2021/01/25 のログ
ご案内:「病院・ICU」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「───……」

伊都波凛霞が緊急搬送されて数日

左前腕骨骨折、中節骨完全骨折、右前腕骨骨折、左右大腿骨粉砕骨折
左鎖骨骨折、右鎖骨不完全骨折、右肋骨及び左肋骨亀裂骨折
頚椎損傷、左右肘靭帯及び左右膝靭帯損傷、脳出血に加え、
瓦礫による擦過傷は全身に及ぶ

挙げればキリのない重篤な昏睡状態のまま、時間が過ぎていった

その間、凛霞は夢を見ていた
あの、最後の瞬間に頭の中に強制的に流れ込んできた膨大な、情報の洪水
それらの断片の夢──

人間の脳の限界を超える過負荷
精神構造の破綻を逃れるため強制的に『意識』を飛ばした結果
物理的損傷は脳の毛細血管の一部が連鎖的に破裂しただけに留まり、命に別状は…一応なかったらしい

無機質なベッドに寝かされ、包帯とガーゼに包まれた中で、ゆっくりとその鈍色の瞳が開く

伊都波 凛霞 >  
ぼんやりと滲む視界、見知らぬ天井がゆらゆらと歪んで見えた

最初に気づいたことは、身体が全く動かないこと
あれからどうなったんだっけ…とまだ覚醒しきらない思考を巡らせるも、
頭の中にはまだ夢の内容が微妙に残り、ぼうっとしていた

寝かされていることはわかるし、薄い毛布が掛けられていることも理解った
どうやら病院には、運ばれたらしい──

少しずつ、少しずつ五感が戻ってくる
視覚の次は、聴覚
ずっと砂が流れるような、耳鳴りがしているような状態だった
それが少しずつクリアになると…慌ただしい周囲の様子を感じ取ることが出来た

「………──」

とりあえず、意識を取り戻すことは出来た
まだ混濁としてはいるものの、精神の崩壊を免れたのは少女元来の精神力の強さ故か
再び、眼を閉じる──次に眼を開けた時には…また違う天井を見ているのだろうか

ご案内:「病院・ICU」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「病院・個室病棟」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
天井も白い、壁も白ければベッドも白い
汚れのない、白に包まれているとどこか心が安らぐ気がする
だから少女は病院が嫌いではない
──とはいえ自分がこんな状態でお世話になることなんて、初めてなのだけれど

「………」

ICUから個室に移され、酸素吸入器も外れた
当然まだ身体はまったく動かせないけれど

看護師さんが今日はいい天気ですよ、とカーテンを開けてくれたので、ぼんやりと外を眺めていた

ご案内:「病院・個室病棟」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
日中という事もあって、それなりに賑わう病院の廊下を歩いていく一人の風紀委員。
折り目正しく、皺一つない制服。風紀委員の腕章。小柄な体躯。
見舞いの品だろうか。大きな紙袋を抱えた少年は、一見唯の見舞客の少年でしかない。
しかし、廊下で彼とすれ違う患者や見舞客達は、おっかなびっくりという様子で道を開けるのだろう。
その小柄な少年は、不機嫌――というよりも、鬼気迫る様な雰囲気を纏っていたのだから。

そうして、目的の人物が居る病室の前へと辿り着く。
流石に此処迄辿り着けば、深呼吸を一つして気分を落ち着けようと。見舞いに来るのに焦っても仕方がないし、それを悟られては要らぬ心配をかけてしまう。

そうして数秒の後。
コンコン、と規則正しく病室の扉をノックする音が少女の耳に入るのだろうか。

「……こんにちは、神代です。伊都波先輩、起きていらっしゃいますか?」

ICUに入る様な重傷と聞いている。眠っているのならば、それを邪魔するのも悪いかな、と。
少し遠慮がちな声で、扉の向こうからそっと声をかけるのだろうか。

伊都波 凛霞 >  
ノックの後、部屋の中から返事はなかった
しかし代わりに…近くにいた看護師が少年の元にやってくる

状態をみれば当然面会謝絶──ただし、風紀委員関係者には通ってもらうようにと看護師には伝えておいたのだ
なるべく早く、伝えておきたい事柄があったから

看護師は少年の腕章を確認し、どうぞと病室のドアを開け、中へ入るように促した

───……

本当ならば自分自身の手で報告書も書きたいところなのだが、
この有様ではそれも叶わない
レイチェルさんに凄い迷惑かけちゃうな…と、心の中でゴメンナサイしておく

痛み止めの麻酔が効いているのもあってか、指先すら動かせない
なので、ゆっくりと首を動かして、視線だけをドアのほうへと向ける

トレードマークのポニーテールも結っていない、
顔に至るまで包帯とガーゼが貼り付けられた少女には、普段の凛霞の面影は失われていた
少年の姿を視界に捉えれば、ガーゼの隙間から覗くその表情をほんの少し、和らげた

神代理央 >  
――返事は、無かった。
小さく溜息を吐き出すと、見舞いの品をナースセンターに預けようと踵を返しかけて…近くにいた看護師に、呼び止められる。

事情を聴くと、少し困惑した様子を見せるだろう。
しかし促される儘に、開かれた病室のドアから室内へと歩みを進める事になる。


ベッドに横たわる少女の姿は、実に痛々しいものだった。
それが己の中で燻る昏い怒りに、薪をくべる事になる。
尤も、それを少女に悟られる訳にはいかない。
彼女には、色々と世話になっている。頼りになる先輩なのである。
そんな彼女に、此れ以上の心労をかける訳にもいかない。

「……お見舞いに来るには、少し早過ぎたかなと思ったんですけど。先輩が入院されたと聞いて、いてもたってもいられなくて」

ぺこり、と一礼して、穏やかな表情と声色で言葉を紡ぐ。
そうして、なるべく足音を立てない様にベッド脇の椅子に腰掛けた。

「……先ずは、先輩が無事で何よりでした。いや、無事…というのは語弊がある…いや、ないのかな…」

彼女が負った怪我を考えれば、無事というのは如何なものかと。
しかし、先ず何より生きて無事に此処に居る事を喜びたい。
それを何と言って良いのか分からず、見舞いに来ておきながら悩みこんでしまう始末。変な所で不器用、というところだろうか。

伊都波 凛霞 >  
いてもたってもいられなかった…と言葉を掛けられれば、微笑みを返す
顔の大部分は隠れているが、ベッドの横にかけた距離感なら、近くて表情はよく見える

「ごめん、ね。まだ、ちょっ、と…うまく、しゃべれなくて」

小さいながらも言葉を紡ぐ、どことなく呂律が怪しく、そのダメージの深さを感じさせる

「あは、は…。おおけが、しちゃった。
 ゆだん、したつもり、なかったんだ、けど、なぁ」

「うん…来て、くれて…あり、がと、う」

無事で何より、という言葉には小さく小さく、頷いた

「ちょっと、怪我が厄介、で…
 そのうち、腕のいい、魔術医、さん、が、来てくれる、みたい…」

──特に手足は壊滅状態と言える。手術をしてもまともに戻るかどうかわからないのだと、たどたどしく、語った

神代理央 >  
言葉すら、たどたどしい。
普段明瞭かつ聡明な言葉で後輩達を導く彼女が、まるで幼い子供の様な呂律で喋っている。
怪我の度合い、ダメージの深刻さ。それらを如実に露わにしている様な彼女の様に――表情を曇らせる事を、隠すことは出来なかった。
彼女が、穏やかに微笑んでいることすらも、直視するのは、辛い。

「……無理はしないでください。先輩の怪我の具合は、大凡伺っています。話す事が辛いなら、無理に話さなくても大丈夫ですから」

油断したのだと。来てくれてありがとう、と。
言葉を紡ぐ彼女に、小さく首を振る。
やはり、もう少し彼女が回復してから見舞いに訪れるべきだったかと、後悔の念を抱きつつ――

「……そうですか。大丈夫ですよ、常世島の医療技術は随一ですから。先輩の怪我だって、きっと直ぐに良くなります。
入院に慣れた私が言うんですから、間違いないですよ」

と、少しだけ冗談めかして答えてみせる。
本当は、己のツテやコネを活かして彼女に最上級の治療を受けて貰いたい。けれど、そうして彼女の回復が早まったとしたら――彼女はまた、無理をするのではないだろうか。
であれば"深刻な事態"になるまでは、素直に病院の治療を受けて貰って――彼女に、休んでもらった方がきっと良い筈。
だから、彼女の言葉に返すのは、本当に軽口の様なもの。
少しでも、彼女の気が軽くなるように、と。

「……ああ、これ。お見舞い…といっても、何持って来ればいいのか分からなくて、色々詰め込んできたんですけど…」

と、抱えた紙袋をごそごそ。
中から出て来るのは、電子書籍の端末だの、ネコマニャン柄のブランケットだの、扶桑で一番値段が高かったという理由だけで買ったドライフルーツだの。ラ・ソレイユのクッキーだの。古武術の歴史について書かれたマニアックな古本だの。
統一性の欠片もない見舞いの品をサイドテーブルに並べた後。流石にそのラインナップが恥ずかしくなったのか、大人しく袋に戻してベッド脇に置いてしまうのだろう。

伊都波 凛霞 >  
「…ごめんね」

気を使わせちゃったな、なんて苦笑する
表情を変えるだけでもやや痛ましい

「でも、伝えてほしい、ことも…あるから…」

二重の意味で、この早いタイミングでのお見舞いは有り難かった
表情を曇らせる理央の顔を見れば、自身の行動を後悔しているのは見てとれてしまう

そしてお見舞いの品や、ほんの軽口まで
少年の気遣いがよく伝わって、暖かい
こんな後輩がいるんだぞー、と元気な時なら自慢したいくらいだった

神代理央 >  
「…先輩が謝る事なんて、何もないです。
謝るくらいなら、しっかり休んで早く元気になって。
皆を、安心させてあげてください」

表情に感情が出ていたのを、彼女の言葉で察すれば。
少し慌てた様にふるふると首を振り、少し偉そうな――彼女の知る、何時もの後輩の様に振る舞うだろうか。
怪我人に心配させてどうする、と内心自分を叱咤しながら。

「……そう言えば、外で看護師さんにも言われました。
風紀委員は通していい。なるべく早く伝えたい事柄があるって」

伝えて欲しいこと。
彼女に限って、私信だの個人的な要件であるとは考えにくい。
もしそうだとするなら、『風紀委員』ではなく友人を頼る筈。
であれば。

「………先輩を、こんな目に合わせた犯人のこと、なんですか?」

確信を持ったかの様な口調で、静かに彼女に問いかけるのだろうか。

伊都波 凛霞 >  
確信めいた理央の口調
それに対して、小さく、こくんと頷いた
そして……

「…う、ん。私と…それ、と…
 数ヶ月前、の……マルレーネ、さんの、事件の…きっ、と…中心、人、物……」

あの事件には、目の前の椅子にかける少年も関わっていた
こんな形で繋がるとは、少女自身は想像もしていなかったが──

「…異能学会、所属……名前、は…松葉、雷覇……。
 風紀委員会、に…伝えて……」

言葉を紡ぎ終えると、僅かに辛そうな表情を浮かべ、ふうと大きく息を吐いた
とりあえず最も重要なことを伝えることができた、と…僅かに気が楽になる

──…既に異能学会から松葉雷覇博士が姿を消していることは、まだ誰も知る由はないのだが