2021/02/22 のログ
羅刹 > 礫によるハラスメント攻撃は成功している。
成果のほどは定かではないが、命中したという報告は受けているため相手に対して何らかの損害はあるだろう。

鳴り響く砲火の音、光の奔流。
その全てを受け止め続けながら巨人は進む。
並みの人物なら既に発狂しているだろうが…『神』に意識を向けているからこそ撮れる映像では…支配者にその様子は見られない。
魔術か、単純な精神性か。
何にせよ、発狂は期待できないだろう。
だが、時間は稼いでいる。

今のところ蜥蜴が把握している中で、相手の最大戦力であろう支配者を釘付けにしている時点で作戦は成功している。

また、反抗する力があること。それを知らしめることはできているであろう。
だが、まだあちらは苦戦しているようだ。
巨人のエネルギーが削られていく。耐えられるのはあと如何ほどか。
再生しているとはいえ、無限のエネルギーを持つ存在など早々ありはしない。

そして…最後の、トドメであろう攻撃がチャージされ始める。
巨人はその巨大な手を支配者に向けて伸ばすが、間に合いはしないだろう。
僅かに息のあった者、周りの生物。それらが全てそのエネルギーを奪われていく。

明らかに、必殺であろう攻撃。
人間相手には使わないであろう過剰火力。
それに加えて…『餌』を与えたはずの者からの予想外の攻撃。

全てを貫く魔力の一撃だけならば耐えたかもしれない。
しかし、得体のしれない存在からの挟撃によって。
レプリカの神は、動きを止める。支配者に向けていた手を降ろし、立ち尽くしているような状態だ。
崩壊は始まっていないものの、動くエネルギーが尽きたというところか。

(はっ、機は全て相手の味方ってか?)

予想外の事態にも、獰猛に笑う。
この程度がどうした。
これが表へ牙を突き立てようとする者への不幸なのだとしたら、それすらも踏み越えてやる。

「…何を止まってる。拳ぐらい振り上げろ」

大道具が言うには、この神は自分には完璧に従順だ。
ならば。
たとえ崩壊を招くとしても動かすことはできる。
ダメージにならないとしても、最後の一撃。
大きく腕を振りかぶった『神』が巨大な拳を支配者に向けて放つ。

(焔、そっちに『煙』を向かわせる。留置所案で使う予定だったが…そっちに居るのが機械だっつーならアイツは特別効くだろ。
判ってる移送ルートを辿らせて向かわせる。10分後だ。…叫んで、『骸』に伝えろ)

同時、まだ連絡がこないということは…苦戦しているであろう骸に支援を出す。
本来であれば留置所の警戒システムをダウンさせるために向かわせるはずだった、『煙』
あらゆる電子機械を行動不能にする煙幕を発生させる異能。
それを持った長身の男が、空を飛んで『骸』の救援へ向かっていく。

すぐに、あちら側で『焔』が

『煙』が来る、と告げるだろう。

神代理央 >  
一見、余裕を以て巨人と相対している様な素振り。
撤退途中とはいえ、こうして目立つ空中で巨人と戦うその姿を晒しているのだ。部下の前で、みっともない真似は出来ない。
何より、違反部活の連中に…思い知らせてやらねばならないではないか。
『鉄火の支配者』は、此の程度では揺るぎもしないと。

――しかし、それは外面の話。
内心には、確かな焦りがあった。

(……敵に、止めを刺し切れない。敵に戦力を集中させたのに、此の侭私が此処で巨人の相手をしていては、取り逃す。また鼬ごっこの再開だ。
歩兵は撤退させてしまった。この盤面の駒が…もう、私しかいない)

見た目だけは、華々しいだろう。
砲火を振るい、巨人を足止めし――『敵』を粉砕する。
しかし、そうではない。本当に業火に包むべき敵に、未だ痛撃を与えられていない。バベルの一撃も、追撃を仕掛けられなかった時点で、大した事は無いのだろう。

であれば、早急にこの巨人を始末し、地上の掃討戦に移らなければならない。その焦りは、確かに、あった。

「……ほう、此処に来て助太刀か。握り飯も存外馬鹿にするものではないな。後で、手配してくれた面々には礼を言わねばなるまいな。アイツにも、話を聞いてみるべきだろうが…」

それでも、その焦りを表に出す事は無い。出来ない。
傲岸で尊大な支配者として、動きを止めた巨人を嘲笑う。
漸く視認出来た異邦人――パーカー姿の少女、くらいしか未だ視認出来ないが――の咆哮も相まって、巨人は此方に伸ばしていた手を力無く下ろし、立ち尽くすのみ。

「……後方で部隊を再編成しろ。巨人の無力化が確認取れ次第、追撃と掃討戦に――」

その焦りが――振り上げられた拳への対応を、遅らせた。

「………しまっ…!?」

ガィン、と。歪な衝突音。
球体を組み合わせた足場ごと、地上を睥睨していた支配者は――近くの廃ビルに叩き落される。
轟音と舞い上がる粉塵。元々脆弱な廃ビルが不安定に傾く程度の威力で以て、支配者は天空から落とされる。

主の敵討ち、と言わんばかりにバベルと多脚の異形達が巨人へ猛烈な砲撃を敢行するが…既に手遅れ。
巨人がどうなろうと『鉄火の支配者が痛打によって地上から叩き落された』という事実は変わらない。

それは、違反部活にとって。風紀委員会に憎悪を持つ者達にとって、少しでも留飲を下げるものになり得るのだろうか。
それとも、新たな憎悪の火種を燃え上がらせるだけなのだろうか。

どちらにせよ、一時的にではあるが戦場から特務広報部の圧は、消えた。
移送車への指示。増援。或いは、此の戦場の立て直し。
それらを行う余裕と時間が――『蛇』に与えられるのだろう。

ふぇんりるさん >  
あわわっ!?
なんて脆い!
屋台のジジイに怒られる!?

周りが崩れたのに慌てるふぇんりるさん。
だが、よく考えよう。
そう――建物は、うるさい連中のせいで既に壊れていたのだ。
ふぇんりるさんが壊したわけではないのだ。
そうに違いない!
なんてわるいやつらなんだ!

そう納得してうんうんと頷くふぇんりるさんである。
けっして、ふぇんりるさんが壊したわけではない。
それにきちんと緑のやつの声もなくなったではないか。
肉もちょっと手に入った。
あの握り飯とやらはもう少し欲しいが――。

「夜は静かにしないといけないのだっ」

まだ少し動く緑な大きいのと、空浮かぶ頭が黄色くて赤目なうさぎっぽい小さいのに指をぴしっと突きつけるのだ。
他にもいろいろ居るのは匂いや音、気配や野生の勘で判るが、よく見えるのはその二匹だけなのだ。
・・・・あっ、うさぎぽいの落ちた。
ゆらりと揺れた指先、格好がつかず置くべき場所がない。
困ったふぇんりるさん、こっちもとりあえず落としとこう、と。
傍に合った自分よりもはるかに大きな瓦礫を片手で掴み持ち上げると、ていっ。
軽い感じだけど振った腕の先が見えない速度、飛んでいく瓦礫の速度は、音が後からついてくるほどです。
とりあえず、でそんな瓦礫を緑の大きいのに投げつけておいたふぇんりるさんです。

そしてふぇんりるさん、その結果を見る事もなくてけてけその場を離れるのである。
今日の寝床と決めたところが騒がしいので、寝床を探さないといけない。
ふぇんりるさん、じゃれあって騒がしい奴ら?と違って忙しいのである。

ご案内:「落第街大通り」からふぇんりるさんさんが去りました。
羅刹 > 既に、見る者はほとんどいない。
元々が避難を促していたこと、バベルによって大半が焼き払われたこと。
それによって…見ているのは精々、ふらふらと飛ぶドローン程度。
それも、度重なる力の衝突で映像が不鮮明。
プロパガンダに使うとしても…かなりの加工が必要だろう。

[―――――――――――――――――………………!]

『外側』からの支援を受け、命令を遂行する巨人。
不鮮明な映像が、支配者を叩き落としたことを見れば。

(……は。まだ足りねーが…。…手向け代わりにはなったか)

これで、2つの材料が手に入った。
1つは、神代理央が『委員会側』を攻撃している映像
更にもう1つは、無敵であったはずの鉄火が地に落ちる映像。

後者は酷く不鮮明だが、そこはどうとでもなる。
影響の多寡は、広めてからの相手側の対策次第だが。
ある程度の情報的損害を与える可能性はあるだろう。

拳を突き出した巨人は、その恰好のまま崩壊を始める。
ぼろぼろと身体が崩れ始め、塵となっていく。
時間稼ぎと、支配者に痛撃を与えたとなれば。
レプリカなりに…羅刹から見れば、酷く仕事をしたと言えるだろう。

あの鉄火の足止めなど、蜥蜴の誰にも…現状出来はしないのだから。

(逃げた蛇をかき集めろ。家探しだ。落ちた地点はわかるな?
容赦するなよ。遠距離から位置を変えながら榴弾を叩きこめ)

落ちたとはいえ、死んだとは思っていない。
そして、殺せるとも思っていないが…ここで、更に追撃を加えることができれば。
今後が『やりやすくなる』

だからこそ、容赦はしない。
数名だが、意気が衰えていない人材を使って。
狙いは不正確であるものの…以前使用した、誘導携行ミサイル。
それらが数門、支配者が突っ込んだ崩れかけの廃ビルに向かって放たれる。
当然、撃った後は反撃が来ようと来まいと、即刻移動。

自軍の損害をできるだけ抑え、相手に痛打を与える、常套手段。

(…かなり少なくなったが、デコイも向かわせるか。焔の目隠しが取れてりゃ話は早いが…)

ただ、とはいえ人員は、かなり削られた。
自身の戦術に関する甘さが招いた損害。
それに顔をしかめながら、動かせる駒を、向かわせる――

神代理央 >  
ミサイルが、叩き込まれる。
実にあっけない程に。妨害も無く。廃ビルに叩き込まれたミサイル。
その火力は、既に崩壊しかけていたビルの基礎を吹き飛ばし――ガラガラと音を立てて、脆くも崩れ去っていくのだろう。

――今のところ、それだけ。
崩れ落ちたビルを監視している者からも、鉄火の支配者の安否は確認出来ない。とどのつまり、瓦礫の山に埋もれた儘、ということ。

しかし――彼ならば。此の戦場を誰よりも俯瞰し、冷静に判断出来る羅刹は、きっと直ぐに気付く。それは"二度目"であるが故に。
鉄火の支配者が地に堕ち、その姿が見えないにも拘らず――砲撃が止まない。天を睥睨するバベルは、再び地上に光を降り注ぐ。
流石に、ミサイルを撃った者までは追いかけきれないだろうが…地上に僅かに残る構成員達に。裁きの光を、放ち続ける。
後方の多脚も、その砲弾を戦場へと向ける。今度は、四方八方。
敵の所在が分からぬが故に、不規則かつランダムに。何処に降り注ぐか分からない心理的圧力を与えるかの様に、砲弾が降り注ぐ。

そして、男の元へ報告がもう一つ。
迅速、かつ正確な情報が、齎させる。

それは――新たな異形の出現。
しかしてそれは、先程迄聳え立っていた巨人と、雰囲気が良く、似ているのだ、と。

「………は、ハハハハハハハハハ!ああ、全く。楽しませてくれるじゃないか!こうでなくては、闘争とは、争いとはこうでなくては!」

廃ビルだった場所の瓦礫が、間欠泉の様に吹き飛ばされる。
其処から現れたのは、自慢の制服を埃塗れにし、歪に曲がった左腕を庇う鉄火の支配者の姿。
その肉体を包む魔力の膜は、対峙した蛇の者達なら直ぐに思い至るだろう。礫の一撃すら容易に防ぎきった、肉体強化の魔術。
それでも、ダメージを負っているのは術式が間に合わなかったのか。それとも"他の事"にリソースを割いていたのか――

「さあ、もう出し惜しみはしない。泥濘を這いずる様に、戦おうじゃないか!私は此処だ!さあ、止めてみせろ!さもなければ、貴様達の輩の死体が、増える事になるぞ!」

最後の異形。鉄火の支配者の美学に反するが故に、決して使われる事の無い、異形。
シャンティ・シンから、情報が伝わっているだろうか。鉄火の支配者は、羅刹が召喚した『神』と同種の魔力を取り込んだ挙句――それと同質の異形を、生み出してしまったのだと。

戦場の其処かしこに、異形が現れる。

それは金属の半魚人。但し、その両眼からは銃口が生えている。
それは這いずり回る金属製の肉塊。体液代わりにオイルの様な物を撒き散らし、金属の触手で襲い掛かる。
それは満面の笑みを浮かべた巨大な顔。宙に浮き、精神を侵食する笑い声を上げながら、生命を喰らう。

ソレらが、戦場のありとあらゆる場所に。
通りに。路地裏に。下水道に。或いはもしかすると…彼等の、脱出ルートに。
ぶくぶくと、生える様に現れるのだろう。

尤も、是迄の異形達とは違い、形も大きさもまちまち。
巨大な多脚の異形とは異なり、小銃弾ですら抵抗可能だろう。
実際、男の元には撃破報告も届き始める。
また、其処まで足が速い訳でも無く、不意を突かれなければ逃走も容易、との情報も、彼に伝えられるだろうか。

盤面にばら撒かれた、無数の歪な"ポーン"。
移送車への対応と、此の戦場の処理と。
率いる男に、それらへの判断が、委ねられる。

羅刹 > 効いていないことなど、わかり切っている。
瓦礫の重さも、爆発も…あるいは直撃弾も、防がれることは予想できる。
『この程度』で殺せるなら、支配者など生まれないのだから。

(…ああ、『構わなくて』いい。傷は与えたな?
飛んでいく『煙』が補足されなかった。それだけで十分だ)

最悪の展開は、空を行く煙が補足され、撃ち落されること。
それを防ぐため、最後の一押しを行った。
予想通り、生きており…更に手を打ってくる支配者。

報告が鳴り響く。
異形が、次々に生まれ、兵士となっていると。

(…アレに加えて、小回りの利く駒まである、か。
相変わらずサービス精神旺盛じゃないか。鉄火)

並外れた攻撃能力、防御能力。
大雑把ではない、斥候を生み出すとも言える能力
だが、逃げられるのなら別だ。
既に『煙』はこの場を離れ…救援へたどり着いただろう頃だ。

当の『骸』と盃が繋がらない…というより、その余裕がない、と作戦前に言われていたことから。
あちらの状況は目が見えない焔を頼りにするしかないが。

(撤退だ。出てきたヤツの速度は大したことないんだな?なら、残ったMエリアとLエリアの電気ワイヤーを使って振り切れ
あらゆる行動を許可する。逃げろ。)

砲火を逃れ、何とか機能している罠を使い、"ポーン"を撒いていく構成員。
時間稼ぎ…こちらの仕事は終わった。
まだ攻撃があるかもしれない、と精々警戒させ、時間を使わせよう。

そうなれば、こちらも動かしやすい。
手駒はかなり失ったが…それでも、成果はあった。

潮が引く様に迅速に。
もしもポーンと感覚を繋げられるのなら。
続々と…元々少なかった敵が仲間を抱え、罠を、瓦礫を駆使しながら散っていく様子もわかるだろう。

神代理央 >  
「………逃げられたか。いや、そうであろうな。『巨人』が倒された時点で、恐らく敵の目的は――」

時間稼ぎ、だったのだろうとは思う。
しかし、何の為に時間を稼ごうとしたのか。
撤退するには遅すぎる。しかし、バベルも多脚も、異常を発見など――

「……いや、いたな。取り逃した者が…。巨人の一撃で、狙い撃つ事は出来なかったが…」

空中を飛んで、自立行動のバベルの光線から逃れた者が、一人いた。
あの者を逃がす為の行動だったのだろうか。しかし、となれば――。

「……私だ。移送車の方はどうなって――何?
……ああ、そうか。分かった。いや、それは私のミスだ。貴様達が気に病む事は無い」

捕虜、奪還さる。
深く溜息を吐き出すが…こればかりは、仕方がない。
言い訳は幾らでも立つ。戦力不足。諜報部門の未熟さ。母体となる風紀委員会との連携不足。
しかし結局は…読み負けていた、と言うべきだろう。
彼等の最終目的は捕虜の奪還。その為に此処迄の犠牲を払うとは…思っていなかったのだ。

「……此方も相応の被害を出した。キルレートでは勝っている、と思いたいが…いや、此方の負けだな。連中の目的は達成され、此方の目的は果たせなかった。………負け、か」

異形の目からも、敵が撤退していく様が見て取れる。
深追いはしない。今すべきは、傷付いた部下達との撤収作業。
移送車組とも、連絡を取り合わなくてはならない。

「……忌々しい限りだな。しかし、互いに決定打は与えられず、とも言える。
ならば次がある。生きていれば、次の戦いに挑むことが出来る。
…それは、御互い様、かもしれんがな」

誰も聞き遂げぬ独り言を零した後。
大量に召喚した異形達を消滅させ、後方で再編成していた隊員達を呼び寄せる。
流石に、歩いていく気力は無い。それに何より――

「……色々折れたかな。今度は、短いと良いんだが」

動かせば激痛が走る左腕。
此れでは煙草も吸えないな、と溜息を吐き出した。


こうして、落第街での細やかな『戦争』は幕を閉じた。
互いに得たもの。失ったもの。
それぞれの思惑と想いが交錯し――戦いは、次の舞台へと。
そして、それまでの間…戦士達には、どうか細やかな休息を。

ご案内:「落第街大通り」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。