風紀委員とは意外にブラックである。
本土の警察機構もおそらくは同じようなものなのだろう。
公務員とはそのようなものだ、と言われてしまえばそれまでであるが。
■水無月 沙羅 >
参ったなぁと少しため息を零しながら、椅子にもたれかかるようにして天井を見上げる。
もともと神代理央の部下として働いていたが、その任も外され、今はレイチェル・ラムレイの紹介によってこうして刑事課の末席に居る身である。
贅沢は言えなかった。
まだ風紀員を止める訳にもいかない。
辞める理由は山のようにあるが、この場所でしか手に入らない情報、出来ない事が山のようにある。
自分のやりたいこと、それが今は少し、行方不明になりかけてはいるが。
「最近、星を見てないなぁ。」
薄暗くなりつつあった空を見つめる様に、窓の方に目を向ける。
もはや夏の空とは言えない程変貌してしまっている景色に、其処か寂しさを感じていた。
たったひと夏、その間に起きたことが大きすぎた。
もう、星に願いをつぶやくほどの気力もなく。
ただ、何かをしなくてはいけないという焦燥感に近い感情に追われている。
「私、何してるんだろう。」
人気のないオフィスに、小さくその声は響くだろうか。
ご案内:「風紀委員会本庁・刑事課」に園刃 華霧さんが現れました。
■園刃 華霧 >
手続きは済ませたし、一応部署入りしたわけだけれど……
まあちょいっとばかり、どうしたものか、と悩まないでもなかった。
そんなわけで、さっさと来てはゆったり帰還……
誰もいない、と思ったのだけれど。
「……ン―……?」
なんか明かりがついてる。
なんだなんだ、仕事馬鹿はよくないぞ。
まさかあいつじゃなかろうな……と、こっそり部屋を覗いてみれば……
「……サラ?」
アレェ―
これは予想外
■水無月 沙羅 >
「ん……?」
自分の名前を呼ぶ声がする。
この課に配属されたのを知る人物はまだそう多くはない。
自己紹介も済んでいないし、配属手続きも終わったばかり、必要書類の山はまさにデスクの上。
となれば必然的のその名前を呼ぶ声の主は限られてくるわけで。
「あれ、かぎりんどうしたの? 刑事課に何かご用事?」
くすりと笑ってその声に振り返る。
そういえば彼女はトゥルーバイツ以降どこの配属だったのかを聞いたことが無かった。
およそ警邏部辺りではないだろうかとは踏んではいたが、こうして風紀委員本庁の中で会うのは初めてだ。
少しは休憩でもしようかと、デスクに向かっていた椅子を姉と慕う少女の方へ向けた。
■園刃 華霧 >
「……アー……いヤ、アタシも色々あって無所属から、こッチになッタんだけド、な」
その決定も、一瞬取り下げかけたのだが……
目の前の相手が入ると知って、結局は決意したのだった。
で
「……おイおいオい、ちょット仕事多すギじゃナい?」
少女の目の前にある書類の山を見て、思わずうめく。
あーもう、予想通り
「無理スんなっテさー。この間、病院入ってタとこダろー?」
適当に椅子を引っ張ってきて少女の目の前に座る。
■水無月 沙羅 >
「む、無理はしてないよぉ?」
単純に仕事が溜まっていただけであり、やらなければいけないことが詰まれているだけ。
それももうほとんど終わっている、山になっているのは目を通したい資料がほとんどだ。
流石に刑事課という事もあり、今まで居た課よりも多少扱う事件は変わってはいる。
しかし、基本的な業務内容に変わりは無い。
凶悪な事件に対する出動が少々増える程度だろう。
「ほら、転属に関する書類とか、休んでた間に起こったことの報告書とか。
いろいろ確認したいことも多いし、ね?
それに体の方は万全なんだから。」
いつでも身体的にはオールグリーン、それが自分の長所でもある。
いや、正確にはいつでもオールレッドのところを無理やり修復しているに過ぎないのだが、結果的に問題がないのであればそれでいい。
それに、仕事に集中していた方が気も紛れるという。
すこしだけ、ドヤとでもいうように胸を張る。
目の前に座る少女に微笑みかけて、大丈夫だという事をアピールして行く。
「あれ、じゃぁかぎりんも刑事課?
そっか、じゃぁ今日から同僚だ。
知ってる人が居るならちょっとは安心かな。」
鉄火の支配者の元部下にして振られた恋人ともなれば、奇異な目は免れないであろうし。
そういう意味では、親しい人物が近くに居るのは心強い。
■園刃 華霧 >
「ほンとかー?」
じーっと見つめる。
この相手は、そういうところが鈍い、というより感覚がちょっと違うのはよくわかっている。
なにしろ……『妹』だから。
「いろいろ かくにんしたいことが おおい」
わざわざ復唱する。
「……マ、小言の類っテのは性じゃ無いカらアレだけドな?
いきナり仕事っぽイことカら、アレやコれやシてんノはヨくなイぞ。
身体だケの話デもナいしナ」
体は万全、とそんなことをいう相手を軽くだけたしなめる。
まったく難儀な性分をしている。お互いに。
「此処じゃ、アタシも新入りダけんドね。
新人同士、仲良く協力シてやっテこーナ。」
けたけたと笑う。
まあ二人揃えばなんとでもなるだろう、とちょっと思いながら。
「ダからー、色々たメこむナよー?」
■水無月 沙羅 >
「う、ほ、ほんとだしー、嘘は言ってないし―。」
正直、どこまでが『無理』で、どこまでが『平気』なのかというその境界は曖昧だ。
つい最近までは、仕事に裂く以外の時間がもったいないと、睡眠や食事すらもほとんどとっていなかったほど。
『母』という大きな存在によってそれも普通の人間と大差ないほどまでに文化的にはなってきたが、基本的に不死者というものは自分の事にとってはひどく無頓着だ。
それは沙羅も当然例外ではなく、娯楽も、食事も、衣食住も、全て手段でしかなかった。
ほんの少し前までは。
だから、彼女の言う『無理』がどこからなのか、それがいまいちわかっていなかったりする。
「う、それは、だめですか。」
それは無理に入るのか、と少したじろいだ。
「んー……そういうものかな。
でもやらないといけない事なのは確かだし……。
それにほら、動いていないと落ち着かないし、ね。」
彼女には、その本音を漏らす。
きっと他の同僚にはその言葉を言う事は無いだろう。
レイチェル・ラムレイは事情を知っているという事もあり、何かしら話すかもしれないが、おそらくここまでフラットに話せるのは彼女だけだ。
そういえば、華霧はレイチェルと仲が良いのだったっけ。
「あはは、うん、協力しようね。」
色々な意味で、彼女が此処に居る事が自分の支えになっているのだな、とも思う。
ひょっとしたら、姉なりに気を使ってわざわざここに来たのかもしれない。
そんな思考が頭をよぎったが、言葉にすることもない。
時期的に都合が良すぎるな、とは少し思わなくもなかったが。
「ため込む……ため込むかぁ。
仕事はため込むつもりはないけど、ね。
うん。」
仕事は、と口を濁す。
暗に、それ以外の事は少しため込んでしまうかもしれないという白状でもある。
気に病むことが、最近周りには多い。
椎苗の事もそうだが、何よりより一層過激になったと噂のある彼の事がどうしても頭から離れないのは、隠しようもない事実だ。
■園刃 華霧 >
「……あンま、人のコト言えタもんジャないンだけど、サ。
『できる』から『やる』じゃ……ドっかデ、ぶっ壊レるンだっテ。
『自分自身』のコトも考えナいとダメだってナ」
それは自戒も込めての言葉。
おそらくだけれど、自分もだけれど、サラの方もその辺の感覚は鈍いだろうと思う。
お互い、多分これから学ばないといけないのだろう。
「そりゃ、ナ。
気持ちの問題も、在るシな」
色々なことを、ただそれだけにまとめて
言葉少なに答える。
「……まー、困ったときハな。
ちゃんト、言うンだぞ?」
なんとなく、頭を撫でる
■水無月 沙羅 >
「自分自身の事……か。
あのね、かぎりん、怒らないで聞いてほしいんだけど。」
そう前置きすることにはきちんと理由がある。
怒られるのが怖いとかそういう事ではないのだけれど。
こういうことを言って反応が良かったためしは一度もない。
「自分の為に何かするって、どういう事なんだろうね。
したいことをする、とは違うんだっていうのは、なんとなくわかるっていうか。
私のしたいことは、私の為にはならないから、だからこう。」
「『自分自身』ってよくわからないんだ。」
沙羅にとって、それはとても希薄なものだ。
唯一の趣味の天体観測はいいとしても、それ以外の人間らしい生活というものは、つい最近始めたばかりで、この風紀委員という仕事すらも与えられた生き方に過ぎない。
今では自分の意思で続けているが、それも自分の為というよりは、見知らぬ誰かの為。
もしくは、特定の誰かの為という割合があまりにも大きい。
だから、自分自身と言われてもよくわからない。
自分とは何なのか、と言うと哲学的に聞こえるかもしれないが、それは沙羅にとってはもっと大きな問題であり、課題でもあった。
誰かに依存しすぎるあまりに『自身』が希薄であることに、ようやく気が付き始めていた。
それが自己犠牲という名の不死の使い方に現れていることも。
「それが、今こまってること……かな。」
えへへと、すこしだけ笑って見せる。
■園刃 華霧 >
「……」
怒らないで、という前置きで語られる、
真摯な告白を黙って聞く。
「……アー……」
呆れでもなく、落胆でもなく……
ただ、困ったような……そんな微妙なため息を盛大につく。
「……別に、怒りはシないサ。
そンな話にゃ、よーク心当たりがアるかンな」
やれやれ、と苦笑する。
「その辺の話、スる前に……
ちょット気にナってルことあっテな。」
ちょっと此方も前置き。
「妙な質問になるけどサ。
サラは、さ。なーンで、アタシをこンな信頼……信頼、ってイうのカな。
姉って言ってクれルのさ?」
自分が『妹』と受け入れて納得していることは最近、なんとなくわかったような気もする。
であれば、向こうは……どうなのだろう。
■水無月 沙羅 >
「よくある事、なのかな。」
盛大なため息と、心当たりがあるという言葉に少し苦笑いする。
困らせてしまったという少しばかりのチクリとくる胸の痛みに顔をしかめる。
「気になる事……?」
姉から何かを改まって聞かれるという事は少なかった。
往々にして、彼女は何かを察し、聴くという事に傾注するイメージが強い。
それ故に、聞きたいことというのは大事なことなのだろうかと少し首をかしげる。
「んぇ? かぎりんが『姉』な理由?」
前もそんな話をしたことがある気がする。
なんで懐かれているのかとかそういう事だっただろうか。
改めて聞かれると難しいが、強いて言うなら。
「なんだろう……優しいし、親身になってくれるし……?
あぁ、でもそうだな。
たぶん一緒に話してて安心するから……かな。
こう、なんとなく『似ている』気がして。
人生の先輩……みたいな。」
どこが、とは正確には言えないが。
「いつも何かしら抱え込んじゃうところとか?」
にししと悪戯っぽく笑って見せる。