2021/02/18 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 特務広報部室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……そうか。いや、御苦労。報告書は後程精査しよう。
今日はもう上がって構わない」

落第街方面の状況を報告しに訪れた部下を一瞥し、報告書を受け取る。
此の執務室を訪れる時には、一応フォーマルな服装をさせてはいるが、やはり元違反部活生の隊員達は、どうにも堅苦しい服装は苦手らしい。

早く帰りたいなー、という雰囲気を滲ませる隊員に少し苦笑いを浮かべながら退室の許可を出せば、一礼して立ち去っていく。
一礼するだけでも随分と進歩したものだ、なんて思ってしまうのは、部下への贔屓目だろうか。

「………今のところ、問題は無い、か。いや、問題が無い事の方が、かえって恐ろしいが…」

砂糖とミルクをたっぷり入れたカフェオレで喉を潤し、革張りの豪華な椅子に身を預ける。
茶菓子代わりに机の上に広げているのは、先日風紀委員会に持ち込まれた『とある人物』からの贈り物。

「……学生証まで提示して持ち込むとは、良い度胸をしているというかなんというか…」

差し込まれたメッセージカード。
悪趣味極まりない、とは思うが、先日の尋問の成果を補強する形にもなった、彼女からのメッセージ。

「…物自体は普通に美味なのが、また腹立たしいな」

口の中に放り込んだチョコレートは、上品な甘さと共に口の中で溶けていく。

神代理央 >  
そんな独り言と共に叩かれるキーボード。
特務広報部の部隊編成。所有兵器。異能、魔術などの能力者達の一覧。
現有戦力を精査し、洗い出し――此方側の『牙』を磨き上げておかねばならない。

「護送にもある程度の戦力を割かねばならないだろうが……難しいところだな。余りそちら側に戦力を割いては、肝心の落第街へ回す戦力が…」

ふむ、と悩みながらもキーボードを叩く手は止まらない。
人気のない室内に、硬質な打刻音が響く。

「……とはいえ、連中が自ら姿を現してくれるというのは実に好都合ではある。
纏めて叩き潰すなら、此の機会を活かさぬ手はない。
何方かと言えば、寧ろ――」

『計画』とやらは派手にやってくれた方が良い。
今迄闇に隠れていた者達を炙り出し、激突し。
そして何より――

「落第街や違反部活の脅威を、平和ボケした連中に再認識してもらうには十分な戦力を…連中には集めて貰わねば困る」

違反部活の大規模な反抗。
それは、是迄違反部活へ融和的な態度を取っていた者達への心証というものも…少なからず、変化されるだろう。
そして何より。

「『表』にも、訴えやすいからな。悪者、犯罪者というレッテルは」

ご案内:「風紀委員会本庁 特務広報部室」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
刀々斬 鈴音 > コンコンと扉を叩くノックの後。
返事の前に乱暴に扉が開かれる。

そこにいたのは普段と変わらない制服姿、暫定副部長、刀々斬鈴音。

「失礼しまーす!部長!部長の決裁がいるやつ持ってきたよ!!」

手に持ったクリアファイルに何枚かの書類が挟まっている。
……このクリアファイルは他の部員が以前鈴音が書類を曲げてしまい怒られた時にくれたもの。

「とりあえずこれが今週中だからこれだけハンコ頂戴!」

一番手前の書類をクリアファイルから出してピラピラと机の前で揺らす。
……この特務広報部の中でも持っている常識は下から数えたほうが早いレベル。

神代理央 >  
物思いに耽っていれば、室内に響くノックの音。
返事をする前に勢い良く開かれた扉の先には――見慣れた少女。
暫定、の文字が取り払われつつある特務広報部暫定副部長。

「…ん、ああ、御苦労様。鈴音も随分と事務処理が早く……」

と、労いの言葉をかけようとして、目の前で揺らされる書類。
こほん、と咳払いを一つ。
そして、大きな執務机の向こうから少女ににっこりと笑みを浮かべて――

「……書類の提出方法がなっていない。
書類はそういう風に揺らすものじゃない。チラシじゃないんだぞ。
それと、どういう内容で今週中に私の決済が必要なのか、簡潔に報告してから提出。一々私が目を通して、精査してから判子を押さねばならないのか?
最近は妙に書類が丁寧だからてっきり鈴音が頑張っているのかと思っていたが、よもや袈裟山辺りに丸投げしている訳じゃないだろうな」

小言。小言マシンガン。
びしびしびし、と音がするかの様に、少女に浴びせられる小言の銃弾。
かつて、警邏任務を共に行っていた風紀委員は言ったという。
『あいつ、小言の量も鉄火の支配者かよ(笑)』と。

刀々斬 鈴音 > 「うー……。」

不満そうな顔で睨みつけるも言い返せる場所はない。
素直に小言を受ける……。

「……えっと、一枚目が新しい装備の購入の申請のやつ。
 前に捕虜捕まえたのが評判良かったから捕獲の専用装備を買いたいんだって……
 事務の都合でけーちゃ…袈裟山君が今週中にハンコ貰って来てって言ってた!」

そんな感じで書類の説明をしていく、内容の理解はしているようで時々詰まりながらも説明は出来てい。

「鈴音も頑張ろうって気持ちはあるんだけど書類とか分かんないよ!
 学校行ってないから習ってないもん!!」

小言の銃弾を受けて少し涙目になっている。
学校行ったとしても書類の作り方は分からないかもしれない……。

「……そういえばどんな感じで動くの?
 鈴音的にはあんまり大事にならないほうがいいんだけど……。」

机の上に置かれた報告書に目をやりながら尋ねる。

神代理央 >  
「…捕縛用の装備か。許可はするが、捕縛と言う任務そのものは制圧よりも難しいものになる。装備の利用した訓練は怠らない様に」

ふむ、と頷きながら判子を押す。
少女の説明が所々詰まっていても、内容を此方が理解出来るものであれば小言は飛んでこない。
因みに、神代印は真珠色の象牙印にルビーの埋め込まれた豪華な物。こんな判子、学生が何処で使うのか。
ここで使うのだ。

「…まあ、書類の作り方や渡し方は一般常識の類になるからな…。
だけど、覚えておいて損はない。何れ島の外に出るのなら。
島の中でこれからも生きていくにしろ、そういうスキルは無駄になる事は無い。
ビジネスマナー講座とかの類も、落ち着いたら受講すると良い」

少女がピシッとキャリアウーマンになっている未来は、微妙に想像し難いが。
それでも、出来ると出来ないとでは、将来の選択肢に大きな違いが生まれる。
何時、自分が少女を含め部下の面倒を見られなくなるか分からない。一人で生きていく術を、身に着けて貰わねばならないのだから。

「……大事にはなるだろうな。応援がどれ程貰えるか不透明だが、恐らく特務広報部の戦力を総動員する事になる。
しかし、落第街の反抗作戦とやらは、決行の日まで邪魔はしない」

少女から投げかけられた質問に、椅子に深く腰掛けながら言葉を続ける。
ギシ、と上質な椅子が僅かに揺れる。

「精々準備に励ませ、奴等にも最大の戦力を吐き出して貰う。
そしてそれを、正面から叩き潰す。小細工の類は必要無い。
元より、私の異能はそういうものだからな」

刀々斬 鈴音 > 「ま、マナー……鈴音はマナー好きじゃない……。
 受けるのは考えとく……。」

マナー、テーブルマナーについては鈴音が主人と仰ぐ少女との関わりの中で努力を経て身に着けた。
彼女のそばにいるなら更に様々なマナーを会得しなければならないかもしれない。
飼われるというのも楽ではない。

「うーん、部長一人でやるならそれでもいいかもしれないけど……。
 ウチの子達はそこまで強いってわけでもないじゃない?
 
 準備されちゃう前に叩いちゃった方がこっちの被害が少なくて済むと思う……」

特務広報部の部員達は風紀委員からの出向組を除けば以前に比べればマシであるにしても強力であるとは言い難い。
そんなメンバー達を準備が万端に整ったところに投入すれば被害は避けられない。

「部長は確かに強いし、負けるとは思わないんだけど……。」

犠牲は少なくないだろう。

神代理央 >  
「…確かに、鈴音の杞憂と言葉は尤もだ。犠牲を少なくするのなら、事前に連中の行動を妨害し、決行を妨げるのがベストだろう。
反抗そのものを、未然に防ぐ事が最適解だろうな」

小さく頷いて彼女の言葉を肯定した後――少しだけ、迷う様な素振り。
これを彼女に言ってしまって良いものか、との杞憂を滲ませる。

「……しかしそれでも、連中の邪魔はしない。少なくとも特務広報部としては、なるべく藪は突かない。理由は色々あるが…」

「最大の理由は、連中の戦力を此処で可能な限り叩いておきたいからだ。ばらけていては、影に隠れていては此方も手を出すのが難しいが『蛇』という組織として動いてくれるのなら、今迄とは違い敵に痛打が与えられる。
出てこないなら、炙り出し、纏めて叩く。その邪魔建てをしたくない、というのが先ず一つ」

これはまあ、真っ当かどうかはさておき彼女にも理解はして貰えるだろうか。
しかし――

「……もう一つの理由は、特務広報部そのものの存在意義の為だ。
落第街の違反部活が、風紀委員会に対して決起する。
その事実だけでも大事だが、その対応に我々が当たり、上手くいけば当然儲けもの。しかし、上手くいかなかった時は。相応の被害が出た時は」

「 『違反部活を野放しにしてはいけない』
  『違反部活は学園の安全を脅かす明確な脅威である』
という認識を、穏健派……あー…違反部活生に温い連中に、与える事が出来る」

「そうなれば必然的に、特務広報部への評価は上がる。
成功しても失敗しても、我々の存在意義は認められる。
隊員達を正規学生にする為の風土も整う。
その為には…相応の犠牲を覚悟してでも、連中の最大戦力と事を構えなければならない」

要するに、政治的な問題なのだ。
特務広報部の行動は間違っていないのだと。
例え、特務広報部の活動によって今回の件が引き起こされたのだとしても、違反部活の脅威を強く訴える理由になるのだと。
その為に、犠牲を払うのだと。

淡々とした口調で彼女に告げた後。
机に置かれたマグカップを傾けて、喉を潤した。