2020/11/16 のログ
ご案内:「風紀委員本庁─牢屋」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
ご案内:「風紀委員本庁─牢屋」に神代理央さんが現れました。
■刀々斬 鈴音 > ……牢に入ってからしばらく経つ。
調査が行われたが鈴音がやったことは殆その殆どが落第街で記録に残っていない。
本人の証言による落第街の住民に対する傷害と風紀委員との戦闘行為。
異邦人である事も含めてそこまで重い刑とはならないだろうがしばらく出られなのは間違いないだろう。
そんな事を教えられても刀々斬鈴音はただ牢の隅で座り込んでいた。
「血腐レ……フレイヤ様……」
何もないこの部屋では時折鈴音が小さく漏らす一本と一人の名前以外の音はない。
■神代理央 >
さて、そんな地下牢に響く硬質な足音。
何時の間にか見張りの風紀委員の姿も無く、座り込む少女の聴覚には牢に近付く足音だけが聞こえるだろうか。
「……無様なものだな、人斬り。よもや、此の場所でお前と会う事になろうとは」
コツリ、と足音が少女の牢の前で止まる。
投げかけられる言葉は、尊大と傲慢さを過剰に滲ませた少年の声だろう。
少女が視線を上げれば、其処に立っているのは皺一つない風紀委員の制服を身に纏い……一振りの刀を手に持つ、少年の姿があるだろうか。
その刀は、少女が求め焦がれてやまない、妖刀――
■刀々斬 鈴音 > 聞き覚えのある声に顔を上げれば見たことのある姿。
数少ない友好的に思っている風紀委員。
そして……
「返して!!私の!!私の血腐レ!!!」
檻に張り付いて手を伸ばす。
届くわけがない。
「私の……鈴音の刀!!!」
金属の檻は少女の力ではまるで動かない。
■神代理央 >
少女の嘆きも、伸ばした手も、己には届かない。
縋りつく様な声を上げる少女を見つめるのは、醒めた様な瞳。
「返して?何故風紀委員に捕らえられた貴様に、武器を返す訳がなかろう。貴様は唯、委員会の処分を待っていればそれで良い。
まあ、釈放されたとして――此の刀が、貴様に返却される可能性は低いだろうがね」
小さく肩を竦めながら、手に持った刀を軽く振って弄ぶ。
「丁度、新しい武器が欲しいと思っていたところでな。
押収した武器を、風紀委員が使用するなど珍しくも無い。
私が刀を振るうのも、中々見物だとは思わぬかね?」
まあ、剣道の心得など微塵もないのだが。
少女の不安を煽り立てるかの様に、静かに笑って首を傾げて見せた。
■刀々斬 鈴音 > 見える距離にあるのに届かない。
自分以外の誰かが血腐レを持っている。
「返して!!!それは鈴音の刀!!!」
檻を叩く。
妖刀により強化されていない鈴音の力は非力な女子高生と変わらない。
ただ手を痛めつけてその手に血を滲ませるだけ。
「返して……お願いします。返してください。
お願いです。……返してください。」
檻に縋り付いて懇願する。
その瞳には涙。
何も出来ない。何も。
刀から無機質な声が聞こえる事はない。
■神代理央 >
檻に自らの手を叩きつけ、血を滲ませる少女。
其処まで思い入れのある――というよりも、刀無くしては生きていけないと言わんばかりの少女を、静かに眺めていた。
其処で、一度監視カメラに視線を向ける。
予定通り――稼働を示すランプは、付いていない。
「……とはいえ、貴様は私の期待を裏切った。
違反部活を狩り、違反生を斬り。報酬は随時振り込んでいた。
それでも貴様は結局、風紀委員に捕らえられ、今は檻の中」
「そんな貴様に。情けをかける必要があるのかね。
貴様は此れ以上、私に何が差し出せるというのかね」
無力に嘆く少女を。
懇願する少女を。
冷笑と共に、見下ろしていた。
それどころか、それで話は終わりだと言わんばかりに――少女に、背を向けるだろう。
それが、少女の絶望へのトリガーだと、分かっていても。
■刀々斬 鈴音 > 風紀委員と戦ってしまった……主人にも止められていたのにも関わらず。
十分に釘は刺されていたのに。
……そして捕まっているというのだから……失望もされる。
「あ…あ……。」
期待を裏切り、約束を破り、敗北して、捕まって。
切り捨てられない要素がどこに残ってる?
「待って!!待って!!!!ごめんなさい!
……私が……鈴音が悪かったです。
……ごめんなさい。ちゃんという事も聞きます……何でもします……だから……!!」
見捨てないで。
泣きながらその背中に縋る。
■神代理央 >
少女は、引き金を引いてしまった。
その為に、不安を煽り、絶望を刻み、少女の命運を己が握っていると"思い込ませた"
何でもする、と。見捨てないでと。慟哭と共に縋る少女に――唇を小さく歪めた笑みを浮かべて、振り返るだろう。
「……ならば、鈴音。貴様に一つだけ、此の状況を打開出来る術を教えてやろう。
此の薄暗い牢から出る事も出来るし、風紀委員に追われる事も無い。
何より――此の刀を、貴様は取り返す事が出来る」
きっと、他にも様々な方法はあるだろうに。
まるで、少女が助かる術は自分だけが知っていると言わんばかりに、確信と尊大さに満ちた言葉を投げかける。
「但し、それは従属の道。
今迄の様な、傭兵と雇い主の様な利害関係で繋がる契約ではない。
貴様の力は、私の力。貴様は、私の刃。
私が斬ると決めたものだけを斬り、私が命じたものだけを切り捨てる、服従の刃」
穏やかな声色で語り掛けながら、膝をついて少女と視線を合わせる。
涙に濡れる少女の瞳を見つめるのは、仄暗い焔を讃えた紅い瞳。
「……それでも、貴様が構わないというのなら。
私に付き従うというのなら
『忠誠こそ我が名誉』と、服従するのなら」
「………お前の望みを、叶えてやろう」
どうする?と問い掛けるその声色と笑みは、慈悲すら感じさせる程穏やかに見える。
しかし、その提案を拒否すれば――もう、少女に己の庇護がかけられない事も、言外に示しているのだろう。
■刀々斬 鈴音 > その少女のような顔立ちに浮かぶのは尊大で自信に溢れた表情。
従えば全てが叶うと思うような説得力に満ちた言葉。
「……教えて!!
私は!鈴音はどうすればいいの!?」
希望、目の前に見えた希望に必死に手を伸ばす。
従属、従ってそれで再び刀を手に出来るなら……ここから出られるなら……。
「……ちーちゃん。」
妖刀血腐レその愛称を呼んで男の手にした刀に視線をやる。
……いつもの無機質な声は聞こえない。
「……分かった……それで血腐レを…鈴音の命を返してくれるなら。
……鈴音は……刀々斬鈴音はアナタの刃になる。」
生きる為なら。血腐レの為なら。何にだって従える……。
「『忠誠こそ我が名誉』」
■神代理央 >
少女は、己の言葉に答えた。従った。隷属した。
此れで、取り敢えずそれなりの戦力になる『個人』を部隊に投入する事が出来るか、と内心浮かべる笑みは深くなるばかり。
「何、簡単な事だ。
現在私は、風紀委員会において元違反部活生を隊員とした部隊を率いている。
特務広報部、というのだがね。まあ、聞いた事があってもなくても構わない」
「その特務広報部に、貴様を迎え入れる。名目上は風紀委員だが…まあ、予備隊員の様なものだな。正規の風紀委員に比べれば、立場も権限も弱い」
「仕事の内容は簡単だ。落第街や違反部活で、私が命じた者を斬るだけ。実にお前向きの仕事だろう?
但し、命令には絶対服従であること。
斬ってよいのか。斬らずにおくのか。その判断は全て、私が行う」
「言うなれば、私の飼い犬。私の猟犬。
それでも構わないというのなら」
訥々と説明した後、少女の前に掲げるモノ。
一つは、牢の鍵。少女を自由にする為の、楔を解き放つ鍵。
もう一つは――少女の愛刀。妖刀 血腐レ。
「この二つは、お前のものだよ。鈴音」
にこり、と笑いかけるその笑みは。
少女の罪を全て許すかの様な。そして、救いの手を差し伸べるかの様な。
――その内実は、少女を己の手中に収める為の甘言でしかないのだが。
■刀々斬 鈴音 > 特務広報部。その名前は聞いたことない。
元違反部活生を集めた組織。
「……風紀委員、鈴音が?」
想像した事も無かった。
自分が許されて刀を振るうなんて。
以前の契約では指示はされていたが公には認められていなかった。
それが斬る相手が限定されるとはいえ人を斬るのが認可されるのだ。
……言いようの無い気持ち、決して悪いものではない気持ちが沸いてくる。
「飼い犬でも猟犬でも、これからは認められて人を斬れるって事でしょう?」
誰にも後ろめたいことなく人を斬ることが出来る。
何て素晴らしい事だろう。
「……ありがとう理央様…いや隊長?隊長でいいの?
……これから鈴音はちゃんと選んで人を斬るって約束する。」
相棒が手に戻る。
身体に力がもどってくる千切れていた半身一つになった感じ。
「……お帰りちーちゃん……もう離さないからね。」
■神代理央 >
「そういう事だ。言っただろう?お前向きの仕事だ、と」
合法的に人が斬れる。『体制側』の一員として、刀を振るう事が出来る。
それは、少女にとっても悪い話では無い筈。
恐らく、普通に勧誘していても少女は話に乗ったかもしれない。
それでも敢えて。敢えて不安と絶望を煽ったのは…偏に、己への忠誠心を植え付ける為。唯、それだけの為に。
「表向きは風紀委員の下部組織故な。隊長、というよりも、部長と呼ぶと良い。
各現場において、その時々の部隊長は任命するからな。
呼び方よりも。何よりも。お前に求めるのは絶対の忠誠。唯それだけだ」
刀を握り締めた少女に告げるのは、事務的な口調による業務指示。かちゃん、と鍵を開けて扉を開くと、立ち上がって少女に言葉を続ける。
「さて、何時まで牢で刀を抱いているつもりかね。
行くぞ。もう此処は、お前の居場所では無い。
お前の居るべき場所は、私の手中なのだからな」
告げる言葉は、最初と同じ様な尊大な声色で。
少女の"支配者"となった事を態度で示しながら――早く出ろ、と促しつつ、少女に背を向けて歩みを進めていく。